医療一般|page:92

治療抵抗性高血圧の有病率は意外に高い

 高血圧患者の10人に1人近くが見かけ上の治療抵抗性高血圧(apparent resistant hypertension;aRH)の基準を満たすが、aRHに対する治療は医療提供者により大きく異なることが、新たな研究で明らかにされた。米シダーズ・サイナイ医療センター、シュミット心臓研究所のJoseph Ebinger氏らによる研究で、「Hypertension」に6月26日掲載された。  Ebinger氏らは、3つの大規模なヘルスケアシステムの電子健康記録(EHR)を用いて、登録患者242万468人のデータを解析した。その結果、これらの患者の55.6%(134万3,489人)が高血圧の基準を満たし、そのうちの8.5%(11万3,992人)はaRHの基準も満たすことが明らかになった。また、これらのaRH患者は合併症を有していることが多く、特に、糖尿病や心不全の有病率が高いことも示された。さらに、血圧がコントロールされているaRH患者では、コントロール不良のaRH患者に比べて、β遮断薬、利尿薬、硝酸薬が処方されることが多く、特にミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の処方は、前者で35.4%、後者で10.4%と大きな差があることも判明した。

徒歩で生活しやすいデザインの地域は人々の交流を高める

 徒歩で生活しやすい地域に住んでいる人は、移動に車が必要な地域に住んでいる人に比べて、近隣住民との交流が多く、コミュニティー意識も強いことが、新たな研究で明らかになった。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)Herbert Wertheim School of Public Health and Human Longevity ScienceのJames F. Sallis氏らによるこの研究の詳細は、「Health & Place」7月号に掲載された。  米国の公衆衛生政策を指揮する医務総監のVivek Murthy氏は2023年5月に、「孤独や孤立は高齢者での心疾患リスクを29%、脳卒中リスクを32%、認知症リスクを50%、早期死亡リスクに至っては60%以上増加させる要因となる」と述べた。そして、この公衆衛生危機への対応として、人と人とのつながりを促進する環境デザインにより社会基盤を強化することを推奨している。

妊婦の親子関係の不良は妊娠中高血糖の予測因子

 両親との親子関係にあまり満足していない妊婦は、妊娠中に高血糖を来すリスクが高いというデータが報告された。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Pregnancy and Childbirth」に4月4日掲載された。藤原氏は、「妊婦健診の際に親子関係を尋ねることが、妊娠中高血糖のリスク評価に役立つのではないか」と述べている。  妊娠中に血糖値の高い状態が続いていると、難産や巨大児出産などのリスクが高くなるため、妊娠中の積極的な血糖管理を要する。また、妊娠以前から糖代謝異常のリスク因子を有する女性は、妊娠糖尿病などの妊娠中高血糖(HIP)のリスクが高く、その糖代謝異常のリスク因子の一つとして、子ども期の逆境体験(ACE)が挙げられる。そのためACEのある女性は、HIPになりやすい可能性がある。とはいえ、妊婦健診などにおいて全妊婦のACEの有無を把握することは現実的でない。

スタチン、ゾコーバなど、重大な副作用追加で添付文書改訂/厚労省

 厚生労働省は7月20日、HMG-CoA還元酵素阻害薬を含有する医薬品(スタチン)、エンシトレルビルなどの添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。  国内副作用症例において、スタチンと重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が認められた。また、公表文献において、スタチンの再投与で重症筋無力症の症状が再発した症例、スタチンの中止で重症筋無力症の症状が消失した症例など、スタチンと重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が報告されていることを踏まえ、改訂が適切と判断された。

双極性障害女性患者における抗精神病薬使用後の乳がんリスク

 統合失調症女性患者における抗精神病薬使用と乳がんリスクとの関連は、さまざまな疫学データより報告されている。しかし、双極性障害女性患者を対象とした研究は、これまであまり行われていなかった。香港大学のRachel Yui Ki Chu氏らは、双極性障害女性患者における抗精神病薬使用と乳がんリスクとの関連を調査し、統合失調症との比較を行った。その結果、統合失調症女性患者では、第1世代抗精神病薬と乳がんリスクとの関連が認められ、双極性障害女性患者では、第1世代および第2世代抗精神病薬のいずれにおいても、乳がんリスクとの関連が認められた。Psychiatry Research誌8月号の報告。

サプリメント摂取の最大目的は「健康増進」/アイスタット

 サプリメントは私たちの生活に欠かせないアイテムとなっている。ちょっとした栄養補給や健康の増進、体質改善などに摂取されているが、一般的なサプリメントの摂取について、摂取する目的やその理由、効果や安全面などで何か傾向はあるのであろうか。株式会社アイスタットは6月22日に「サプリメント」に関するアンケートを行った。  アンケート調査は、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の会員20~69歳の300人が対象。

TTP診療ガイド2023改訂のポイント~Minds方式の診療ガイドラインを視野に

 「血液凝固異常症等に関する研究班」TTPグループの専門家によるコンセンサスとして2017年に作成され、2020年に部分改訂された、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の診療ガイドライン、『血栓性血小板減少性紫斑病診療ガイド2023』が7月に公開された。2023年版では、Minds方式の診療ガイドラインを視野に、リツキシマブに対してclinical question(CQ)が設定され、エビデンスや推奨が掲載された。 ・リツキシマブの推奨内容の追加・変更とCQの掲載 ・カプラシズマブが後天性TTP治療の第一選択に ・抗血小板薬、FFP輸注に関する記述を追加 ・FrenchスコアとPLASMICスコアに関する記述を追加 ・増悪因子に関する記述を追加

男性ではY染色体の喪失で膀胱がんの増殖が加速?

 男性では、加齢に伴い毛髪や筋肉の張りが失われ、視力や聴力が低下していくだけでなく、男性を生物学的に男性たらしめているY染色体そのものも徐々に失われていく。こうした中、米シダーズ・サイナイ医療センターのDan Theodorescu氏らが、加齢に伴うY染色体の喪失はがん細胞が免疫の攻撃を回避するのに役立ち、その結果、Y染色体を喪失した男性はがんに対して脆弱な状態になり得ることを、「Nature」に6月21日報告した。研究グループは、「Y染色体の喪失とがんに対する免疫システムの反応との関連を示した初めての研究」と説明している。

孤立や孤独が寿命を縮める可能性

 孤立や孤独が寿命にかかわる可能性のあることを示唆する研究結果が報告された。研究参加者数の合計が220万人以上に及ぶ世界各国から報告された90件の研究データを統合した解析から、社会的に孤立している、または孤独を感じている人は、早期死亡のリスクが高いことが示された。ハルビン医科大学(中国)のMaoqing Wang氏、Yashuang Zhao氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Human Behaviour」に6月19日掲載された。

日本人統合失調症患者の再入院予防に対する長時間作用型注射剤のベネフィット

 統合失調症患者に対する長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬のベネフィットに関するリアルワールドでのエビデンスは、とくに日本の就労人口において限られている。ヤンセンファーマのMami Kasahara-Kiritani氏らは、雇用されている患者を含む統合失調症患者の再入院予防に対するLAI抗精神病薬の影響を評価した。その結果、日本人統合失調症患者の入院予防に対するLAI抗精神病薬のベネフィットが示唆された。LAI抗精神病薬による治療を受けた患者は、フォローアップ期間中の入院期間および再入院リスクが有意に低下することが明らかとなった。Asian Journal of Psychiatry誌オンライン版2023年6月7日号の報告。  日本医療データセンター(JMDS)の健康保険レセプトデータベースを用いて、レトロスペクティブ観察的集団ベース研究を実施した。対象は、2012年4月~2019年12月にLAI抗精神病薬を処方された就労者または被扶養者の統合失調症患者。LAI処方日をインデックス日とし、ベースライン時の(インデックス日の365日前)1年間のフォローアップ期間中におけるすべての原因による入院、精神医学的入院、統合失調症関連の入院を評価した。

ウイルス感染時の発熱による重症化抑制、腸内細菌叢が関係か/東大ほか

 これまで、ウイルスに感染した場合に外気温や体温が重症度に及ぼす影響は明らかになっていない。そこで、東京大学医科学研究所の一戸 猛志准教授らの研究グループは、さまざまな温度条件で飼育したマウスに対し、ウイルスを感染させた場合の重症度を解析した。その結果、体温の上昇によりウイルスに対する抵抗性が高まり、血中胆汁酸レベルが上昇した。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の血液についても解析した結果、軽症患者は中等症患者と比較して血中胆汁酸レベルが高かった。これらのことから、発熱により腸内細菌叢が活性化し、2次胆汁酸産生を介してウイルス感染症の重症化が予防されることが示唆された。本研究結果は、Nature Communications誌2023年6月30日号に掲載された。

GLP-1RAの上乗せが糖尿病患者のMACE、心不全リスクの低下と関連

 糖尿病患者に対する心血管疾患一次予防目的での血糖降下薬の上乗せにおいて、DPP4阻害薬(DPP4i)に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の優位性を示唆するデータが報告された。米退役軍人省テネシーバレー・ヘルスケアシステム高齢者研究教育臨床センターのTadarro L. Richardson Jr.氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に5月9日掲載された。主要心血管イベント(MACE)と心不全の発症率に有意差が認められたという。

ガスコンロの使用で血液がんリスクを高める化学物質が排出

 ガスコンロの使用によって室内の空気中のベンゼン濃度が上昇する可能性のあることが、米スタンフォード大学ドア・サステナビリティ学部のRobert Jackson氏らの研究で示された。ベンゼンは、白血病などの血液がんのリスク上昇に関連することが指摘されている化学物質だ。この研究からは、ガスコンロから排出されるベンゼンが家中に広がり、何時間も漂い続ける可能性も示唆された。この研究結果は、「Environmental Science & Technology」に6月15日掲載された。

手術中のオピオイド投与削減は患者転帰に悪影響を及ぼす

 オピオイド乱用の問題が深刻化している米国では、多くの医師が、たとえ手術中であってもオピオイド系鎮痛薬(以下、オピオイド)の投与を控えている。こうした中、このアプローチに疑問を投げかける研究結果が報告された。手術中のオピオイド投与量が多いほど、術後は短期的にも長期的にも疼痛が軽く、オピオイドの累積投与量も少なくて済むことが明らかになったのだ。米マサチューセッツ総合病院(MGH)のLaura Santa Cruz Mercado氏らによるこの研究結果は、「JAMA Surgery」に6月14日掲載された。

乾癬患者の健康関連QOLを評価するPROMsでの健康概念は5つのドメインに分類可能

 乾癬患者の健康関連の生活の質(QOL)を評価する既存の患者報告アウトカム尺度(PROMs)のシステマティックレビューを行ったところ、全体に通用する健康に関する概念(以下、健康概念)として5つのドメインに分類できたとする研究結果が、「JAAD International」に1月10日掲載された。  米クリーブランドクリニックのHaya A. Homsi氏らは、システマティックレビューにより乾癬患者の健康関連QOLを評価するためのPROMsを特定し、その内容や使われている表現(ポジティブ/ネガティブ/中立的)の評価を行った。

出産から5年未満の乳がん、術前化療の効果乏しく再発リスク増/日本乳癌学会

 閉経前乳がん患者を対象に、最終出産からの経過年数と術前化学療法の感受性を検討した結果、出産から5年未満に診断された患者では術前化学療法の感受性が乏しく、再発率が高かったことを、岡山大学の突沖 貴宏氏が第31回日本乳癌学会学術総会で発表した。  妊娠・出産から数年以内に乳がんと診断された妊娠関連乳がんの特徴として、腫瘍径が大きい、リンパ節転移やリンパ管侵襲が多い、HR-の割合が高い、病勢が進行した症例が多い、早期例でも遠隔再発リスクが高い、などが報告されている。しかし、妊娠関連乳がんにおける薬物療法の感受性を検討したデータは乏しい。そこで研究グループは、それらの再発率が高い理由として、最終出産からの経過年数が少ない症例は化学療法の効果が乏しいという仮説を立て、最終出産からの経過年数と術前化学療法の感受性の検討を行った。

認知症に対するゲーム療法の有効性~メタ解析

 アルツハイマー病は、重度の神経変性疾患であり、直接的および間接的に大きな経済的負担をもたらす。しかし、効果的な薬物療法の選択肢はいまだ限られている。近年、認知症患者に対するゲーム療法が注目を集め、さまざまな研究が行われている。中国・北京大学のJiashuai Li氏らは、既存の研究データを統合し、認知症患者に対するゲーム療法の効果を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、ゲーム療法は、認知症患者の認知機能および抑うつ症状の改善が期待できる介入であることが示唆された。Worldviews on Evidence-Based Nursing誌オンライン版2023年6月12日号の報告。  認知機能、QOL、抑うつ症状をアウトカム指標とし、認知症患者に対するゲーム療法の影響を評価したランダム化臨床試験および準実験的研究を分析対象に含めた。トレーニングを受けた2人の独立した研究者により、研究のスクリーニング、品質評価、データ抽出を実施した。統計分析には、Review Manager(Revman)5.3およびSTATA16.0ソフトウエアを用いた。

1日の後半の断食で血糖コントロール改善?

 近年、断続的断食のメリットを示唆する報告が増え、それを実践する人も増えているが、1日の中で早めの時間帯に大半の食事を済ますことが、2型糖尿病の予防につながる可能性が新たに報告された。米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスのJoanne Bruno氏らの研究によるもので、米国内分泌学会(ENDO2023、6月15~18日、シカゴ)で発表された。  この研究には、肥満で前糖尿病状態の10人が参加した。前糖尿病とは、血糖値が基準値より高いものの、糖尿病と診断されるほどではない状態を指し、肥満とともに2型糖尿病のリスク因子とされている。

腸内細菌叢の変化は前臨床期アルツハイマー病のサイン?

 脳内にアミロイドβ(Aβ)とタウの2種類のタンパク質が異常に蓄積しているが、認知症の症状はない前臨床期アルツハイマー病の状態にある人では、そのような状態にはない人と比べて腸内細菌叢に違いのあることが、米セントルイス・ワシントン大学神経学教授のBeau Ances氏らの研究で示された。認知症のリスクが高い人を見つけ出す方法や、認知症高リスク者に対する治療法の開発につながる可能性がある研究結果として期待が寄せられている。研究の詳細は、「Science Translational Medicine」6月14日号に掲載された。

適度な飲酒で心血管リスクが低減する理由とは?

 適度な飲酒が心臓の健康に良いことは多くの研究で示唆されているが、その理由については明らかになっていない。こうした中、飲酒には脳をリラックスさせる効果があり、それが主要心血管イベント(MACE)発生リスクの低下をもたらしている可能性が、新たな研究で示された。米マサチューセッツ総合病院(MGH)心血管イメージング研究センターのAhmed Tawakol氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology」6月号に掲載された。  適度な飲酒とは、一般に、男性では1日2杯以下、女性では1日1杯以下の飲酒とされている〔注:日本での適度な飲酒は純アルコール20g(ビール500mL相当)程度で、女性ではその半分程度にとどめることが推奨されている〕。ただし、このような節度ある飲酒は心臓の健康に良い可能性があるとはいえ、健康増進のために飲酒が勧められることはない。なぜなら、アルコールには乱用や依存のリスクがあるほか、がん発症リスクの増加など健康に悪影響を及ぼす可能性もあるからだ。Tawakol氏は、「飲酒量に安全なレベルなどない」と強調する。