「話しながら歩く」が難しいのは忍び寄る認知症のサイン? 中年期でも歩きながら会話をしたり考え事をしたりといったことが難しくなっている場合、それは認知症が忍び寄っていることのサインかもしれない。二重課題(デュアルタスク)下で歩行する能力の低下は、65歳以上の高齢者での認知機能の低下や転倒と関連付けられているが、この能力は、実際には50代の半ばから低下し始めることが新たな研究で明らかにされた。米Hinda and Arthur Marcus Institute for Aging ResearchのJunhong Zhou氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Healthy Longevity」3月号に掲載された。
不定愁訴に伴う疲労の関連因子が明らかに 「不定愁訴」と称される、医学的に説明できない症状のある人の「疲労」を悪化させる因子が明らかになった。めまいや頭痛という身体症状と、不安や抑うつという精神症状が、疲労の強さに独立して関連しているという。東邦大学医学部心身医学講座の橋本和明氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of General and Family Medicine」1月号に掲載された。 さまざまな検査を行っても患者の訴える症状につながる異常が見つからない場合、「医学的に説明不能な症状(medically unexplained symptoms;MUS)」または「不定愁訴」と診断される。MUSでは複数の身体・精神症状が現れることが多く、原因を特定できないために効果的な治療が困難であることから医療者の負担になりやすい。その影響もあり、医師はMUSの診療を避けようとする傾向のあることが報告されている。
若いほど心筋梗塞後の心肺停止リスクが高い―J-PCI Registryのデータ解析 若年の急性心筋梗塞(AMI)患者は心肺停止(CPA)に至るリスクが高いことや、病院到着時にCPAだった若年AMI患者は院内死亡のオッズ比が14倍以上に上ることなどが明らかになった。愛知医科大学循環器内科の安藤博彦氏らが、日本心血管インターベンション治療学会の「J-PCI Registry」のデータを解析した結果であり、詳細は「JACC: Asia」10月発行号に掲載された。 動脈硬化性疾患の危険因子に対する一次予防が普及したことや、イベント発生後の積極的な二次予防が行われるようになったことで、高齢者のAMIは減少傾向にあると報告されている。その一方で、健診の対象外であることが多く一次予防がなされにくい若年世代のAMIは、依然として抑制傾向が見られない。ただ、若年者でのAMI発生件数自体が少ないため、この世代のAMI患者の危険因子や院内転帰などについての不明点が多い。安藤氏らは、J-PCI Registryのデータを用いてそれらを検討した。なお、J-PCI Registryには、国内で行われている経皮的冠動脈形成術(PCI)の9割以上が登録されている。
片頭痛予防、日本人患者と医師の好みは? 現在、日本における片頭痛の予防には、自己注射可能なカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体(mAb)のオートインジェクター(AI)製剤、非CGRPの経口剤などが利用可能である。米国・EvideraのJaein Seo氏らは、CGRP mAbのAI製剤と非CGRPの経口剤に対する日本人患者および医師の好みを調査し、両者にとってのAI製剤の相対的な重要性の違いを測定しようと試みた。その結果、多くの片頭痛患者および医師は、非CGRP経口剤よりもCGRP mAbのAI製剤を好むことが確認された。本結果から著者らは、日本人医師が片頭痛の予防治療を勧める際には、患者の好みを考慮する必要性が示唆されるとしている。Neurology and Therapy誌2023年4月号の報告。
HER2+早期乳がんの術前化療、pCRは代替評価項目になり得るか/JCO 病理学的完全奏効(pCR)は治療効果の確認と予後予測に有用であるものの、HER2陽性の早期乳がん患者に対する無イベント生存期間(EFS)および全生存期間(OS)の代替評価項目としては不十分であることを、ベルギー・International Drug Development InstituteのPierre Squifflet氏らが明らかにした。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年3月28日号掲載の報告。 pCRは、臨床試験の主要評価項目としてしばしば用いられている。しかし、pCRをHER2陽性の早期乳がん患者におけるEFSおよびOSの代替評価項目とすることについては議論の余地がある。
米国で危険な薬剤耐性真菌感染症が増加 ある真菌の感染が米国全土に広がりつつあるとして、米疾病対策センター(CDC)の研究グループが警鐘を鳴らしている。Candida auris(カンジダ・アウリス)と呼ばれるこの真菌はカンジダ属の新興菌種であり、感染すると生命が脅かされる可能性があるという。研究グループは、2013年にカンジダ・アウリスの初の感染者が報告されて以降、全米で急激に感染者が増加していることを、「Annals of Internal Medicine」3月21日号で報告した。
呼吸器疾患のCTスキャンでも心臓リスクの評価が可能 大きな手術の前に、リスクを判定するための特殊な心臓スキャンを行う必要はない可能性のあることが、新たな研究で示唆された。肺炎やがんなどの肺の疾患をスクリーニングするために数カ月前に撮影された既存の胸部画像を見直すことでも、手術時の心筋梗塞や死亡のリスクを推定できる可能性があるという。米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスのDaniel Choi氏らによるこの研究結果は、米国心臓病学会年次総会(ACC.23、3月4〜6日、米ニューオーリンズ)で発表されるとともに、要旨が「Journal of the American College of Cardiology」3月号(増刊号)に掲載された。
地中海食とMIND食がアルツハイマー型認知症の予防に有効か 緑色の葉野菜や魚などの健康的な食品をたくさん食べる習慣のある高齢者は、「脳年齢」が若い可能性のあることが、米ラッシュ大学のPuja Agarwal氏らの研究で示唆された。健康的な食事法である地中海食とMIND食のいずれかに近い食事を取っていた高齢者では、アルツハイマー型認知症に特徴的な、脳内でのアミロイドβの蓄積とリン酸化タウタンパク質の凝集(神経原線維変化)が少なかったという。この研究結果は、「Neurology」に3月8日掲載された。 魚やオリーブ油、野菜、豆類、ナッツ類、食物繊維が豊富な穀物を多く摂取する地中海食が、心疾患や脳卒中のリスク低下につながることは広く知られている。一方、MIND食は、地中海食によく似ているが、野菜や果物のうち緑色の葉野菜やベリー類の摂取をより重視している点が特徴だ。これは、これらの食品が脳の健康に良いことを示した研究結果に基づいている。
70歳以上なら歩数を1日500歩増やすだけで心臓に良い影響 「健康のために1日1万歩を」とよく言われるが、「毎日1万歩など無理」という高齢者も少なくないだろう。しかし、70歳以上の人を対象とした新たな研究から、それよりはるかに少ない歩数であっても心臓の健康に良い可能性のあることが分かった。1日3,000歩でもよく、さらに500歩増やすだけでも大きな違いが生じる可能性があるという。米アラバマ大学のErin Dooley氏らが、米国心臓協会(AHA)の生活習慣科学セッション2023(EPI2023、2月28日~3月3日、ボストン)で発表した。
医師の働き方改革の対策セミナー、オンデマンド配信のご案内 2024年4月から勤務医の時間外労働の上限が原則960時間となる、いわゆる「医師の働き方改革」がスタートする。医療・健康分野のシステム開発などを手掛けるメディカル・データ・ビジョンは4月14日、「1年切った医師の働き方改革、病院の準備は? 医師の本音は?」と題した無料WEBセミナーを開催した(協賛:レイヤード、協力:ケアネット)。 セミナーには約350人(うち医師102人)が参加、日本赤十字社 愛知医療センター 名古屋第二病院の前事務部長である渡辺 徹氏が「これだけは準備しておきたい『医師の働き方改革』」と題した講演を行った。渡辺氏は時間外上限規制の概要を説明した上で、ポイントとなる労働基準法上の宿日直や自己研鑽の労働時間該当性、追加的健康確保措置について解説した。
肺機能と認知症リスク~43万人超のコホート研究 脳の認知的な健康に、肺機能が他の因子と独立して影響を及ぼすかはよくわかっていない。中国・青島大学のYa-Hui Ma氏らは、肺機能と脳の認知的な健康の縦断的な関連性を評価し、根底にある生物学的および脳の構造的なメカニズムを明らかにしようと試みた。その結果、認知症発症の生涯リスクに対する個々の肺機能の影響が確認され、著者らは、「最適な肺機能の維持は、健康的な加齢や認知症予防に有用である」としている。Brain, Behavior, and Immunity誌2023年3月号の報告。
医療者の無症候コロナ感染が増加、既感染の割合は?/順大 本邦では、ワクチン接種率が高いにもかかわらず、多くの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が確認されている。しかし、感染の既往を示す抗体の陽性率に関する研究は限られている。そこで順天堂大学では、医療者をはじめとした職員を対象として、2020年から年次健康診断時に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体検査を実施している。2020年、2021年における抗N抗体※陽性率はそれぞれ0.34%、1.59%と低かったが、今回報告された2022年の調査結果では、17.9%に増加していた。また、抗N抗体陽性者のうち、約半数は感染の自覚がなかったことが明らかになった。本研究結果は、順天堂大学の金森 里英氏らによって、Scientific Reports誌2023年3月27日号で報告された。
健康に良く地球に優しい食事スタイルのランキング 今日、ステーキを食べようかと思っているなら、魚や野菜中心の料理に変更した方が、あなたの健康だけでなく、地球環境にも良い結果につながる可能性のあることを示すデータが報告された。米テュレーン大学のDonald Rose氏らの研究によるもので、詳細は「The American Journal of Clinical Nutrition」に3月1日掲載された。 Rose氏らは、「食事の質」と「二酸化炭素排出量」という二つの視点から、さまざまな食事スタイルのランク付けを実施。その結果、肉食でない食事スタイルの方が、両方の点で優れていることが分かった。同氏によると、これまでにも菜食の方が二酸化炭素排出量の少ないことは報告されているという。ただし、それらの研究は、研究参加者自身がベジタリアンであることを申告している人を対象としたものが多く、そのように自分の食事スタイルを意識していない大半の人が摂取している食べ物と二酸化炭素排出量の関連は、あまり研究されていなかったとのことだ。そこでRose氏らは、多くの一般住民を対象に行われている米国の国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いた検討を行った。
米軍のパイロットと地上要員はがん罹患リスクが高い 米軍のパイロットと地上要員はがん罹患リスクが高いとする、米国防総省のレポートが公表された。同国のレッドリバーバレー戦闘機パイロット協会のVince Alcazar氏は、この結果に関するAP通信の取材に対して、「軍のパイロットのがんリスクが高いことに対する懐疑的な考え方を捨て、この問題に積極的に取り組むべくかじを切る時期は、とっくに過ぎている」とコメントしている。 米国議会は2021年、国防権限法(NDAA)に基づき、軍のパイロットと地上要員の発がん、およびがん死亡リスクの調査研究を義務付けた。
歯を失うと糖尿病に伴う認知機能低下に拍車がかかる可能性 糖尿病患者が歯を失うと、認知機能低下リスクがより上昇するかもしれない。その可能性を示唆する、米ニューヨーク大学ローリーマイヤーズ看護学部のBei Wu氏らの研究結果が、「Journal of Dental Research」に3月12日掲載された。この研究のみでは因果関係の証明にはならないが、強固な関連が認められるという。 糖尿病が認知症のリスク因子の一つであることや、残っている歯の数が少ないほど認知症リスクが高くなることが知られている。ただし、糖尿病患者が歯を失うことにより認知症リスクがより高まるのか否かは明らかでない。Wu氏らはこの点について、同大学が行っている、就労や定年退職と健康に関する研究(Health and Retirement Study;HRS)のデータを用いて検討した。
新型コロナ、5類感染症変更後の療養期間を発表/厚労省 厚生労働省は4月14日、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類感染症に変更される5月8日以降の取り扱いについて発表した。5類変更後の療養期間は、法律に基づく外出自粛は求められず個人の判断に委ねられる。そのうえで外出を控えることが推奨される期間として、発症日を0日目として5日間は外出を控えること、かつ、5日目に症状が続いている場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまでは外出を控え様子を見ることとした。なお、学校における取り扱いについては、文部科学省にてパブリックコメントを実施予定。
日本人統合失調症患者の職業機能に認知機能はどう関連しているか 統合失調症患者の職業機能に対し、認知機能が影響を及ぼしていることが示唆されている。帝京大学の渡邊 由香子氏らは、日本人統合失調症患者の職業機能に対する認知機能の影響を評価するため、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)を用いた研究を行った。その結果、統合失調症患者の職業機能は、全体的な認知機能と関連しており、とくにBACSのシンボルコーディングスコアが、作業能力と関連していることが示唆された。Neuropsychopharmacology Reports誌2023年3月号の報告。
ニボルマブ+化学療法のNSCLCネオアジュバント、3年間の追跡でも持続的ベネフィット示す(CheckMate 816)/BMS ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2023年3月30日、第III相CheckMate 816試験の3年間の追跡調査の結果を発表した。同結果では、切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者の術前補助療法として、ニボルマブとプラチナを含む化学療法の併用療法の3回投与が持続的な臨床ベネフィットを示した。 中央値41.4ヵ月の追跡調査における3年間の無イベント生存期間(EFS)率は、ニボルマブと化学療法の併用療法群で57%、化学療法単独群では43%であった(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.49〜0.93)。また、無作為割付け日から遠隔転移または死亡までの期間(TTDM)において、ニボルマブと化学療法の併用療法群は引き続き良好な結果を示し(HR:0.55、95%CI:0.39~0.78)、3年間のTTDM率は、ニボルマブと化学療法の併用療法群で71%、化学療法単独群では50%であった。
同側多発乳がんへの乳房温存療法、5年局所再発率は許容範囲(Alliance試験)/JCO 同側乳房に2~3個の病巣を有する乳がん患者において、乳房温存手術後の全乳房放射線療法と切除部位へのブースト照射による5年局所再発率は3.1%であり、臨床的許容率として規定されていた8%を下回ったことが、第II相単群の前向き試験であるACOSOG Z11102(Alliance)試験で確認されたことを、米国・Mayo ClinicのJudy C. Boughey氏らによって明らかにされた。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年3月28日号掲載の報告。なお、本結果はサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表されている。
遺髪のゲノム解析でベートーヴェンの健康状態や家系の解明が進む 作曲家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770〜1827年)の遺髪のゲノム解析から、ベートーヴェンの死因について新たな情報が得られた。ベートーヴェンはB型肝炎に罹患しており、肝疾患が原因で死亡した可能性が示唆されたのだ。また、解析を通して、ベートーヴェンの家族の「スキャンダル」の証拠も得られたという。英ケンブリッジ大学などの国際共同研究グループが実施したこの研究の詳細は、「Current Biology」に3月22日掲載された。 ベートーヴェンの聴力は20代半ばから低下し始めた。「交響曲第9番」などのいくつかの代表作は、彼が完全に聴力を失った後に作曲されたと考えられている。また、本研究の背景情報によると、ベートーヴェンは、少なくとも22歳以降から腹痛や下痢といった胃腸の問題にも苦しめられていた。