ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:305

プライマリ・ケアにおけるCOPDの予後評価に有用な指標を開発

プライマリ・ケアにおける慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予後評価では、改訂BODEインデックス(BMI、気道閉塞、呼吸困難、運動能)およびその簡略版であるADOインデックス(年齢、呼吸困難、気道閉塞)が有用であることが、アメリカJohns Hopkins Bloomberg公共健康医学部疫学科のMilo A Puhan氏らが実施した2つのコホートを対象とした検討で判明した。BODEインデックスはCOPDの予後評価にさかんに活用されているが、このインデックスで予測された死亡リスクが実際の死亡率と一致するか否かを検討した試験はないという。Lancet誌2009年8月29日号掲載の報告。

吸入ブデソニドはCOPD患者の肺炎リスクを増大させない

吸入ブデソニド(商品名:パルミコート)は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の肺炎リスクを増大させないことが、カナダBritish Columbia大学St Paul’s病院のDon D Sin氏らが実施したメタ解析で明らかとなった。ブデソニドはCOPDの増悪を抑制しQOLを改善するが、肺炎のリスクを増大させる可能性が指摘されている。また、吸入ステロイド薬は肺炎リスクを約50%も増大させることを示す大規模臨床試験の結果もあるという。Lancet誌2009年8月29日号掲載の報告。

高感度心筋トロポニン検査は心筋梗塞の早期診断を大いに改善できる(2)

心筋梗塞の早期診断は迅速な治療を促し、胸痛症状を示した患者のアウトカムを改善する。その意味で、緊急環境下で施行される心筋壊死マーカー検査は診断価値が高く、胸痛患者ケアに一里塚を築いたが、胸痛出現直後の精度は低い。これに代わって心筋トロポニン検査が急性心筋梗塞の診断の中心的役割を果たすようになっているが、ヨハネス・グーテンベルク大学(ドイツ)のTill Keller氏ら研究グループは、急性心筋梗塞の早期診断とリスク層別化について、高感度トロポニンI測定法の評価を行った。NEJM誌2009年8月27日号より。

高感度心筋トロポニン検査は心筋梗塞の早期診断を大いに改善できる(1)

急性心筋梗塞は死および身体障害の主要な原因の1つだが、一方で米国やヨーロッパでは毎年約1,500万人の患者が、胸痛など急性心筋梗塞様の症状を呈し救急治療部に搬送されている。そのため、急性心筋梗塞の迅速で信頼性の高い診断が求められるが、こうした臨床上のニーズはまだ十分に満たされていない。バーゼル大学病院(スイス)のTobias Reichlin氏らは、新しい診断法として期待される高感度心筋トロポニン測定法(4つの測定法)の精度について、標準測定法との比較で検討を行った。NEJM誌2009年8月27日号より。

急性冠症候群の30日死亡率、女性と男性で格差

急性冠症候群の30日死亡率は、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)では女性が男性より高率だが、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)や不安定狭心症の場合には男性の方が高率であることが報告された。急性冠症候群(ACS)後の予後に関する性別格差についてのこれまでの試験では、概ね女性のほうが悪いとする結果が出ていたという。米国New York大学のJeffrey S. Berger氏らが、ACSの13万人超のデータベースをもとに調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2009年8月26日号で発表した。

前立腺がんへのホルモン療法、うっ血性心不全や心筋梗塞歴患者で総死亡率が約2倍に

 リスクの高い前立腺がんに対し、ホルモン療法と放射線療法を併用すると、中程度から重度の共存症がある場合を除き、生存率が増加すると考えられているが、前立腺がんへのネオアジュバントホルモン療法は、冠動脈疾患によるうっ血性心不全や心筋梗塞歴がある場合、同療法を行わない場合に比べ、総死亡率が約2倍に増大することが報告された。共存症が全くないか、冠動脈疾患リスクが1つだけの場合には、同療法による総死亡率の増加は見られなかったという。米国ハーバード大学のAkash Nanda氏が、5,000人超の患者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2009年8月26日号で発表した。

タミフル、リレンザ、季節性小児インフルエンザへの効果

英国オックスフォードにあるジョン・ラドクリフ病院のMatthew Shun-Shin氏らのグループは、季節性インフルエンザに罹患した小児の治療と感染予防のため、ノイラミニダーゼ阻害因子薬のオセルタミビル(商品名:タミフル)とザナミビル(同:リレンザ)を外来投与した場合の治療効果を評価するメタ解析を行った。BMJ誌2009年8月22日号(オンライン版2009年8月10日号)より。

抗うつ薬、自殺リスクの低下効果は年齢依存的

抗うつ薬と青少年の自殺の危険性(自殺念慮/企図リスク)は注意を要する問題であるが、その一方で、疫学研究では、抗うつ薬の投与により自殺率が下がる傾向が確認されていている。この相違を確かめるため、米国食品医薬品局(FDA)のMarc Stone氏ら研究グループは、成人を対象とする抗うつ薬臨床試験における自殺行動のリスク評価を試みた。BMJ誌2009年8月22日号(オンライン版2009年8月11日号)より。

プライマリ・ケアにおけるうつ病治療に、オンライン認知行動療法は有効か?

プライマリ・ケアにおけるうつ病治療では、セラピストがインターネット経由のオンラインでリアルタイムに実施する認知行動療法(cognitive-behavioural therapy; CBT)が有効であることが、イギリス国立ヘルス・リサーチ研究所(NIHR)プライマリ・ケア研究部のDavid Kessler氏らによる無作為化試験で明らかとなった。CBTは有効性に関する強力なエビデンスがあるにもかかわらずさほど普及していない。コンピュータ化されたプログラムによってCBTへの近接性(アクセスのしやすさ、accessibility)の改善が進められてきたが、これらの介入が個々の患者の必要性に対応するものか否かは明確でないという。Lancet誌2009年8月22日号掲載の報告。

プライマリ・ケア医はうつ病を正しく診断しているか?

一般医(GP)によるうつ病の診断では、有病率20%の場合、10%が正確に同定され65%が正しく除外診断されるが、10%が見逃され、15%が誤診されていることが、イギリスLeicester総合病院のAlex J Mitchell氏らが実施したメタ解析で明らかとなった。うつ病は世界規模で保健医療システムの主要な負担となっており、GPのケアの多くがうつ病に当てられているという。Lancet誌2009年8月22日号(オンライン版2009年7月28日号)掲載の報告。

新しい骨粗鬆症治療薬として期待されるdenosumab:FREEDOM

 骨粗鬆症の治療に有用ではないかと期待されているdenosumabは、破骨細胞の形成、作用に不可欠なサイトカインであるRANKL(receptor activator of nuclear factor-κB ligand)に作用し、骨吸収を抑制し骨密度を増加する完全ヒトモノクローナル抗体である。骨粗鬆症、がんの骨転移、関節リウマチによる関節破壊などさまざまな骨代謝異常の治療・予防を目的に開発が行われている。本論は、FREEDOMと呼ばれる国際間無作為プラセボ試験からの報告。NEJM誌2009年8月20日号(オンライン版2009年8月11日号発表)にて掲載された。

米国で急性気道感染症への抗生物質投与率、過去10年間も継続的に減少

米国で、過去10年間の急性気道感染症への抗生物質投与率が低下してきていることがわかった。米国Vanderbilt大学のCarlos G. Grijalva氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年8月19日号で発表した。同投与率は、1990年代に減少傾向にあったが、その後も同傾向が続いていることが確認された。抗生物質耐性菌の感染症による死亡率が増加する中では朗報と言える。

四価HPVワクチン、市販後調査で失神と静脈血栓塞栓症が他種ワクチンより高率

米国で四価ヒトパピローマウイルス組換えワクチン(qHPV)の市販後調査で、ワクチン投与後の有害事象発生率について2年半の調査の結果、失神と静脈血栓塞栓症の発生率が、他のワクチン投与後と比べ高率であることが明らかになった。米国疾病予防対策センター(CDC)のBarbara A. Slade氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年8月19日号で発表した。米国食品医薬品局(FDA)は2006年6月にqHPVを承認、その後CDCの予防接種に関する委員会Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)では、女児の11~12歳に対する投与と、13~26歳の追加投与を勧告している。

進行がん患者への緩和ケア、QOLと患者の心的状態を改善

進行がん患者に対し、心理教育的な緩和ケアを提供することで、患者の生活の質(QOL)や心的状態を改善する効果があることが、無作為化試験の結果明らかになった。一方で、症状の程度や入院期間などに対する効果は、認められなかった。進行がん患者に対する、緩和ケアの効果について行った無作為化試験は珍しいという。米国Dartmouth Hitchcock Medical CenterのMarie Bakitas氏らが、300人超の進行がん患者を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2009年8月19日号で発表した。

診察時の小冊子活用で、小児呼吸器感染症の受診および抗生物質処方を抑制できる

小児期の呼吸器感染症は、ほとんどが受診の必要がなく、ましてや抗生物質によるベネフィットはほとんどないにもかかわらず、再受診を含む受療率は高いままで、抗生物質も頻繁に処方されている。英国の公的医療保険であるNHSでは、小児の急性の咳だけで5,140万ドル以上の医療費が費やされており、その大半が、開業医の診察によるもので、ガイドラインも整備されているが改善の兆しはなく問題視されている。そこで、英国カーディフ大学医学部プライマリ・ケア/公衆衛生学部門のNick A Francis氏らは、小児呼吸器感染症に関する小冊子をプライマリ・ケア医に提供し、診察時に使うようトレーニングをすることで、再受診率や抗生物質の処方率が減るのではないかと、クラスター無作為化試験を行い検討した。BMJ誌2009年8月15日号(オンライン版2009年7月29日号)より。

公営介護施設vs. 民営介護施設、介護の質が高いのはどちらか?

ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)医学部レジデントのVikram R Comondore氏らは、ナーシングホームにおける介護の質を、営利施設(民営施設)と非営利施設(公営施設)とで比較した。同種の研究が行われた観察研究と無作為化試験のシステマティックレビューとメメタ解析によって行われたもの。カナダでは介護施設は52%が民営。ちなみに米国は3分の2が、イギリスでは約半数が民営で、ヨーロッパ全体では現在、施設の民営化が推進されているという。BMJ誌2009年8月15日号(オンライン版2009年8月4日号)より。

心房細動患者の脳卒中予防のための経皮的左心耳閉鎖術 vs. ワルファリン療法

非弁膜症性心房細動患者では、塞栓性発作は左心耳(LAA)血栓によると考えられている。米国メイヨー医科大学のDavid R Holmes氏らは、心房細動患者の脳卒中予防のために、LAAの経皮的閉鎖術の有効性と安全性を評価するため、ワルファリン療法との比較で無作為化非劣性試験を行った。Lancet誌2009年8月15日号より。

非糖尿病高血圧患者の血圧コントロールも、より厳しく130mmHg未満を目標に:Cardio-Sis

非糖尿病高血圧患者の理想的な降圧目標レベルはまだわかっていない。イタリアHospital S Maria della MisericordiaのPaolo Verdecchia氏らの研究グループは、目標とすべき収縮期血圧値が、一般的な目標値と比較してより厳しいほうが、それら患者にとって有益であるとの仮説を検証する非盲検無作為化試験Cardio-Sisを行った。Lancet誌2009年8月15日号より。

新型インフルエンザ、健康体でも重篤な呼吸不全のおそれがある

本論は、メキシコの国立呼吸器疾患研究所のRogelio Perez-Padilla氏らによる、NEJM誌オンライン版2009年6月29日に発表された論文。2009年3月後半、メキシコで多発した呼吸器疾患は、その後の調査で、新型のブタ由来インフルエンザA型(H1N1)ウイルス(S-OIV)によるものであることが判明した。本論は、メキシコ市にある国立第三次呼吸器疾患病院に肺炎で入院し、検査の結果、このいわゆる新型インフルエンザと診断された症例の臨床像および疫学的特性についての報告である。本誌ではNEJM誌2009年8月13日号で掲載された。

新型インフル、感染防止対策はまず若年層に集中するべき

本論は、米国NIHのGerardo Chowell氏らによる、NEJM誌オンライン版2009年6月29日に発表された論文。2009年春、メキシコから重症肺炎の集団発生が報告された同時期に、新型インフルエンザのウイルス株分離の報告がされたことを踏まえ、ウイルスがもたらす重症疾患のリスク因子に関する情報や、感染管理を見通す方法を得るため、メキシコ発の重症肺炎について解析を行ったもの。本誌では2009年8月13日号にて掲載された。