医療一般|page:144

不眠症に対する認知行動療法アプリの有効性

 サスメド株式会社の渡邉 陽介氏らは、同社が開発した不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)のスマートフォン用アプリについて、有効性および安全性を検証するため国内第III相シャム対照多施設共同動的割り付けランダム化二重盲検比較試験を実施した。その結果、不眠症治療に対するスマートフォンベースのCBT-Iシステムの有効性が確認された。Sleep誌オンライン版2022年11月10日号の報告。  不眠症患者175例を、スマートフォンベースのCBT-Iアプリ使用群(アクティブ群、87例)と、本アプリから治療アルゴリズムなどの治療の機能を除いたアプリを使用する群(シャム群、88例)にランダムに割り付け、CBT-Iアプリの有効性および安全性を評価した。主要評価項目は、ベースラインから治療8週間後のアテネ不眠尺度(AIS)の変化量とした。

新型コロナは季節性インフルと同等となるか/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第110回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、12月14日に開催された。その中で「新型コロナウイルス感染症の特徴と中・長期的リスクの考え方」が、押谷 仁氏(東北大学大学院微生物学講座 教授)らのグループより報告された。  本レポートは、「I.リスク評価の基本的考え方」「II. COVID-19 のリスク評価」「III.COVID-19 パンデミックは季節性インフルエンザのような感染症になるのか」の3つに分かれて報告されている。

12~20歳のmRNAコロナワクチン接種後の心筋炎をメタ解析、男性が9割

 12~20歳の若年者へのCOVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎に関連する臨床的特徴および早期転帰を評価するため、米国The Abigail Wexner Research and Heart Center、 Nationwide Children’s Hospitalの安原 潤氏ら日米研究グループにより、系統的レビューとメタ解析が行われた。本研究の結果、ワクチン接種後の心筋炎発生率は男性のほうが女性よりも高く、15.6%の患者に左室収縮障害があったが、重度の左室収縮障害(LVEF<35%)は1.3%にとどまり、若年者のワクチン関連心筋炎の早期転帰がおおむね良好であることが明らかとなった。JAMA Pediatrics誌オンライン版2022年12月5日号に掲載の報告。

ニボルマブのNSCLCネオアジュバント、日本人でも有効(CheckMate 816)/日本肺癌学会

 ニボルマブの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術前補助療法(ネオアジュバント)は、日本人でもグローバルと同様の良好な結果を示した。  この結果はニボルマブのNSCLCネオアジュバントの第III相試験CheckMate 816の日本人サブセットの解析によるもので、第63回日本肺癌学会学術集会で近畿大学の光冨 徹哉氏が発表した。

コロナ重症化率と致死率、どの程度低下したのか/COVID-19対策アドバイザリーボード

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けについて議論が進んでいる。その判断には、病原性(重篤性)と感染力、それらによる国民への影響を考慮する必要があるが、病原性(重篤性)の参考となる重症化率と致死率について、12月21日に開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで報告された。重症化率・致死率ともに昨年夏から大きく低下しており、病原性が低いとされるオミクロン株が流行株の主体となっていること、多くの人が自然感染あるいはワクチンによる免疫を獲得したことが要因と考えられている。

再発・難治ATLLにバレメトスタット発売/第一三共

 第一三共株は、バレメトスタット(製品名:エザルミア)について、2022年12月20日、国内で新発売したと発表。  同剤は、再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)患者を対象とした国内第II相臨床試験の結果に基づき、2021年11月に希少疾病用医薬品の指定を受け、2022年9月に「再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫」を適応として国内製造販売承認を取得した。

膿疱性乾癬の現状と、新しい治療薬スぺビゴへの期待

 2022年12月8日、日本ベーリンガーインゲルハイムは「膿疱性乾癬(汎発型)(GPP)のアンメットメディカルニーズと新しい治療への期待」をテーマにメディアセミナーを開催した。同セミナーで帝京大学医学部皮膚科学講座の多田 弥生氏は、GPPの現状と同年9月に承認された抗IL-36Rモノクローナル抗体「スペビゴ点滴静注450mg」(一般名:スペソリマブ[遺伝子組換え])の国際共同第II相二重盲検比較試験(Effisayil 1試験)について講演を行った。

日本人うつ病に対する認知機能評価尺度-簡易版の検証

 国立精神・神経医療研究センターの住吉 太幹氏らは、「日本での大うつ病性障害関連の機能的アウトカムに関する前向き観察研究(PERFORM-J)」のデータを用いて、日本人うつ病患者における主観的認知機能を評価するための簡便な指標であるPDQ-D-5(5項目の評価尺度)の有用性を検証した。その結果、日本人うつ病患者に対するPDQ-D-5による評価は、PDQ-D-20(20項目の評価尺度)による評価を適切に反映していることが確認され、簡易版のPDQ-D-5にも、機能的アウトカム、うつ病重症度、QOLのいくつかの尺度との関連が認められた。このことから著者らは、PDQ-D-5は、認知機能に関する主観的な経験を評価するための実行可能かつ臨床的に信頼性のある尺度であり、時間的制限のある診療・相談に適用可能であるとしている。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年11月2日号の報告。

低炭水化物食は糖尿病リスクの抑制にも良い可能性

 血糖値が極端に高くはない人の糖尿病発症予防という目的でも、低炭水化物の食事スタイルが役立つ可能性が示された。米テュレーン大学のKirsten Dorans氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に10月26日掲載された。  食後の血糖値を上げるように働く炭水化物の摂取量を抑える「低炭水化物食」は、糖尿病患者の治療という場面での有用性を示すエビデンスが増えてきている。ただし、糖尿病の発症予防という点でのエビデンスはまだ少ない。そこでDorans氏らは、まだ糖尿病の治療を受けておらず、HbA1cが6.0~6.9%とそれほど高くない集団を対象とする無作為化比較試験により、この点を検討した。  研究参加者は150人で、平均年齢58.9±7.9歳(範囲40~70歳)、女性72%、BMI35.9±6.7、HbA1c6.16±0.3%。75人ずつの2群に分け、低炭水化物食群に対しては、前半3カ月間は炭水化物を1日40g未満、後半3カ月間は同60g未満を目標とする栄養介入を行った。最初の4週間は毎週1回、それ以降は隔週で個人面接を行ったほか、電話やグループ教育によるフォローアップが継続された。一方、対照群には食事に関する一般的な注意事項を示した書面を手渡し、各自で食事療法を行うように指示したほか、食事とは関係のないトピックの教育セッションが毎月行われた。

第Xa因子阻害剤による出血時の迅速な薬剤特定システムを構築/AZ

 アストラゼネカとSmart119は、12月14日付のプレスリリースで、医療機関と救急隊における第Xa因子阻害剤服用中の出血患者を対象とした情報共有システムを構築し、病院到着時に患者の服用薬剤を特定することで、迅速かつ適切な処置を目指すと発表した。  直接作用型第Xa因子阻害剤を含む抗凝固薬は、非弁膜症性心房細動患者の脳梗塞予防や静脈血栓塞栓症の治療・再発予防を目的として広く使用されている。その一方で、服用中は通常より出血が起こりやすい状態となるため、事故や転倒などのきっかけで、大出血につながるリスクが高くなる。抗凝固薬服用中の患者において大出血が発現した際、抗凝固薬の中和剤を止血処置の一環として投与することで、出血の増大を抑えられる可能性がある。中和剤を適切に使用するためには、患者の服薬情報の把握が必要となるが、現状、救急隊の病院到着時に約30%の患者で、服用薬剤が特定できないと報告されている。

わが国の非小細胞肺がんの遺伝子検査は本当に普及しているのか?(WJOG15421L/REVEAL)/日本肺癌学会

 わが国の肺がん遺伝子検査、初回治療前のマルチ遺伝子検査が十分行われていない可能性が示唆された。  非小細胞肺がんでは、バイオマーカー検査の結果に基づき治療を選択する。近年、RET、KRAS、NTRK遺伝子が検査項目に加えられ、バイオマーカー検査はシングルプレックスからマルチプレックスに移行しつつある。西日本がん研究機構(WJOG)では、わが国の肺がん約1,500例のバイオマーカー検査の実施状況と治療の実態を調査し、肺がん診療の問題点を可視化することを目的とした後ろ向き調査WJOG15421L(REVEAL)試験を実施している。

認知症リスクと楽器演奏~メタ解析

 高齢者の認知症予防には、余暇の活動が重要であるといわれている。しかし、認知症リスクと楽器の演奏との関連は、あまりわかっていない。国立循環器病研究センターのAhmed Arafa氏らは、高齢者における楽器の演奏と認知症リスクとの関連を調査するため、プロスペクティブコホート研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、楽器の演奏と高齢者の認知症リスク低下との関連が確認された。著者らは、高齢者の余暇の活動に、楽器の演奏を推奨することは意義があると報告している。BMC Neurology誌2022年10月27日号の報告。

3回の脳卒中体験をユーモアと弱さを織り交ぜて表現する舞台俳優―AHAニュース

 米国ロサンゼルスで活動している、ほかの多くの舞台俳優と同じように、Michael Shuttさんにも副業があった。比較的自由な昼間はレストランで働き安定収入を得ながら、夜は劇団で演技、監督、制作、脚本などを手掛けていた。  ある日、レストランで働いていた時、体に電気が流れて引き裂かれるように感じ、左手が動かなくなった。職場の同僚はShuttさんの様子が変だとは感じたが、そのまま働き続けていた。その後も左手にしびれが残り、頭がぼんやりしていたものの、翌日も出勤し、さらに次の日は得意のキックボールの試合に参加した。ただし、途中でリタイアした。  次の日曜日の夕方、レストランでワインボトルの開け方が分からなくなった。一夜明けた月曜の朝、ようやく彼は受診。危険なレベルの高血圧が認められ、救急治療室に送られた。MRI検査により、虚血性脳卒中と診断された。虚血性脳卒中は、脳卒中の中で最も一般的なタイプであり、脳内の血管が塞がれて発症する。Shuttさんはその時48歳だったが、もう何年も医者にかかっていなかった。また、脳卒中の主要な原因である高血圧に気付いていなかった。入院中に降圧薬が処方され、幸いほとんど後遺症もなく退院した。退院時に看護師から、「Time is brain(時は脳なり)。もし再び脳卒中が起きたら、直ちに119番通報するように」と言われた。

睡眠が不規則な人は全死亡リスクが最大1.5倍高い―日本人8万人の縦断的研究

 自分の睡眠が不規則だと自覚している人は、睡眠時間を含む多数の交絡因子を調整後も全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクが高いというデータが報告された。京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学の大道智恵氏、小山晃英氏らの研究によるもので、詳細は「Sleep Health」に10月10日掲載された。  睡眠時間の長短がさまざまな疾患の発症や全死亡のリスクと関連のあることは、多くの研究により明らかになっている。また近年では、シフト勤務などによる不規則な睡眠も健康リスクとなり得ることが示唆されている。小山氏らも既に、主観的な評価に基づく不規則な睡眠が、メタボリックシンドロームのリスクと有意な関連のあることを報告している。主観的な評価は客観性に欠けるという欠点があるものの、煩雑な検査を必要としないため、一般住民など大人数の睡眠に関連する健康リスクを、簡便かつ低コストで評価できるというメリットがある。今回、小山氏らは、主観的な評価による不規則な睡眠と全死亡リスクとの関連の有無を、「日本多施設共同コーホート研究(J-MICC研究)」のデータを用いて検討した。

乾癬とうつ病併存、脳構造と脳内コネクティビティの特徴は?

 先行研究で乾癬患者の最大25%にうつ病の併存が認められるとの報告がある中、英国・マンチェスター大学のGeorgia Lada氏らは、うつ病併存に関連する乾癬の脳構造と脳内コネクティビティ(connectivity)を調べる脳画像研究を行い、乾癬による局所脳容積や構造的なコネクティビティへの影響はみられないこと、乾癬とうつ病併存で右楔前部の肥厚が認められ、自殺傾向に関連している可能性があることなどを明らかにした。  患者に共通する神経生物学的およびうつ病脳画像のパターンなど、併存疾患のドライバについてはほとんど解明されていない。一方で、慢性の全身性炎症皮膚疾患である乾癬について、脳と皮膚間における免疫が介在したクロストークが仮説として示唆されていた。Brain, Behavior, & Immunity - Health誌2022年12月号掲載の報告。

維持期うつ病治療の抗うつ薬比較~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、維持期の成人うつ病の治療に対する抗うつ薬の有効性、許容性、忍容性、安全性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。その結果、維持期の成人うつ病に対する抗うつ薬治療において、妥当な有効性、許容性、忍容性が認められた薬剤は、desvenlafaxine、パロキセチン、ベンラファキシン、ボルチオキセチンであることを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2022年10月17日号の報告。  PubMed、Cochrane Library、Embaseデータベースより、エンリッチメントデザインを用いた二重盲検ランダム化プラセボ対照試験(非盲検期間中に抗うつ薬治療で安定し、その後、同じ抗うつ薬群またはプラセボ群にランダム化)を検索した。アウトカムは、6ヵ月後の再発率(主要アウトカム、有効性)、すべての原因による治療中止(許容性)、有害事象による治療中止(忍容性)、個々の有害事象発生率とした。リスク比および95%信用区間を算出した。

スタチンが致死的な脳内出血リスクを低減する可能性

 コレステロール低下薬のスタチンは、心臓を守るだけでなく、出血性脳卒中の一種である脳内出血のリスクを低減する可能性のあることが、新たな研究で示された。南デンマーク大学(デンマーク)のDavid Gaist氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に12月7日掲載された。  脳内出血は、動脈または静脈が破れることで生じる。米国脳神経外科学会(AANS)によると、脳内出血は脳卒中の15~30%を占めており、死亡率も極めて高い。また、出血そのものが脳を損傷するだけでなく、出血による頭蓋内の圧力の上昇が脳にさらなる悪影響を及ぼすこともある。Gaist氏は、「スタチンは脳梗塞のリスクを低減することが明らかにされているが、初回の脳内出血リスクに与える影響については、見解が一致していなかった」と述べている。  今回の研究では、デンマークの医療記録を使用し、2009年から2018年の間に初めて脳葉領域に出血を来した55歳以上の患者989人(平均年齢76.3歳、女性52.2%)を特定した。脳葉領域には前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉などの大脳の大部分が含まれる。これらの患者を、脳内出血の既往がなく、年齢、性別、その他の因子が類似する3万9,500人と比較した。さらに、脳葉領域以外の領域(大脳基底核、視床、小脳、脳幹など)に出血を起こした患者1,175人(平均年齢75.1歳、女性46.5%)についても、脳内出血の既往がなく、年齢、性別、その他の因子が類似する4万6,755人と比較した。スタチンの使用状況は処方データを用いて判断した。

有酸素運動で老化した脳が活性化?

 有酸素運動を習慣的に行うことで、脳の血流が良くなることを示すデータが報告された。研究者らは、このような脳の血流改善効果を介して脳の老化が抑制されるのではないかと述べている。  この研究は、米テキサス大学サウスウエスタン医療センターのRong Zhang氏らによるもので、詳細は「Journal of Applied Physiology」に10月4日掲載された。Zhang氏は、「週に4~5回、1回30分以上の速歩またはジョギングを行うと良い。その運動強度は、会議のスタートに遅れそうで急いでいる時の歩行と同じぐらいであって、息切れを感じるぐらいの強度だ」と解説する。

プラスチック製品に含まれる化学物質で子宮筋腫リスクが上昇か

 女性の不正出血や不妊などの原因となる子宮筋腫の発症に、予想外の要因が関わっていることを示唆する新たな研究結果がこのほど明らかになった。ファストフードの容器や飲料水のプラスチック製のボトルなど、さまざまな物に使われているフタル酸エステルと呼ばれる化学物質が、子宮筋腫の発症を促す可能性があるという。米ノースウェスタン大学産婦人科学のSerdar Bulun氏らによるこの研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に11月14日掲載された。  子宮筋腫の有病率は高く、女性の最大80%が生涯に1回以上、子宮筋腫を発症する。子宮筋腫を発症した女性の一部は出血や貧血、流産、不妊などを経験する。米国産科婦人科学会(ACOG)の環境医学の専門家であるNathaniel DeNicola氏によると、筋腫は症状が現れた後に見つかることもあるが、帝王切開や画像検査の際に偶然見つかることもある。なぜこうした腫瘍が発生するのかについては十分に解明されていない。ただ、DeNicola氏によると、細胞があらかじめプログラムされた細胞死(アポトーシス)に至らずに増殖すると、それが筋腫あるいはがんの要因になり得るという。アポトーシスは正常な現象であり、ほとんどの成人で毎日約5000万個の細胞が死に至る。

米国ではエピペンによる治療の活用が不十分

 EpiPen(エピペン)などのアドレナリン自己注射薬は、食物アレルギーなどでアナフィラキシー反応が生じてから医師の診察を受けるまでの間に、一時的に症状を緩和するために使われる。しかし、深刻なアレルギー症状を起こした人にとっては命綱となるこの重要な治療法が、米国では十分に活用されていないことが新たな調査から明らかになった。米AllergyStrongでエグセクティブディレクターを務めるErin Malawer氏らが実施したこの調査の結果は、米国アレルギー・喘息・免疫学会年次学術集会(ACAAI 2022、11月10~14日、米ルイビル)で発表されるとともに、「Annals of Allergy, Asthma & Immunology」に11月号(増刊号)に掲載された。