日本発エビデンス|page:87

コーヒー摂取量と死亡リスク~日本人9万人の前向き研究

これまで、コーヒー摂取と死亡・主要死因別死亡との関連を検討した前向きコホート研究はほとんどなかったが、今回、わが国における前向き大規模コホート研究(JPHC Study※)により、習慣的なコーヒーの摂取が全死亡および心疾患、脳血管疾患および呼吸器疾患による死亡リスクを減らす可能性が示唆された。The American journal of clinical nutrition誌2015年5月号(オンライン版2015年3月11日号)に掲載。

生活習慣指導でGERD症状が改善

 胃食道逆流症(GERD)は生活習慣病と考えられているが、生活習慣の影響と生活習慣への介入の効果については議論されている。川崎医科大学 春間 賢氏らは、GERDと関連する生活習慣因子とプライマリケアによる生活習慣への介入の有効性について、LEGEND studyの事後解析により検討した。その結果、プロトンポンプ阻害薬(PPI)投与中のGERD患者における生活習慣への介入は、逆流症状およびディスペプシア症状とも有意に改善することが認められた。Internal medicine誌2015年4月1日号に掲載。

日本人難治性てんかん、レベチラセタムは有用か

 静岡てんかん・神経医療センターの井上 有史氏らは、日本人の成人難治性部分てんかん発作患者を対象に二重盲検プラセボ対照検証的試験を行い、レベチラセタム追加投与の有効性と安全性を検討した。その結果、主要有効性解析においてレベチラセタム群とプラセボ群の間で有効性に有意差は認められなかったが、探索的解析においてレベチラセタム3,000mg群はプラセボ群に比べ有意な発作減少が確認されたことを報告した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2015年4月8日号の掲載報告。

統合失調症、維持期では用量調節すべきか:慶應義塾大

 抗精神病薬による65%以上のドパミンD 2受容体遮断は、統合失調症患者にとって最適な臨床効果と関連付けられている。しかし最近のデータでは、統合失調症の維持療法において、閾値はより低いことが示唆されている。慶應義塾大学の坪井 貴嗣氏らは、ドパミンD2受容体の持続的な高遮断が、統合失調症の維持治療において必要かどうかを検討した。Schizophrenia research誌2015年5月号の報告。

緑茶で死亡リスクが減る疾患

 日本における大規模集団コホート研究において、緑茶の摂取が全死因および3つの主な死因の死亡リスクを減らす可能性が示唆された。わが国のJPHC Studyにおいて、緑茶の摂取量と原因別死亡率(全死因、がん、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患、外傷、その他)との関連を調査した結果が、Annals of epidemiology誌オンライン版2015年3月25日号に掲載された。

グルタミン酸受容体阻害薬、気分障害での可能性は

 新規の選択的な代謝性グルタミン酸5(mGlu5)受容体ネガティブアロステリックモジュレータであるDSR-98776について、齧歯目モデル試験の結果、有効な経口抗うつ薬および抗躁薬として作用することが示され、躁うつ病態を呈する幅広い気分障害の治療オプションと成りうることが示された。大日本住友製薬のTaro Kato氏らが報告した。European Journal of Pharmacology誌オンライン版2015年3月28日号の掲載報告。

成人発症精神疾患の背景に自閉スペクトラム症が関連

 国立精神・神経医療研究センターの松尾 淳子氏らは、成人発症精神障害患者における自閉症的特性/症状の存在について検討を行った。その結果、成人発症精神障害患者(大うつ病性障害[MDD]寛解例を除く)の約半数で高レベルの自閉症様特性/症状を有する割合が認められること、双極性障害および統合失調症患者では重症度と関係なく自閉症様特性/症状を認める割合が高かったこと、MDD患者ではうつ症状の重症度と自閉症様特性/症状の発生に関連を認めることなどを報告した。結果を踏まえて著者は、「最適な治療のためには、成人発症精神障害の背景にある自閉症様特性/症状を評価することの重要性が示された。前向きデザインの大規模集団によるさらなる研究が必要である」と述べている。PLoS One誌オンライン版2015年4月2日号の掲載報告。

NIRS、抗うつ効果の予測マーカーとなりうるか:昭和大

 最近の研究で、近赤外分光法(NIRS)が大うつ病性障害(MDD)の診断支援ツールとして臨床使用可能であることが示されている。しかし、認知タスク施行中のNIRSシグナルの変化がうつ病の状態に依存しているのか、あるいはうつ病の特性に依存しているのか、またNIRSにより治療反応の神経学的予測が可能か否かは明らかとなっていない。昭和大学の富岡 大氏らは、うつ病の診断と治療におけるNIRSの使用意義を明らかにするため、MDD患者を対象に、抗うつ薬治療後の機能的神経画像の縦断的研究を行った。その結果、NIRSシグナルの変化がうつ病の疾患特異的マーカーになりうること、および抗うつ薬の効果を予測するバイオマーカーになり得る可能性を示した。PLoS One誌オンライン版2015年3月18日号の掲載報告。

黄砂はスギ花粉症の症状に影響するのか

 黄砂は、スギ花粉のシーズン中における鼻および眼のアレルギー症状に影響を及ぼさないことが、真生会富山病院の扇和 弘氏らによる研究で明らかになった。黄砂は、スギ花粉のシーズン前にくしゃみや鼻水、シーズン後に結膜炎の症状を誘発したが、スギ花粉シーズン中のアレルギー症状に対する悪影響は観察されなかった。Auris nasus larynx誌2014年12月号の報告。

認知症のBPSD評価に「阿部式BPSDスコア」:岡山大

 岡山大学の阿部 康二氏らは、認知症患者の行動と心理症状(BPSD)を評価する「阿部式BPSDスコア(Abe's BPSD score:ABS)」を開発し、スコアの有用性について、標準的BPSDスコアであるneuropsychiatric inventory(NPI)と比較検討した。その結果、NPIスコアと良好な相関性が示され、より短時間で評価でき、評価者間信頼性も高いことが明らかになった。結果を踏まえて著者は「ABSは軽度~中等度の認知症患者のBPSDの評価に有用である」と報告している。Neurological Sciences誌2015年1・2月号の掲載報告。

脳梗塞の発症しやすい曜日

 脳卒中発症の時間的なパターンを知り、可能性のあるトリガーを探索することは、脳卒中発症率を減少させるために重要である。脳卒中が特定の曜日に頻繁に発症する場合、何らかの「トリガー因子」が脳卒中を誘発するものと考えられる。京都府医師会脳卒中登録事業委員会では、11年間にわたる病院ベースの脳卒中登録より、曜日による脳卒中発症率の違いを調査した。その結果、脳梗塞においては、年齢・性別にかかわらず日曜日より月曜日のほうが発症率が高かった。著者らは、脳梗塞では発症の「トリガー因子」が存在するという仮説を提案している。BMJ Open誌2015年3月24日号に掲載。

急性期病院での認知症看護、その課題は:愛媛大

 認知症は公衆衛生上の大きな問題であり、ますます多くの認知症患者が合併症治療のために急性期病院へ入院している。一方で、急性期病院における認知症患者の看護に関する問題は、明らかにされてこなかった。愛媛大学の福田 里砂氏らはフォーカスグループインタビュー(FGI)を用いた質的研究を行い、主な問題として、さまざまな問題や困難が相互に作用して悪循環に陥っていること、看護師は矛盾を感じながらもそのような状況に対応するため最善を尽くしていることの2点を示した。International Journal of Qualitative Studies on Health and Well-being誌オンライン版2015年2月24日号の掲載報告。

腰痛は患者の心身を悪化させ医療費を増やす:日本発エビデンス

 世界の疾病負担研究(Global Burden of Diseases)によれば、腰痛は世界的に障害の主な原因となっている。米国・ファイザー社のAlesia B Sadosky氏らはNational Health and Wellness Survey(NHWS)を行い、日本人において腰痛の重症度は健康状態の悪化と有意に関連していることを明らかにした。臨床との関連のみならず、間接および直接経費との関連も示されている。Journal of Pain Research誌2015年2月25日の掲載報告。

【日本発】FRAXの骨折予測精度を高める方法

骨折リスク評価ツールFRAXは骨折リスクの評価に利用されているが、その精度は十分とはいえず、改善が望まれている。  そこで近畿大学の伊木 雅之氏らは、12の地域に住む65歳以上の高齢日本人男性2,000人を対象に、FRAXを補完する手段として海綿骨スコア(TBS)が有用であるかどうかの調査を行った。  その結果、TBSはFRAXと組み合わせることで予測精度を向上させる可能性が示唆された。Osteoporos Int誌 オンライン版2015年3月10日掲載の報告。

難治性しゃっくり、抗精神病薬で治るのはなぜか

 しゃっくりは横隔膜のリズミカルな不随意運動であり、延髄や脊柱上の吃逆中枢の神経核機能阻害などさまざまな条件により引き起こされる。しゃっくりの病態に関与する神経伝達物質や受容体は十分に定義されていないが、ドパミンは重要な役割を果たすと考えられている。難治性のしゃっくりの治療には、クロルプロマジンや他の抗精神病薬が使用されることがあるが、その有効性は限られている。島根県・清和会西川病院の西川 正氏らは、難治性しゃっくり患者のエピソードを紹介した。Annals of general psychiatry誌オンライン版2015年3月5日号の報告。