日本発エビデンス|page:65

AI利用で早期緑内障の診断精度が向上

 東京大学医学部眼科学教室特任講師の朝岡 亮氏らは、複数の黄斑部OCT画像のディープラーニング(DL)モデルを利用することで、緑内障の早期診断精度が実質的に向上する可能性があることを明らかにした。American Journal of Ophthalmology誌オンライン版2018年10月11日号掲載の報告。研究グループは、スペクトラルドメインOCT(SD-OCT)画像から早期緑内障を診断するためのDLモデルの開発および評価、検討を目的とした、多施設共同研究を行った。複数医療機関の協力を得て、プレトレーニングデータ、トレーニングデータ、検証データを用意。プレトレーニングデータは、病期ステージを問わずに集めた開放角緑内障(OAG)の1,565眼と健康な193眼による4,316枚のOCT画像で構成されていた。また、トレーニングデータには、早期OAG(平均偏差[MD]:>-5.0dB)患者94眼(94画像)と健康な被験者84眼(84画像)を含み、検証データには、早期OAG(MD:>-5.0dB)患者114眼(114画像)と健康な被験者82眼(82画像)が含まれていた。プレトレーニングデータの画像撮影にはRS-3000(Nidek)、トレーニングデータおよび検証データにはOCT-1000/2000(Topcon)を用いた。

手術室を滅菌空間から単体医療機器に「スマート治療室」/脳神経外科学会

 手術室では、手術に関わる人間が医療機器や設備からの膨大な情報を、限られた時間で判断しながら、治療を行っている。そうした治療現場においてIoTを活用して医療機器や設備を接続し、手術や患者の状況と共に時系列に統合し、それを手術室内外で共有することで、治療の効率と安全性を向上させる「スマート治療室」の開発が、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)主体で進められている。このスマート治療室は「SCOT(Smart cyber operating theater)」と名付けられ、東京女子医科大学を中心に、5大学11企業による産学連携のプロジェクトとして進められている。

AIが3年後の糖尿病発症リスクを予測

 わが国では、糖尿病が強く疑われる人が約1,000万人、糖尿病の可能性を否定できない人が約1,000万人と推計されている。糖尿病は、網膜症、腎症、神経障害の3大合併症に加えて、心血管疾患、がん、認知症などのさまざまな疾患のリスクを高めることが知られており、健康寿命を延伸するため、糖尿病の予防対策は国民的な課題となっている。

MSI-H固形がんへのペムブロリズマブ、日本人サブ解析結果(KEYNOTE-158)/癌治療学会

 マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)固形がんの日本人症例に対するペムブロリズマブの有用性が示された。MSI-H固形がん(大腸がん以外)を対象としたペムブロリズマブの第II相試験(KEYNOTE-158)における日本人7例でのサブグループ解析結果について、近畿大学の中川 和彦氏が10月18~20日に横浜市で開催された第56回日本癌治療学会学術集会で発表した。  本試験は、大腸がん以外の転移のあるもしくは切除不能のMSI-H固形がんが対象。進行もしくは標準的な1次治療に不耐容、かつECOG PS 0~1の患者がエントリーされた。ペムブロリズマブ200mgを3週ごとに最大2年間投与した。最初の1年間は9週ごとに、それ以降は12週ごとに画像診断を実施した。主要評価項目は奏効率(ORR)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、安全性であった。

薬物治療抵抗性慢性不眠症に対する認知行動療法の有効性~日本における多施設ランダム化比較試験

 不眠症は、夜間の症状と日中の障害によって特徴付けられるのが一般的である。治療では、GABA-A受容体アゴニスト(GABAA-RA)がよく用いられているが、長期使用に関しては、薬物依存や潜在的な認知障害リスクの観点から、リスク-ベネフィット比が低い。精神保健研究所の綾部 直子氏らは、薬物治療抵抗性原発性不眠症患者における認知行動療法(cognitive behavioral therapy for insomnia:CBT-I)を併用したGABAA-RA漸減療法の有効性を評価した。Sleep Medicine誌2018年10月号の報告。

日本人小中学生のインターネット利用とうつ病や健康関連QOLとの関連

 病的なインターネット使用は、主に中学生を対象に研究されており、小学生を対象としたデータはほとんどない。弘前大学の高橋 芳雄氏らは、小中学生における、問題のあるインターネット使用状況(病的および不適切なインターネット使用を含む)とメンタルヘルスや健康関連QOLとの関連について調査を行った。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2018年9月25日号の報告。

日本人教師における仕事のストレスと危険なアルコール消費の性差に関する横断研究

 多くの教師は、仕事に関連するストレスや精神障害のリスクが高いといわれている。また、教師の飲酒運転や危険なアルコール消費(hazardous alcohol consumption:HAC)は、社会問題となっている。そして、燃え尽き症候群、職業性ストレス、自己効力感、仕事満足度に関する教師間の性差が報告されている。大阪市立大学の出口 裕彦氏らは、日本の教師における、認識された個人レベルの職業性ストレスとHACとの関連について性差を明らかにするため、検討を行った。PLOS ONE誌2018年9月20日号の報告。

日本の高齢ドライバーの自動車事故死亡率

 近年、先進国では高齢ドライバーによる自動車事故が大幅に増加している。わが国の高齢ドライバーの自動車事故の傾向を京都府立大学の松山 匡氏らが日本外傷データバンク(Japan Trauma Data Bank: JTDB)を用いて調べたところ、65歳以上のドライバーによる自動車事故の割合は年々増加しており、75歳以上で院内死亡率が最も高いことがわかった。Medicine誌2018年9月号に掲載。

日本人統合失調症患者の喫煙率に関する大規模コホートメタ解析

 統合失調症患者の喫煙は、世界的に一般集団と比較してより多くみられるが、日本での研究結果では矛盾が生じていた。最近では、一般集団の喫煙率は徐々に低下している。金沢医科大学の大井 一高氏らは、日本人の統合失調症患者を対象に、喫煙率の大規模コホートメタ解析を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2018年9月17日号の報告。

うつ病に対するアリピプラゾール増強療法の実臨床における有効性と安全性

 増強療法は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の適切な用量で十分な治療反応を有するうつ病患者に対する治療選択肢であるが、日々の実臨床における適用についてはあまり知られていない。昭和大学の上島 国利氏らは、実臨床において、従来の抗うつ薬治療で効果不十分な日本人うつ病患者に対するアリピプラゾール増強療法の有効性および安全性について、プロスペクティブ多施設観察研究を実施した。Current medical research and opinion誌オンライン版2018年9月12日号の報告。

日本における精神科病床への新規入院患者の在院日数に関する研究

 新たに入院した精神疾患患者が、どのように医療資源を消費しているかを正確に理解することは、精神科医療に携わる臨床家や政策立案者にとって重要である。東京都医学総合研究所の奥村 泰之氏らは、日本における新たに入院した精神疾患患者のパターンおよび在院日数について調査を行った。Journal of epidemiology誌オンライン版2018年9月15日号の報告。

治療抵抗性統合失調症の初回エピソードに関する長期フォローアップコホート研究

 統合失調症患者の約3分の1は、最終的に治療抵抗性統合失調症(TRS)へ移行する。TRSに至るまでの時間経過は患者により異なるが、これらの変動に関する詳細は、明らかとなっていない。千葉大学の金原 信久氏らは、TRSへの移行に、分岐点が存在するかを判断するため、TRS患者と非TRS患者の初回エピソード精神病(FEP)のコントロール達成までに要した時間について比較を行った。BMC Psychiatry誌2018年9月3日号の報告。

日本人の抗-enolase AIR、臨床像が明らかに

 北海道大学大学院医学研究院眼科学教室の安藤 亮氏らは、日本人の抗α-enolase抗体陽性自己免疫性網膜症(抗-enolase AIR)に関する多施設共同後ろ向き症例集積研究を行い、抗-enolase AIRは、これまで文献においてほとんど記述のないドルーゼンのサブタイプで特徴付けられることを明らかにした。著者は、「機能的な重症度が異なることに伴う眼底検査所見の違いは、網膜色素上皮(RPE)ならびに視細胞の抗体を介在した障害の結果と考えられる」とまとめている。American Journal of Ophthalmology誌オンライン版2018年9月6日号掲載の報告。

喫煙が日本人労働者の死亡率に及ぼす影響

 わが国の職域多施設研究(Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study:J-ECOHスタディ)で、労働人口における喫煙・禁煙の死亡率への影響を調べたところ、喫煙が全死亡・心血管疾患(CVD)死亡・タバコ関連がん死亡のリスク増加と関連していた。また、この死亡リスクは禁煙後5年で減少していた。Circulation Journal誌オンライン版2018年9月12日号に掲載。

日本人研修医のうつ病とストレス対処能力の関係

 研修医にとって、うつ病は重大な問題となりうる。うつ病の早期発見と適切なケアを提供することは、臨床研修中の健康状態を維持するために必要である。筑波大学附属病院 総合診療グループの伊藤 慎氏らは、ストレス対処能力の指標であるSense of Coherence(SOC:首尾一貫感覚)が、臨床研修開始2年後のうつ病を予測する因子であるかを調査するため、全国縦断研究を実施した。Journal of Clinical Medicine Research誌2018年9月号の報告。