ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:298

米国子どもの肥満・慢性疾患有病率の動向

肥満や慢性疾患を有する米国2~14歳児の割合は、1988~2006年の間で増加傾向にあることが、米国マサチューセッツ総合病院青少年保健政策センターのJeanne Van Cleave氏らの調べで明らかになった。また肥満や慢性疾患は、必ずしも長年にわたり継続しているのではなく、追跡調査期間6年の中で新規発症や完治といった動きが多いこともわかったという。JAMA誌2010年2月17日号で発表した。

タモキシフェン治療中の高齢乳がん患者、パロキセチン併用で乳がん死が増大

タモキシフェン(TAM)治療中の乳がん女性にパロキセチン(商品名:パキシル)を併用投与すると、乳がん死のリスクが増大することが、カナダSunnybrook医療センターのCatherine M Kelly氏らが実施したコホート研究で示された。乳がんの内分泌療法の標準治療薬であるTAMは、チトクロームp450 2D6(CYP2D6)によって活性代謝産物であるエンドキシフェンに変換されるプロドラッグである。TAM投与を受けている乳がん女性にはパロキセチンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が広く用いられているが、SSRIはCYP2D6を阻害するためエンドキシフェンの産生が低下してTAMの効果が減弱する可能性が指摘されていた。BMJ誌2010年2月13日号(オンライン版2010年2月8日号)掲載の報告。

venlafaxineは、うつ病患者の心臓突然死リスクを増大させない

venlafaxineは他の一般的な抗うつ薬に比べ、うつ病や不安障害患者の心臓突然死のリスクを増大させないことが、カナダMcGill大学疫学・生物統計学科のCarlos Martinez氏らの調査で明らかとなった。イギリスでは、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であるvenlafaxineは、他の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)に比べ致死的な過剰摂取率が高いことが報告され、患者の背景因子(自殺リスクが高い患者など)、venlafaxine固有の毒性、催不整脈作用などの原因が指摘されている。治療量のvenlafaxineが心臓突然死や致死的な不整脈のリスクを増大させる可能性については、これまで検討されていなかったという。BMJ誌2010年2月13日号(オンライン版2010年2月5日号)掲載の報告。

早期乳がん診療にMRIを導入しても、再手術率は改善しない:COMICE試験

早期原発性乳がんの診療にMRI検査を導入しても、再手術率は低減しないことが、イギリスHull王立病院MR研究センターのLindsay Turnbull氏らによる無作為化試験(COMICE試験)で明らかとなった。イギリスでは、早期乳がんの治療において、腫瘍の不完全切除による再手術率を10%以下にすることを目標に種々のアプローチが行われている。MRIは乳がんの診断率を向上させ、再手術率を低減する可能性が指摘されていた。Lancet誌2010年2月13日号掲載の報告。

ulipristal acetate、無防備な性交後の緊急避妊に高い効果

ulipristal acetateは不用意な性交後の緊急避妊薬として5日間まで有効であり、その効果はレボノルゲストレル(商品名:Norlevo)よりも優れることが、イギリス・ロジアン国民保険サービス(NHS)のAnna F Glasier氏らが実施した無作為化試験とメタ解析で示された。現在、緊急避妊薬は世界140ヵ国以上で用いられ、そのうち約50ヵ国では医師の処方箋なしで使用可能であり、先進国のほとんどで認知されているという。現在の標準薬であるレボノルゲストレルは性交後72時間以内に投与する必要があり、時間の経過とともに効果が減弱し、排卵前でなければ十分な効果は期待できないため、より有効な薬剤の開発が望まれていた。Lancet誌2010年2月13日号(オンライン版2010年1月29日号)掲載の報告。

乳房温存手術後の放射線療法、3週間法でも5週間の標準照射法と有効性劣らず

乳房温存手術後の胸部放射線療法は乳がん死亡率を低下することが最新のメタ解析によっても示されているが、北米の乳がん女性の最大30%が、治療回数が多いことや費用を理由に放射線療法を受けていない。そこでカナダ・マクマスター大学JuravinskiがんセンターTimothy J. Whelan氏は、生物学的モデルで有効性が示された少分割・短期間照射に関して、無作為化試験を実施した。2002年の追跡5年時点の検討で、その有効性(再発率・美容的アウトカム)が示されたが、放射線の毒性は1回当たりの照射線量が多いほど時間とともに増大するという懸念がある。本論はその懸念に応える追跡期間中央値12年の段階で行われた、10年時点の結果を検討した報告。NEJM誌2010年2月11日号に掲載された。

早死にを招く、小児期の心血管リスク因子

糖尿病の早期発症が死亡率を高めること、成人期における心血管リスク因子と寿命との関連性は明らかだが、小児期における心血管リスク因子が寿命に影響を及ぼすメカニズムはほとんどわかっていない。米国NIHのPaul W. Franks氏ら研究グループは、その関連性を明らかにすることは、小児期の心血管リスク因子が与える人的・経済的損失を予測可能とし、健康状態を改善し早世率(本論では55歳未満での死亡と定義)を低下させるための介入が可能になるとし、40年にわたる追跡調査を行った。その結果が、NEJM誌2010年2月11日号で発表されている。

認知症施設入所者、急性期入院時の経管栄養率は営利・大病院・末期ほど高い

米国ナーシングホーム入所の重度認知障害者が、急性期病院に入院した際に経管栄養を導入される頻度は、営利病院、病床数が多い病院ほど高く、また死亡前6ヵ月以内にICUを利用した人で高率であることが明らかになった。重度認知障害者に対する経管栄養のベネフィットに関しては議論が分かれている。一方で、ナーシングホームで経管栄養を受けている人の、およそ3分の2が急性期病院に入院した際に導入されている。米国ブラウン大学Warren Alpert校高齢者ヘルスケア研究センターのJoan M. Teno氏らは、導入傾向を明らかにしようと調査を行った。JAMA誌2010年2月10日号より。

妊婦の年齢、拡張期血圧、喫煙などが、妊娠第一期の胎児の発育遅延に関連

妊婦の年齢や拡張期血圧、喫煙などが、妊娠第一期の胎児の発育遅延に関連していることが明らかにされた。同時期の胎児の発育遅延は、早産や低出生体重、2歳までの発育促進の遅滞などとも関連していたという。オランダ・エラスムス医療センターのDennis O. Mook-Kanamori氏らの研究グループ「Generation R Study Group」が、1,600人超の母親とその子供について調べたもので、JAMA誌2010年2月10日号で発表した。

利尿薬ベースの降圧療法、セカンドライン選択は?:住民ベースの症例対照研究

米国ワシントン大学心血管ヘルス研究ユニットのInbal Boger-Megiddo氏らは、利尿薬を第一選択薬とし降圧療法を受けている高血圧患者の、併用療法移行時の選択薬は、β遮断薬、Ca拮抗薬、RA系阻害薬いずれが至適かを明らかにするため、心筋梗塞および脳卒中の発生率を主要評価項目に、住民ベースの症例対照研究を行った。結果、Ca拮抗薬追加群の心筋梗塞発生リスクが、他の2群よりも高いことが明らかになったという。BMJ誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月25日号)より。

社会経済的格差が、国民のがん治療格差をもたらしている:英国

英国で2000年に公表された「NHS Cancer Plan」は、英国社会全体の、がん治療アウトカムの向上と健康格差を是正するため、医療サービスへのアクセスの平等を図ることを目的に作成されたものである。ロンドン大学校疫学・公衆衛生部門のRosalind Raine氏らのグループは、その導入効果を評価するため、がん患者の救急入院と選択的入院、大腸がん、乳がん、肺がんの外科手術の種類が、社会経済的要因、年齢、性別、入院年によってどのように変動したかを調査した。BMJ誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月14日号)より。

帝王切開は医学的適応がある場合に限定して施行すべき

妊産婦および新生児の周産期アウトカムを改善するには、帝王切開は医学的適応がある場合に限って施行すべきであることが、タイKaen大学産婦人科のPisake Lumbiganon氏らがWHOの世界調査として実施した出産法と妊娠アウトカムに関する研究で明らかとなった。近年、帝王切開施行率が世界的に上昇しており、その妥当性について議論が起きているという。不必要な帝王切開の実施は、産科領域におけるエビデンスと実臨床のミスマッチの古典的な実例とされ、その議論を通じて実臨床における必然的な帰結を変更する試みの複雑さに注目が集まっている。Lancet誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月12日号)掲載の報告。

人工呼吸器装着の重症疾患患者、非鎮静で非装着日数が増加

人工呼吸器装着中の重症疾患患者では、毎日中断しながら鎮静を継続する方法よりも鎮静を行わない方法が、非装着日数を増加させることが、デンマークOdense大学病院麻酔科・集中治療医学のThomas Strøm氏らが実施した無作為化試験で示された。人工呼吸器装着重症疾患患者の標準治療では、通常、持続的な鎮静が行われる。最近は毎日中断しながら鎮静を継続する方法の有用性も示されているが、Odense大学病院の集中治療室(ICU)では非鎮静のプロトコールが標準だという。Lancet誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月29日号)掲載の報告。

多発性硬化症に対する経口クラドリビン、2年間の有効性確認

日本では白血病の抗がん剤としてのみ承認されている免疫抑制薬クラドリビン(商品名:ロイスタチン)は、リンパ球サブタイプを選択的に標的とする特徴を有する。ロンドン大学クイーンズ・メアリー校のGavin Giovannoni氏ら「CLARITY」研究グループは、再発寛解型多発性硬化症患者への有効性を評価する、第III相試験である短期コース経口療法の96週間(24ヵ月間)の結果を報告した。NEJM誌2010年2月4日号より。

多発性硬化症に対する経口fingolimod、2年間の有効性確認

多発性硬化症の治療薬として開発中の、経口fingolimod(FTY720、フィンゴリモド;スフィンゴシン1リン酸受容体調節薬)は、リンパ節からのリンパ球放出を抑制する作用が特徴の免疫抑制薬である。これまで第II相、第III相(12ヵ月間)臨床試験の結果、プラセボまたはインターフェロンβ-1a筋注と比べて、多発性硬化症の再発率およびMRI評価のエンドポイントを有意に改善することが明らかになった。本稿は、スイス・バーゼル大学病院Ludwig Kappos氏らFREEDOMS治験グループによる、24ヵ月間の第III相プラセボ対照二重盲検無作為化試験の報告で、NEJM誌2010年2月4日号(オンライン版2010年1月20日号)に掲載された。

敗血症ヒドロコルチゾン療法患者への強化インスリン療法、フルドロコルチゾン

敗血症性ショックを起こした患者に行われるヒドロコルチゾン投与(コルチコステロイド療法)に関して、強化インスリン療法を行っても従来インスリン療法の場合と比べて、院内死亡率に有意差はないことが明らかになった。また、フルドロコルチゾン(商品名:フロリネフ)を追加投与しても、同死亡率に有意差はなかった。フランスVersailles大学のDjillali AnnaneらCOIITSS(Corticosteroids and Intensive Insulin Therapy for Septic Shock)研究グループが、約500人の敗血症患者を対象に、無作為化試験によって明らかにしたもので、JAMA誌2010年1月27日号で発表している。敗血症性ショック患者へのコルチコステロイド療法は、高血糖を誘発する可能性が指摘されており、また同療法でフルドロコルチゾンを追加投与するベネフィットは明らかになっていなかった。

肺がん診断後の禁煙により予後が改善

早期肺がんの診断後に禁煙を開始すると、喫煙を継続した場合に比べ65歳以上の患者の予後が改善することが、イギリス・バーミンガム大学タバココントロール研究センターのA Parsons氏らによる系統的なレビューで示された。喫煙は原発性肺がん発症のリスク因子であり、生涯喫煙者は生涯非喫煙者の20倍のリスクを有するとされる。一方、肺がんと診断されたのちの禁煙が予後に及ぼす影響については明らかにされていなかった。BMJ誌2010年1月30日号(オンライン版2010年1月21日号)掲載の報告。

術前心臓検査、中~高リスクの待機的非心臓手術施行患者の予後を改善

中~高リスクの待機的非心臓手術を受ける患者は、術前の非侵襲的心臓負荷検査によって1年生存率が改善され、入院期間が短縮することが、カナダ臨床評価学研究所(ICES)のDuminda N Wijeysundera氏が実施したコホート研究で示された。術前の非侵襲的心臓負荷検査は術後の心臓合併症を予防する可能性があるという。また、虚血性心疾患を検出したり、術前のインターベンション、術中の積極的な血行動態管理、術後のサーベイランス、手術の回避が有効な患者を同定するだけでなく、周術期のβ遮断薬使用の指針ともなる。それゆえ、ACC/AHAガイドラインは術前心臓検査を推奨しているが、対象は心臓合併症のリスク因子を有する患者に限られ、リスク因子のない患者を含めた術後の予後への影響は明確ではないという。BMJ誌2010年1月30日号(オンライン版2010年1月28日号)掲載の報告。

病態安定HIV感染患者、ラルテグラビル切り替え効果の非劣性示せず:SWITCHMRK 1、2試験

ロピナビル-リトナビル(商品名:カレトラ)ベースのレジメンでヒト免疫不全ウイルス(HIV)が抑制され病態が安定しているHIV感染患者において、同薬剤による脂質異常などの有害事象の回避を目的にラルテグラビル(同:アイセントレス)へ切り替える治療法は、ロピナビル-リトナビルを継続した場合に比べウイルス抑制効果が劣るため許容されないことが、2つの多施設共同試験(SWITCHMRK 1、2試験)で示された。HIV-1インテグラーゼ阻害薬という新たなクラスの経口抗HIV薬であるラルテグラビルは、プロテアーゼ阻害薬であるロピナビル-リトナビルにみられる脂質異常などの有害事象がなく、未治療例、既治療例ともに有効性が確認されている。病態が安定したHIV感染患者には、ウイルス抑制効果が同等であれば、より簡便で有害事象の少ない治療法が望ましい。アメリカ・ノースカロライナ大学のJoseph J Eron氏が、Lancet誌2010年1月30日号(オンライン版2010年1月13日号)で報告した。