ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:231

血圧変動が大きい高齢者は認知機能が不良/BMJ

 心血管疾患リスクを持つ高齢者では、平均血圧とは無関係に、診察室血圧の変動が大きい集団で認知機能が不良であることが、オランダ・ライデン大学医療センターのBehnam Sabayan氏らが実施したPROSPER試験で示された。血圧変動は心血管イベントの独立のリスク因子とされる。また、診察室血圧の変動が大きいほど、無症候性および臨床的に明らかな脳血管障害のリスクが高くなることが知られている。BMJ誌オンライン版2013年7月29日号掲載の報告。

インターネット研修、抗菌薬処方を抑制/Lancet

 プライマリ・ケア医に対しインターネットを利用した気道感染症治療に関する2つの研修を行うことで、抗菌薬の処方率が大幅に抑制されることが、英国・サザンプトン大学のPaul Little氏らGRACEコンソーシアムの検討で示された。プライマリ・ケアにおける大量の抗菌薬処方は、薬剤耐性の重大な促進要因とされる。処方は医師や患者への教育によって低下する可能性があるが、高度に訓練された教育担当員を要する場合が多いことから、簡便で効果的な研修法の開発が望まれている。Lancet誌オンライン版2013年7月31日号掲載の報告。

末梢動脈疾患、21世紀の世界的な重要課題に/Lancet

 末梢動脈疾患(PAD)の世界的な有病率は21世紀初頭の10年ほどで20%以上増加し、2010年の患者数は2億人以上に及ぶことが、英国・エジンバラ大学のF Gerald R Fowkes氏らの調査で示された。喫煙が最大のリスク因子であることもわかった。世界的な人口の高齢化や、低~中所得国における慢性疾患のリスク因子の広がりにより、今後10年間で非伝染性疾患の疾病負担の急激な上昇が予測されている。なかでも下肢のPADは、アテローム性動脈硬化症に起因する心血管疾患として、冠動脈疾患、脳卒中に次いで3番目に多く、その世界的な罹患状況の把握が急がれていた。Lancet誌オンライン版2013年8月1日号掲載の報告。

てんかん患者の若年性死亡リスクは11倍/Lancet

 てんかん患者の若年性死亡リスクは、そうでない人に比べ、11倍超に増大することが明らかになった。外因性の死亡は15.8%で、そのうち75.2%において、うつ病など精神疾患の共存症が認められた。英国・オックスフォード大学ウォーンフォード病院のSeena Fazel氏らが、約7万人のてんかん患者について調べた検討で明らかにしたもので、Lancet誌オンライン版2013年7月19日号で発表した。

情報提供でプライマリでの抗菌薬使用が3割低下/BMJ

 急性呼吸器感染症への抗菌薬処方について、特別に訓練を受けた一般開業医が訓練を受けていない一般開業医に対して情報提供をすることで、同割合がおよそ3割低下した。抗菌薬を処方した場合でも、より狭域な抗菌薬であるペニシリンV投与の割合が増加した。ノルウェー・オスロ大学のSvein Gjelstad氏らが、400人弱の一般開業医を対象に行った無作為化試験の結果で、現状では急性呼吸器感染症に対し、過度な抗菌薬処方が広く行われているという。BMJ誌オンライン版2013年7月26日号掲載の報告より。

血小板反応性とステント血栓症発生との関連が明確に/Lancet

 米国・コロンビア大学医療センターのGregg W Stone氏らは、冠動脈への薬剤溶出性ステント留置が成功した患者への、アスピリンとクロピドグレル(商品名:プラビックス)併用療法時の血小板反応性と臨床転帰との関連について調べた。その結果、アスピリン、クロピドグレルそれぞれの高い血小板反応性とステント血栓症などの発生との違いについて明らかにした。ステント血栓症の発生は心筋梗塞や死亡の高率な発生と関係しているが、植え込み後の血小板反応性とステント血栓症や大出血、その他の重大事象との関連については明確にはされていなかった。今回の結果を受けて著者は、「より高い抗血小板のベネフィットが得られるよう、安全な薬剤あるいは強力な薬剤使用のテーラーメイド戦略を開発しなければならない」と提言している。Lancet誌オンライン版2013年7月26日号掲載の報告より。

高齢者の障害リスク、不健康な生活習慣により増大/BMJ

 不健康な生活習慣は身体障害リスクを増大し、そのリスクは不健康な生活習慣の数が多いほど上昇することが、フランス・INSERMのFanny Artaud氏らによる同国高齢者を対象としたコホート研究データからの解析の結果、明らかになった。これまで、不健康な生活習慣およびその数が慢性疾患や突然死などのリスクを高めることは示されていたが、障害との関連について調べた研究はほとんどなかった。BMJ誌オンライン版2013年7月23日号の掲載報告より。

腎結石の女性、CHDリスクが増大/JAMA

 腎結石を有する女性は冠動脈心疾患(CHD)のリスクが有意に増大しているが、男性にはこのような関連は認めないとの研究結果が、JAMA誌2013年7月24日号に掲載された。これまでの検討では、腎結石の既往歴とCHDリスクの上昇との関連について一貫性のある結果は得られていないという。今回、イタリア・Columbus-Gemelli病院(ローマ市)のPietro Manuel Ferraro氏らは、米国の医療従事者を対象とした3つの大規模な前向きコホート試験のデータを解析した。

semagacestat、AD患者の認知機能を改善せず/NEJM

 γセクレターゼ阻害薬semagacestatは、アルツハイマー型認知症(AD)患者の認知機能を改善せず、皮膚がんなどのリスクを増大させる可能性があることが、米国・ベイラー医科大学のRachelle S Doody氏らの検討で示された。この結果を受けて試験は早期中止となった。論文はNEJM誌2013年7月25日号に掲載された。ADの原因物質とされるアミロイドβ(Aβ)蛋白は、アミロイド前駆体蛋白(APP)からβセクレターゼおよびγセクレターゼにより切断されて産生される。semagacestatはγセクレターゼを阻害する低分子化合物である。

新規sGC刺激薬リオシグアト、肺高血圧症に有効/NEJM

 リオシグアト(本邦では承認申請中)は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者の運動能を改善し、肺血管抵抗やN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)などの改善をもたらすことが、ドイツ・ギーセン大学のHossein-Ardeschir Ghofrani氏らが行ったPATENT-1試験で示された。リオシグアトは可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬と呼ばれる新たなクラスの薬剤で、内因性の一酸化窒素(NO)に対するsGCの反応性を高める作用、およびNOの刺激がない状態での直接的なsGC刺激作用という2つの作用機序を持ち、第1相、第2相試験でPAH患者の血行動態や運動能の改善効果が確認されていた。NEJM誌2013年7月25日号掲載の報告。

加齢黄斑変性、2つのVEGF阻害薬の効果は同等/Lancet

 滲出型加齢黄斑変性の治療において、ラニビズマブ(商品名:ルセンティス)とベバシズマブ(同:アバスチン、わが国では加齢黄斑変性に対しては未承認)の効果に差はないことが、IVAN試験の2年間の追跡結果により示された。英国・クイーンズ大学ベルファストのUsha Chakravarthy氏らが、Lancet誌オンライン版2013年7月19日号で報告した。本症の治療ではラニビズマブが標準とされるが、ベバシズマブも同等の効果を持つ可能性が示唆されている。ベバシズマブは医療コストの面で優れるが、安全性に課題が残るとされている。

高齢者の認知症リスクに世代間格差/Lancet

 英国3地域で、1989~1994年と2008~2011年の認知症有病率を同一の方法で調べ、そのデータを基に同有病率の予測値を割り出したところ、最近の高齢者のほうが以前の高齢者に比べて認知症リスクが低いことが示された。英国・ケンブリッジ大学のFiona E Matthews氏らが行ったコホート研究の結果、報告された。認知症の有病率は世界的に関心が高く、将来のケア体制整備のためにも、同年齢の人がどれぐらい認知症になるかの推計が必要だが、英国においてはそのエビデンスは10年以上更新されていなかったという。そこで、1989年に始まった英国での認知機能と加齢についてのオリジナル研究「MRC CFAS」を基に、20年後に同一地域・同一方法で認知症有病率を調べ、同有病率に変化があったかを調べた。Lancet誌オンライン版2013年7月16日号掲載の報告より。

PCV7ワクチン導入効果は10年後も持続、高齢者への間接効果も/NEJM

 2000年に米国で導入された7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)の小児への接種の効果について、肺炎関連入院の減少効果が、10年後も持続していることが、米国・ヴァンダービルト大学のMarie R. Griffin氏らによる調査の結果、報告された。また直接接種をしていない成人についても減少が認められ、とくに85歳以上高齢者について大幅な減少が確認されたという。米国においてPCV7の導入は、接種対象の若年小児以外にも年長小児や成人における“ワクチン血清型”の侵襲性肺炎球菌疾患の発生率を大幅に低下させた。2004年時点の調査では、若年小児のあらゆる肺炎関連入院が顕著に減少したことが確認されていた。しかし一方で増加が報告されていた“非ワクチン血清型”の侵襲性肺炎球菌疾患についての懸念から、PCV7導入の長期的効果および高齢者への効果についての評価が待たれていた。NEJM誌2013年7月11日号掲載の報告より。

無作為化試験の解析プラン、公表試験とレジストリ等での不一致は47%/BMJ

 無作為化試験の主要アウトカムの報告において、ベースラインや解析方法について広範で多様な補正(adjustment)が行われていることが、米国・スタンフォード大学のNazmus Saquib氏らによるメタ疫学研究の結果、明らかにされた。それら補正後の主要アウトカムを選択することで、名目上の結果の有意性が変わる可能性があり、著者は、「プロトコルにおいて、主要アウトカムについて補正プランがあることを明確にすべきであり、また解析は事前プランに準じて行われるべきである」と提言している。BMJ誌オンライン版2013年7月12日号掲載の報告。

心肺蘇生でのVSEコンビネーション療法、神経学的に良好な生存退院率を改善/JAMA

 心停止患者の蘇生処置について、心肺蘇生(CPR)中のバソプレシン+エピネフリンとメチルプレドニゾロンの組み合わせ投与および蘇生後ショックに対するヒドロコルチゾン投与は、プラセボ(エピネフリン+生理食塩水)との比較で、神経学的に良好な状態で生存退院率を改善することが明らかにされた。ギリシャ・アテネ大学のSpyros D. Mentzelopoulos氏らが無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間試験の結果、報告した。先行研究において、バソプレシン-ステロイド-エピネフリン(VSE)のコンビネーション療法により、自発的な血液循環および生存退院率が改善することが示唆されていたが、VSEの神経学的アウトカムへの効果については明らかではなかった。JAMA誌2013年7月17日号掲載の報告より。

低線量CT検診、高リスク者の肺がん死予防に有効/NEJM

 肺がんの低線量CT検診は、リスクが最も高い集団における肺がん死の予防に有効だが、低リスク集団では予防効果が低いことが、全米肺検診試験(NLST)で示された。米国・国立がん研究所のStephanie A Kovalchik氏らが、NEJM誌オンライン版2013年7月18日号で報告した。NLSTではすでに、低線量CTは胸部X線による検診に比べ、喫煙経験のある中高年者における肺がん死を20%抑制することが示されているが、肺がん死のリスク別の検討は行われていなかった。

肥満期間が長いと冠動脈心疾患リスクは増大する?/JAMA

 若年期から肥満がみられ肥満期間が長いほど、冠動脈石灰化(CAC)が促進され、中年期の冠動脈心疾患リスクの増大につながることが、米国・国立心肺血液研究所(NHLBI)のJared P Reis氏らの検討で示された。米国では過去30年間に肥満率が成人で2倍、青少年では3倍に上昇しており、若年の肥満者ほど生涯を通じて過剰な脂肪蓄積の累積量が多く、肥満期間が長くなるが、肥満の長期的な転帰に関する研究は少ないという。また、脂肪の蓄積量にかかわらず、全身肥満の期間が長期化するほど糖尿病罹患率や死亡率が上昇することが示されているが、肥満期間が動脈硬化の発症や進展に及ぼす影響については、これまで検討されていなかった。JAMA誌2013年7月17日号掲載の報告。

HER2陽性乳がんのトラスツズマブ至適投与期間は?/Lancet

 HER2陽性乳がんの術後補助療法において、HER2阻害薬トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)の投与期間を標準的な1年投与から2年投与に延長しても有効性は改善されないことが、欧州腫瘍学研究所(イタリア、ミラノ市)のAron Goldhirsch氏らが行ったHERA試験で示された。乳がんの約15~20%にHER2遺伝子の過剰発現や増幅がみられる。トラスツズマブは、これらHER2陽性早期乳がんに対する有効性が確立され、術後補助療法として広く用いられている。現在の標準的な投与期間は1年とされるが、至適な投与期間は確立されていない。Lancet誌オンライン版2013年7月18日号掲載の報告。

尿酸値の低下は虚血性心疾患を予防?/BMJ

 尿酸値の低下による心血管疾患予防効果が示唆されている。観察試験では尿酸値上昇と虚血性心疾患や血圧との関連が示されているが、交絡要因やバイアス、逆因果性のため解釈は困難だという。英国・ウォーリック大学のTom M Palmer氏らは、メンデル無作為化(Mendelian randomization)解析を用いて、これら観察試験の知見を検証し、尿酸と虚血性心疾患の因果関係を示すエビデンスは得られなかったとの結果を、BMJ誌オンライン版2013年7月18日号で報告した。

大豆プロテインの連日服用、前立腺がんの再発リスクを減少しない/JAMA

 前立腺がんの治療として根治的前立腺摘除を受け、再発リスクの高い人が、大豆蛋白質を主成分とするサプリメント(大豆プロテイン)を毎日服用しても、2年までの生化学的再発リスクを低下する効果はなかったことが示された。米国・イリノイ大学シカゴ校のMaarten C. Bosland氏らが、約180例について行った、プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で、JAMA誌2013年7月10日号で発表した。これまでの観察研究から、大豆の摂取が、前立腺がんの発症または再発リスクを減らすことは示唆されていた。しかし、実際に前立腺がんをエンドポイントとした無作為化試験において、同効果は実証されていなかったという。