ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:19

四肢骨折の手術部位感染予防、最適な皮膚消毒薬は?/NEJM

 四肢骨折の手術部位感染予防における手術前の皮膚消毒では、閉鎖骨折の場合は、クロルヘキシジングルコン酸塩のアルコール溶液と比較して、ヨウ素ポバクリレックスのアルコール溶液は有効性が高い一方で、開放骨折ではこのような差はないことが、カナダ・マクマスター大学のSheila Sprague氏らが実施した「PREP-IT試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年2月1日号に掲載された。  PREP-IT試験は、四肢骨折の手術部位の感染予防における手術前の皮膚消毒として、2種のアルコールベースの消毒薬の有効性と安全性の評価を目的とするクラスター無作為化クロスオーバー試験であり、米国とカナダの25の病院で行った(米国患者中心アウトカム研究所[PCORI]などの助成を受けた)。

神経発達障害リスク、中等度/後期早産児で高い/BMJ

 正期産(在胎期間39週0日~40週6日)で出生した子供と比較して、中等度早産(同32週0日~33週6日)および後期早産(同34週0日~36週6日)で出生した子供は、有害な神経発達アウトカムのリスクが高く、このリスクは在胎週数32週から41週まで徐々に低下することが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のAyoub Mitha氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年1月24日号で報告された。  本研究は、異なる在胎週数で出生した子供における長期的な神経発達アウトカムの評価を目的とするスウェーデンの全国規模のコホート研究である(スウェーデン・カロリンスカ研究所研究基金などの助成を受けた)。  解析には、Swedish Medical Birth Registerといくつかの全国的な登録システムのデータを用いた。対象は、1998~2012年に、在胎期間32週0日~41週6日の単胎の生児として出生し、先天奇形のない子供128万1,690人であった。

母乳最低限の超早産児の神経発達、ドナーミルクvs.早産児用粉ミルク/JAMA

 最小限の母乳しか与えられなかった超早産児は、ドナーミルクまたは早産児用粉ミルクのいずれを与えられても、修正月齢22~26ヵ月時点の神経発達アウトカムに差異は認められなかった。米国・アイオワ大学のTarah T. Colaizy氏らが、Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development Neonatal Research Networkに参加している米国の大学医療センター15施設で実施した無作為化二重盲検臨床試験「MILK試験」の結果を報告した。出生後入院中の超早産児の母乳育児は、早産児用粉ミルクと比較して神経発達の良好なアウトカムと関連しているが、母乳をまったく与えていない、または最小限しか与えていない超早産児において、ドナーミルクが早産児用粉ミルクと同様の神経発達上の利点をもたらすかは不明であった。JAMA誌オンライン版2024年1月30日号掲載の報告。

論文での生成AI使用、投稿雑誌のガイドライン整備状況は?/BMJ

 著者による生成人工知能(generative artificial intelligence:生成AI)の使用に関して、一部の大手出版社や雑誌によるガイドラインが不足しており、ガイドラインを提示していても許容される生成AIの使用やその開示方法は大きく異なり、出版社と提携雑誌間でガイドラインの不均一性が存在している場合があるという。米国・南カルフォルニア大学のConner Ganjavi氏らが、学術出版社および科学雑誌による著者に対する生成AI使用のガイダンスの範囲と内容を明らかにすることを目的に、横断的な計量書誌学的研究を行った結果を報告した。2022年後半以降、ChatGPTを含む生成AIツールが学術論文や研究で広く利用されるようになり、出版社、雑誌、監督官庁のメンバーを含む出版エコシステム(publishing ecosystem)の関係者は、この新しいテクノロジーを監視し、安全に使用する方法について議論をしている。著者は、「標準化の欠如は、著者への負担につながり、規制の効果を限定的なものとする可能性がある。生成AIの人気が拡大し続ける中、研究成果の科学的誠実性を確保し続けるためにも標準化されたガイドラインが必要となる」とまとめている。BMJ誌2024年1月31日号掲載の報告。

GLP-1受容体作動薬、血糖値や体重減少効果が高いのは?~76試験メタ解析/BMJ

 中国・北京中医薬大学のHaiqiang Yao氏らが成人の2型糖尿病患者を対象としたGLP-1受容体作動薬の76試験をネットワークメタ解析した結果、プラセボと比べ、チルゼパチドによるヘモグロビンA1c(HbA1c)と空腹時血糖値の低下が最も大きく、血糖コントロールの有効性が最も高いGLP-1受容体作動薬であることが示された。また、GLP-1受容体作動薬は体重管理も大幅に改善することが示され、なかでも体重減の効果が最も大きかったのはCagriSema(セマグルチドとcagrilintideの合剤)だった。一方で、GLP-1受容体作動薬は、とくに高用量の投与で消化器系の有害事象がみられ、安全性について懸念があることも明らかになったという。BMJ誌2024年1月29日号掲載の報告。

ニーマン・ピック病C型へのN-アセチル-L-ロイシン、神経学的状態を改善/NEJM

 ニーマン・ピック病C型(NPC)の患者において、リソソームと代謝の機能障害改善が期待されるN-アセチル-L-ロイシン(NALL)による12週間の治療はプラセボと比較し、神経学的状態を改善したことが、スイス・ベルン大学のTatiana Bremova-Ertl氏らが、60例を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検クロスオーバー試験の結果で示された。NPCは、進行性、衰弱性、早期致死性の常染色体劣性遺伝性リソソーム蓄積症(ライソゾーム病)で、発症頻度は10万人に1人(本邦では12万に1人)と報告される希少疾病である。現行では、ミグルスタットによる薬物治療があるが進行抑制に限定され、欧州連合(EU)と本邦を含むいくつかの国では承認されているが、米国では未承認である。NALLの有効性と安全性を評価した今回の結果について著者は、「さらなる検討で長期の有効性を確認する必要がある」とまとめている。NEJM誌2024年2月1日号掲載の報告。

強迫症患者に多い/少ない死因は?/BMJ

 強迫症(OCD)患者はOCD非罹患者と比較して、さまざまな自然死因による死亡のリスクが上昇しており、その多くは非伝染性で予防可能なものである一方で、自殺や事故といった外因死の寄与が大きく、新生物による死亡リスクはむしろ低いことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のLorena Fernandez de la Cruz氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年1月17日号で報告された。   研究グループは、スウェーデンのOCD患者における全死因死亡と原因別死亡のリスクの評価を目的に、2つのコホートでOCD罹患者と非罹患者の比較を行った(Swedish Research Council for Healthなどの助成を受けた)。

医療者の体重減少、1年以内のがん罹患リスク高い/JAMA

 過去2年以内に体重減少がみられなかった集団と比較して、この間に体重減少を認めた集団では、その後の12ヵ月間にがんに罹患するリスクが有意に高く、とくに上部消化管のがんのリスク増大が顕著なことが、米国・ハーバード大学医学大学院のQiao-Li Wang氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2024年1月23/30日号に掲載された。  研究グループは、米国のNurses’ Health Study(NHS)に参加した40歳以上の女性看護師(追跡期間1978年6月~2016年6月)と、Health Professionals Follow-Up Study(HPFS)に参加した40歳以上の男性医療従事者(追跡期間1988年1月~2016年1月)のデータを用いた前向きコホート研究を行った(NHSとHPFSは米国国立衛生研究所[NIH]の助成を、今回の解析はSwedish Research Councilなどの助成を受けた)。

先天性難聴児、遺伝子治療で聴力回復/Lancet

 常染色体劣性難聴9(DFNB9)の小児の治療において、ヒトOTOF遺伝子導入アデノ随伴ウイルス血清型1型(AAV1-hOTOF)を用いた遺伝子治療は、安全かつ有効であり、新たな治療法となる可能性があることが、中国・復旦大学のJun Lv氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年1月24日号に掲載された。  本研究は、中国の1施設(復旦大学附属眼耳鼻喉科医院)で行われた単群試験であり、2022年10月~2023年6月に参加者のスクリーニングを行った(中国国家自然科学基金委員会などの助成を受けた)。

肩関節脱臼のリハビリテーション、理学療法は有効か?/BMJ

 外傷性肩関節前方脱臼の急性期リハビリテーションにおいて、自己管理を支援する助言のみを受けた患者と比較して、助言に加えて個々の患者の病態に合わせて調整した理学療法を行っても、6ヵ月後の肩関節機能は改善せず、合併症プロファイルは両群で同程度であることが、英国・ブリストル大学のRebecca S. Kearney氏らが実施した「ARTISAN試験」で示された。研究の詳細は、BMJ誌2024年1月17日号で報告された。  ARTISAN試験は、英国の国民保健サービス(NHS)トラストが運営する41施設で実施した実践的な無作為化対照比較試験であり、2018年11月~2022年3月に参加者を募集した(英国国立衛生研究所[NIHR]の助成を受けた)。

CD55欠損症(CHAPLE症候群)、pozelimabが有効/Lancet

 補体因子C5に対する完全ヒト型IgG4P抗体であるpozelimabの皮下投与は、補体の過剰活性化を阻害し、CD55欠損症(CHAPLE症候群)の臨床症状および検査所見を消失させたことが、トルコ・マルマラ大学のAhmet Ozen氏らによる第II相および第III相多施設共同非盲検単群ヒストリカル対照試験の結果で示された。CD55欠損症は、CHAPLE(CD55 deficiency with hyperactivation of complement, angiopathic thrombosis, and protein-losing enteropathy)症候群とも呼ばれ、補体の過剰な活性化による腸管のリンパ管障害、リンパ管拡張症および蛋白漏出性胃腸症を特徴とするきわめてまれな生命を脅かす遺伝性疾患である。この希少遺伝性疾患であるCHAPLE症候群に対して、pozelimabは現時点での最初で唯一の治療薬として見いだされ、有効性と安全性の評価が行われた。著者は、「既知の原因が除外された蛋白漏出性胃腸症の患者では、CD55欠損症の検査を考慮し、CHAPLE症候群と診断された場合は早期にpozelimabによる治療を検討すべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年1月23日号掲載の報告。

前立腺がん治療10年後の排尿・性機能、治療法による違いは?/JAMA

 限局性前立腺がん患者の治療後10年間の追跡調査の結果、ベースラインで受けた治療に応じて予後良好群に分類した患者では、前立腺全摘除術は外照射放射線療法(EBRT)または積極的監視療法と比較し、尿失禁が悪化したが性機能の悪化は認められなかった。予後不良群に分類した患者では、前立腺全摘除術はEBRT+アンドロゲン除去療法(ADT)併用療法と比較し、尿失禁が悪化したが性機能の悪化は認められなかった。しかし、EBRT+ADT併用療法は前立腺全摘除術と比較し、排便およびホルモン機能の悪化がみられたという。米国・バンダービルト大学医療センターのBashir Al Hussein Al Awamlh氏らが、観察コホート研究「CEASAR研究」の結果を報告した。JAMA誌2024年1月23・30日号掲載の報告。

悪性黒色腫への個別化mRNAワクチン+ペムブロリズマブの効果は?(KEYNOTE-942)/Lancet

 完全切除後の高リスク悪性黒色腫に対する術後補助療法として、個別化mRNAがんワクチンmRNA-4157(V940)とペムブロリズマブの併用療法は、ペムブロリズマブ単剤療法と比較し、無再発生存期間(RFS)を延長し、安全性プロファイルは管理可能であった。米国・Laura and Isaac Perlmutter Cancer Center at NYU Langone HealthのJeffrey S. Weber氏らが、米国およびオーストラリアで実施した第IIb相無作為化非盲検試験「KEYNOTE-942試験」の結果を報告した。免疫チェックポイント阻害薬は、切除後のIIB~IV期悪性黒色腫に対する標準的な術後補助療法であるが、多くの患者が再発する。mRNA-4157は、脂質ナノ粒子製剤中に最大34個のネオアンチゲンをコードするmRNAを含む個別化ワクチンで、個人の腫瘍mutanomeとヒト白血球抗原(HLA)タイプに特異的に合わせて調製されている。著者は、「今回の結果は、mRNAに基づく個別化ネオアンチゲン療法の術後補助療法における有益性を示すエビデンスとなる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年1月18日号掲載の報告。

超早産児の動脈管開存症、イブプロフェンによる早期治療は無益/NEJM

 超早産児の動脈管開存症(PDA)の治療において、早期のイブプロフェン投与はプラセボと比較し、最終月経後年齢36週時における死亡または中等度~重度気管支肺異形成症のリスクを低下させないことが示された。英国・ダラム大学のSamir Gupta氏らが、英国の新生児集中治療室(NICU)32施設で実施した多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。シクロオキシゲナーゼ阻害薬であるイブプロフェンは、早産児のPDA治療に使用できるが、大きなPDAへの選択的早期治療が、短期アウトカムを改善するかどうかは不明であった。NEJM誌2024年1月25日号掲載の報告。

切除可能III期NSCLC、toripalimab併用で無イベント生存期間が改善/JAMA

 切除可能なStageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療では、周術期の化学療法にtoripalimab(プログラム細胞死タンパク質1のヒト化IgG4Kモノクローナル抗体)を追加すると、化学療法単独と比較して、無イベント生存期間が有意に改善し、安全性プロファイルは管理可能であることが、中国・上海交通大学のShun Lu氏らが実施した「Neotorch試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2024年1月16日号に掲載された。  Neotorch試験は、中国の50施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年3月12日~2023年6月19日に参加者を登録した(中国・Shanghai Junshi Biosciencesの助成を受けた)。

HIV感染妊婦のマラリア予防、間欠的予防療法の追加が有効/Lancet

 スルファドキシン/ピリメタミン耐性が高度で、通年性のマラリア感染がみられる地域において、ドルテグラビルをベースとする抗レトロウイルス薬の併用療法(cART)を受けているHIV感染妊婦に対するマラリアの化学予防では、コトリモキサゾール連日投与による標準治療への、dihydroartemisinin-piperaquine月1回による間欠的予防療法の追加は、これを追加しない場合と比較して、分娩までのマラリア原虫(Plasmodium属)の活動性感染のリスクが有意に低下することが、ケニア中央医学研究所のHellen C. Barsosio氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年1月12日号で報告された。

新型コロナ、ワクチン接種不足で重症化リスク増/Lancet

 英国において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン接種が推奨回数に満たないワクチン接種不足者が、2022年6月時点の同国4地域別調査で32.8~49.8%に上り、ワクチン接種不足が重症COVID-19のリスク増加と関連していたことが、英国・エディンバラ大学のSteven Kerr氏らHDR UK COALESCE Consortiumが実施したコホート研究のメタ解析の結果で示された。ワクチン接種不足は完全接種と比較して、COVID-19による入院や死亡といった重症アウトカムのリスク増大と関連している可能性がある。研究グループは、ワクチン接種不足の要因を特定し、ワクチン接種不足者の重症COVID-19のリスクを調査する検討を行った。Lancet誌オンライン版2024年1月15日号掲載の報告。

進行慢性疾患の高齢入院患者、緩和ケア相談は有益か?/JAMA

 進行した慢性疾患を有する高齢患者の入院時に、緩和ケア相談がデフォルトでオーダーされていても在院日数を短縮しなかったが、緩和ケア提供の増加や迅速化ならびに終末期ケアの一部のプロセスは改善した。米国・ペンシルベニア大学のKatherine R. Courtright氏らによる、プラグマティックなステップウェッジクラスター無作為化試験の結果が報告された。入院患者への緩和ケア提供の増加が優先課題となっているが、その有効性に関する大規模で実験的なエビデンスは不足していた。JAMA誌2024年1月16日号掲載の報告。

性腺機能低下症のテストステロン補充、骨折リスクを増大/NEJM

 性腺機能低下症の中年以上の男性において、テストステロン補充療法はプラセボと比較し臨床的骨折の発生率を低下させることはなく、むしろ同発生率は数値的には増加していた。米国・ペンシルベニア大学のPeter J. Snyder氏らが、テストステロン補充療法の心血管安全性を評価した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「TRAVERSE試験」のサブ試験の結果を報告した。性腺機能低下症の男性におけるテストステロン補充療法は、骨密度や骨質を改善することが報告されているが、骨折リスクを減少させるかどうかの判断には十分な症例数と期間による試験が必要であることから、TRAVERSE試験のサブ試験として検討が行われていた。NEJM誌2024年1月18日号掲載の報告。

米国の乳がん死亡率の低下、治療の変化との関連は?/JAMA

 米国の乳がん死亡率は、乳がんのスクリーニングと治療の改善によって、1975年から2019年までに58%低下したことが、米国・スタンフォード大学のJennifer L. Caswell-Jin氏らによるシミュレーションモデル研究で示された。シミュレーションでは、StageI~IIIの乳がんの治療が、47%の低下に寄与していることが示された一方で、転移のある乳がんについては、治療の寄与は29%、スクリーニングの寄与は25%であった。米国における乳がん死亡率は、1975年から2019年の間に減少したことが報告されていたが、転移のある乳がん治療の変化と乳がん死亡率低下との関連はわかっていなかった。JAMA誌2024年1月16日号掲載の報告。