医療一般|page:108

30代で高血圧の人は70代になった時に脳の健康が悪化している?

 成人期の早い段階で高血圧を発症した人は、高齢期に入った時点で脳の健康状態が悪化している可能性のあることが報告された。特に男性においてその関連が強いという。米カリフォルニア大学デービス校のKristen George氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に4月3日掲載された。  中高年者では高血圧を有することが、アルツハイマー病や認知症のリスクを示す頭部画像所見の多さと関連のあることが知られている。それに対して、中年期以前の高血圧と頭部画像所見との関連については知見が少ない。また、中年期以前に高血圧を発症した患者のうち女性患者は、女性ホルモンの保護作用によって脳の構造的な変化が男性よりも抑制される可能性がある。そこでGeorge氏らは、初期成人期の血圧と頭部画像所見との関連、およびその性差を検討した。

歯の本数だけでなく、しっかりかめることが重要

 残っている歯が少なく、食べ物をしっかりかめないことが、主観的健康観の低下と関連していることを示すデータが報告された。ただし、残っている歯が少なくても、食べ物をしっかりかめる状態になっていれば、主観的健康観は低下していないという。山形大学医学部歯科口腔・形成外科の石川恵生氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に12月5日掲載された。  主観的健康観(self-rated health;SRH)は、BMIや血液検査の値などとともに、生命予後のリスクと関連のある因子の一つとされている。これまでに、残っている歯の本数(残存歯数)が少ないほどSRHが低く、全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクが高いといったデータが報告されてきている。ただし、それらは主に高齢者を対象とする研究からのエビデンスであり、中年期成人の残存歯数とSRHの関連はよく分かっていない。また、残存歯数が少なくても、義歯などで適切に治療されていればSRHは低下せず、反対に残存歯数が多くても状態が悪ければSRHが低下する可能性が考えられるが、そのような視点での研究もほとんど行われていない。

閉経後HR+乳がんの術後アナストロゾール、10年vs.5年(AERAS)/JCO

 閉経後ホルモン受容体(HR)陽性乳がん患者に対する術後のアロマターゼ阻害薬の投与期間について、5年から10年に延長すると無病生存(DFS)率が改善することが、日本の多施設共同無作為化非盲検第III相試験(N-SAS BC 05/AERAS)で示された。岩瀬 拓士氏(日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院)らによる論文が、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年4月20日号に掲載された。

日本人救急医における不眠症・睡眠薬使用リスク

 救急医は、不眠症の有病率や睡眠薬の使用頻度が高いといわれている。救急医の睡眠薬使用に関するこれまで研究では、回答率の低さから、現状を十分に把握できていなかった。国際医療福祉大学の千葉 拓世氏らは、若手日本人救急医を対象に、不眠症の有病率および睡眠薬使用状況を調査し、不眠症や睡眠薬使用に関連する因子の評価を試みた。その結果、日本における若手救急医は慢性不眠症の有病率および睡眠薬の使用率が高く、慢性不眠症には長時間労働やストレスが、睡眠薬の使用には性別、婚姻状況、ストレスが関連していることが報告された。The Western Journal of Emergency Medicine誌2023年2月20日号の報告。

コロナに感染した医療従事者の3割は未診断―国立国際医療研究センター

 国立国際医療研究センターの職員を対象とする血清疫学調査の結果、2022年12月時点で4割近くの職員がこれまでに新型コロナウイルスに感染しており、その3割は未診断、すなわち感染に気付いていないことが明らかになった。同センター臨床研究センター疫学・予防研究部の溝上哲也氏らの研究によるもので、詳細は「Epidemiology and Infection」に3月8日掲載された。  国内の感染症治療の基幹病院である同センターは、COVID-19パンデミック発生以来、東京都新宿区の本院と千葉県市川市の国府台病院とで、職員の抗体陽性率を定期的に調査してきている。その調査には毎回、職員のほぼ80%が参加しており、悉皆性の高いデータを得られている。

妊娠中期のケトン体濃度が高いと産後うつリスクが高い

 妊娠中期の血清ケトン体濃度が、産後うつリスクの予測マーカーとなり得る可能性が報告された。北海道大学大学院医学院産婦人科の馬詰武氏、能代究氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrients」に2月2日掲載された。  国内の妊産婦の死亡原因のトップは自殺であり、その原因の一つとして、産後うつの影響が少なくないと考えられている。うつ病を含む精神・神経疾患のリスク因子として栄養状態が挙げられ、脂質をエネルギー源として利用する際に産生されるケトン体が中枢神経系に有益である可能性が、基礎研究から示されている。また、妊娠中には悪阻(つわり)の影響で低血糖傾向になりやすいが、ケトン体の一種である3-ヒドロキシ酪酸が低血糖に伴う神経細胞のアポトーシスを抑制するという報告がある。さらに、3-ヒドロキシ酪酸はアルツハイマー病やパーキンソン病の進行を抑制する可能性が報告されているほか、てんかんの治療法としては古くからケトン産生食(糖質制限食)による食事療法が行われている。

子どもの朝食欠食も糖尿病リスクにつながる可能性――足立区の中学生で調査

 朝食を食べない成人は2型糖尿病のリスクが高いことが報告されているが、同じことが子どもにも当てはまるかもしれない。その可能性を示唆するデータが報告された。東京都足立区内の中学校の生徒を対象とした研究で、朝食欠食の習慣がある子どもは、交絡因子を調整後も糖尿病前症に該当する割合が有意に高かったという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Endocrinology」に2月22日掲載された。  2型糖尿病は、あるとき突然発症する病気ではなく、血糖値が糖尿病の診断基準に至るほどではないものの基準値より高い状態、「糖尿病前症」(国内では糖尿病予備群とも呼ばれる)という段階を経てから発症する。

今後もマスクをする人は約4割/アイスタット

 2023年5月8日より新型コロナウイルス感染症の感染法上の位置付けが、2類から5類へ移行することで施策が大きく変わる。今後、一般市民は新型コロナウイルス感染症にどのように対応していくのか。マスクの着用は個人の自由になるが、はたしてどのように考えているのか。株式会社アイスタットは4月13日に「今後のマスク着用&コロナワクチン接種」に関するアンケートを行った。  アンケート調査は、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員20~59歳の有職者300人が対象。

統合失調症における睡眠依存性の記憶の定着~メタ解析

 睡眠障害と認知機能障害は、統合失調症でみられる持続的な症状である。これまでのエビデンスにより、統合失調症患者は健康対照者と比較し、睡眠依存性の記憶の定着が損なわれている可能性が示唆されている。トルコ・Dokuz Eylul UniversityのCemal Demirlek氏らは、統合失調症における睡眠依存性の記憶の定着に関するシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、健康成人においては睡眠が記憶の定着を改善するが、統合失調症患者では睡眠依存性の記憶の定着が不足していた。Schizophrenia Research誌2023年4月号の報告。

都市の夜間の人工光は蚊に刺される機会を増やす?

 蚊は夜間の街灯や照明などの人工光の影響を受けるが、それが良いことなのか悪いことなのかははっきりしないようだ。米オハイオ州立大学昆虫学分野のMegan Meuti氏らは、都市の人工光による害(光害)によってウエストナイルウイルスを媒介するイエカ属の亜種であるトビイロイエカの冬期の休眠が妨げられている可能性があるとする研究結果を、「Insects」1月10日号に発表した。  冬期に休眠する種類の蚊の休眠が妨げられることには、良い面がある。というのも、冬期に休眠しない蚊は十分な脂肪を蓄えることができず、生存期間が短くなる可能性があるからだ。しかし、その一方で悪い面もある。蚊が人間の血を吸う期間が秋頃まで延びる可能性があるからだ。

米国のCOVID-19後遺症患者の多くが医療にアクセスできていない

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後遺症患者の多くが、必要な医療を受けることができていない実情が米国から報告された。医療費の高さと、COVID-19後遺症を診ることのできる医師の予約を取れないことが主な理由だという。米アーバン・インスティテュート健康政策センターのMichael Karpman氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に4月10日掲載された。  COVID-19急性期以降に、さまざまな症状が遷延する「COVID-19後遺症(post-COVID-19 condition;PCC)」と呼ばれる状態になることが少なくない。Karpman氏は、「PCC患者の医療アクセスを改善するには、標準的な診断・治療法を確立した上で、患者に対して行った治療が必要なものであることを、保険会社に認められるようにしていかなければならない。現状の問題の一部は、標準的な診断・治療法が確立していないことに起因している。そのため、必要性の低い検査などが行われることがあり、保険会社が医療費の一部の支払いを拒否することがある」と、この問題の背景を解説している。

クルーズ船に乗船後、脳卒中を発症した作業療法士の女性―AHAニュース

 米国アリゾナ州に住む女性、Shelley Davisさんは、夫のGregさんや13歳と15歳になる娘たちとともに、1週間分の着替えや水着、日焼け止めなどの荷造りをしていた。彼女たち一家は1週間のクルーズ船の旅を目前に控えていた。  フロリダ州の港町に移動し、船に乗る日の朝は出港までの間、一家で日差しの中を散策した。やがて時間になり、クルーズ船ターミナル行きのバスに乗ろうとした時、Shelleyさんは頭痛を感じた。ターミナルに到着して乗船後に彼女は、横になるために自分たちの部屋へ直行した。夫のGregさんは、娘たちと船内を一巡。そして、「部屋に戻った時、妻はとても具合が悪そうにしていた」と話す。

乳がんに関わる質問にChatGPTは正確にアドバイスできるのか

 話題の対話型人工知能(AI)サービス「チャットGPT(ChatGPT)」は、乳がんに関わる質問の多くに信頼性のある回答を示せるが、まだ医師の代わりになる段階には至っていないことが、新たな研究で示された。米メリーランド大学放射線診断学・核医学助教のPaul Yi氏らが実施した研究で、詳細は「Radiology」に4月4日掲載された。  Yi氏らは、ChatGPTの最大の弱点として、ChatGPTから得られる情報が必ずしも信頼できるものではないこと、あるいはごく限られた部分の情報であることを挙げている。また、それを理由に、少なくとも現時点では、健康・医療に関する質問は人間の医師に対してすべきだとの見解を示している。

尿酸値の低さが腎機能の急速な低下リスクと関連――日本人の健診データの解析

 尿酸値が基準範囲内であっても低値の場合は、腎機能が急速に低下するリスクが高いという関連を示すデータが報告された。ただし、高齢者ではこの関連が見られないという。帝京大学ちば総合医療センター腎臓内科の寺脇博之氏らの研究によるもので、詳細は「Clinical and Experimental Nephrology」に2月11日掲載された。  尿酸値が高すぎる状態「高尿酸血症」は、痛風だけでなく腎機能低下のリスクとなる。しかし、それとは反対に尿酸値が低いことの腎機能への影響はよく分かっていない。尿酸には強力な抗酸化作用があるため、理論的には、尿酸値が低いことも腎機能低下リスクとなる可能性も考えられるが、そのような視点での研究報告は少ない。そこで寺脇氏らは、健診受診者のビッグデータを用いてこの点に関する検討を行った。

喘息診断で注目、タイプ2炎症バイオマーカーの手引き発刊/日本呼吸器学会

 タイプ2炎症は、主に2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)や2型自然リンパ球(ILC2)が産生するIL-4、IL-5、IL-13などの2型サイトカインが作用する炎症である。気道・肺疾患と密接な関係にあり、診断や治療に直結する。とくに、生物学的製剤の治療選択や効果予測に重要な役割を果たすことから、近年注目を集めている。そのような背景から、「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」が2023年4月3日に発刊された。第63回日本呼吸器学会学術講演会において、本書の編集委員長を務めた松永 和人氏(山口大学大学院医学系研究科呼吸器・感染症内科学講座 教授)が「タイプ2炎症バイオマーカーが切り拓く未来」と題し、主に「喘息の診断と管理効率の向上」「疾患修飾による喘息寛解の展望」について、解説した。

日本の父親・母親の産後うつ病リスクは?

 産後うつ病は、親に悪影響を及ぼすだけでなく、子供の認知機能、社会感情、行動発達などの障害につながる可能性がある。長崎大学の山川 裕子氏らは、出産後1年間の母親および父親の産後うつ病に関連する因子を調査した。その結果、父親と母親の双方にとって、ストレス対処スキルが産後1年間の産後うつ病に影響を及ぼす重要な因子であることが確認された。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年3月13日号の報告。

スタチンでアジア人乳がん患者のがん死亡リスク低下

 スタチン製剤を服用しているアジア人の乳がん患者では、スタチンを服用していない乳がん患者と比べて、がん関連の死亡リスクが有意に低かったことを、台湾・国立成功大学のWei-Ting Chang氏らが明らかにした。なお、心血管疾患による死亡リスクには有意差はなかった。JAMA Network Open誌4月21日号掲載の報告。  スタチンは化学療法と併用することで、がんの進行や微小転移を抑制することが報告されていて、乳がんの再発リスクを低減させる可能性が示唆されている。しかし、欧米の乳がん患者とは異なり、アジアの乳がん患者は診断時の年齢が比較的若く、ほとんどが心血管リスク因子を有していないため、スタチンの服用によって生存率が改善するかどうかは不明である。そこで研究グループは、アジア人の乳がん患者において、スタチン使用とがんおよび心血管疾患による死亡リスクとの関連を後方視的に調査した。

Life's Essential 8を遵守している人は長寿の可能性―AHAニュース

 心血管の健康に関係のある一連の目標を守っている人は、そうでない人よりも寿命が約9年長い可能性のあることを示唆する報告が、「Circulation」に4月10日掲載された。  この研究では、米国心臓協会(AHA)が開発した「Life's Essential 8」と呼ばれる健康スコアと余命との関連が検討された。Life's Essential 8には、タバコを吸わないこと、身体的に活動的であること、健康的な食事をすること、適切な睡眠を取ること、体重を管理すること、および、血圧・血糖値・コレステロールの良好なコントロールが、推奨事項として掲げられている。以前の研究では、これらの推奨事項を遵守しており評価スコアが高い人は、スコアが低い人よりも、人生の中で慢性疾患に罹患していない期間が長いことが示されていた。そして今回の研究によって、「ライフスタイルの変更が、長生きにつながるというエビデンスが示された」と、論文の上席著者で米テュレーン大学肥満研究センター長のLu Qi氏は語っている。

メンソールフレーバーの電子タバコ、肺にはより有害

 電子タバコでのメンソールフレーバーのリキッドの使用は、それ以外のリキッドを使用した場合よりも多くの微小粒子を肺に届け、肺機能にダメージを与える可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。米ピッツバーグ大学医学部呼吸器・アレルギー・クリティカル医学分野のKambez Benam氏らによる研究で、「Respiratory Research」に4月11日掲載された。  電子タバコの蒸気が、肺の炎症や酸化ストレス、DNA損傷、喘息を誘発する気道過敏性を引き起こす可能性があることは、多くの研究で示唆されている。大麻の精神活性成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)を含む電子タバコ用リキッドにはビタミンEアセテートが添加されていることが多いが、Benam氏らは過去の研究で、ビタミンEアセテートの添加により、より多くの有害な微小粒子が肺の抹消気道、気管や気管支壁の内層にとどまる可能性のあることを報告している。

CAR-T細胞療法はがん患者のQOLを向上させる

 CAR(キメラ抗原受容体)-T細胞療法と呼ばれる免疫系を強化する治療法は、特定のがん患者を長生きさせるだけでなく、QOL(生活の質)も高めることが、新たな研究で明らかにされた。米マサチューセッツ総合病院(MGH)の腫瘍学者Patrick Connor Johnson氏らが実施したこの研究の詳細は、「Blood Advances」に3月20日掲載された。  CAR-T細胞療法は、患者自身の血液から免疫細胞のT細胞を取り出し、がんを標的とするように遺伝子を改変した後に、再び患者に戻す治療法である。この治療法の対象となるのは、標準的な治療が奏効しない難治性の白血病やリンパ腫などの血液がんである。CAR-T細胞療法は、血液がん患者の治療に革命を起こした。進行した血液がん患者でも、この治療法によりがん細胞が一掃され、何年間もがんが再発することなく生存している人もいるくらいだ。その一方で、治療後の患者のQOLについての研究報告は限られている。