ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:20

精度の低いAIは臨床医の誤診を増やす?/JAMA

 臨床医の診断精度は、標準的な人口知能(AI)モデルと一般的に用いられている画像ベースのAIモデルを提供された場合は向上するが、系統的に偏ったAIモデルを提供された場合は低下し、その影響は画像ベースのAIモデルで補うことはできなかったことが、米国・ミシガン大学のSarah Jabbour氏らによる検討で示された。AIは入院患者を診断する際に臨床医の助けになる可能性があるが、AIモデルの系統的な偏りは臨床医の診断精度を悪化させる可能性が示唆されており、最近の規制ガイドラインでは、AIモデルに、モデルによる誤りを軽減するための判断根拠の説明(AI explanations)を組み込むことを求めている。しかし、この戦略の有効性は確立されていなかった。JAMA誌2023年12月19日号掲載の報告。

肥満症へのチルゼパチドの効果、36週で中止vs.投与継続/JAMA

 過体重または肥満の集団において、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)/グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)共受容体作動薬であるチルゼパチドは、36週間の投与で20%以上の体重減少をもたらし、投与を中止すると体重が大幅に増加したが、投与継続により初期の体重減少を維持あるいはさらに増強することが、米国・Weill Cornell MedicineのLouis J. Aronne氏らが実施した「SURMOUNT-4試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年12月11日号に掲載された。

妊娠糖尿病、インスリン+メトホルミン vs.インスリン単独/JAMA

 2型糖尿病を有するまたは妊娠初期に2型糖尿病と新規に診断された妊婦において、インスリン療法にメトホルミンを追加しても新生児の複合有害アウトカムは減少しなかった。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のKim A. Boggess氏らが、米国の17施設で実施した無作為化二重盲検第III相試験「MOMPOD試験」の結果を報告した。既往または妊娠初期に診断された2型糖尿病を有する妊婦には、インスリンの投与が推奨されるが、インスリンへのメトホルミンの追加により新生児の有害アウトカムが改善する可能性が示唆されていた。JAMA誌2023年12月12日号掲載の報告。  研究グループは2017年6月~2021年11月に、単胎妊娠10週0日~22週6日で2型糖尿病を有する、または23週より前にインスリンを必要とする糖尿病と診断された、18~45歳の成人女性を対象とした。施設、妊娠週数(18週未満、18週以上)、糖尿病診断時期(既往、妊娠初期)で層別化し、メトホルミン(1,000mg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。全例がインスリンの投与を受け、それぞれ割り付けられた試験薬を出産まで1日2回経口投与した。

移植適応多発性骨髄腫の1次治療、ダラツムマブ上乗せでPFS延長/NEJM

 新規に診断された移植適応多発性骨髄腫患者において、ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(VRd)の導入/地固め療法+レナリドミド維持療法へのダラツムマブ皮下投与上乗せにより、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長した。オランダ・エラスムスMCがん研究所のPieter Sonneveld氏らが、欧州およびオーストラリアの14ヵ国115施設で実施された多施設共同無作為化非盲検第III相試験「PERSEUS試験」の結果を報告した。ヒト型抗CD38モノクローナル抗体のダラツムマブは、多発性骨髄腫に対する標準的な治療レジメンとして承認されているが、新規診断の移植適応多発性骨髄腫患者におけるダラツムマブ皮下投与とVRd併用療法の評価が求められていた。NEJM誌オンライン版2023年12月12日号掲載の報告。

食塊による食道完全閉塞、コーラで改善するか/BMJ

 オランダ・アムステルダム大学医療センターのE G Tiebie氏らは、多施設共同無作為化非盲検比較試験において、コーラの摂取は食塊による完全な食道閉塞の改善率を高めないことを報告した。食塊による完全な食道閉塞に対しては、現在、侵襲的で高額な医療費を伴う緊急内視鏡治療が望ましいとされ、ガイドラインでは内視鏡の施行が遅れないとの前提で内視鏡前の内科的治療が認められている。一方で、コホート研究や症例シリーズで、コーラの摂取により59~100%の患者で食塊による食道閉塞が改善したことが報告されていた。BMJ誌2023年12月11日クリスマス特集号「FOOD AND DRINK」掲載の報告

PDE5阻害薬、子供を増やす可能性/BMJ

 勃起不全の薬物治療の標的として確立しているホスホジエステラーゼ5(PDE5)の阻害は、遺伝学的に服用した男性の子供の数を増加させる可能性があることが、英国・ブリストル大学のBenjamin Woolf氏らの検討で示された。PDE5阻害薬は勃起不全の治療としてよく用いられているが、男性患者の生殖能力、性行動、主観的なウェルビーイングに及ぼす影響は不明であった。BMJ誌2023年12月12日クリスマス特集号「ANNUAL LEAVE」掲載の報告。

50~64歳へのインフルエンザワクチン、4価遺伝子組換えvs.標準用量/NEJM

 50~64歳の成人において、高用量の遺伝子組み換え4価インフルエンザワクチンは、鶏卵を用いた標準用量のワクチンに比べ、PCR検査で確認されたインフルエンザに対する防御効果が高いことが示された。米国・カイザーパーマネンテ・ワクチン研究センターのAmber Hsiao氏らが、163万例超を対象としたクラスター無作為化観察試験の結果を報告した。遺伝子組み換え4価インフルエンザワクチンには鶏卵を用いた標準用量のワクチンの3倍量のヘマグルチニン蛋白が含まれており、遺伝子組み換え製剤は製造過程の抗原ドリフトに影響を受けにくい。65歳未満の成人におけるインフルエンザ関連アウトカムについて、遺伝子組み換えワクチンを標準用量のワクチンと比較した相対的有効性に関するデータが求められていた。NEJM誌2023年12月14日号掲載の報告。

18歳未満の家族性高コレステロール血症への診断アプローチは?/Lancet

 世界では毎年約45万例の子供が家族性高コレステロール血症を患って誕生しているが、家族性高コレステロール血症の成人患者のうち、現行の診断アプローチ(成人で観察される臨床的特徴に基づく)により18歳未満で診断されるのは2.1%にすぎないという。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのKanika Inamdar Dharmayat氏らの研究グループ「European Atherosclerosis Society Familial Hypercholesterolaemia Studies Collaboration」らは、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体(HeFH)の小児・思春期患者の臨床的特性を明らかにする検討を行い、成人で観察される臨床的特徴が小児・思春期患者ではまれで、検出には低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値測定と遺伝子検査に依存せざるを得ないことを明らかにした。しかし、世界の医療水準は画一ではないことを踏まえて、「遺伝子検査が利用できない場合は、生後数年間のLDL-C値測定の機会とその数値の使用率を高められれば、現在の有病率と検出率のギャップを縮めることができ、脂質低下薬の併用使用を増やして推奨されるLDL-C目標値を早期に達成できるようになるだろう」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年12月12日号掲載の報告。

mRNAベースのRSVワクチン、高齢者への有用性を確認/NEJM

 mRNAベースのRSウイルス(RSV)ワクチン「mRNA-1345」について、60歳以上の高齢者への単回接種はプラセボとの比較において、明白な安全性の懸念が生じることなく、RSV関連下気道疾患およびRSV関連急性呼吸器疾患の発生率を低下したことが示された。米国・ModernaのEleanor Wilson氏らが、第II-III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験(22ヵ国で実施、現在進行中)の結果を報告した。高齢者におけるRSV感染が重大な疾患と死亡を増加させていることが報告されている。mRNA-1345は、安定化させたRSV融合前F糖蛋白をコードするmRNAベースのRSVワクチンで、臨床研究中の新たなワクチンである。NEJM誌2023年12月14日号掲載の報告。

重症好酸球性喘息、ベンラリズマブでコントロール良好ならICSは削減可/Lancet

 ベンラリズマブでコントロール良好な重症好酸球性喘息患者では、毎日投与の吸入コルチコステロイド(ICS)を大幅に削減可能であることが、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのDavid J. Jackson氏らによる、第IV相の多施設共同無作為化非盲検実薬対照試験「SHAMAL試験」の結果で示された。重症好酸球性喘息では、高用量のICSへの反応が不十分にもかかわらず、ICSの段階的強化がルーティンに行われている。生物学的製剤への反応が良好な患者では、ICSの用量低減が推奨されているが、これまで安全性を裏付けるエビデンスがほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2023年12月7日号掲載の報告。

合併症のない症候性胆石症、手術は省略可能?/BMJ

 合併症のない症候性胆石症患者の症状再発と合併症の予防において、保存的治療は標準治療である腹腔鏡下胆嚢摘出術と比較して、QOLに関して差はないものの短期的(18ヵ月)には有効で、費用対効果が優れることから、手術に代わる治療法となる可能性があることが、英国・NHS GrampianのIrfan Ahmed氏らが実施した「C-GALL試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年12月6日号に掲載された。  C-GALL試験は、英国の20の2次医療施設が参加した実践的な無作為化対照比較試験であり、2016年8月~2019年11月に患者の適格性の評価を行った(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術評価[HTA]プログラムなどの助成を受けた)。  年齢18歳以上で、2次医療施設に紹介された合併症のない症候性胆石症(胆石発作または急性胆嚢炎)で、胆嚢摘出術の適応と判定された患者を、保存的治療または腹腔鏡下胆嚢摘出術を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。

低リスク骨髄異形成症候群、imetelstatが有望/Lancet

 赤血球造血刺激因子製剤(ESA)が無効または適応とならない、多量の輸血を受けた低リスク骨髄異形成症候群(LR-MDS)の治療において、テロメラーゼ阻害薬imetelstatはプラセボと比較して、赤血球輸血非依存(RBC-TI)の割合が有意に優れ、Grade3、4の有害事象の頻度が高いものの管理可能であることが、ドイツ・ライプチヒ大学病院のUwe Platzbecker氏らが実施した「IMerge試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年12月1日号で報告された。  IMerge試験は、17ヵ国118施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年9月~2021年10月に患者の登録が行われた(Janssen Research & DevelopmentとGeronの助成を受けた)。

早期乳がん、術前MRIで術後放射線療法の省略を判定可能?(PROSPECT)/Lancet

 MRI検査で単病巣性の乳がん(unifocal breast cancer)が認められた病状良好な女性患者は、術後の放射線療法を安全に省略できることが示された。オーストラリア・王立メルボルン病院のGregory Bruce Mann氏らが、多施設共同前向き2アーム非無作為化試験「PROSPECT試験」の結果を報告した。早期乳がんに対する術後の乳房放射線治療は、標準的な乳房温存療法として行われているが、多くの女性にとって過剰治療となる可能性が示唆されている。また、乳房MRIは、局所腫瘍の最も感度の高い評価法である。本試験は、MRIと病理学的所見の組み合わせによって、放射線治療を安全に回避可能な局所乳がんを有する女性の特定が可能であることを見極める目的で行われた。Lancet誌オンライン版2023年12月5日号掲載の報告。

進行胃がん1次治療、CapeOXへのsintilimab上乗せでOS改善(ORIENT-16)/JAMA

 切除不能な局所進行または転移のある胃・胃食道接合部がんの1次治療において、化学療法へのsintilimabの上乗せはプラセボと比較して、すべての患者およびPD-L1複合陽性スコア(CPS)5以上の患者の全生存期間(OS)を有意に改善したことが示された。中国・Chinese PLA General HospitalのJianming Xu氏らが同国の62病院で行った第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ORIENT-16試験」の結果を報告した。胃・胃食道接合部がんと診断される人は、世界で年間100万人以上に上るが有効な治療はほとんどない。sintilimabは、プログラム細胞死1(PD-1)に結合する組換えヒトIgG4モノクローナル抗体で、化学療法との併用による有望な有効性が示されていた。JAMA誌2023年12月5日号掲載の報告。

重症ARDS、ECMO中の腹臥位は無益/JAMA

 重症急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で静脈脱血・静脈送血の体外式膜型人工肺(VV-ECMO)による治療を受けている患者において、腹臥位療法は仰臥位療法と比較し、ECMO離脱成功までの期間を短縮しなかった。フランス・ソルボンヌ大学のMatthieu Schmidt氏らが、同国14施設の集中治療室(ICU)で実施した医師主導の無作為化並行群間比較試験「PRONECMO試験」の結果を報告した。腹臥位療法は重症ARDS患者の転帰を改善する可能性が示唆されているが、VV-ECMOを受けているARDS患者に対して、仰臥位療法と比較し臨床転帰を改善するかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2023年12月1日号掲載の報告。

FRα高発現プラチナ抵抗性卵巣がん、FRα標的ADC MIRVがOS・PFS改善(MIRASOL)/NEJM

 葉酸受容体α(FRα)高発現プラチナ製剤抵抗性の高異型度漿液性卵巣がん患者において、mirvetuximab soravtansine-gynx(MIRV)は、化学療法と比較して無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)および客観的奏効率(ORR)を有意に改善したことが、米国・オクラホマ大学ヘルスサイエンスセンターのKathleen N. Moore氏らにより21ヵ国253施設で実施された無作為化非盲検第III相試験「MIRASOL試験」の結果で示された。MIRVは、FRα抗体に微小管阻害剤を結合させたFRαを標的とするファーストインクラスの抗体薬物複合体で、米国では2022年11月14日に「SORAYA試験」の結果に基づき、1~3レジメンの前治療のあるFRα高発現プラチナ製剤抵抗性卵巣がんの治療薬として、迅速承認されている。NEJM誌2023年12月7日号掲載の報告。

再発・進行子宮頸がん、アテゾリズマブ+ベバシズマブ+化学療法がOS・PFS改善(BEATcc)/Lancet

 転移、治療抵抗性、再発のいずれかを有する子宮頸がんにおいて、ベバシズマブ+プラチナ製剤を含む化学療法へのアテゾリズマブの上乗せは、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)ともに有意に延長することが、スペイン・バルデブロン腫瘍学研究所のAna Oaknin氏らが行った研究者主導の第III相無作為化非盲検試験「BEATcc試験」の結果で示された。転移のあるまたは再発の子宮頸がんに対しては、GOG240試験でベバシズマブ+化学療法が標準的な1次治療として確立されており、今回のBEATcc試験(ENGOT-Cx10/GEICO 68-C/JGOG1084/GOG-3030)ではこれに加えて免疫チェックポイント阻害薬の上乗せを評価した。結果を踏まえて著者は、アテゾリズマブの追加について「1次治療の新たな選択肢と見なすべきである」としている。Lancet誌オンライン版2023年12月1日号掲載の報告。

新規発症1型糖尿病へのバリシチニブ、β細胞機能を維持/NEJM

 発症100日以内の10~30歳の1型糖尿病患者に対し、バリシチニブの48週間経口投与は、プラセボ投与と比較して、混合食負荷後のC-ペプチド濃度で測定したβ細胞機能を維持すると思われることが、オーストラリア・St. Vincent's Institute of Medical ResearchのMichaela Waibel氏らによる第II相の二重盲検プラセボ対照無作為化試験で示された。バリシチニブなどJAK阻害薬は、サイトカインシグナル伝達を阻害することで、いくつかの自己免疫疾患に対して有効な疾患修飾薬である。バリシチニブが1型糖尿病のβ細胞機能を維持可能かどうかは明らかになっていなかった。NEJM誌2023年12月7日号掲載の報告。

外傷患者への人工呼吸器の深呼吸機能は有効か/JAMA

 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のリスク因子を有し、人工呼吸器による管理を受けている外傷患者では、通常ケア単独と比較して、通常ケアに人工呼吸器による深呼吸を追加しても、28日目まで人工呼吸器不要日数は増加しないが、死亡率は改善したとの結果が、米国・コロラド大学のRichard K. Albert氏らが実施した「SiVent試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年11月28日号で報告された。  SiVent試験は、米国の15の外傷治療施設が参加した実践的な無作為化試験であり、2016年4月~2022年9月の期間に患者の無作為化を行った(Department of Defense Peer-Reviewed Medical Research Program Clinical Trial Awardの助成を受けた)。  年齢18歳以上、人工呼吸器の使用時間が24時間未満の外傷患者で、ARDS発症の5つのリスク因子のうち1つ以上を有し、今後の人工呼吸器の使用時間が24時間以上、生存期間が48時間以上と予測される患者524例(平均年齢43.9[SD 19.2]歳、男性75.2%)を登録し、通常ケア+人工呼吸器による深呼吸を行う群(深呼吸群)に261例、通常ケアのみを行う群(通常ケア群)に263例を無作為に割り付けた。

急性中毒疑いの昏睡患者、非侵襲的気道管理は有効か/JAMA

 急性中毒が疑われる昏睡状態の患者では、気管挿管を行わない保存的な治療は通常治療と比較して、院内死亡、集中治療室(ICU)入室期間、入院期間の複合エンドポイントに関してより大きな臨床的有益性をもたらし、挿管に伴う有害事象や肺炎も少ないことが、フランス・ソルボンヌ大学のYonathan Freund氏らが実施した「NICO試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年11月29日号に掲載された。  NICO試験は、フランスの20の救急診療部と1つのICUが参加した非盲検無作為化臨床試験であり、2021年5月~2023年4月に患者の無作為化を行った(フランス保健省の助成を受けた)。