ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:323

ロスバスタチンは慢性心不全にも有効か?:GISSI-HF試験

HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)であるロスバスタチンは、慢性心不全において安全に投与可能であるが、臨床的な予後改善効果はないことが、イタリアで実施されたGISSI-HF試験で明らかとなった。スタチンは慢性心不全にも有効な可能性があることが、大規模な観察試験、小規模なプロスペクティブ試験および無作為化試験の事後解析で示されていたが、これらの試験は方法論的に弱点があったという。Lancet誌2008年10月4日号(オンライン版8月31日号)掲載の報告。

n-3多価不飽和脂肪酸は慢性心不全にベネフィットをもたらすか?:GISSI-HF試験

慢性心不全に対する標準治療へのn-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)の追加投与は、簡便かつ安全に施行可能であり、中等度のベネフィットをもたらすことが、イタリアで実施されたGISSI-HF試験で実証された。n-3 PUFAは不整脈などのアテローム血栓性心血管疾患に対して良好な効果を発揮することが、いくつかの疫学研究および実験的な研究で示されていた。Lancet誌2008年10月4日号(オンライン版2008年8月31日号)掲載の報告。

持続血糖モニタリングは成人患者の血糖管理を改善

1型糖尿病の血糖管理のために簡便な持続血糖モニタリング装置が開発されている。強化治療を受けている患者にとっての装置の有効性を検証していた米国の若年性糖尿病研究基金・持続血糖モニタリング研究グループ(The Juvenile Diabetes Research Foundation Continuous Glucose Monitoring Study Group)のWilliam V. Tamborlane氏らは、「成人患者の血糖管理は改善されたが、小児や青年患者にも有効かどうかは、さらに研究が必要」と報告した。NEJM誌2008年10月2日号(オンライン版2008年9月8日号)より。

maravirocは治療歴のあるR5 HIV-1患者のウイルスを抑制

CCケモカイン受容体5(CCR5)拮抗剤のmaravirocは、新しい抗レトロウイルス薬である。既存の抗レトロウイルス薬による治療歴のある患者を対象とした、maravirocと至適療法を比較する多国間二重盲検プラセボ試験(第3相)「MOTIVATE 1」(カナダ、米国)「MOTIVATE 2」(オーストラリア、ヨーロッパ、米国)が行われ、参加した米国・Weill-Cornell Medical College(ニューヨーク市)のRoy M. Gulick氏らは、「maravirocはHIV-1ウイルスを有意に抑制し、T細胞を増やす」と報告した。NEJM誌2008年10月2日号より。

医薬品研究をめぐる新聞報道に問題あり、一因に記者の無知

ニュースメディアは、患者はもちろん医師にとっても、医薬品研究に関する重要な情報源となっている。しかしニュース記事では、その研究が製薬企業の資金提供を受けて行われたものかどうか、あるいは、記事の中で医薬品の一般名とブランド名が用いられる頻度がどれくらいなのか、すなわち医薬品研究にありがちなバイアスについて、これまで明らかにされていなかった。ハーバード大学医学部のMichael Hochman氏らの研究グループが、医薬品研究に関するニュース記事について、製薬企業による資金提供の有無に関する情報提供、医薬品の一般名使用の頻度を評価するとともに、これらの問題に対する新聞編集者の考え方を調査検討した。JAMA誌2008年10月1日より。

炭疽菌ワクチン接種は筋注のほうが有益

BioThraxは、現在、米国で唯一公認の炭疽菌ワクチン(AVA)であり皮下注4回接種が公認療法となっている。このワクチンについて米国議会は1999年、米国疾病管理センター(CDC)に対して安全性と有効性に関する調査を行うよう指示した。調査にあたったCDC炭疽菌ワクチン調査プログラム専門調査委員会は、「筋注のほうが安全性が高く、免疫獲得もすみやか」とする報告を寄せた。JAMA誌2008年10月1日号より。

小児の解熱にパラセタモール+イブプロフェン併用が経済的:PITCH

本論は、イギリスの国民医療保健サービス(NHS)で、就学前の小児の解熱によく処方されるパラセタモール(別名アセトアミノフェン)とイブプロフェンに関する有効性等の比較研究(PITCH:Paracetamol plus ibuprofen for the treatment of fever in children)の報告の一つ。Sandra Hollinghurst氏ら効果とコストについて分析結果で、「両剤の併用がコスト面では最も効果が大きい」と報告した。 BMJ誌2008年9月9日号に掲載された。

小児の解熱にはまずイブプロフェンの単独投与が効果的:PITCH

発熱は就学前の小児によく見られる症状だが、本人にとっては深刻で、親には不安を与え、医療費全体の増加につながる。イギリスでは毎年、就学前の小児の7割が発熱に見舞われ、4割が医療機関を受診し、しばしばパラセタモール(別名アセトアミノフェン)とイブプロフェンが併用または単独で投与されるが、これまで各処方のエビデンスはなかった。そこで、各薬剤の単独投与と併用した場合の効果を比較研究(PITCH)したブリストル大学のAlastair D Hay氏らは、「子供にはまずイブプロフェンを与え、24時間経過したら両剤併用を」と報告した。BMJ誌2008年9月2日号(オンライン版7月4日号)より。

テルミサルタン、有意な予後改善効果はない:TRANSCEND試験

アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)テルミサルタンは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬に不耐用な心血管疾患患者で良好な耐用性を示すものの有意な予後改善効果はないことが、カナダMcMaster大学のSalim Yusuf氏らTRANSCEND試験の研究グループによって報告された。ACE阻害薬は主要な心血管イベントを抑制するが患者の約20%は耐用性がない。不耐用のおもな原因は咳嗽で、特に女性やアジア人に不耐用例が多いという。Lancet誌2008年9月27日号(オンライン版2008年8月31日号)掲載の報告。

新開発のbiolimus溶出ステント、従来ステントと同等の有用性示す

冠動脈ステント留置術が適用とされる慢性安定性冠動脈疾患や急性冠症候群では、新たに開発された生体分解性ポリマー製のbiolimus(高脂溶性の半合成シロリムス・アナログ)溶出ステントが、従来の耐久性ポリマー製のシロリムス溶出ステントと同等の安全性および有効性を示すことが、ヨーロッパで実施された無作為化試験で明らかとなった。生体分解性ポリマー製biolimus溶出ステントは初期研究で有望な結果が報告されていた。スイスBern大学病院循環器科のStephan Windecker氏が、Lancet誌2008年9月27日号(オンライン版2008年9月1日号)で報告した。

経皮的冠動脈インターベンション施術は薬剤溶出性ステントに軍配:大規模長期試験結果

 急性心筋梗塞への経皮的冠動脈インターベンション(PCI)における、薬剤溶出性ステント(DES)とベアメタルステント(BMS)の使用に関する大規模長期比較研究の報告。ハーバード大学付属ブリガム&ウィメンズ病院(米国)のLaura Mauri氏らによるもので、「DESはBMSより2年死亡率、血行再建術再施行率ともに低かった」と報告している。NEJM誌2008年9月25日号にて掲載。

脳梗塞発症3~4.5時間後のrt-PA静注療法は有効だが……

急性期脳梗塞に対し唯一承認された治療法は、rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法だが、発症から3時間以上経過した後の投与については、有効性と安全性が確立されていなかった。ドイツ・ハイデルベルク大学のWerner Hacke氏らECASS(European Cooperative Acute Stroke Study)研究グループは、発症後3~4.5時間に投与されたrt-PAの有効性と安全性を検証した結果、「臨床転帰は改善するが、症候性頭蓋内出血を伴う所見が高頻度にみられる」と報告した。NEJM誌2008年9月25日号より。

救急センターの電話トリアージの的確性は58%:オランダ

夜間救急センターにおける電話トリアージの精度は、その後のケアと転帰を左右するが、オランダの救急センターで担当者が行ったトリアージの的確性を検証したマーストリヒト大学のHay P Derkx氏らは「担当者は必要な質問を済ませないうちに結論を出す傾向にあり、自宅で行うための処置・安全策についての助言も概して貧弱だった」と報告した。BMJ誌2008年9月12日号より。

現状の一般医療保険制度は脳卒中治療の遅れを招く:イギリス

一過性脳虚血発作(TIA)と軽度脳卒中は再発リスクが高く、英国国立医療技術評価機構(NICE)では脳卒中戦略として、発症後24時間以内の診察が必要と指導している。しかし2004年に英国で導入された、プライマリ・ケアの新しい一般医療保険サービス制度(GMS:general medical services)では、開業医が患者を診察するべき「責務」は、月曜~金曜日の午前8時~午後6時半と規定するものだった。最近、夜間・週末の医療アクセスを改善する契約変更が提案されたが、臨床転帰への影響は不明であることから、オックスフォード大学のDaniel S Lasserson氏らが、医師の開業時間と発症後に連絡がつくまでの時間を検証。結果は、「戦略達成には、プライマリ・ケアへのアクセス改善が必要」と報告するに至るものだった。BMJ誌2008年9月18日号より。

鼻炎の成人は喘息発症リスクが高い

鼻炎は、アトピー素因の有無にかかわらず成人期発症の喘息の強力な予測因子であることが、地域住民ベースのプロスペクティブな縦断的研究で明らかとなった。喘息とアレルギー性鼻炎の密接な相関がいくつかの疫学および臨床研究で示されているが、その関連の本質はいまだ解明されていないという。フランス・国立保健医療研究所(INSERM)疫学部のRafea Shaaban氏が、Lancet誌2008年9月20日号で報告した。

小児喘息の新たなリスク因子を同定か:ISAACプログラム第III相試験

1歳になる前にアセトアミノフェン(別名パラセタモール)を使用すると、6~7歳時の喘息、鼻結膜炎、湿疹のリスクが増大することが、20万人以上の小児の横断的研究で明らかとなった。喘息発症のリスク因子の検討は数多く行われてきたがいまだ明確なエビデンスはなく、胎生期にアセトアミノフェンに曝露すると小児期および成人期の喘息発症リスクが高まる可能性が指摘されていた。ニュージーランド医学研究所のRichard Beasley氏が、Lancet誌2008年9月20日号で報告した。