ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:30

慢性硬膜下血腫、デキサメタゾンvs.手術/NEJM

 慢性硬膜下血腫患者において、デキサメタゾンによる治療は穿頭ドレナージと比較し機能的アウトカムに関して非劣性は示されず、合併症の発現頻度や追加手術を要する患者の割合が高かった。オランダ・Amphia HospitalのIshita P. Miah氏らが、医師主導、評価者盲検の多施設共同無作為化非盲検非劣性試験の結果を報告した。慢性硬膜下血腫の治療において、外科的除去を伴わないグルココルチコイドの役割は不明であった。NEJM誌2023年6月15日号掲載の報告。

抗CD7塩基編集CAR-T細胞療法、T細胞性ALLに有望/NEJM

 英国・Great Ormond Street Hospital for Children NHS TrustのRobert Chiesa氏らは、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)の小児患者を対象とした、抗CD7塩基編集キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法の第I相試験において、最初の3例中2例で寛解が得られたことを報告した。CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)によるシチジンの脱アミノ化は、DNAに切断を生じさせることなくシトシンからチミンへ極めて正確に塩基置換変異を起こすことができる。すなわち、転座やその他の染色体異常を誘発することなく遺伝子を塩基編集し不活性化できることから、再発T細胞白血病小児患者において、この技術の使用が検討されている。著者は、「今回の中間結果は、再発白血病患者に対する塩基編集T細胞療法のさらなる研究を支持するもので、また、免疫療法に関連した合併症の予想されるリスクも示している」とまとめている。NEJM誌オンライン版2023年6月14日号掲載の報告。

僧帽弁形成術、小切開vs.胸骨正中切開/JAMA

 僧帽弁形成術において、術後12週時の身体機能の回復に関して、小開胸術の胸骨切開術に対する優越性は示されなかった。弁修復率および安全性については両手術で同等であることが確認された。英国・South Tees Hospitals NHS Foundation TrustのEnoch F. Akowuah氏らが、実用的多施設共同無作為化優越性試験の結果を報告した。変性による僧帽弁逆流を有する患者における、胸腔鏡下小開胸vs.胸骨正中切開の僧帽弁形成術の安全性と有効性は不明であった。JAMA誌2023年6月13日号掲載の報告。

早期乳がんの死亡率、どのくらい下がったのか/BMJ

 英国・オックスフォード大学のCarolyn Taylor氏らは、National Cancer Registration and Analysis Service(NCRAS)のデータを用いた観察コホート研究を行い、早期浸潤性乳がん女性の予後は1990年代以降大幅に改善され、ほとんどの人が長期がんサバイバーとなっているものの、依然として少数例で予後不良リスクが伴うことを報告した。早期浸潤性乳がん診断後の乳がん死亡リスクは、過去数十年間で低下しているが、その低下の程度は不明であり、また低下は特定の特性を持つ患者に限定されるのか、すべての患者に当てはまるのか不明であった。BMJ誌2023年6月13日号掲載の報告。

外傷性急性硬膜下血腫、開頭術vs.減圧開頭術/NEJM

 外傷性急性硬膜下血腫の手術において、骨弁を還納する開頭術と還納しない減圧開頭術では、1年時点の障害およびQOLのアウトカムは同等だった。一方で、2週間以内の追加手術の発生率は開頭術群で高く、創部合併症の発生率は減圧開頭術群が高かった。英国・Addenbrooke's HospitalのPeter J. Hutchinson氏らが、11ヵ国40施設で行った無作為化比較試験の結果を報告した。外傷性急性硬膜下血腫の手術の選択肢である減圧開頭術は、頭蓋内圧亢進症を予防する可能性が示唆されているが、より良好なアウトカムと関連するかは明らかになっていなかった。NEJM誌2023年6月15日号掲載の報告。

医療ジャーナル査読者、コロナ流行で変化か/BMJ

 BMJ出版グループの医療ジャーナルについて、査読依頼と依頼同意に関するジェンダーおよび地域性の格差について調べたところ、女性への依頼率が低いことや、依頼同意率は編集者が女性の場合のほうが男性の場合よりも低いといった偏りがあることが示された。また、地域的に欧州に比べアジアやオセアニアへの査読依頼率が低く、高所得国に偏っていることも明らかになったという。スイス・ジュネーブ大学病院のKhaoula Ben Messaoud氏らが後ろ向きコホート研究の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「編集者は、偏りを減らしダイバーシティ(多様性)を改善するために、効果的な戦略を見つけて実行する必要があり、上位中所得国・低所得国からより多くの女性や研究者が査読に参加するよう、戦略の進捗状況を評価し続けなければならない」と述べている。BMJ誌2023年6月13日号掲載の報告。

がん遺伝子検査、よく受けるがん種・人種は?/JAMA

 米国・スタンフォード大学のAllison W. Kurian氏らは、2013~19年に同国カリフォルニア州とジョージア州でがんと診断された患者のうち、生殖細胞系列遺伝子検査を受けた患者の割合が6.8%とごくわずかであり、非ヒスパニック系白人に比べ、黒人、ヒスパニック系、アジア系の患者ではより低いことを示した。同検査は遺伝性のがんリスクを明らかにし、遺伝学的な標的治療を可能にすることで、がん患者の生存率を向上させるが、米国ではどのくらいの患者が受けているかは、これまで知られていなかった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年6月5日号で報告された。

進行腎細胞がん、免疫チェックポイント阻害薬の再投与は有効か/Lancet

 免疫チェックポイント阻害薬の投与中または投与後に病勢が進行した腎細胞がん患者の治療において、免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブとチロシンキナーゼ阻害薬カボザンチニブの併用療法はカボザンチニブ単独療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を改善せず、重篤な有害事象が増加したことが、米国・シティ・オブ・ホープ総合がんセンターのSumanta Kumar Pal氏らが実施した「CONTACT-03試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2023年6月5日号に掲載された。

がん患者のVTE再発予防、DOAC vs.低分子ヘパリン/JAMA

 静脈血栓塞栓症(VTE)を有した成人がん患者のVTE再発予防に関して、追跡期間6ヵ月にわたり、直接経口抗凝固薬(DOAC)は低分子ヘパリン(LMWH)に対して非劣性であったことが、米国・ハーバード大学医学大学院のDeborah Schrag氏らによる検討で示された。著者は、「この結果は、がん患者のVTE再発予防に対してDOACの使用を支持するものである」とまとめている。VTEを有するがん患者のVTE再発予防にはLMWHの長期投与が推奨されており、DOACの有効性との比較は検討されていなかった。JAMA誌2023年6月2日号掲載の報告。

研究機関でのハラスメント、影響を受けやすいのは?/JAMA

 米国・ミシガン大学のReshma Jagsi氏らは、医学アカデミアに従事する教員にまつわる職場ハラスメント、サイバーインシビリティ(ネット上での敬意を欠いた非礼な言動)、組織風土がどのように変化しているかを調べる検討を行った。その結果、セクシャルハラスメント、サイバーインシビリティ、ネガティブな組織風土が高率に、とりわけマイノリティ集団を対象として存在し、メンタルヘルスに影響をもたらしていることを報告した。著者は、「医学アカデミアには、労働力の活力を損なう虐待行為を助長する可能性がある文化が存在する。引き続き医学アカデミアの文化を変える努力が必要である」と述べている。JAMA誌2023年6月6日号掲載の報告。

心臓移植後の生存率、心停止ドナー心は脳死ドナー心に非劣性/NEJM

 心停止後に体外非虚血性灌流を用いて蘇生させた心臓の移植は、脳死後冷保存された心臓を用いた標準移植と比較して、移植後6ヵ月時のリスク補正後生存率に関して非劣性であることが示された。米国・デューク大学医療センターのJacob N. Schroder氏らが多施設共同無作為化比較試験の結果を報告した。心停止ドナーから得られた心臓の移植の有効性と安全性を、脳死ドナーから得られた心臓の移植と比較したデータには限りがあった。NEJM誌2023年6月8日号掲載の報告。

mCRPCの1次治療、エンザルタミド+talazoparibでrPFS改善/Lancet

 転移のある去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者の1次治療において、PARP阻害薬talazoparibとアンドロゲン受容体阻害薬エンザルタミドとの併用療法は、標準治療のエンザルタミド単独療法と比較し、臨床的に意味のある統計学的に有意な画像上の無増悪生存期間(rPFS)の改善をもたらしたことが示された。米国・ユタ大学のNeeraj Agarwal氏らが、26ヵ国(北米、欧州、イスラエル、南米、南アフリカ、アジア太平洋地域)の223施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「TALAPRO-2試験」の結果を報告した。PARPとアンドロゲン受容体活性の両方を阻害することは、相同組換え修復(HRR)に関与するDNA損傷修復遺伝子変異の有無にかかわらず、抗腫瘍効果が得られる可能性があった。Lancet誌オンライン版2023年6月4日号掲載の報告。

複数流産歴のある遺伝性血栓症女性への低分子ヘパリン、出生率を改善せず/Lancet

 2回以上の流産歴があり、遺伝性血栓性素因による特発性血栓症の確定診断を受けた女性に対し、低分子ヘパリン(LMWH)投与は生児出生率の増加に結び付かないことが示された。英国・ウォーリック大学のSiobhan Quenby氏らが、欧米5ヵ国の病院で行った国際非盲検無作為化対照試験「ALIFE2試験」の結果を報告した。抗凝固療法は、不育症および遺伝性血栓性素因を有する女性の流産回数と有害妊娠アウトカムを減らす可能性が示唆されており、研究グループは、同女性集団におけるLMWH vs.標準治療を評価した。結果を踏まえて著者は、「不育症および遺伝性血栓性素因を有する女性にLMWHの使用は推奨しない。また、不育症の女性に遺伝性血栓性素因のスクリーニングを行わないことを推奨する」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年6月1日号掲載の報告。

早期再発・難治性LBCL、axi-celでOS延長/NEJM

 早期再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者に対し、axicabtagene ciloleucel(アキシカブタゲン シロルユーセル、axi-cel)療法による2次治療は、標準治療と比べて全生存期間(OS)を有意に延長したことが確認された。米国・テキサス大学M. D.アンダーソンがんセンターのJason R. Westin氏らが、359例を対象に行った第III相無作為化比較試験「ZUMA-7試験」の長期追跡評価(期間中央値47.2ヵ月時点)の結果を報告した。axi-celは、自家抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法製品で、ZUMA-7試験の主要アウトカムの解析において、無イベント生存(EFS)を有意に延長したことが示されており、長期アウトカムのデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2023年6月5日号掲載の報告。

急性期脳梗塞へのtirofiban、アスピリンより優れた改善/NEJM

 大・中脳血管の閉塞を伴わない急性期脳梗塞患者の治療において、糖蛋白IIb/IIIa受容体阻害薬tirofibanは低用量アスピリンと比較して、非常に優れたアウトカム(修正Rankin尺度[mRS]スコア0または1)が達成される可能性が高く、安全性には大きな差はないことが、中国・陸軍軍医大学のWenjie Zi氏らが実施した「RESCUE BT2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年6月1日号に掲載された。  RESCUE BT2試験は、中国の117施設で実施された二重盲検ダブルダミー無作為化試験であり、2020年10月~2022年6月の期間に参加者のスクリーニングが行われた(中国国家自然科学基金の助成を受けた)。

血圧管理ケアバンドル、脳内出血の機能的アウトカムを改善/Lancet

 脳内出血の症状発現から数時間以内に、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムとの組み合わせで早期に集中的に降圧治療を行うケアバンドルは、通常ケアと比較して、機能的アウトカムを有意に改善し、重篤な有害事象が少ないことが、中国・四川大学のLu Ma氏らが実施した「INTERACT3試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年5月25日号で報告された。  INTERACT3試験は、早期に集中的に血圧を下げるプロトコールと、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムを組み込んだ目標指向型ケアバンドルの有効性の評価を目的に、10ヵ国(低・中所得国9、高所得国1)の121病院で実施された実践的なエンドポイント盲検stepped wedgeクラスター無作為化試験であり、2017年5月27日~2021年7月8日に参加施設の無作為化が、2017年12月12日~2021年12月31日に患者のスクリーニングが行われた(英国保健省などの助成を受けた)。

肥満NASH、減量・代謝改善手術が薬物療法より有効か/Lancet

 肥満を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の患者の治療において、減量・代謝改善手術は生活様式への介入+至適な薬物療法と比較して、1年後の肝線維化の悪化を伴わないNASHの組織学的消失の割合が有意に高く、安全性にもとくに問題はないことが、イタリア・サクロ・クオーレ・カトリック大学のOrnella Verrastro氏らが実施した「BRAVES試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2023年5月27日号に掲載された。  BRAVES試験は、イタリア・ローマ市の3つの主要病院が参加した52週の非盲検無作為化試験であり、2019年4月~2021年6月の期間に患者のスクリーニングが行われた(イタリア・Fondazione Policlinico Universitario A Gemelliの助成を受けた)。

コロナ感染2年後、18%に罹患後症状/BMJ

 感染前にワクチン未接種であった重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染者の約18%に、感染後2年まで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状が認められ、未感染者と比較して感染者には症状の過剰リスクがあることが、スイス・チューリッヒ大学のTala Ballouz氏らが実施した「Zurich SARS-CoV-2 Cohort研究」のデータ解析で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年5月31日号で報告された。

HR+進行乳がん、capivasertib+フルベストラントが有効/NEJM

 サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬併用の有無にかかわらず、アロマターゼ阻害薬の治療中または治療後に病勢進行したホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)進行乳がん患者において、AKT阻害薬capivasertibとフルベストラントの併用療法は、フルベストラント単独療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが、英国・Royal Marsden HospitalのNicholas C. Turner氏らによる第III相無作為化二重盲検比較試験「CAPItello-291試験」で示された。AKT経路の活性化は内分泌療法の抵抗性に関与することが知られているが、HR+進行乳がんに対するフルベストラントへのcapivasertib上乗せの有効性と安全性に関するデータは限られていた。NEJM誌2023年6月1日号掲載の報告。

コロナ罹患後症状、スコアに基づく定義を提案/JAMA

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染後に生じる持続的であり再発を繰り返す、あるいは新規の症状は、罹患後症状(postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC)と呼ばれ、long COVIDとしても知られている。米国・マサチューセッツ総合病院のTanayott Thaweethai氏らは、米国国立衛生研究所(NIH)によるRECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)Initiativeの一環として、RECOVER成人コホート9,764例のデータを解析し、SARS-CoV-2感染者では非感染者と比較して37症状が感染後6ヵ月以上の時点で多く認められ、このうち12症状の症状スコアに基づき、PASCを定義する予備的ルールを開発した。著者は、「PASCの実用的な定義のためには、他の臨床的特徴をさらに組み込み反復的な改良が必要である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2023年5月25日号掲載の報告。