ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:103

TAVR後の弁尖可動性低下、抗血栓療法は有効か/NEJM

 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVR)の成功後に、長期的な抗凝固療法の適応がない大動脈弁狭窄症患者では、無症候性の弁尖の動きの異常の予防において、リバーロキサバンベースの抗血栓治療戦略は、抗血小板薬ベースの治療戦略に比べ高い有効性を示すものの、死亡/血栓塞栓性イベントや大出血のリスクが高いことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のOle De Backer氏らが行ったGALILEO-4D試験で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年11月16日号に掲載された。4次元CTにより、TAVR後の人工生体弁における無症候性の弁尖肥厚および弁尖の可動性の低下が示されている。一方、これらの現象の改善に、抗凝固療法が有効かは知られていないという。

トロポニン値と年齢、死亡リスクとの関連は/BMJ

 トロポニン陽性例では、正常値をわずかに超えただけで、年齢にかかわらず死亡の臨床的に重要な増加と関連し、その値の上昇に伴う死亡の増加は、初回測定から数週間以内に集中していることが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAmit Kaura氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年11月21日号に掲載された。トロポニンは、急性心筋梗塞の診断の優れたバイオマーカーとされる。トロポニン値が制限範囲を超えても、その上昇の程度と死亡との直接的な関連を示すエビデンスがある。一方、全年齢層におけるトロポニン値と死亡との関連のデータは十分でなく、若年層に比べ超高齢層ではとくに不十分であるが、医師は一般に、全年齢層で高トロポニン値は高死亡率を意味すると考える傾向があるという。

低用量コルヒチン、心筋梗塞後の虚血性心血管イベントを抑制/NEJM

 低用量コルヒチンは、心筋梗塞患者における虚血性心血管イベントのリスクをプラセボに比べ有意に低減することが、カナダ・モントリオール心臓研究所のJean-Claude Tardif氏らが行ったCOLCOT試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年11月16日号に掲載された。炎症は、アテローム性動脈硬化およびその合併症において重要な役割を担うことを示す実験的および臨床的なエビデンスがある。コルヒチンは、イヌサフランから抽出された抗炎症作用を有する経口薬で、痛風や家族性地中海熱、心膜炎の治療に使用されている。

2型DMの腎機能維持、ビタミンDとオメガ3脂肪酸の効果は?/JAMA

 2型糖尿病患者において、ビタミンD3あるいはオメガ3脂肪酸の補給は、プラセボと比較し、5年時の推定糸球体濾過量(eGFR)のベースラインからの変化に有意差は認められないことが示された。米国・ワシントン大学のIan H. de Boer氏らが、「Vitamin D and Omega-3 Trial:VITAL試験」の補助的研究として実施した2×2要因デザイン無作為化臨床試験の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「腎機能維持のためのビタミンDまたはオメガ3脂肪酸サプリメントの使用は支持されないことが示された」と述べている。慢性腎臓病(CKD)は2型糖尿病でよくみられる合併症で、末期腎不全につながり心血管高リスクと関連があるが、2型糖尿病でCKDを予防できる治療はほとんどないとされている。JAMA誌オンライン版2019年11月19日号掲載の報告。

無症候性の大動脈弁狭窄症、保存的治療 vs.早期手術/NEJM

 無症候性の重症大動脈弁狭窄症患者において、追跡期間中の手術死亡または心血管死(複合エンドポイント)の発生率は、早期に弁置換術を施行した患者のほうが保存的治療を行った患者よりも有意に低いことが示された。韓国・蔚山大学校のDuk-Hyun Kang氏らが、多施設共同試験「RECOVERY試験」の結果を報告した。重症大動脈弁狭窄症患者の3分の1から2分の1は診断時に無症状であるが、こうした患者における手術の時期と適応については依然として議論の余地があった。NEJM誌オンライン版2019年11月16日号掲載の報告。

TAVR後、抗凝固療法不適患者へのリバーロキサバンは?/NEJM

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)に成功した経口投与による抗凝固療法の適応のない患者に対し、直接作用型第Xa因子阻害経口抗凝固薬リバーロキサバン(10mg/日)を含む治療戦略は、アスピリンをベースとした抗血小板薬の治療戦略に比べ、死亡または血栓塞栓症の複合リスクが有意に高く、出血リスクも高いことが明らかにされた。米国・マウントサイナイ医科大学のGeorge D. Dangas氏らが、1,644例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年11月16日号で発表した。リバーロキサバンがTAVR後の血栓塞栓症イベントを予防可能かどうかは明らかにされていなかった。

スマートウォッチの不整脈通知、心房細動の陽性適中率は84%/NEJM

 スマートウォッチ(Apple Watch)とスマートフォン(Apple iPhone)のアプリケーションを活用したモニタリングで不整脈が検出通知されたのは約0.52%と低率であったが、検出者に心電図(ECG)パッチを郵送し遠隔モニタリング診療を行った結果、その後に34%で心房細動がみられた。スマートウォッチの不整脈通知とECGパッチによる心房細動が同時に観察された割合(陽性適中率)は84%だったという。米国・スタンフォード大学のMarco V. Perez氏らが、約42万人を対象に行った大規模試験で明らかにし、NEJM誌2019年11月14日号で発表した。装着可能な光学センサー機器は不整脈の検出を可能とするが、光学センサーを搭載したスマートウォッチとアプリケーションの組み合わせで心房細動を特定できるかは明らかにされていなかった。

NASHに有効? resmetiromが肝脂肪量を減少/Lancet

 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療において、resmetirom(MGL-3196)はプラセボに比べ、肝臓の脂肪量を相対的に減少させることが、米国・Pinnacle Clinical ResearchのStephen A. Harrison氏らが行ったMGL-3196-05試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年11月11日号に掲載された。NASHは、肝臓の脂肪化、炎症、肝細胞障害、進行性の肝線維化で特徴付けられる。resmetiromは、肝臓に直接作用し、経口投与で活性化する甲状腺ホルモン受容体β活性化薬であり、肝臓の脂肪代謝を促進し、脂肪毒性を低減することでNASHが改善するよう設計されているという。

強直性脊椎炎に、選択的JAK1阻害薬upadacitinibが有効/Lancet

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)への反応が不十分またはNSAIDが禁忌の強直性脊椎炎患者の治療において、upadacitinibはプラセボに比べ、疾患活動性、腰背部痛、身体機能、炎症の統合指標(ASAS40)を改善し、忍容性も良好であることが、オランダ・ライデン大学医療センターのDesiree van der Heijde氏らが行ったSELECT-AXIS 1試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年11月12日号に掲載された。体軸性脊椎関節炎は、炎症性の腰背部痛、脊椎可動性の制限、付着部炎、末梢関節/関節外症状を特徴とする慢性進行性のリウマチ性疾患であり、X線所見で仙腸関節炎の十分な証拠がある場合に、強直性脊椎炎と呼ばれる。JAKシグナル伝達経路は、強直性脊椎炎の治療標的となる可能性が示唆されている。upadacitinibは選択的JAK1阻害薬であり、乾癬性関節炎や潰瘍性大腸炎、クローン病、アトピー性皮膚炎などの免疫性炎症性疾患の治療薬としても開発が進められている。

最大量スタチンへの上乗せ、ベンペド酸が有効か/JAMA

 最大耐用量のスタチン治療を受ける心血管疾患リスクの高い患者において、ベンペド酸の上乗せ投与はプラセボと比較して、12週間にわたりLDLコレステロール値を有意に低下したことが示された。米国・ワシントン大学セントルイス校のAnne C. Goldberg氏らによる第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「CLEAR Wisdom試験」の結果で、著者は「さらなる検討を行い、永続性、臨床的効果、長期の安全性について評価する必要がある」とまとめている。JAMA誌2019年11月12日号掲載の報告。

大腸内視鏡検査陰性、次回は本当に10年後でいいのか?/BMJ

 大腸内視鏡スクリーニング検査で陰性だった受診者集団について、フォローアップ5年以内にあらゆる腫瘍が20%超で検出されたが、進行がん(advanced neoplasm)の検出は10年以内でもまれであることが明らかにされた。ドイツ・German Cancer Research Center(DKFZ)のThomas Heisser氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果で、著者は「示された所見は、大腸内視鏡スクリーニング検査の陰性者について、次回受診は現在の推奨間隔で十分である可能性を示すものであった。さらなる検討を行い、適切な勧告とするため経験的基礎を強化し、受診間隔の延長についてもさらに調査する必要がある」と述べている。大腸内視鏡スクリーニングで大腸がんの前兆が認められない標準的リスクの受診者について、米国や欧州の主要なガイドラインでは、次回スクリーニングは10年後を推奨している。しかし、この受診間隔を支持するエビデンスは限定的で、勧告の大半が医療費支払いデータやがんレジストリを根拠としたものであり、勧告に基づくフォローアップスクリーニングのアウトカムデータはほとんどなかった。BMJ誌2019年11月13日号掲載の報告。

三尖弁逆流へのTriClipの有用性/Lancet

 三尖弁逆流を軽減する低侵襲の経カテーテル三尖弁修復システム(TriClip)は、その重症度を少なくとも1段階軽減するのに安全かつ有効であることが示唆され、その軽減の程度は、術後6ヵ月時点での有意な臨床的改善に相当する可能性があるという。ドイツ・University Hospital BonnのGeorg Nickenig氏らが、欧州および米国の21施設で実施した多施設共同前向き単群臨床試験「TRILUMINATE試験」の結果を報告した。三尖弁逆流症は、合併率および死亡率の高さと関連する広く一般的にみられる疾患だが、治療の選択肢はほとんどないとされている。Lancet誌オンライン版2019年11月7日号掲載の報告。

急増する電子タバコ関連肺損傷の臨床像が明らかに/Lancet

 電子タバコまたはベイピング関連肺損傷(lung injury associated with e-cigarettes or vaping:EVALI)は、重度の肺損傷や、全身および消化器症状と関連する新たな疾患であり、重症度は多岐にわたること、多くが抗菌薬やステロイドで治療されているが、臨床的に改善しても異常が残存する患者が多いことが、多施設共同前向き観察コホート研究で示された。米国・Intermountain HealthcareのDenitza P. Blagev氏らが報告した。米国では2019年3月からEVALIの発生が急増し現在も報告が相次いでいるが、本疾患の原因、診断、治療および経過は明らかになっていなかった。著者は、「EVALIの臨床診断は、感染症や他の肺疾患とオーバーラップしているままで、原因、適切な治療および長期的アウトカムを理解するには本疾患を疑う高度な指標が必要である」と述べている。Lancet誌オンライン版2019年11月8日号掲載の報告。

変形性手関節症に、経口ステロイド短期投与が有効/Lancet

 痛みを伴う変形性手関節症で、遠位・近位指節間(DIP/PIP)関節に炎症が認められた患者において、プレドニゾロン10mg投与は有効かつ安全であることが示された。オランダ・ライデン大学のFeline P B Kroon氏らによるプラセボ対照無作為化二重盲検試験「HOPE試験」の結果で、著者は、「われわれの試験結果は、疾患が再燃した変形性手関節症患者に対する新たな短期的治療オプションを臨床医に提示するものとなった」とまとめている。変形性手関節症は、疾患負荷が大きく、医療的ニーズを満たす効果的な治療オプションがない疾患である。Lancet誌オンライン版2019年11月11日号掲載の報告。

difelikefalin、透析患者のかゆみとQOLを改善/NEJM

 中等度~重度のかゆみを呈する透析患者において、κオピオイド選択的受容体作動薬difelikefalin投与を受けた患者は、プラセボ投与を受けた患者と比べて、12週後のかゆみの強度は有意に軽減し、かゆみに関連したQOLは有意に改善したことが示された。米国・Donald and Barbara Zucker School of Medicine at Hofstra/NorthwellのSteven Fishbane氏らによる、第III相の多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検試験「KALM-1」試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年11月8日号で発表された。

小児・若年AMLの真菌症予防に至適な抗真菌薬は?/JAMA

 米国・フィラデルフィア小児病院のBrian T. Fisher氏らは、小児~若年成人の急性骨髄性白血病(AML)患者を対象に、侵襲性真菌症(IFD)の予防におけるカスポファンギンとフルコナゾールの有効性を比較検討した。予定されていなかった中間解析で無益性(futility)が示唆されたため、それ以上の患者登録を中止し、登録済みの患者で試験を継続したところ、カスポファンギンのIFD予防効果が優れることが示された。AMLの小児~若年成人患者では、酵母菌および糸状菌の双方による生命を脅かすIFDのリスクが高いとされる。フルコナゾールが酵母菌に対してのみ活性を示すのに対し、カスポファンギンは酵母菌および糸状菌の双方に活性を有することから、カスポファンギンのほうがIFDの予防効果が高い可能性が示唆されている。JAMA誌2019年11月5日号掲載の報告。

世界の末期腎不全医療の現状が明らかに/BMJ

 低所得国も含めた世界の末期腎不全(ESKD)医療の現状には大きなばらつきがあることが、カナダ・アルバータ大学のAminu K. Bello氏らによる国際断面調査の結果、明らかにされた。ESKD有病率は800倍以上の差がみられ、腎代替療法(透析、移植)に公的資金が投じられている国は64%、透析が利用可能な国は100%であったが腹膜透析は76%であり、保存療法が利用可能な国は81%であることなどが示された(割合はそれぞれ各データが入手できた国を分母としたもの)。過去10年間で、腎疾患の世界的な疫学や経済的側面について大きく理解が進んでいる。とくに低・中所得国の急性腎障害(AKI)、慢性腎臓病(CKD)およびESKDの負荷に関するデータがより多く入手できるようになっているが、それらの疾患が人々の健康に大きな影響を及ぼすにもかかわらず、AKI、CKDは概して、国際・地域あるいは各国の慢性疾患コントロール戦略には含まれていないという。BMJ誌2019年10月31日号掲載の報告。

利益相反の開示は論文査読に影響するのか/BMJ

 現行の倫理規定では、すべての科学論文について利益相反(conflicts of interest:COI)の開示が求められているが、米国・ハーバード・ビジネス・スクールのLeslie K. John氏らによる無作為化試験の結果、論文の査読にCOI開示は影響しないことが示された。著者は、「査読者が出版を評価する論文のあらゆる質の評価に、COI開示が影響していることを確認できなかった」としている。科学雑誌やアカデミックな倫理基準において、査読者、エディターおよび読者が、可能性があるバイアスを検出・補正できるように、著者に対してCOI開示が命じられている。しかし、これまでその行為が目的を達しているかを確認する検討は行われていなかったという。BMJ誌2019年11月6日号掲載の報告。

次世代CFTR矯正薬、嚢胞性線維症の呼吸機能を改善/Lancet

 嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子遺伝子(CFTR)のF508del変異ホモ接合体を有する嚢胞性線維症の治療において、tezacaftor+ivacaftorにelexacaftorを併用すると、tezacaftor+ivacaftorと比較して、良好な安全性プロファイルとともに、呼吸機能が著明に改善することが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのHarry G M Heijerman氏らが行ったVX17-445-103試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年10月31日号に掲載された。CFTR調節薬は、CFTR遺伝子変異に起因する根本的な異常を矯正するとされる。CFTRのF508del変異ホモ接合体を有する嚢胞性線維症患者では、CFTR矯正薬(tezacaftor)とCFTR増強薬(ivacaftor)の併用により、健康アウトカムの改善が達成されている。同型の嚢胞性線維症患者の第II相試験において、次世代CFTR矯正薬であるelexacaftorは、tezacaftor+ivacaftorと併用することで、F508del-CFTR機能と臨床アウトカムをさらに改善したと報告されていた。

市中肺炎に新規経口抗菌薬lefamulinが有効/JAMA

 市中細菌性肺炎(CABP)患者において、lefamulinの5日間経口投与はモキシフロキサシン7日間経口投与に対して、初回投与後96時間での早期臨床効果が非劣性であることが示された。米国・Nabriva TherapeuticsのElizabeth Alexander氏らが、CABPに対するlefamulinの有効性および安全性を評価した無作為化二重盲検ダブルダミー並行群間第III相試験「LEAP 2試験」の結果を報告した。標準治療による抗菌薬耐性の拡大と安全性の懸念から、CABP治療の新しい抗菌薬が必要とされている中、lefamulinは、先に行われた第III相試験「LEAP 1試験」において、初回静脈内投与後経口投与への切り替えでモキシフロキサシンに対する非劣性が示されていた。JAMA誌オンライン版2019年9月27日号掲載の報告。