医療一般|page:225

小児に対する向精神薬の使用とリスク

 メンタルヘルスの問題と関連する自殺企図は、成人および小児において増加している。メンタルヘルスに問題を抱える患者が増加しているため、成人だけでなく小児においても向精神薬の使用が増加している。しかし、小児に対する向精神薬の使用は、潜在的な有害リスクと関連している可能性がある。米国・Le Bonheur Children's HospitalのKiley Hunter氏らは、米国中毒管理センター協会(AAPCC)の国立中毒データシステム(NPDS)に報告されたデータを用いて、小児に対する向精神薬使用の傾向とアウトカムについて、調査を行った。Clinical Toxicology誌オンライン版2021年7月1日号の報告。

重症COVID-19入院患者への新たな治療薬検証する臨床試験開始へ/WHO

 WHOは、8月11日付で発表したプレスリリースにおいて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した重症患者に対し、マラリアやがん治療などに使われている既存薬3種の治療効果を検証する臨床試験(Solidarity PLUS trial)を開始することを明らかにした。臨床試験は52ヵ国600超の病院から数千人規模の入院患者を登録し、実施される見通し。  WHOは、既存候補薬のCOVID-19入院患者への有効性を検証するため、オープンラベルのランダム化比較試験(Solidarity trial)を2020年3月から実施。単一のプロトコルを使用して同時に複数の治療法を評価するもので、試験の過程を通じて効果のない薬剤については評価を打ち切る一方、新たな候補薬を逐次追加できるデザインだ。これまでに、レムデシビル、ヒドロキシクロロキン、ロピナビル、インターフェロンβ-1aの4剤について評価が行われ、いずれも有効性が確認されず、すでに試験が打ち切られている。

周産期うつ病に対する心理学的介入の有効性~メタ解析

 周産期うつ病は、心身に重大な影響を及ぼすメンタルヘルスの問題であり、非常にまん延している疾患である。周産期うつ病の治療において、効果的な心理学的介入に関するエビデンスは増加しているものの、これらの調査結果は、包括的に評価されていない。ポルトガル・コインブラ大学のMariana Branquinho氏らは、周産期うつ病に対する心理学的介入の有効性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2021年8月1日号の報告。

がん悪液質は非小細胞肺がんIO-Chemo治療の予後不良因子か

 がん悪液質は免疫チェックポイント阻害薬の単剤療法の予後不良因子であることが示されているが、化学免疫療法に関する、その関係の検討は少ない。京都府立医科大学の森本健司氏らは後ろ向き解析により、非小細胞肺がん(NSCLC)において、がん悪液質が化学免疫療法予後の不良因子である可能性を明らかにした。  わが国の12施設で化学免疫療法を受けたNSCLC患者を対象に医療記録を後ろ向きに解析した。がん悪液質の定義は、化学免疫療法開始前6ヵ月以内の、5%以上の全体重減少、BMI20 kg/m2の対象者では2%を超える全体重減少とした。

薬物乱用頭痛を伴う難治性慢性片頭痛に対するエレヌマブ

 薬物乱用頭痛を伴う難治性慢性片頭痛に対するエレヌマブの有効性および安全性について、イタリア・ボローニャ大学のUmberto Pensato氏らは、検討を行った。Neurological Sciences誌オンライン版2021年7月5日号の報告。  薬物乱用頭痛を伴う難治性慢性片頭痛に対するエレヌマブの有効性および安全性を評価するため、実生活環境下におけるプロスペクティブ多施設共同試験を実施した。対象は、3クラス以上の薬理学的治療に加え、onabotulinumtoxinAによる治療が奏効しなかった慢性片頭痛患者。

統合失調症の認知機能障害とストレスや免疫系との関連~機械学習に基づく分析

 統合失調症の認知機能障害には、心理的ストレスと免疫系が関連しているといわれている。中国・電子科技大学のQi Zhang氏らは、機械学習アルゴリズムを用いて、慢性期統合失調症の認知機能障害とストレス免疫ネットワークパターンとの関連を調査した。Neuroscience Letters誌オンライン版2021年6月24日号の報告。  慢性期統合失調症患者37例および年齢、性別がマッチした健康対照者35例を対象に、認知機能障害とストレス免疫ネットワークパターンとの関連を明らかにするため、機械学習アルゴリズムを用いて分析を行った。統合失調症患者の心理的ストレスと免疫系に対する機能不全を反映する生化学的指標として、コルチゾール、腫瘍壊死因子(TNF)-α、インターロイキン(IL)-2、IL-6、IL-8を選択した。

HER2+乳がん2次治療、T-DXdがT-DM1に対しPFS改善/AZ・第一三共

 アストラゼネカと第一三共は2021年8月9日、HER2陽性の再発・転移を有する乳がん患者の2次治療における、トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ、以下T-DXd)の第III相試験(DESTINY-Breast03)の中間解析の結果、主要評価項目を達成したことを発表した。  DESTINY-Breast05試験は、トラスツズマブとタキサンによる治療歴のあるHER2陽性の切除不能および/または転移を有する乳がん患者を対象に、T-DXdとトラスツズマブ エムタンシン(商品名:カドサイラ、以下T-DM1)の有効性と安全性を直接比較する国際無作為化非盲検第III相試験。

COVID-19に対する薬物治療の考え方 第8版、中和抗体薬を追加/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:舘田一博氏[東邦大学医学部教授])は、8月6日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第8版」をまとめ、同会のホームページで公開した。  今回の改訂では、前回7版からの知見の追加のほか、先日承認された中和抗体薬の項目が追加された。また、デルタ株の猛威に対し「一般市民の皆様へ ~かからないために、かかった時のために~」を日本環境感染学会と連名で公開した。

コロナワクチン接種後の心膜炎、高齢者でも発症か?

 新型コロナワクチンの接種が世界各国で進むなか、副反応症状として心筋炎などの心臓関連の病態も明らかになりつつある。米国・Providence Regional Medical Center EverettのGeorge A. Diaz氏らはワクチン接種後の心筋炎や心膜炎の症例を識別するため、ワクチン接種者のカルテを検証した。その結果、心筋炎は若い患者で主に2回目接種後早期に発症することが明らかになった。一方の心膜炎は初回接種後20日(中央値)または2回目接種後に影響を及ぼし、とくに高齢者で注意が必要なことが示唆された。

うつ病に対する抗うつ薬の治療パターンとアウトカム

 米国において、うつ病は重大な問題となっている。うつ病に対するケアは、非常に多様であり、文書化された報告も限られている。米国・スタンフォード大学のMaurice M. Ohayon氏らは、米国の一般集団におけるうつ病の有病率と治療パターンについて調査するため、縦断的研究を実施した。CNS Spectrums誌2021年4月号の報告。  2002~15年の間に2回のWeb調査を実施した。1回目の調査(W1)は、米国8州の18歳以上の一般集団1万2,218人を対象に実施した。2回目の調査(W2)は、W1で3年後の再調査に同意した1万931人を対象に実施した。W1およびW2に回答した1万931人を分析対象とした。うつ病の診断は、DSM-V基準に従った。

ブレークスルー感染も、ワクチンが変異株の重症化を抑制か/CDC

 新型コロナウイルスの変異株であるデルタ株は感染性が高く、このほど米国でワクチン接種完了者によるブレークスルー感染が報告された。しかし、この報告からワクチンの効果がないと言えるのだろうかー。  CDC COVID-19 Response TeamのCatherine M. Brown氏らによると、マサチューセッツ州バーンスタブル群で発生した大規模クラスターの74%はファイザー製ワクチン接種完了者であったことが明らかになった。ただし、入院患者の割合は1.2%と、ワクチンが普及する前の既存株による重症化率と比較すると少ない傾向であることも示された。米国疾病予防管理センター(CDC)のMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)8月6日号での報告。

認知症に対するロボットケア介入の有効性~メタ解析

 認知症ケアへの利用に期待が高まるロボット介入。認知症に対するロボット介入の研究は進んでいるものの、その効果はどの程度なのだろうか。台湾・高雄医学大学のIta Daryanti Saragih氏らは、認知症患者におけるロボット介入の有効性を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Clinical Nursing誌オンライン版2021年5月26日号の報告。  各種データベース(Academic Search Complete、CINAHL、Cochrane Library、MEDLINE、PubMed、SocINDEX、UpToDate[OVID]、Web of Science)よりシステマティックに検索した。適格基準は、認知症患者、ランダム化比較試験、英語での出版とした。対象研究の方法論的質を評価するため、PEDroスケールを用いた。ロボット介入のプールされた効果を算出するため、固定効果モデルを用いて、メタ解析を実施した。統計分析には、STATA 16.0を用いた。PRISMAガイドラインに従って結果報告を行った。

ペムブロリズマブ併用、PD-L1陽性進行TN乳がんでOS改善/MSD

 MSDは2021年7月27日、転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)患者を対象として抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)と化学療法との併用療法を評価する第III相KEYNOTE-355試験において、全生存期間(OS)の改善が認められたことを発表した。  同試験の最終解析の結果、PD-L1陽性(CPS≧10)のmTNBC患者に対する一次治療として、ペムブロリズマブと化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチン)との併用療法は、化学療法単独と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるOSの改善が認められた。なお、米国ではFDAが承認した検査で腫瘍にPD-L1の発現が認められる(CPS≧10)切除不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ乳がんを適応症として、化学療法との併用療法が承認されている。今回のOSの結果は今後主要な学会で発表され、規制当局に提出される予定。

第2世代抗精神病薬による体重増加と治療中断

 第2世代抗精神病薬(SGA)で治療を行った統合失調症および双極I型障害患者における臨床的に有意な体重増加や治療中断は、死亡リスクに影響を及ぼす可能性のある重大な問題である。米国・AlkermesのMichael J. Doane氏らは、第2世代抗精神病薬による体重増加と治療中断への影響について評価を行った。CNS Spectrums誌2021年4月号の報告。  中~高度の体重増加リスクを有する経口SGAで治療を開始した患者(12ヵ月間、第1世代抗精神病薬での治療なし)を対象に、レセプトデータ(OM1 Data Cloud:2013年1月~2020年2月)を用いて、体重増加および治療中断に関するデータを収集した。臨床的に有意な体重増加は、ベースライン時の体重より7%以上増加と定義した。治療中断は、体重増加リスクの低いSGAや長時間作用型注射剤SGAへ切り替えた場合および30日以上SGAが使用されていなかった場合と定義した。臨床的に有意な体重増加と治療中断が認められた患者の割合およびこれらのアウトカムまでの期間中央値の算出には、記述統計を用いた。

コロナワクチン、1回目でアレルギー出現も2回目接種できる?

 海外では新型コロナウイルス感染症のmRNAワクチン接種後のアレルギー反応は2%も報告され、アナフィラキシーは1万人あたり最大2.5人に発生している。国内に目を向けると、厚生労働省の最新情報によれば、アナフィラキシー報告はファイザー製で289件(100万回接種あたり7件)、モデルナ製で1件(100万回接種あたり1.0件)と非常に稀ではあるが、初回投与後に反応があった場合に2回目の接種をどうするかは、まだまだ議論の余地がある。  今回、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのMatthew S Krantz氏らは、ファイザー製またモデルナ製ワクチンの初回接種時にアナフィラキシーまたは遅発性のアレルギー反応を経験した被接種者において、2回目接種の安全性を検証するため投与耐性について調査を行った。その結果、2回目の接種を受けた患者の20%で軽度の症状が報告されたが、2回目接種を受けたすべての患者が安全に一連のワクチン接種を完了したことを明らかにした。また、必要に応じて将来も新型コロナのmRNAワクチンを使用できることも示唆した。JAMA Network Open誌2021年7月26日号のリサーチレターでの報告。

地域によっては宿泊療養強化が効率的、中等症も医師判断で入院を/日医

 8月2日、政府から感染急増地域における入院の対象を重症者や重症化リスクの高い者に重点化し、それ以外は自宅療養を基本とする方針が示されたことについて、日本医師会の中川 俊男会長は8月4日の定例会見で、入院の判断は医師によって適切に行われるべきであり、宿泊療養を強化するほうが効率的な地域もあるとの見解を示した。  中等症II(呼吸不全あり:SpO2≦93%)はもちろん、中等症I(呼吸不全なし:93%<SpO2<96%)についても、現場の医師が重症化リスクが高いと判断した場合は、入院の対象とすべきとの考えを強調。8月3日に行われた政府との意見交換会においてこの見解を伝え、菅首相および田村厚生労働大臣からは、「重症化する患者さんに必要な医療が提供できることが大変重要であり、医師の判断の元に対応いただきたい」との明確な回答を得ているとした。

新たな薬物療法などを収載、「胃癌治療ガイドライン」が3年ぶりの改訂

 2021年7月下旬、「胃癌治療ガイドライン 第6版」が発行された。胃癌治療ガイドラインとしては前版(2017年11月発行、2018年1月改訂)から3年ぶりの改訂となる。前版で採用された構成(教科書形式による解説+CQ)を踏襲しつつ、Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017を参考とした作成方法を採用し、新たな薬剤や治療法の解説・推奨が追加された。  前版からの主な改訂点は以下のとおり。 1)外科・内視鏡治療、化学療法、緩和的治療に関するCQを前版の26項目から32項目に増加(新たに設けられたCQには免疫チェックポイント阻害薬、ゲノム検査に関するものが含まれる)。 2)日本胃癌学会と日本食道学会の実施した前向き研究結果に基づき、cT2-T4の食道胃接合部癌に対する手術アプローチとリンパ節郭清のアルゴリズムを示した。また食道胃接合部癌に関する3つのCQを作成し推奨を示した。 3)腹腔鏡下手術およびロボット支援下手術について、最新の研究状況を踏まえた推奨を示した。 4)切除不能進行・再発胃癌に対する化学療法のレジメンは、「推奨されるレジメン」、「条件付きで推奨されるレジメン」として、「治療法」の章のアルゴリズムに列記した。治療選択肢は増す一方、個々のレジメントを比較したエビデンスは十分でないため、優先順位は付けず、エビデンスレベルも記載しなかった。 5)免疫チェックポイント阻害薬の最新の研究成果をCQにて解説した。

固形燃料による家庭内大気汚染がうつ病に及ぼす影響

 家庭内大気汚染は、脳卒中や心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、肺がんなどを引き起こすことが知られており、世界では毎年数百万人が大気汚染に起因する疾患で早期に死亡している。この長期的な家庭内大気汚染がメンタルヘルスに及ぼす影響を検討したエビデンスは限られている。中国・華中科技大学のChenshuang Li氏らは、固形燃料の使用による長期的な家庭内大気汚染とうつ病との関連を調査するため、中国の代表的なフォローアップデータセットを用いて検討を行った。Environmental Pollution誌2021年8月15日号の報告。

ファイザー製とシノバック製ワクチン、中和抗体価に差はあるのか

 中国・シノバック製の新型コロナワクチンの有効性について、ファイザー製やモデルナ製のmRNAワクチンより低いとする報告が多いが、免疫原性に違いはあるのか。今回、香港の医療従事者を対象に、ファイザー製のBNT162b2ワクチンまたはシノバック製の不活化ウイルス(vero細胞)ワクチンを2回接種し中和抗体価を測定したところ、ファイザー製ワクチンのほうが大幅に上昇していた。WHO協力センターである中国・香港大学のWey Wen Lim氏らが、Lancet Microbe誌オンライン版2021年7月16日号で報告した。

子宮内膜がんに対するペムブロリズマブ+レンバチニブをFDAが承認/メルク・エーザイ

 メルクとエーザイは、2021年7月22日、治療ラインに関わらず全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応なMSI-Highを有さない進行子宮内膜がんに対する抗PD-1抗体ペムブロリズマブとチロシンキナーゼ阻害薬レンバチニブの併用療法の適応について、米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したと発表。  今回の承認は、第III相臨床試験 (KEYNOTE-775 試験/309 試験)の結果に基づいたもの。同試験において、対照薬の化学療法(治験医師選択によるドキソルビシンまたはパクリタキセル)と比較して、同併用療法は全生存期間(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.56~0.84、p=0.0001)、無増悪生存期間(HR:0.60、95%CI:0.50-0.72、p<0.0001)共に有意に延長した。さらに奏効率は30%で、対照群の15%に比べ有意な改善を示した。