ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:335

末期COPDに対する肺移植、片肺よりも両肺移植で生存期間が延長

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の末期例に対する肺移植では、片肺移植よりも両肺移植のほうが生存期間が長いことが、パリ第7大学Bichat病院肺移植部のGabriel Thabut氏らの研究で明らかとなった。2006年のInternational Society for Heart and Lung Transplantationの国際登録に関する報告では、1995年1月~2005年6月に実施された肺移植のうち46%がCOPDの治療として行われているが、片肺と両肺移植のいずれがより有効かは不明であった。Lancet誌2008年3月1日号掲載の報告。

貧困家庭に対する資金援助プログラムが子どもの健康、成長、発達を改善

多くの国の政府が、健康、栄養、教育への介入による貧困家庭の環境改善を目的に、条件付き資金援助(conditional cash transfer; CCT)を実施している。米国California大学バークレー校公衆衛生学のLia C Fernald氏らは、メキシコで実施されたCCTプログラムOportunidadesの効果を評価、Lancet誌2008年3月8日号でその有効性を報告した。現在、世界には、成長、認知、社会情緒の発達が十分でない5歳以下の子どもが、2億人以上存在するという。

麻薬メトカチノン常用者に特徴的なパーキンソン様症候群はマンガンの作用

東ヨーロッパとロシアでは、違法合成麻薬メトカチノン(エフェドロン、ロシアでは通称cat等で知られる)の静注常用者に特徴的な錐体外路症候群が観察されている。ラトビアにあるリガ・ストラディン大学のAinars Stepens氏らのグループは、平均(±SD)6.7(±5.1)年にわたってメトカチノンを常用、錐体外路症状を呈していたラトビア成人23例について調査を行った。対象者が用いていたメトカチノンは、エフェドリンまたは偽エフェドリンの過マンガン酸カリウム酸化作用を用いて、家内製造されたものだった。NEJM誌2008年3月6日号より。

ワルファリンへの反応の違い、遺伝子異型と強く関連

血栓症の抗凝固療法でワルファリン(国内商品名:ワーファリンなど)を服用している患者の反応は、ワルファリン代謝酵素であるチトクロームP-450 2C9(CYP2C9)の遺伝異型と、ワルファリンの薬理学的標的のカギであるビタミンKエポキシド・レダクターゼ(VKORC1)の遺伝異型によって異なることが知られているが、これら異型の初回抗凝固療法で果たす役割についてはわかっていなかった。米国・ヴァンダービルト大学医学部のUte I. Schwarz氏らが報告。NEJM誌2008年3月6日号より。

合剤によるホルモン補充療法は介入中止後試験でもリスクがベネフィットを上回った

Women’s Health Initiative(WHI)試験は、米国国立衛生研究所(NIH)による閉経後女性(50~79歳、16,608人)を対象としたホルモン補充療法の大規模臨床試験。心臓疾患、股関節骨折、乳癌リスク増大を予防することを期待されたが2002年7月、健康リスクがベネフィットを上回ったため、平均追跡期間5.6年で中止となった。本論は、介入中止後3年(平均2.4)時の追跡調査の結果。JAMA誌2008年3月5日号より。

非ポリープ型も大腸癌の罹患率は高い

結腸直腸癌(大腸癌)は米国における癌死亡原因の第2位を占める。米国ではこれまで、大腸癌はポリープ型腫瘍が時間とともに移行したものと考えられ、予防ではその発見と除去に集中してきた。そのため日本では指摘されていた非ポリープ型(平坦型と陥没型)腫瘍(NP-CRNs)の重要性を指摘するデータも限られていたが、米国カリフォルニア州のパロアルト病院のRoy M. Soetikno氏らが、米国でも非ポリープ型からの癌罹患率は高いとの調査結果を報告した。JAMA誌2008年3月5日号より。

糖尿病患者教育プログラムの有用性が無作為化試験で証明される

「DESMONDプログラム」と名付けられた1回の糖尿病集団教育により、1年後の血糖値改善傾向、体重や喫煙習慣が有意に減少し、病態への漠然たる不安やうつ症状も軽減され得ることが英国における無作為化研究の結果明らかになり、BMJ誌HPにて早期公開された(2008年2月14日付、本誌には2008年3月1日号に収載)。筆頭筆者は University of LeicesterのMelanie J Davies氏。

小児科研修医の投薬ミスが6倍以上に:うつ病、燃え尽き症候群調査から判明

 小児科研修医の2割がうつ病を、7割以上が燃え尽き症候群(burnout)に罹患し、うつ病研修医は投薬ミスの頻度が約6倍も高いことが、米国Harvard大学医学部付属小児病院(ボストン)のAmy M Fahrenkopf氏らの研究により明らかとなった。米国では毎年4万4,000~9万8,000人の患者が医療過誤で死亡し、薬物有害事象のうち予防可能な事例は40万件にのぼるが、これには睡眠不足や過重労働など医療従事者の労働条件の実質的な関与が指摘されていた。BMJ誌2008年3月1日号(オンライン版2008年2月7日号)掲載の報告。

高齢者に対する複合的介入が、安全で自立的な生活を可能にする

高齢者は、身体機能の低下によって自立性が失われることで、入院や介護施設での長期的なケアが必要となり、早期の死亡につながる。英国Bristol大学社会医学科のAndrew D Beswick氏らは、高齢者に対する身体的、機能的、社会的、心理学的な因子を考慮した複合的介入により安全で自立的な生活が可能となることを明らかにした。Lancet誌2008年3月1日号掲載の報告。

死亡率は低下しなかった:敗血症性ショックでのvasopressin投与

vasopressinは、難治性敗血症性ショックにおいて血圧低下を改善するカテコールアミン製剤の補助薬として一般的に用いられるが、死亡率への影響は明らかにされていない。カナダのJames A. Russell氏らVASST研究グループ(Vasopressin and Septic Shock Trial)は、低用量vasopressin投与はノルエピネフリン(ノルアドレナリン)投与と比較して死亡率を低下させる、との仮説を立て臨床試験を行った。NEJM誌2008年2月28日号より。

マラウイの小児の重症の貧血に対するWHO勧告は限定的

アフリカの子供たちにとって、重症の貧血は疾病罹患や死亡の主因になっているが、この集団の貧血の原因は、これまで十分に研究されていなかった。エマ小児病院(オランダ)のJob C. Calis氏らは、ウエルカム・トラストの臨床研究プログラムの援助を得て現地調査を行い、一般に貧血の原因とされる鉄と葉酸欠乏は主因ではないとして、WHOの推奨する葉酸サプリメントの効用に疑問を投げかけている。NEJM誌2008年2月28日号より。

SSRI抵抗性思春期うつ病には投与薬剤変更+認知行動療法併用を

うつ病の若者のうち、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)による初期治療に反応するのは60%程度にすぎず、その後の治療法はデータに基づく指針はない。そこで米国ピッツバーグ大学のDavid Brent 氏らは、SSRI抵抗性思春期うつ病患者に対して、4つの治療法を試験。SSRIの変更と認知行動療法の併用が、より高い臨床効果を挙げると報告している。JAMA誌2008年2月27日号より。

重労働介護による背部痛は、アドバイスやトレーニングでは予防できない

重量物の持ち上げ作業に従事する労働者の背部痛の予防に、仕事技術およびリフティング設備に関するアドバイスやトレーニングは効果がないことが、フィンランド労働衛生研究所(ヘルシンキ)のKari-Pekka Martimo氏らが実施した系統的レビューによって明らかとなった。このようなアドバイスやトレーニングは、背部痛リスクの管理法として広く行われているが、その効果は疑問視されていた。BMJ誌2008年2月23日号(オンライン版2008年1月31日号)掲載の報告。

外傷性脳損傷の臨床使用可能な予後予測モデルが開発。ネットで利用可能

臨床で使用できる外傷性脳損傷の簡便な予後モデルが、Medical Research Council(MRC) CRASH(corticosteroid randomisation after significant head injury)試験の研究グループによって開発された。BMJ誌2008年2月23日号(オンライン版2008年2月12日号)で報告され、すでにインターネット上で利用可能だ(www.crash2.lshtm.ac.uk/)。毎年、世界で約150万人が外傷性脳損傷で死亡し、数百万人が緊急治療を受けているが、その90%が低~中所得国の事例という。既存のモデルは一般に方法論的な質が低く、サンプルサイズが小さく、低~中所得国を含むものは少ない。

政策評価には質の高い研究が不足、低~中所得国の医療の人的資源対策

低~中所得国の医療の人的資源に関する政策を評価するには、改善策の有効性を検討した質の高い総合的な研究が不足していることが、南アフリカ医療研究評議会(ケープタウン)医療システム研究科のMickey Chopra氏らの研究で明らかとなった。訓練された医療従事者の適切な供給と配置、そして医療サービスを提供する能力の管理は、特に低~中所得国において政策立案者が直面する喫緊の課題とされる。Lancet誌2008年2月23日号掲載の報告。

むしろ死亡率が上昇、重症急性膵炎に対するプロバイオティクス予防投与

 急性膵炎の感染合併症に対する予防治療としてのプロバイオティクス腸内投与はむしろ死亡率を高めることが、オランダUtrecht大学医療センター外科のMarc G H Besselink氏らDutch Acute Pancreatitis Study Groupの研究によって明らかとなった。急性膵炎では感染合併症とその関連死が大きな問題となるが、プロバイオティクスは細菌の過増殖を抑制することで感染合併症を予防し、消化管のバリア機能を修復して免疫系を調整する可能性が指摘され、期待を集めていた。Lancet誌2008年2月23日号(オンライン版2008年2月14日付け)掲載の報告。

脊椎管狭窄症をめぐる手術 vs 非手術の比較研究

Spine Patient Outcomes Research Trial(SPORT)は、全米11州13医療施設(脊椎専門クリニック)から集まった研修者によって立ち上げられたスタディで、脊椎診療に関する多方面からの研究を行っている。本論は同研究チームからの、脊柱管狭窄症をめぐる外科的治療 vs 非外科的治療の比較研究の報告。脊椎管狭窄症手術は広く行われているが、非外科的治療との効果の検証結果はこれまで示されていなかった。NEJM誌2008年2月21日号に掲載。

冠動脈バイパス術でのアプロチニン投与は死亡率を高める

アプロチニン(商品名:トラジロール、バイエル社)は、冠動脈バイパス術(CABG)において出血を抑えるために投与されるが、この治療によって死亡率が高まることを示唆するエビデンスが次々と寄せられた。バイエル社はすでに2007年11月5日、同製剤の一時販売停止を発表。日本国内でも同11月7日付けで商品名「トラジロール5万単位」が一時販売停止となっている。本論は、ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院のSebastian Schneeweiss氏らによる報告で、NEJM誌2008年2月21日号に掲載された。