ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:280

SSRIのescitalopram、閉経期のほてりの頻度や程度を軽減

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のescitalopramは、閉経期のほてりの頻度や程度を軽減することが示された。服用後8週間で、ほてりの頻度が半分以下に減少したと報告した人は、escitalopram群の50%に上った。米国ペンシルベニア大学産科婦人科のEllen W. Freeman氏らが、200人超の女性を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月19日号で発表した。閉経後のエストロゲンとプロゲスチン投与に関して、効用よりもリスクが上回るとする試験結果が発表されて以来、閉経期のほてりに対する効果的治療薬は他にないのが現状という。

βアミロイド42/40濃度が低いと、認知機能低下が促進

血漿中のβアミロイド42/40濃度が低い人は、高い人に比べ、認知機能の低下が促進することが明らかにされた。その傾向は、認知的予備力の低い人ほど強いことも示された。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校精神科部門のKristine Yaffe氏らが、地域在住の高齢者997人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月19日号で発表した。βアミロイド42/40濃度と認知症発症との関連は知られているが、否定的な報告もあり、また認知症ではない高齢者における検討はほとんどされていなかった。

あらゆるNSAID処方時に心血管リスクへの考慮が必要

非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の心血管系に対する安全性について、可能な限りのデータを集めて行われたネットワーク・メタ解析の結果、エビデンスを示すデータはほとんどなかったとの報告が、スウェーデン・ベルン大学社会・予防医学研究所のSven Trelle氏らにより示された。2004年にrofecoxibが心血管イベントリスク増大から販売中止となって以後、選択的COX-2阻害薬そしてNSAID全体へと心血管リスクについての懸念が広がったこと、最近ではリスク・ベネフィットが不十分として米国FDAがetoricoxibを承認しなかったなどの動きを受けて本解析を行ったというTrelle氏は、「どんなNSAIDの処方を書く時も心血管リスクを考慮する必要がある」とまとめている。BMJ誌2011年1月15日号(オンライン版2011年1月11日号)掲載の報告より。

肺結核症にビタミンD補助薬は有効か?

肺結核症の集中治療期に標準的な抗生物質治療を受けている患者に、高用量のビタミンD補助薬を投与すると、ビタミンD受容体TaqI tt遺伝子型の患者で喀痰培養陰転時間の短縮効果を認めることが、イギリス・ロンドン大学クイーン・メアリーのAdrian R Martineau氏らの検討で明らかとなった。抗生物質が普及する以前は、ビタミンDが結核症の治療に用いられており、その代謝産物はin vitroで抗マイコバクテリア免疫を誘導することが知られている。これまでに、ビタミンDが喀痰培養菌に及ぼす影響を評価した臨床試験はないという。Lancet誌2011年1月15日号(オンライン版2011年1月6日号)掲載の報告。

妊娠高血圧腎症の予後予測に有用なモデルを開発

妊娠高血圧腎症(子癇前症)で入院した女性のうち有害なアウトカムのリスクが高い患者の同定に有用な、fullPIERS(Pre-eclampsia Integrated Estimate of RiSk)と呼ばれるモデルが、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学産婦人科のPeter von Dadelszen氏らによって開発された。妊娠高血圧腎症は単なる蛋白尿を伴う妊娠高血圧を超える病態とされ、全身性の過剰な炎症状態と考えられており、世界的に妊産婦の死亡および罹病の直接的な主原因となっている。妊娠高血圧腎症関連の疾病負担の低減は、ミレニアム開発目標5の趣旨にも関わる重要な課題だという。Lancet誌2011年1月15日号(オンライン版2010年12月24日号)掲載の報告。

急性中耳炎児へのアモキシシリン-クラブラン酸治療は有効か―その2

急性中耳炎児への抗菌薬治療の有効性については、なお議論が続いている。フィンランド・トゥルク大学病院小児科部門のPaula A. Tahtinen氏らは、二重盲検無作為化試験の結果、3歳未満の急性中耳炎に対する抗菌薬アモキシシリン-クラブラン酸(商品名:オーグメンチン)投与は、プラセボと比べて有害事象は多いがベネフィットがあると報告した。NEJM誌2011年1月13日号掲載より。

急性中耳炎児へのアモキシシリン-クラブラン酸治療は有効か―その1

2歳未満の急性中耳炎について、即時に抗菌薬治療を行うべきか、それとも経過観察をすべきか、国によって勧告は異なっている。米国ピッツバーク大学小児科部門のAlejandro Hoberman氏らは、無作為化プラセボ対照試験の結果、生後6~23ヵ月の2歳未満の急性中耳炎に対する抗菌薬アモキシシリン-クラブラン酸(商品名:オーグメンチン)の10日間投与は、症状消失期間の短縮など短期的ベネフィットをもたらすと報告した。NEJM誌2011年1月13日号掲載より。

カンデサルタン vs. ロサルタンの心不全患者死亡リスク

心不全患者に対する、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)のカンデサルタン(商品名:ブロプレス)投与は、同じくARBのロサルタン(商品名:ニューロタン)投与と比べ、死亡リスクが0.7倍と低いことが示された。これまでの研究結果から左室駆出率が低下した心不全患者へのARB投与は、死亡・入院リスクを低減することは知られているものの、ARB同士で、その効果を直接比較した試験はこれが初めてという。スウェーデン、ストックホルムSouth Hospital循環器部門のMaria Eklind-Cervenka氏らが、5,000人超の心不全患者について追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月12日号で発表した。

60歳以上帯状疱疹、ワクチン接種で発症リスクは55%低減

60歳以上の高齢者への帯状疱疹ワクチンの接種で、同発症リスクは55%低減することが明らかになった。米国医療保険医学グループSouthern California Kaiser PermanenteのHung Fu Tseng氏らが、7万5,000人超の帯状疱疹ワクチン接種集団と、22万人超の非接種集団について行った後ろ向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月12日号で発表した。帯状疱疹ワクチンの有効性について、日常診療現場レベルでの追跡試験はこれまでほとんど行われていないという。

ビタミンB類、ω-3脂肪酸は、心血管疾患を予防しない:SU. FOL. OM3試験

 虚血性心疾患や虚血性脳卒中の既往歴を有する患者における心血管疾患の予防では、ビタミンB類やオメガ(ω)-3脂肪酸を含むサプリメントのルーチンな使用は推奨されないことが、フランス・パリ第13大学衛生医学研究所(INSERM)のPilar Galan氏らが実施した「SU. FOL. OM3」試験で示された。心血管疾患の発症は、ビタミンB類(葉酸、ビタミンB6)やω-3多価不飽和脂肪酸の摂取あるいはその血漿濃度と逆相関を示すことが観察試験で報告されている。しかし、無作為化試験ではビタミンB類の血管疾患に対する有意な作用は確認できず、ω-3多価不飽和脂肪酸の臨床試験では相反する結果が得られているという。BMJ誌2011年1月1日号(オンライン版2010年11月29日号)掲載の報告。

心血管疾患の生涯リスクを予測する新たなQRISKモデル

新たに開発されたQRISKの心血管疾患に関する生涯リスクスコア(http://www.qrisk.org/lifetime/)は、従来のQRISKモデルの10年リスクスコアでは確認し得ない、より若い年齢層における高リスク例の同定を可能にすることが、イギリス・Nottingham大学プライマリ・ケア科のJulia Hippisley-Cox氏らの検討で示された。QRISK2などのリスク予測アルゴリズムは、通常、心血管疾患の10年絶対リスク≧20%の場合に高リスク例と判定しているが、この20%という閾値では、若年者のうち10年絶対リスクは低いものの相対的に高リスクな例を見逃す懸念がある。生涯リスクによる予測は、特に若年例についてより多くの情報をもたらし、マネジメントの決定やライフスタイルの改善に役立つ可能性があるという。BMJ誌2011年1月8日号(オンライン版2010年12月9日号)掲載の報告。

低用量アスピリンの常用、がん死リスクを長期に抑制

低用量アスピリンの毎日服用により、食道がん、膵がん、肺がん、胃がん、結腸・直腸がん、前立腺がんなどの主要ながんによる死亡が有意に抑制されることが、イギリス・オックスフォード大学脳卒中予防研究部門のPeter M Rothwell氏らが実施した血管イベント予防に関する無作為化試験のメタ解析で示された。すでに、アスピリンを5年以上毎日服用すると結腸・直腸がんのリスクが低減することが無作為化試験などで示されている。加えて、アスピリンは他臓器のがん、特に消化管のがんのリスクを抑制する可能性を示唆するエビデンスがあるが、ヒトでは確証されていないという。Lancet誌2011年1月1日号(オンライン版2010年12月7日号)掲載の報告。

ヨーロッパにおけるC. Difficile感染の現況:34ヵ国106施設の調査から

 ヨーロッパにおけるClostridium difficileの分離株は、北米で多いとされるPCRリボタイプ027よりも014/020、001、078、018、106の頻度が高く、重篤な病態のアウトカムと関連するPCRリボタイプとして018や056が重要なことが、オランダ感染症制御センターのMartijn P Bauer氏らによる調査で明らかとなった。2003年初め、カナダとアメリカでC. Difficile感染の増加と病態の重篤化が報告され、その一因としてPCRリボタイプ027に属するフルオロキノロン系抗菌薬抵抗性株の蔓延が指摘されている。ヨーロッパでは、2005年にイギリスから初めて027の報告がなされ、直後にオランダでも発見されたが、C. Difficileの院内感染の実態はほとんどわかっていないという。Lancet誌2011年1月1日号(オンライン版2010年11月16日号)掲載の報告。

軽症慢性収縮性心不全へのエプレレノン追加投与、死亡・入院リスクを約4割低減

軽症の慢性収縮性心不全患者に対し、エプレレノン(本邦では「セララ錠」として高血圧症のみ適応)を従来の治療に加え投与すると、心血管系疾患死または心不全による入院リスクが4割近く低減することが、無作為化プラセボ対照二重盲検試験「EMPHASIS-HF」試験グループにより示された。これまで、重症の慢性収縮性心不全や心筋梗塞後の心不全患者への追加投与については、同リスクが低減することは明らかになっていた。NEJM誌2011年1月6日号(オンライン版2010年11月14日号)掲載より。

患者中心の協同介入がうつ病と慢性疾患のコントロールをともに改善

うつ病は、糖尿病や冠動脈心疾患患者で多くみられ、セルフケア力を弱めるため、合併症や死亡のリスク因子になっているという。また、これら複数の慢性疾患を有する患者は多くの医療コストも必要とする。そこで米国ワシントン大学精神・行動学部門のWayne J. Katon氏らは、プライマリ・ケアベースで複数疾患の疾病管理を、患者中心で協同介入することが、これら患者の疾病管理を改善するかどうかを検討する単盲検無作為化対照試験を行った。結果、内科的疾患、うつ病ともにコントロールの改善が認められたという。NEJM誌2010年12月30日号掲載より。

小児期てんかん発症者の長期死亡率は一般集団の3倍

小児期にてんかんを発症した人の死亡率は、一般集団死亡率と比べて3倍高く、てんかんに関連した死亡リスクが55%を占めることが明らかになった。フィンランド・トゥルク大学病院小児神経科部門のMatti Sillanpaa氏らによる住民ベースのコホート研究の結果による。これまで、小児期にてんかんを診断された患児の長期死亡率を前向きに追跡した研究はほとんど行われていなかった。NEJM誌2010年12月23日号掲載より。

足でお酒が飲めるというデンマークの都市伝説は……

デンマークには、「ウォッカに足を沈めることで酔っぱらうことができる」という都市伝説があるという。デンマーク・Hillerod病院循環器・内分泌科のChristian Stevns Hansen氏らは、その伝説を検証するオープンラベルの実証試験「Peace On Earth」を行った。結果、伝説は伝説でしかなかったが、あくまでウォッカに沈めた場合に限った話で、もっと強いお酒やジュースとお酒とを飲んだ場合はわからないため、新たな楽しみ(たとえば眼球飲酒)も浮かび上がったと結論している。本論は、BMJ誌年末恒例のクリスマス特集論文の1本で、2010年12月18日号(オンライン版2010年12月14日号)に掲載された。

優れた臨床家は、睡眠、健康と表情の手がかりを結び付ける術を知っている

観察することの訓練を受けていない人でも、睡眠不足の人を見ると、その人がきちんと寝ている時に比べ、健康を損ない魅力を失い、くたびれていると見て取れることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJohn Axelsson氏らによって実証された。Axelsson氏は、「この結果は、人が社会性や臨床的な判断をされる際に、見た目が影響していることを示すものである」としたうえで、「臨床診断において見た目がどれほど影響しているかを理解することの根拠となり、ひいては対診の際に見た目を情報として付加できる根拠ともなる」と結論している。本論は、BMJ誌年末恒例のクリスマス特集論文の1本で、2010年12月18日号(オンライン版2010年12月14日号)に掲載された。