ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:116

IVIG不応川崎病、シクロスポリン併用が有益/Lancet

 免疫グロブリン療法(IVIG)不応例である川崎病患者に対し、シクロスポリンの併用は、安全かつ有効であることが確認された。東京女子医科大学 八千代医療センターの濱田 洋通氏らが、日本全国22ヵ所の病院を通じて行った、第III相非盲検無作為化エンドポイントブラインド試験「KAICA trial」の結果で、Lancet誌オンライン版2019年3月7日号で発表した。遺伝学的研究で、川崎病に関与する遺伝子変異が特定され、それらがIVIG不応例患者のリスクである冠動脈異常に関与するのではないかと考えられていた。研究グループはこの所見を踏まえて、川崎病の病態生理の基礎をなすカルシウム-活性化T細胞核内因子(NFAT)経路の上方制御が、有望な治療になりうると仮定し、シクロスポリン併用の有効性と安全性を評価する試験を実施した。

中年期の食事内容は認知症リスクと関連するか/JAMA

 中年期の食事内容とその後の認知症発症リスクに、関連は認められないことが示された。フランス・モンペリエ大学のTasnime N. Akbaraly氏らが、8,000例超を中央値25年間追跡した結果で、JAMA誌2019年3月12日号で発表された。これまでに、食事内容と認知機能との関連が観察試験で示されているものの、その多くは認知症の前臨床期を考慮するには追跡期間が不十分で、エビデンスが確認された介入試験はない。  研究グループは、1985~88年に住民ベースコホート試験を開始し、1991~93年、1997~99年、2002~04年に食事摂取内容に関する評価を行い、2017年3月まで追跡して認知症発症との関連を調べた。

閉経後のホルモン補充療法でアルツハイマー症リスク増加か/BMJ

 閉経後女性への全身ホルモン補充療法では、エストロゲンと併用する黄体ホルモン製剤の種類や開始年齢にかかわらず、長期の投与によりアルツハイマー病のリスクが増大する可能性が、フィンランド・ヘルシンキ大学のHanna Savolainen-Peltonen氏らの検討で示された。ただし、膣内エストラジオール療法ではこのようなリスク上昇はなかった。研究の成果は、BMJ誌2019年3月6日号に掲載された。いくつかの観察研究により、ホルモン補充療法はアルツハイマー病のリスクに対し防御的な作用を有する可能性が示唆されているが、この知見はプラセボを対照とするWomen's Health Initiative Memory Study(WHIMS)では支持されていない。WHIMSでは実臨床とは異なり、ホルモン補充療法は65歳以上で開始されていることから、エストロゲンが神経保護的に働くのは、閉経が始まってすぐの時期に投与が開始された場合に限られるとの仮説が提唱されていた。

ショック非適応の院外心停止、高度気道管理で生存率改善/BMJ

 All-Japan Utstein Registryの登録患者から約31万人を対象に行われた日本発のコホート試験の結果、院外心停止患者に対する高度気道管理(advanced airway management:AAM)は、初回心電図波形でショック適応と判断した患者では生存との関連が認められなかったが、ショック非適応患者では良好な生存との関連が示されたことを、東京慈恵会医科大学麻酔科学講座の井澤 純一氏らが、BMJ誌2019年2月28日号で報告した。多くの観察研究で、院外心停止患者へのAAMとアウトカムとの関連は不良であることが報告されている。一方、最近行われた無作為化試験で、バッグバルブマスク法が気管挿管に対して非劣性であることを立証できなかった。日本で行われた本試験では、救急医療サービス(EMS)の隊員による院外心停止患者へのAAMが生存を増大するかについて、時間依存的介入や共変量を補正して検討が行われた。

テストステロンが血栓塞栓症、心不全、心筋梗塞に関連/BMJ

 JMJD1C遺伝子変異で予測した遺伝的内因性テストステロンは、とくに男性において、血栓塞栓症、心不全および心筋梗塞にとって有害であることを、中国・香港大学のShan Luo氏らが、UK Biobankのデータを用いたメンデル無作為化試験の結果、明らかにした。テストステロン補充療法は世界的に増大しているが、心血管疾患でどのような役割を果たすのか、エビデンスは示されていない。そうした中、最近行われたメンデル無作為化試験で、遺伝的予測の内因性テストステロンが、虚血性心疾患や虚血性脳卒中と、とくに男性において関連していることが示されていた。検討の結果を踏まえて著者は、「内因性テストステロンは、現在の治療法でコントロール可能であり、血栓塞栓症や心不全のリスク因子は修正可能である」と述べている。BMJ誌2019年3月6日号掲載の報告。

死産後の妊娠間隔と出産転帰に関連性はあるのか/Lancet

 3つの高所得国では、死産から12ヵ月以内の受胎は63%と一般的であり、この間隔での次回妊娠は、不良な出産アウトカムのリスク増大とは関連しないことが、オーストラリア・カーティン大学のAnnette K. Regan氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年2月28日号に掲載された。世界保健機関(WHO)は、次回の妊娠における不良な出産アウトカムのリスクを低減するために、次の受胎までは、生児出産後は2年以上、流産または人工妊娠中絶後は6ヵ月以上の間隔をあけるよう推奨しているが、死産後の次回受胎までの至適な期間の推奨はないという。

糖尿病患者の身体活動継続に行動介入は有効か/JAMA

 2型糖尿病患者において、行動介入戦略は、標準ケアと比較し身体活動の持続的な増加と座位時間の減少をもたらすことが示された。イタリア・ローマ・ラ・サピエンツァ大学のStefano Balducci氏らが、ローマの糖尿病クリニック3施設で実施した無作為化非盲検試験(評価者盲検優越性試験「Italian Diabetes and Exercise Study 2:IDES_2」)の結果を報告した。身体活動/座位行動の変化が、2型糖尿病患者で長期的に持続されうるかは不明であった。JAMA誌2019年3月5日号掲載の報告。

日光角化症の治療薬4剤を比較/NEJM

 頭部の多発性日光角化症に対する治療において、治療終了後12ヵ月時では外用薬4剤のうち5%フルオロウラシルクリームが最も有効だという。オランダ・マーストリヒト大学医療センターのMaud H.E. Jansen氏らが、多施設共同単盲検無作為化試験の結果を報告した。日光角化症は、白人で最も頻度が高い皮膚前がん病変であるが、現在のガイドラインでは治療法について明確な推奨はなされていない。NEJM誌2019年3月7日号掲載の報告。

非ICUでのdecolonisationは、耐性菌発生リスクに有効か?/Lancet

 ICU入室以外の入院患者について、全患者を対象としたクロルヘキシジンによる清拭・シャワー浴とハイリスク患者を対象にしたムピロシンでの除菌による介入(decolonisation)は、ルーチンに行う消毒薬を使わない清拭/シャワー浴の介入と比べて、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の発生リスクを有意に減少しなかったことが報告された。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のSusan S. Huang氏らが、53病院194の病棟(ICUを除く)を対象に行ったクラスター無作為化比較試験「ABATE(active bathing to eliminate) Infection trial」の結果で、Lancet誌オンライン版2019年3月5日号で発表した。

60μmの超薄型シロリムスDES、エベロリムスDESに非劣性/Lancet

 超薄型ストラット生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステント「Supraflex」は、エベロリムス溶出耐久性ポリマーステント「Xience」と比較して、冠動脈狭窄治療のデバイス関連複合アウトカムに関して非劣性であることが示された。英国・ニューカッスル大学のAzfar Zaman氏らが、欧州23ヵ所の医療機関を通じて行った、all-comers集団対象の前向き無作為化単盲検多施設共同試験「TALENT」の結果で、Lancet誌オンライン版2019年2月28日号で発表した。Supraflexのストラットは60μmで、薬剤を48日間という短期間で溶出する。FLEX-Registryで12ヵ月時点の主要有害心イベントの発生が低い(3.7%)ことが示されるなどしていたが、これまで無作為化試験は行われていなかった。結果を踏まえて著者は、「Supraflexは実臨床において、ほかの薬剤溶出ステントに代わりうる安全性と有効性を示したといえる」とまとめている。

結核治療、スマホによる監視が有望/Lancet

 直接監視下治療(DOT)は、1990年代初頭から結核の標準治療とされるが、患者や医療サービス提供者にとっては煩雑である。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAlistair Story氏らは、スマートフォンを利用するビデオ監視下治療(VOT)はDOTよりも有効であり、簡便で安価な結核治療の監視アプローチであることを示した。WHOは、2017年、DOTの代替法としてVOTを条件付きで推奨したが、無作為化対照比較試験がほとんどないためエビデンスのグレードは低いという。Lancet誌オンライン版2019年2月21日号掲載の報告。

高齢者の尿路感染症、抗菌薬即時処方で死亡リスク減/BMJ

 プライマリケアにおいて尿路感染症(UTI)と診断された高齢患者では、抗菌薬の非投与および待機的投与は、即時投与に比べ血流感染症および全死因死亡率が有意に増加することが、英国・Imperial College LondonのMyriam Gharbi氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年2月27日号に掲載された。大腸菌(Escherichia coli)による血流感染症の約半数が、原疾患としてのUTIに起因し、高齢患者はリスクが高いとされる。また、自然治癒性の疾患(上気道感染症など)では抗菌薬の「非投与」「待機的または遅延投与」は重度の有害アウトカムとはほとんど関連しないが、若年女性のUTI患者ではわずかだが症状発現期間が延長し、合併症が増加するとの報告がある。しかし、これらの研究は症例数が少なく、その一般化可能性は限定的だという。

進行卵巣がん、後腹膜リンパ節郭清は必要か/NEJM

 進行卵巣がんの手術において、腹腔内腫瘍が肉眼的に完全切除され、術前・術中ともにリンパ節が正常な患者への骨盤・傍大動脈リンパ節の系統的郭清は、非郭清例と比較して全生存(OS)期間および無増悪生存(PFS)期間のいずれをも延長させず、術後合併症の頻度は高いことが、ドイツKliniken Essen-MitteのPhilipp Harter氏らが行ったLION試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年2月28日号に掲載された。肉眼的完全切除例に対する骨盤・傍大動脈リンパ節の系統的郭清がもたらす生存への有益性は、その可能性を示唆する後ろ向きの解析がいくつかあるが、無作為化試験のエビデンスは限られているという。

血糖コントロールに有効な携帯型デバイス/Lancet

 d-Navインスリン・ガイダンス・システム(Hygieia)は、血糖値を測定してその変動を記録し、自動的に適切なインスリン量を提示する携帯型デバイス。2型糖尿病患者では、医療者による支援に加えてこのデバイスを用いると、医療支援のみの患者に比べ良好な血糖コントロールが達成されることが、米国・国際糖尿病センターのRichard M. Bergenstal氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年2月23日号に掲載された。インスリン療法は、用量の調整を定期的かつ頻回に行えば、最も有効な血糖コントロールの方法とされるが、多くの医師にとってほとんど実践的ではなく、結果としてインスリン量の調整に不均衡が生じているという。

プライマリケアでの抗菌薬処方、推奨期間を超過/BMJ

 英国では、プライマリケアで治療されるほとんどの一般感染症に対し、抗菌薬の多くがガイドラインで推奨された期間を超えて処方されていたことが、英国公衆衛生庁(PHE)のKoen B. Pouwels氏らによる横断研究の結果、明らかとなった。プライマリケアにおける抗菌薬の使用削減戦略は、主に治療開始の決定に焦点が当てられており、抗菌薬の過剰な使用に、どの程度治療期間が寄与しているかは不明であった。著者は、「抗菌薬曝露の大幅な削減は、処方期間をガイドラインどおりにすることで達成できる」とまとめている。BMJ誌2019年2月27日号掲載の報告。

オピオイド使用障害に持効性ブプレノルフィン注が有用/Lancet

 オピオイド使用障害治療の月1回皮下注薬であるRBP-6000(徐放性ブプレノルフィン:BUP-XR)について、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相臨床試験の結果、プラセボと比較してオピオイド断薬率が有意に高く、忍容性も良好であることが示された。米国・Indivior社のBarbara R. Haight氏らが報告した。BUP-XRは、月1回投与によりオピオイド乱用の薬物嗜好を遮断するブプレノルフィン血中濃度を維持し、同時に離脱症状や渇望症状をコントロールすることから、医療現場ではBUP-XRの投与が中毒や乱用等も軽減することが期待されていた。Lancet誌2019年2月23日号掲載の報告。

小児ピーナッツアレルギー、経皮免疫療法は有効か/JAMA

 4~11歳のピーナッツアレルギーの患児に対するピーナッツパッチを用いた経皮免疫療法は、プラセボ投与と比べて、12ヵ月時点の評価でピーナッツへの耐性が強化された患児の割合が21.7ポイント高かった。米国・コロラド大学デンバー校のDavid M. Fleischer氏らが356例の患児を対象に行った、第III相プラセボ対照無作為化比較試験の結果で、JAMA誌オンライン版2019年2月22日号で発表された。ピーナッツアレルギーについては承認された治療法がまだない。今回示された結果について研究グループは、「事前に規定した“肯定的な試験結果”としての信頼区間(CI)下限値を満たさなかった。しかし、そもそも達成すべき下限値の臨床的な妥当性については議論の余地がある」と述べている。

心不全患者への在宅移行支援、予後は改善せず/JAMA

 心不全入院患者に対する、看護師などによる患者中心の在宅移行支援は、入院中の担当医の裁量の下で行われる通常ケアと比べて、再入院や救急受診などの複合臨床アウトカムを改善しなかったことが、カナダ・Population Health Research InstituteのHarriette G. C.Van Spall氏らによる、約2,500例を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果、示された。在宅移行支援は心不全患者のアウトカムを改善可能とされるが、これまで系統的な検証は行われていなかったという。ただし、今回の試験はカナダ・オンタリオ州で行われたものであることを踏まえて著者は、「ほかのヘルスケアシステムや地域で有効かどうかのさらなる検討が必要だろう」と述べている。JAMA誌2019年2月26日号掲載の報告。

1日1回plazomicin、複雑性尿路感染症に有効/NEJM

 多剤耐性株を含む腸内細菌科細菌による複雑性尿路感染症(UTI)および急性腎盂腎炎の治療において、plazomicin1日1回投与はメロペネムに対し非劣性であることが、ドイツ・ユストゥス・リービッヒ大学ギーセンのFlorian M. E. Wagenlehner氏らが行ったEPIC試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年2月21日号に掲載された。近年、グラム陰性尿路病原菌では多剤耐性菌が増加し、重篤な感染症に対する新たな治療薬が求められている。plazomicinは、アミノグリコシド系抗菌薬で、カルバペネム耐性を含む多剤耐性腸内細菌科細菌に対し殺菌活性を発揮するという。

ICU重症例への心理学的介入、PTSD症状を改善するか/JAMA

 集中治療室(ICU)に入室した重症患者では、看護師主導による予防的な心理学的介入を行っても、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状は軽減しないとの研究結果が、英国・University College London Hospitals NHS Foundation TrustのDorothy M. Wade氏らが行ったPOPPI試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年2月19日号に掲載された。ICU退室後6ヵ月のアウトカムに関するメタ解析では、臨床的に重要なPTSD症状の有病率は25%とされる。ICU入室中の急性ストレスや恐怖体験(幻覚、偏執性妄想、悪夢)の記憶は、PTSD症状などの長期的な心理学的合併症の独立のリスク因子であり、その予防への取り組みは退室後では遅すぎ、ICUで行う必要があるという。外傷でICUに入室した患者では、ICUでの臨床心理士との面談で、PTSD症状の経験が減少するとの報告がある。