ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:266

院外心停止での標準的CPR時のITD使用、良好な機能状態の生存退院に結びつかず

院外心停止での、標準的な心肺蘇生(CPR)施行時のインピーダンス閾値弁装置(ITD)の使用は、良好な機能状態生存の改善には結びつかないことが報告された。米国・ウィスコンシン医科大学のTom P. Aufderheide氏らROC(Resuscitation Outcomes Consortium)研究グループによる。ITDは、CPR施行時に胸腔内圧を低下させ、心臓への静脈環流量と心拍出量を増加させるよう設計されている。これまでの研究で、CPR施行時のITD使用が、心停止後の生存率を改善する可能性が示唆されていた。米国心臓協会ガイドライン2005では、血行動態および心拍再開改善のためITDの活用をIIaクラスの推奨として勧告している。しかし長期生存率の上昇については実証されていなかった。NEJM誌2011年9月1日号掲載報告より。

院外心停止での心調律解析前のCPR実施時間、長短でアウトカムに差は生じず

院外心停止で心調律解析前に行う救急医療サービス(EMS)隊員管理下での心肺蘇生法(CPR)は、短時間(30~60秒間)でも、長時間(180秒間)でも、その後のアウトカムに有意差は認められないことが報告された。カナダ・オタワ大学のIan G. Stiell氏らROC(Resuscitation Outcomes Consortium)研究グループによる。米国心臓協会国際連絡協議会(AHA-ILCOR)が蘇生ガイドライン2005で、それまでの即時除細動を行う戦略を改め、EMS隊員がまず心調律解析前に2分間、CPRを行うことを推奨する内容に改訂した。しかし、その後の試験で、試行を支持する知見と否定する知見が報告され、蘇生ガイドライン2010では、「エビデンスは相矛盾している」という内容に再修正されているという。NEJM誌2011年9月1日号掲載報告より。

左室拡張能は加齢とともに低下、心不全発症のリスクに

当初4年、その後6年にわたる住民追跡調査研究の結果、左室拡張能障害の有病率は年齢とともに増加が認められ、その機能低下が心不全の発症と関連していることが、米国・メイヨークリニックのGarvan C. Kane氏らにより明らかにされた。心不全発生率は、年齢とともに上昇が認められるが、その約半分は左室駆出率が保持されている。そうした症例では拡張能障害が発症に関わるが、これまで拡張能の年齢依存性の長期的変化について、住民ベースの研究は行われていなかった。JAMA誌2011年8月24/31日号掲載報告より。

治療抵抗性の慢性痛風に対するpegloticase、プラセボ群に比べ尿酸値低下

慢性痛風で従来療法に治療抵抗性の患者に対する、新規痛風治療薬のpegloticaseについて、有効性と耐用性に関する、投与間隔が異なる2つの無作為化プラセボ対象試験の結果が報告された。8mg投与を2週間ごとまたは4週間ごとに6ヵ月間投与した結果は、いずれもプラセボ群と比べ血漿尿酸値低下に結びついたという。米国・デューク大学医療センターJohn S. Sundy氏らが、2つの無作為化試験の結果を、JAMA誌2011年8月17日号で発表した。pegloticaseは、従来療法に代わる酵素として、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)結合の哺乳類組み換え型ウリカーゼが特徴の尿酸降下薬である。

全英病院データから大腸手術の再手術率とリスク因子を導出

英国Imperial College St Mary's Hospital外科のElaine M Burns氏らは、英国病院データのHospital Episode Statistics(HES)を後ろ向きに解析し、大腸手術の再手術の特徴を調べ、質的インジケーターとしての使用の可能性を検討した。結果、病院や施術担当医間で術後の変化が大きいことが明らかになり、質的インジケーターとしての可能性は、データ精度が保証できれば、死亡率など他のインジケーターとともに使うことは可能であると報告した。BMJ誌2011年8月20日号(オンライン版2011年8月16日号)掲載報告より。

中高生の最適な眼鏡作成に、自己調整型の油圧式視力検査用眼鏡が有用:中国

中高生の眼鏡を作成する際に行う視力検査について、従来法と、屈折矯正を自己調整で行う方法との比較検討が行われた。中国・広東省汕頭共同国際視力センターのMingzhi Zhang氏らが、中国南部の地方都市在住の12~18歳648例を対象に断面研究にて行った。結果、自己調整法のほうが従来法よりも視力結果は悪かったが、鋭敏さに優れ、眼鏡をかけても視力が十分に得られないという頻度が少なかった。Zhang氏は「自己調整型の視力検査用眼鏡は、訓練を十分に受けていない検査要員や高価な視力測定器、点眼による毛様体筋麻痺といった必要条件を減らすことが可能である」と結論している。BMJ誌2011年8月20日号(オンライン版2011年8月9日号)掲載報告より。

先天性心疾患の退院前スクリーニング検査に、パルスオキシメトリーが有用

パルスオキシメトリーは、先天性心疾患の退院前スクリーニング検査として安全に施行可能で、既存の検査に新たな価値を付与する可能性があることが、英国・バーミンガム大学のAndrew K Ewer氏らが実施したPulseOx試験で示された。現在、先天性心疾患のスクリーニングは出生前超音波検査や出生後臨床検査によって行われているが、生命を脅かすような重度の病態は検出されないことが多いという。Lancet誌2011年8月27日号(オンライン版2011年8月5日号)掲載の報告。

術後タモキシフェン5年投与、ER陽性乳がんの再発・死亡リスクを長期に低減

タモキシフェン(TAM、商品名:ノルバデックスなど)を用いた5年間の術後補助内分泌療法は、エストロゲン受容体(ER)陽性の早期乳がん患者の10年再発および15年乳がん死のリスクを有意に低下させることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group (EBCTCG)の検討で示された。術後TAM 5年投与の臨床試験の無作為割り付け後の追跡期間が10年を超えるようになり、乳がん死や他の死因による死亡に及ぼす効果、さらにホルモン受容体が弱陽性の患者に対する効果の評価が可能な状況が整いつつあるという。Lancet誌2011年8月27日号(オンライン版2011年7月29日号)掲載の報告。

急性冠症候群発症患者への虚血性イベント再発予防としてのapixaban

急性冠症候群発症患者に対する経口抗凝固薬である直接作用型第Xa因子阻害薬apixabanの虚血性イベント予防効果について、虚血性イベント再発の有意な低下をもたらすことなく重大出血イベントの増大が認められたことが報告された。米国・デューク大学医療センターJohn H. Alexander氏らAPPRAISE-2研究グループによる、第III相国際多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果による。同グループが従前に行った試験では、用量依存で重大出血イベント増大および虚血性イベント低下の傾向が認められた。そこから効果の可能性が期待された投与量1日2回5mgについてプラセボ対照試験を行った。NEJM誌2011年8月25日号(オンライン版2011年7月24日号)掲載報告より。

COPD患者への増悪予防としてのアジスロマイシン

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者への増悪予防を目的としたアジスロマイシン(AZM)投与は、急性増悪の頻度を減らしQOLを改善することが、プラセボ対照無作為化試験の結果、報告された。米国・コロラド大学デンバー健康科学センターのRichard K. Albert氏らCOPD Clinical Research Networkが、増悪リスクの高い特定の患者1,557例を対象に、標準治療に加えアジスロマイシン250mg/日を1年間投与した結果による。ただし、被験者の一部で聴覚障害が認められたという。NEJM誌2011年8月25日号掲載報告より。

慢性疾患患者、入院やICU入室で薬物療法の中断1.18倍~1.86倍にわたる:カナダ

慢性疾患で服薬中の患者について、入院やICU入室によってそれら薬物療法の、意図的ではないものの中断が起きる可能性が高いことが明らかにされた。そのリスクはICU入室後のほうが、より高いことも示された。カナダ・St Michael's HospitalのChaim M. Bell氏らが報告したもので、JAMA誌2011年8月24日号で発表した。

電子カルテの自由記述から導出した患者安全指標、従来ツールより良好:米国

電子カルテシステム導入が進む中、その自由記述欄から自然言語処理にて導き出した患者安全指標の精度に関する検討が、米国・Tennessee Valley Healthcare SystemのHarvey J. Murff氏らにより行われた。術後合併症を特定するかどうかについて、現状ツールである退院コーディング情報をベースとした指標と比べた結果、感度では優れ、特異度は若干劣ったものの90%以上と非常に高い値が示されたという。電子カルテデータを活用した患者安全特定の方法は、現状では診療データコード(ICD)に依存している。研究グループは、それよりも自由記述から導き出した指標のほうが、高い検出力を示すのではないかと仮定し検討を行った。JAMA誌2011年8月24日号掲載報告より。

比較検討試験、直接比較と間接比較にみられる一貫性のなさ

効果を競い合うヘルスケア介入の比較検討をめぐって、直接的な比較と間接的な比較の結果の一致状況について、英国・イースト・アングリア大学ノーウィッチメディカルスクールのFujian Song氏らが調査した。結果、同氏らが以前に行った調査で認められた以上に、有意な不一致が広く認められる可能性があることが明らかになったという。介入比較の無作為化試験実施は不十分で、今後もその状況は好転しそうになく、また直接的な比較の代替として間接的な比較試験が増えている。そうした状況を踏まえてSong氏らは本調査を行った。BMJ誌オンライン版2011年8月16日号より。

新しく開発された静脈血栓塞栓症リスク予測モデルQThrombosis

英国・ノッティンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らは、高リスクの静脈血栓塞栓症患者が特定可能な新しいリスク予測モデルQThrombosisを開発したことを報告した。同モデルのアルゴリズム変数は患者もよく知る、また一般開業医がルーチンに記録している簡易な臨床指標から成る。Hippisley-Cox氏は「アルゴリズムは一般診療所の臨床コンピュータシステムに組み込むことができ、入院や薬物療法開始以前に、患者が静脈血栓塞栓症リスク増大の可能性があるかを判断できるだろう」と結論している。BMJ誌2011年8月20日号(オンライン版2011年8月16日号)掲載報告より。

プライマリPCI前のエノキサパリン、未分画ヘパリンよりネット臨床ベネフィット提供

ST上昇型心筋梗塞を呈しプライマリ経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けた患者の前処置として、未分画ヘパリンに比べエノキサパリンを投与されていた患者のほうが、ネット臨床ベネフィットが有意であることが報告された。フランス・パリ大学Gilles Montalescot氏らが行った国際無作為化オープンラベル試験「ATOLL」の結果による。直接的な両者の比較はこれまで行われていなかった。Lancet誌2011年8月20日号掲載報告より。

心血管イベントリスクの予測、冠動脈カルシウムスコアが高感度CRPよりも有用

心臓CTで検出される冠動脈カルシウム(CAC)スコアが、高感度C反応性蛋白(CRP)値と比べて、スタチン治療のベネフィットが最大あるいは最小と予想される人を特定するのに有用であることが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンスCiccarone心臓病予防センターのMichael J Blaha氏らが、多人種アテローム性動脈硬化症試験(MESA)から、JUPITER試験適格条件を満たした被験者950例を対象とした住民ベースコホート試験の結果による。Lancet誌2011年8月20日号掲載報告より。

米国でピーナッツバターが原因の集団食中毒を契機に、国内外に強制力を持つ食品安全システムが始動

米国CDC人畜共通感染症センターのElizabeth Cavallaro氏らは、2008年11月以降に全米各地で報告されたサルモネラ菌食中毒について、調査の結果、1ブランドのピーナッツバターとそれを原料としたピーナッツ製品の摂取が原因であり、3,918製品が回収されたことを報告した。報告によると、米国ではこの食中毒発生を契機に食品安全システムへの議論が再浮上、2009年3月に食品汚染事案を24時間以内に報告するFDA’s Reportable Food Registryが始動し、2011年1月4日のFood Safety Modernization Act制定により、FDAが国内外の食品供給元に対し、回収および安全計画提出を命じることができるようになったという。NEJM誌2011年8月18日号より。

術中覚醒予防モニタリングでのBIS使用、優越性立証されず

術中覚醒予防のモニタリングについて、前向き無作為化試験の結果、脳波から派生するバイスペクトラル・インデックス(BIS)を組み込んだプロトコルは、呼気終末麻酔薬濃度(ETAC)を組み込んだ標準的モニタリングプロトコルよりも優れていることは立証されなかったとの報告がNEJM誌2011年8月18日号に掲載された。米国・ワシントン大学医学部麻酔学科のMichael S. Avidan氏らによる。「予想に反して、BIS群よりもETAC群のほうが覚醒した患者は少なかった」と結論している。予期せず起こる術中覚醒は、全身麻酔が得られないか維持されない場合に起こり、そうした患者における覚醒発生率は1%近く、米国では毎年推定2~4万人が術中覚醒を経験している。また術中覚醒患者の約70%がPTSDになる可能性があるという。

若年時の無症候性顕微鏡的血尿、長期的な末期腎不全リスクを増大

若い時に持続性単独の無症候性顕微鏡的血尿が認められた人は、末期腎不全(ESRD)に至るリスクが有意に増大することが、イスラエルで行われたコホート研究から報告された。ただしその発生率および絶対リスクは非常に低いままではあった。報告は、同国シバメディカルセンターのAsaf Vivante氏らが約22年間の長期にわたるリスクを追跡したもので、JAMA誌2011年8月17日号で発表された。これまで、同リスクに関する長期アウトカムを検証したデータは有効なものがほとんどなかった。

甲状腺がん患者における放射性ヨウ素使用、病院特性が大きな理由

米国・ミシガン大学のMegan R. Haymart氏らは、臨床現場における甲状腺がん患者の全摘後の放射性ヨウ素使用の傾向について調査を行った。甲状腺全摘後の放射性ヨウ素使用については確定しておらず、使用の期間や重症度と使用との関連性などが明らかになっていない。術後使用の議論は熱いが無作為化試験は行われておらず、そのためガイドラインでは医師の裁量とされており、臨床現場は使用の支持派と反対派に二分されている。Haymart氏らは、最近の臨床での使用パターンを調べ、病院間で使用程度の格差があるか、あるとしたらどのような因子が関連しているのかを調査した。JAMA誌2011年8月17日号掲載より。