医療一般|page:143

地中海食による認知症予防に疑問符

 野菜、果物、魚、全粒穀物、オリーブ油などが豊富な地中海食が、身体的な健康の増進に役立つことは広く知られている。近年ではそれにとどまらず、認知症の予防にも良いと言われるようになった。しかし、後者の認知症予防効果について、疑問を投げかける研究結果が発表された。ルンド大学(スウェーデン)のIsabelle Glans氏らの研究によるもので、詳細は「Neurology」に10月12日掲載された。同国の3万人近い一般成人を20年間追跡した観察研究で、有意な関連が見られなかったという。  この結果について、米アルツハイマー協会のHeather Snyder氏は、「食事や栄養と認知症リスクとの関連についての決定的なエビデンスとはいえない。他の研究結果と併せて慎重に考察することが極めて重要」と指摘している。また、「観察研究では何らかの関係性を見つけ出すことは可能だが、その因果関係の証明にはならない。因果関係の立証には介入研究が必要だ。幸いにも現在、食事・栄養介入の影響を評価可能な研究が進行中だ」と述べている。

研修医の労働時間の長さは抑うつリスクに関連

 米国の研修医(レジデント)の労働時間の長さは抑うつ症状に密接に関連していることが、新たな研究で明らかにされた。新人医師の臨床研修は、過酷なスケジュールと大きなプレッシャー、低い報酬で知られているが、今回の研究から、研修医では抑うつの有病率が高く、特に長時間労働がメンタルヘルスに悪影響を及ぼしていることが示された。この研究を実施した米ミシガン大学医学部教授のAmy Bohnert氏は、「研修医の1週間当たりの労働時間の削減に関する強力な根拠を示した結果だ」と述べている。この研究は、「The New England Journal of Medicine」10月20日号に掲載された。

統合失調症患者の入院および機能に対するLAI抗精神病薬の影響

 抗精神病薬のアドヒアランス不良は、統合失調症患者の再発および再入院に最も影響を及ぼす因子であり、医療費の増大や心理社会学的障害につながる可能性がある。長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用は、治療の継続性やアドヒアランス改善に有効であると考えられる。イタリア・トリノ大学のCristiana Montemagni氏らは、経口抗精神病薬(OA)からLAI抗精神病薬への切り替えによる有効性を評価するため1年間のミラーイメージ研究を実施した。

AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル、KRAS G12C変異肺がんのコンパニオン診断薬として承認/理研ジェネシス

 理研ジェネシスは、2022年11月14日、AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネルが、KRAS G12C変異陽性に適応する薬剤のコンパニオン診断薬の承認を取得したと発表した。  これにより同製品は、がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の切除不能進行・再発非小細胞肺がん患者に対するソトラシブ(商品名:ルマケラス)の適応判定の補助に使用可能となる。

神経線維腫症1型における叢状神経線維腫治療薬「コセルゴカプセル」発売/アレクシオン

 アレクシオンファーマは、11月16日付のプレスリリースで、「神経線維腫症1型における叢状神経線維腫」の効能または効果として、コセルゴカプセル10mgおよび25mg(一般名:セルメチニブ硫酸塩、以下「コセルゴ」)の販売を11月16日より開始したことを発表した。  神経線維腫症1型(NF1)は、世界で出生約3,000人に1人が罹患している遺伝性疾患であり、10歳未満の小児で最もよく診断される。患者の30~50%で神経鞘に叢状神経線維腫(PN)が発生し、外見の変形、運動機能障害、疼痛、気道の障害、視力障害、膀胱/腸の機能障害などの病的状態を引き起こすことがある。PNは幼児期に発症し、その重症度は多岐にわたる。NF1患者では健康な人と比較して、平均余命が最長で15年短くなる可能性があるとの報告もある。にもかかわらず、主な治療選択肢が手術に限られるケースもあり、新たな治療法の登場が望まれていた。

運動により新型コロナワクチンの効果が高まる?

 運動をよくする人ほど、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン(以下、新型コロナワクチン)の効果が高くなる可能性のあることが、南アフリカで実施された研究で示された。ワクチン接種を済ませた人のうち、週当たりの運動レベルが高かった人ではあまり運動していなかった人に比べて、COVID-19で入院するリスクがほぼ3分の1であったという。ウィットウォーターズランド大学(南アフリカ)臨床医学部のJon Patricios氏らによるこの研究の詳細は、「British Journal of Sports Medicine」に10月24日掲載された。

糖尿病黄斑浮腫への抗VEGF治療が血糖管理改善の糸口に

 糖尿病黄斑浮腫に対する抗VEGF薬による治療が、患者の血糖コントロールのモチベーション向上につながる可能性が報告された。福井大学医学部眼科学教室の高村佳弘氏らが行った、国内多施設共同研究の結果であり、詳細は「Journal of Clinical Medicine」に8月9日掲載された。  糖尿病黄斑浮腫は、糖尿病による目の合併症の一つで、網膜の中でも視力にとって重要な「黄斑」に浮腫(むくみ)が生じ、視力が低下したり、物がゆがんで見えたりする病気。かつては有効な治療法が少なかったが現在は、血管から血液が漏れ出すのを抑えたり、新生血管を退縮させる「抗VEGF薬」が第一選択薬として使われ、視力を回復・維持できることが増えている。

日本人アルツハイマー病に対する抗認知症薬の継続性

 アルツハイマー病(AD)の症状に対する治療には、ドネペジルが用いられることが多いが、早期の治療中断も少なくない。ドネペジル治療開始後の抗認知症薬使用の継続率を明らかにすることは、今後の治療戦略の開発および改善に役立つ可能性があるものの、これらに関する日本からのエビデンスはほとんどなかった。九州大学の福田 治久氏らは、日本人AD患者におけるドネペジル開始後の抗認知症薬の継続率を明らかにするため、保険請求データベースを用いて検討を行った。

コロナで日本の未成年者の自殺率とその理由が変化

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック中に、日本の若年者(10~19歳)の自殺率はパンデミック前と比較して増加し、家族問題や人間関係の問題に起因する自殺が増加していたことを、東京大学医学部附属病院の後藤 隆之介氏らが明らかにした。パンデミックにより学校閉鎖などの前例のない感染防止対策が講じられ、若年者に多くのメンタルヘルスの課題をもたらしたが、これまでパンデミック中の若年者の自殺の傾向やその理由を調査した研究はほとんどなかった。The Lancet regional health. Western Pacific誌2022年8月10日掲載の報告。

夜食べると太る原因が明らかに

 夜の遅い時間帯に食事を食べると太りやすくなる原因の一端が、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院およびハーバード大学医学大学院のFrank Scheer氏らの研究により明らかになった。食事の時間帯が遅いと、食欲関連ホルモンや深部体温、脂肪貯蓄などに変化が起こることが関係しているという。詳細は「Cell Metabolism」に10月4日掲載された。  深夜に食事をすると肥満になりやすいことはよく知られているが、これまでその理由はよく分かっていなかった。Scheer氏は今回の研究結果を基に、「食事の時間帯を遅くし、それ以外の生活パターンが全て同じままだと、消費エネルギー量が減り、食欲が増進し、体重増加につながる脂肪組織の変化が現れる」と、そのメカニズムを解説。そして、肥満リスクを高めないための対策については、「早い時間帯に食事を取ることだ」と話している。

ゲームは子どもの認知機能に良い影響を与える可能性も

 1日に何時間もゲーム機やパソコンなどの端末を使ったゲームで遊んでいる学齢期の子どもたちは、同世代の子どもたちと比べて、頭の回転を測定する特定の検査の成績が優れている可能性のあることが新たな研究で示唆された。ゲームを全くしない子どもと比べると、1日に3時間以上ゲームをしている子どもでは、短期記憶と衝動をコントロールする能力のそれぞれを測定する2種類の標準的な検査のスコアが優れていたという。米バーモント大学精神医学教授のBader Chaarani氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月24日発表された。

肥満はCOVID-19に伴う血栓症リスクに影響なし?―国内共同CLOT-COVID研究

 肥満は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化のリスク因子ではあるものの、COVID-19に伴う血栓症リスクへの影響は統計的に有意でないとするデータが報告された。三重大学医学部付属病院循環器内科の荻原義人氏らの研究であり、詳細は「Journal of Cardiology」に8月28日掲載された。  肥満は入院患者に発生する血栓症のリスク因子であることが以前から知られている。またCOVID-19が血液の凝固異常を引き起こし血栓症のリスクを上げることも、既に明らかになっている。ただし、肥満がCOVID-19に伴う血栓症のリスク因子であるか否かは明らかにされていない。荻原氏らはこの点について、COVID-19患者の血栓症や抗凝固療法に関する国内16施設の共同研究「CLOT-COVID研究」のデータを後方視的に解析し検討した。

ヒドロクロロチアジド、アモキシシリンなどに「使用上の注意」改訂指示

 厚生労働省は11月16日付で、ヒドロクロロチアジド含有製剤、アモキシシリン水和物含有製剤などに対し、使用上の注意の改訂指示を発出した。  今回の改訂指示は、ヒドロクロロチアジド含有製剤4剤の「重大な副作用」の項に「急性呼吸窮迫症候群」を、アモキシシリン水和物含有製剤6剤の「重要な基本的注意」の項のショックに関する問診の注意喚起にアナフィラキシー・アレルギー反応に伴う急性冠症候群などを、ロキサデュスタットの「重要な基本的注意」の項に定期的に甲状腺機能検査を促す注意を、イマチニブメシル酸塩の「重大な副作用」の項「血栓性微小血管症」に関する注意喚起を、それぞれ追記する内容となっている。詳細は以下。

モデルナBA.4/5対応2価ワクチン、第II/III相試験で主要評価項目達成

 Moderna(米国)は11月14日付のプレスリリースで、オミクロン株対応2価ワクチン候補mRNA-1273.222について、オミクロン株(BA.4/5)に対してmRNA-1273のブースター用量と比較して優れた抗体反応が得られたことを発表した。  同社が実施した第II/III相試験では、ワクチン接種歴のある19~89歳の511名を対象とし、前回のワクチン接種から約9.5ヵ月後にmRNA-1273.222を、約4.5ヵ月後にmRNA-1273をそれぞれ接種した。  mRNA-1273.222とmRNA-1273のオミクロン株BA.4/5幾何平均抗体価(GMT)は、ブースター接種前のSARS-CoV-2感染者と非感染者でそれぞれ5.11(95%信頼区間[CI]:4.10~6.36)と 6.29(95%CI:5.27~7.51)であった。すべての参加者において、オミクロン株BA.4/5 に対するGMTは4,289(95%CI:3,789.0~4,855.9)で、ブースター接種前から15.1倍(95%CI:13.3~17.1)上昇した。感染歴のない被験者では、GMTは2,325(95%CI:1,321.2~2,812.7)であり26.4倍(95%CI:22.0~31.9)の増加、感染歴のある被験者では、GMTは6,965(95%CI:6,043.7~8,025.4)でありブースター接種前から9.8倍(95%CI:8.4~11.4)上昇した。なお、65歳以上の被験者と18~65歳未満の被験者の間で、一貫した結果が認められた。

がん患者のCOVID-19、免疫抑制と免疫療法の両方で重症化

 免疫療法を受けたがん患者は、免疫系の活性化により新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるサイトカインストームがより多く発生する可能性がある。今回、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのZiad Bakouny氏らが、がん患者におけるベースラインの免疫抑制と免疫療法、COVID-19の重症度およびサイトカインストームとの関連を調べた。その結果、COVID-19を発症したがん患者において、免疫抑制と免疫療法のどちらか片方のみでは重度の感染症やサイトカインストームのリスクは増加せず、ベースラインで免疫抑制のあるがん患者に免疫療法を実施すると、COVID-19の重症化やサイトカインストームの発生につながるリスクが高いことが示唆された。JAMA Oncology誌オンライン版2022年11月3日号に掲載。

急性期治療における抗精神病薬の使用状況~スコーピングレビュー

 せん妄などの原発性精神疾患以外の症状に対して、急性期治療で抗精神病薬が使用されることは少なくない。このようなケースで使用された抗精神病薬は、退院時およびフォローアップ時においても継続使用されていることが多いといわれている。カナダ・カルガリー大学のNatalia Jaworska氏らは、抗精神病薬処方の慣行の特徴、抗精神病薬処方と中止に対する専門家の認識、急性期治療における抗精神病薬処方中止戦略などを明らかにするため、スコーピングレビューを実施した。その結果、急性期治療で専門家が認識していた抗精神病薬処方と実際に測定された処方の慣行は異なっており、また院内での処方中止戦略についての報告はほとんどないことが明らかとなった。結果を踏まえ著者らは、抗精神病薬の有効性およびリスクを評価するためには、処方中止戦略を継続的に評価する必要があるとしている。BMC Health Services Research誌2022年10月21日号の報告。

非専門医が使える「糖尿病治療のエッセンス」2022年版/日本糖尿病対策推進会議

 わが国の糖尿病患者数は、糖尿病が強く疑われる予備群を含め約2,000万人いるとされているが、糖尿病の未治療者や治療中断者が少なくない。  そこで、糖尿病診療のさらなる普及を目指し、日本糖尿病学会をはじめとする日本糖尿病対策推進会議は、糖尿病治療のポイントをとりまとめて作成した『糖尿病治療のエッセンス(2022年版)』を制作し、日本医師会のホ-ムページより公開した。今回の改訂で5回目となる。

職場へのお土産の予算は?/医師1,000人アンケート

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行し始めた頃、出張や旅行は自主的に制限され、また学術集会もオンラインで開催されるなど、外出への機会は失われ、お土産を買ったり、もらったりということは減少した。しかし、最近では、コロナワクチンの普及や治療薬の登場により、COVID-19以前の生活に戻りつつある。  出張や学術集会が再開されて気になるのは、残してきた家族や医局の同僚などへの「お土産」である。実際、医師がどの範囲の集団に、どの程度の予算でお土産を購入しているのか、今回会員医師1,000人にアンケート調査を行った。

精神病性うつ病の死亡率~18年フォローアップ調査

 精神病性うつ病に関連する死亡率や併発する精神症状の影響に関するエビデンスは、非常に限られている。英国・オックスフォード大学のTapio Paljarvi氏らは、併発する精神症状を制御した精神病性うつ病の原因別死亡率を推定するため、本研究を実施した。その結果、精神医学的併存疾患を制御した後、重度のうつ病に関連する死亡リスクに対し、精神症状の著しい影響が認められた。著者らは、自殺やその他の外的原因による死亡を減少させるためにも、すべての重度うつ病患者に対し、迅速な治療および精神症状のモニタリング強化が求められると報告している。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2022年10月17日号の報告。

毛髪を生み出すオルガノイド作成に成功―白髪や脱毛症の治療に期待

 生体外でも毛髪を生み出せる毛包オルガノイド(ミニ臓器)の作成に成功したとする論文が、「Science Advances」に10月21日掲載された。「ヘアフォリクロイド」と名付けられたこの毛包オルガノイドをマウスに移植すると、毛包が生着して毛髪が生え変わることも確認されたという。横浜国立大学大学院工学研究院の福田淳二氏らの研究によるもの。研究グループでは、白髪や脱毛症の治療薬の開発、毛髪再生医療への応用が期待されるとしている。  身体を構成する臓器や組織は、異なる種類の細胞からなる複雑な構造を持っていて、その発生過程では上皮系細胞と間葉系細胞の相互作用が重要。ただし、研究のために生体から分離した上皮系細胞と間葉系細胞を試験管内で培養しても、目的とする細胞への分化に必要な相互作用が起こらずに、目指す臓器や組織にはならない。毛根を包んでいる「毛包」についても、この2種類の細胞を用いたオルガノイドの作成が試みられてきているが、成熟した毛包の形成は成功していなかった。