日本発エビデンス|page:35

妊婦コロナ患者、中等症以上になる3つのリスク/成育医研・国際医研

 国立成育医療研究センター 感染症科の庄司 健介氏と国立国際医療研究センター 国際感染症センター・AMR臨床リファレンスセンターの都築 慎也氏らの研究チームは、デルタ株・オミクロン株流行期における妊婦の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院例の臨床的な特徴を分析した研究結果を発表した。  本研究は、国立国際医療研究センターが運営している国内最大のCOVID-19レジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」を利用したもの。

第2世代抗精神病薬のLAIによる日本人統合失調症入院患者の身体拘束リスクへの影響

 第2世代抗精神病薬(SGA)の長時間作用型注射剤(LAI)が、経口抗精神病薬と比較し、再発時の精神症状の軽減に有用であるかは、よくわかっていない。福島県立医科大学の堀越 翔氏らは、日本の単一医療施設における4年間のレトロスペクティブミラーイメージ観察研究を実施し、統合失調症入院患者への隔離・身体拘束といった制限的介入の頻度(時間)に対するSGA-LAIの有用性を検討した。その結果、SGA-LAI使用により制限的介入の頻度および措置入院回数の減少が認められ、著者らは、SGA-LAIは再発時の精神症状の軽減につながる可能性があることを報告した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2022年9月5日号の報告。

夜間ブルーライトカット眼鏡による片頭痛予防効果

 片頭痛は有病率の高い一次性頭痛であり、現役世代で発症しやすいことから、生産性の低下による社会的損失につながることが問題視されている。国際頭痛分類第3版(ICHD-3、ベータ版)の診断基準では、片頭痛の発作時には過敏、とくに光過敏が認められ、光が頭痛の誘発因子であることが示唆されている。獨協医科大学の辰元 宗人氏らは、片頭痛発作の悪化につながる内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)への光刺激を減少させる夜間のブルーライトカット(Blue Cut for Night:BCN)眼鏡を開発し、その効果を検証した。その結果、ipRGCへの光刺激を減少するBCN眼鏡の使用は、片頭痛発作の軽減に有用である可能性が示唆された。Internal Medicine誌オンライン版2022年8月20日号の報告。

1・2回目ファイザーワクチンなら、3回目はモデルナで感染予防効果増/東大

 ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンによる1次接種(1回目および2回目接種)完了者が、3回目のブースター接種としてファイザー製ワクチンを接種するよりも、モデルナ製ワクチンを接種するほうがその後の新型コロナウイルス感染率が低いことを、東京大学大学院医学系研究科の大野 幸子氏らが発表した。これまで1次接種とブースター接種のワクチンの組み合わせによって効果が異なる可能性が示唆されていたが、実際の感染予防効果の差は明確ではなかった。Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2022年9月18日号掲載の報告。

がん患者は血圧140/90未満でも心不全リスク増/東京大学ほか

 がん患者では、国内における正常域血圧の範囲内であっても心不全などの心血管疾患の発症リスクが上昇し、さらに血圧が高くなるほどそれらの発症リスクも高くなることを、東京大学の小室 一成氏、金子 英弘氏、佐賀大学の野出 孝一氏、香川大学の西山 成氏、滋賀医科大学の矢野 裕一朗氏らの研究グループが発表した。これまで、がん患者における高血圧と心血管疾患発症の関係や、どの程度の血圧値が疾患発症と関連するのか明らかではなかった。Journal of clinical oncology誌オンライン版2022年9月8日号掲載の報告。  本研究では、2005年1月~2020年4月までに健診・レセプトデータベースのJMDC Claims Databaseに登録され、乳がん、大腸・直腸がん、胃がんの既往を有する3万3,991例(年齢中央値53歳、34%が男性)を解析対象とした。血圧降下薬を服用中の患者や、心不全を含む心血管疾患の既往がある患者は除外された。主要アウトカムは、心不全の発症であった。

NSCLC術後補助療法 ペメトレキセド+シスプラチンはビノレルビン+シスプラチンと同様のOS(JIPANG)/ESMO2022

 完全切除を受けた非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後化学療法として、ペメトレキセド+シスプラチン療法とビノレルビン+シスプラチン療法の無再発生存期間(RFS)と全生存期間(OS)に関する最終結果を、国立がん研究センター東病院の葉清隆氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。  これは日本で実施された第III相試験であるJIPANG試験の最終解析報告であり、すでにRFSと忍容性については報告がなされている。

20歳未満のコロナ死亡例、基礎疾患やワクチン接種状況は?/国立感染症研究所

 国立感染症研究所は9月14日、新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例に関する積極的疫学調査(第一報)の結果を発表した。オミクロン株の感染拡大に伴い、小児の感染者数が増加し、重症例や死亡例発生も報告されている。厚生労働省および同研究所は、日本小児科学会、日本集中治療医学会、日本救急医学会とともに、急性期以降の死亡例も含めて、積極的疫学調査を実施した。その結果、基礎疾患の有無がほぼ同数であり、ワクチン接種対象年齢でも87%が未接種で、発症から死亡まで1週間未満が73%(中央値4日)を占めていることなどが明らかになった。  本結果は、2022年1月1日~8月31日に報告された小児等の死亡例に関する暫定的な報告となる。調査対象となったのは、急性期の死亡例、加えて、死因を新型コロナとは別原因とした症例で、発症からの日数は問わないとする急性期以降に死亡した症例の計41例。そのうち32例について8月31日までに実地調査を行うことができ、明らかな内因性死亡と考えられたのは29例であった。調査項目は、年齢、性別、基礎疾患、新型コロナワクチン接種歴、発症日、死亡日、症状/所見、死亡に至る経緯等となっている。小児の死亡例は、2022年1月から継続的に発生し、疫学週28週目(7月11~17日)から増加していた。

低BMIの蛋白尿リスクに“朝食抜き”が影響

 蛋白尿は心血管疾患と死亡率の重要な予測因子であり、いくつかの研究では、朝食を抜くことと蛋白尿の有病率との関連性が報告1)されている。また、朝食を抜くと肥満のリスクが高まることも明らかになっている。そこで、村津 淳氏(りんくう総合医療センター腎臓内科)らは蛋白尿が肥満の人でよく見られることに着目し、朝食を抜くことによる蛋白尿の有病率とBMIとの関連について調査を行った。その結果、蛋白尿は低BMIと関連性が見られ、低BMIの人の場合には、朝食を抜くことに注意する必要があることが示唆された。本研究結果はFront Endocrinol誌8月19日号に掲載された。 . 本研究者らは、正常な腎機能者における朝食抜きと蛋白尿の有病率との関連に対するBMIの臨床的影響を評価することを目的に、2008年4月~2018年12月までの期間に市中病院で健康診断を受け、腎疾患の既往がなく、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m2 以上であった2万6,888例 (男性:1万5,875例、女性:1万1,013例) を対象に横断研究を実施した。

BA.2.75「ケンタウロス」に対するコロナ治療薬の効果を比較/NEJM

 2022年6月よりインドを中心に感染拡大したオミクロン株BA.2.75(別名:ケンタウロス)は、日本を含め、米国、シンガポール、カナダ、英国、オーストラリアなど、少なくとも25ヵ国で確認されている。河岡 義裕氏、高下 恵美氏らによる東京大学、国立感染症研究所、国立国際医療研究センターが共同で行った研究において、BA.2.75に対し、4種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬についてin vitroでの有効性を検証したところ、一部の抗体薬とすべての抗ウイルス薬が有効性を維持していることが示された。本結果は、NEJM誌オンライン版2022年9月7日号のCORRESPONDENCEに掲載された。

薬剤誘発性QT延長とトルサードドポアント~日本のリアルワールドデータ分析

 新規作用機序を有する薬剤が次々と開発されているが、前臨床および承認前の臨床試験において、該当医薬品がQT延長やトルサードドポアント(TdP)を誘発するかどうかを把握することは困難である。東京慈恵会医科大学のMayu Uchikawa氏らは、日本のリアルワールドデータベースを用いて、各薬剤の薬剤誘発性QT延長/TdPを評価した。その結果、抗不整脈薬、カルシウム感知受容体アゴニスト、低分子標的薬、中枢神経系用薬が、QT延長やTdPと関連する薬剤群であることが示唆された。Drugs - Real World Outcomes誌オンライン版2022年8月22日号の報告。

新型コロナの重症度と予後を予測するバイオマーカーを発見/横浜市大、神奈川県立がんセンター

 血清ヘムオキシゲナーゼ-1(Heme oxygenase-1:HO-1)濃度が、COVID-19の重症度と生命予後予測の指標となることを、横浜市立大学大学院医学研究科の原 悠氏らと神奈川県立がんセンターの築地 淳氏らの研究グループが発見した。PLOS ONE誌オンライン版2022年8月24日掲載の報告。  HO-1は、M2マクロファージによって産生されるストレス誘導タンパク質で、可溶性CD163(sCD163)を産生する。sCD163は、COVID-19の生命予後の予測性能において有用性が期待されている。研究グループは、血清HO-1がCOVID-19患者の重症度と生命予後予測の両方を評価するバイオマーカーになりうると考え、M2マクロファージマーカーとされる血清HO-1とsCD163の有用性を検証した。  解析対象は、入院治療を必要としたCOVID-19患者64例(軽症11例、中等症38例、重症15例)であった。入院時に血清HO-1とsCD163の血清濃度を測定し、臨床パラメーターおよび治療経過との関連性を解析した。

日本人高齢者における片頭痛有病率~糸魚川翡翠研究

 新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、日本人高齢者の頭痛、片頭痛、慢性連日性頭痛、痛み止めの使い過ぎによる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)の有病率を調査するためアンケート調査を実施し、3ヵ月間の頭痛の有病率とその特徴を明らかにしようと試みた。結果を踏まえ著者らは、日本人高齢者の頭痛有病率は諸外国と比較し、決して高いものではないが、片頭痛による社会経済的損失は重大であり、疾患の理解、適切な治療や予防などが重要であると報告している。また、高齢者は、さまざまな併存疾患に関連する重度な頭痛といった特徴を持つ可能性が示唆された。Journal of Clinical Medicine誌2022年8月11日号掲載の報告。

HEPAフィルター空気清浄機により新型コロナウイルス除去に成功/東大

 東京大学医科学研究所と国立国際医療研究センターは、8月23日付のプレスリリースで、河岡 義裕氏らの研究により、HEPAフィルターを搭載した空気清浄機を用いることで、エアロゾル中に存在する感染性の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を経時的に除去できることが実証されたことを発表した。なお本結果は、mSphere誌オンライン版8月10日号に掲載された。  本研究は、東京大学と進和テックの共同で行われた。本研究に用いられたHEPA(high-efficiency particulate air)フィルターは、米国環境科学技術研究所の規格(IEST-RP-CC001)で、0.3μmの試験粒子を99.97%以上捕集可能なフィルターとして定義されている。HEPAフィルターのろ過効果を検証するため、コンプレッサーネブライザーでSARS-CoV-2エアロゾルを試験チャンバー内に噴霧して満たした後、HEPAフィルター搭載の空気清浄機を毎時12回換気の風量で5分間、10分間、35.5分間稼働させた。所定の稼働時間後、チャンバー内のSARS-CoV-2エアロゾルをエアサンプラーで採取し、プラークアッセイを用いて、サンプル中の感染性ウイルス力価を測定した。さらに、1価の銅化合物を主成分とし、活性酸素を発生させてフィルター面に付着したウイルスを不活性化することができる抗ウイルス剤のCufitec(R)を塗布したHEPAフィルターを用いた場合でも、同様の条件で感染性ウイルス力価を測定した。

日本人統合失調症患者に対するブレクスピプラゾールと他の非定型抗精神病薬による治療中止率の比較

 統合失調症の再発予防には、治療継続が不可欠である。横浜市立大学の菱本 明豊氏らは、日本の実臨床現場における統合失調症患者に対するブレクスピプラゾール治療(BRX群)と他の抗精神病薬治療(OAA群)による治療中止までの期間を比較するため、健康保険レセプトデータを用いて検討を行った。その結果、BRX群はOAA群よりも治療中止リスクが低いことが示唆されたことから、統合失調症患者の治療継続にブレクスピプラゾールが有用である可能性を報告した。Advances in Therapy誌オンライン版2022年7月29日号の報告。

統合失調症入院患者の口腔衛生状態とそれに関連する要因

 愛知学院大学の黒川 誉志哉氏らは、統合失調症入院患者における口腔衛生の状態と不良となる因子を明らかにするため、調査を行った。その結果、統合失調症患者は、口腔衛生状態が不良である傾向があり、バーゼル指数[BI]、男性、ADLの低さが口腔衛生不良と関連している可能性が示唆された。また、高齢になるほど虫歯リスクが高くなることも報告された。International Journal of Dental Hygiene誌オンライン版2022年8月3日号の報告。  対象は、統合失調症入院患者249例。口腔衛生状態(歯石指数[CI]、歯垢指数[DI])、虫歯歴を有する歯の平均数(平均DMFT)、関連因子(入院、クロルプロマジン換算量、年齢、バーゼル指数、歯磨きの頻度、口腔セルフケア能力)を含む改訂版の口腔評価ガイド(ROAG)について調査を行った。

アルツハイマー病およびMCIに対する治療薬aducanumabとリチウムの有効性比較~ネットワークメタ解析

 2021年、米国FDAはアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)を有する患者に対する治療薬としてaducanumabの迅速承認を行ったが、そのコストは高く、患者1人当たり年間約2万8,000ドルを要する。一方、リチウムは年間約40ドルと非常に安価であり、MCIおよびアルツハイマー病にみられる認知機能低下に効果があると報告されている。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬とは対照的に、aducanumabやリチウムにはdisease-modifying drugとしての可能性が示唆されている。東京医科大学の寺尾 樹氏らは、MCIおよびアルツハイマー病の認知機能低下に対するaducanumabとリチウムの効果を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Ageing Research Reviews誌オンライン版2022年8月9日号の報告。

コロナvs.インフル、年齢別死亡リスクを比較/奈良医大

 新型コロナウイルスのオミクロン株は、デルタ株と比較して重症化リスクが低下したとされ、季節性インフルエンザとの臨床経過を比較することへの関心が高まっている。奈良県立医科大学は、8月4日のプレスリリースで、同大学の野田 龍也氏らによる、日本における季節性インフルエンザとオミクロン株流行期の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による人口1,000万人当たりの年間死亡者数について、複数の公開データベースを用いて年齢別に比較した研究を発表した。その結果、70歳以上の高齢者ではCOVID-19による年間死者数が有意に多かったのに対して、20~69歳では、COVID-19の年間死亡者数のほうがインフルエンザのよりも多いものの、その差が小さかったという結果が得られたという。なお本研究は、日本臨床疫学会発行のAnnals of Clinical Epidemiology誌オンライン版2022年8月3日号に早期公開された。  本研究では、オミクロン株が主流となった2022年1月5日~7月5日の26週間、および高齢者のワクチン接種が80%を超えた2022年3月30日~7月5日の14週間におけるCOVID-19関連の年齢別死亡者数を、厚生労働省の公開データベースから特定されている。COVID-19関連の累計死亡者数は、26週間で1万3,756例だった。COVID-19の第6波の流行期の死亡者数を基に、その流行期と同水準の死亡者数が1年間にわたり発生するという想定で年間死亡者数が推計されている。

DSWPD(睡眠覚醒相後退障害)に対する超少量ラメルテオンの有用性

 睡眠覚醒相後退障害(DSWPD)は、概日リズム睡眠覚醒障害の1つであり、「朝起きられない病気」として知られている。DSWPD患者は、夜の早い時間に眠ることができず、朝起きられない、または起きたとしても強い心身の不調を来すことにより、社会生活に重大な問題を抱えていることが少なくない。DSWPDの薬物療法ではメラトニンが主な治療オプションとなりうるが、日本では市販薬として販売されておらず、多くの国ではメラトニンの市販薬には品質にばらつきがあることが問題となっている。メラトニン受容体アゴニストであるラメルテオンは、潜在的な治療オプションになりうる可能性があるが、DSWPD患者に使用した報告はほとんどない。これまでの薬理学的および時間生物学的研究では、夕刻の超少量ラメルテオン投与がDSWPDに有益であることが示唆されている。東京医科大学の志村 哲祥氏らは、DSWPD患者に対する夕刻の超少量ラメルテオン投与について、薬理学的レビューおよび検討を行うとともに臨床経験を紹介した。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2022年8月5日号の報告。

埼玉県の熱中症リスクを把握する

 埼玉県環境科学国際センターは、GIS(地理情報システム)ソフトウェア国内最大手の ESRIジャパンのクラウドサービス ArcGIS Online を利用した暑さ指数(WBGT)の公開を開始した。県内20ヵ所の観測地点から約10分ごとに得られたデータはPCなどで簡単に見られるように地図化してウェブサイトで公開している。  埼玉県は全国的に見ても夏季に高温になる地域で、熱中症リスクが高まる。しかし、県内の熱中症のリスクには地域差がある。そこで、同センターが独自開発した暑さ指数計を用い、暑さ指数観測データをウェブサイトに掲載して、熱中症リスクを県内の地域ごとに把握できるようにしたもの。