ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:285

ダイエット食の無料提供と週1回のカウンセリング、肥満女性の減量に効果

市販ダイエット食の無料提供と週1回のカウンセリングが、肥満女性の長期減量に効果があることが、無作為化対照試験の結果、明らかにされた。減量を始めて2年後の体重減少が、対照群と比べて4kg以上の差があったという。米国カリフォルニア大学医学校サンディエゴ校のCheryl L. Rock氏らが、約450人の肥満女性を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月27日号(オンライン版2010年10月9日号)で発表した。なおこれまで、市販ダイエット食品の肥満予防効果について、コントロール試験で検証されたことはほとんどなかったという。

重度敗血症は高齢者の自立を損なう

重度敗血症を発症し、回復した人は、その後中等度から重度の認知障害を発症するリスクが3倍超に増大することが報告された。また同発症後には、新たに現れる身体機能の制約数も増えるという。米国ミシガン大学医学校内科部門のTheodore J. Iwashyna氏らが、敗血症で入院した高齢者約1,200人について追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月27日号で発表した。重度敗血症の罹患率は高く、また増加傾向にあるものの、その後の長期的な認知能力や身体機能に与える影響については、これまでほとんど調査されていなかった。

自民族密度の高い地域への居住が、イギリスの少数民族の精神障害を軽減

イギリスに住む少数民族においては、自民族密度の高い地域に居住することで、一般的な精神障害が低減し、社会的支援の改善や差別体験の減少がもたらされることが、イギリスKing’s College London精神医学研究所のJayati Das-Munshi氏らの研究で示された。差別の経験は精神的健康に有害な影響を及ぼすのに対し、社会的支援やネットワークは保護的に作用することが示されている。自分と同じ民族の密度が高い地域で生活する人々は人種差別を経験する機会が減少し、このような生活環境は、イギリスに居住する少数民族にとって精神的、身体的な健康リスクの低減につながる可能性があるという。BMJ誌2010年10月23日号(オンライン版2010年10月21日号)掲載の報告。

イギリスの全国規模の電子カルテシステム導入、大幅な遅れの原因とは?

全国規模の電子カルテシステム導入による医療改革の実現には、長期にわたる複雑な反復過程を経る必要があり、システムおよび実現戦略の双方について柔軟性と地域適応性が求められることが、イギリス・エジンバラ大学のAnn Robertson氏らが実施した中間的なデータ解析で判明した。イギリス政府は、2010年中の始動を目指し、国家プログラムとして、168の急性期病院と73の精神保健トラストを通じて中央で統括する標準化された詳細な電子カルテの導入を進めているが、スケジュールが大幅に遅れているという。BMJ誌2010年10月23日号(オンライン版2010年9月2日号)掲載の報告。

ADHDの遺伝学的なエビデンスが全ゲノム解析で示された

注意欠陥・多動性障害(ADHD)では巨大なコピー数多型(copy number variant:CNV)が増加していることを示す遺伝学的なエビデンスが、イギリス・カーディフ大学のNigel M Williams氏らによる全ゲノム解析によってもたらされた。ADHDは高い遺伝性を示すが、特異的な感受性遺伝子は同定されていないため、疾患ではなく主に社会的構成概念であるとする主張も消えていない。ADHDに類似の神経発達障害では、CNVとして知られる巨大で希少な染色体の欠失や複製の関連がすでに確認されているという。Lancet誌2010年10月23日号(オンライン版2010年9月30日号)掲載の報告。

冠動脈心疾患のリスク評価におけるSNPに基づく遺伝的リスクスコアの有用性

冠動脈心疾患に関連する13の一塩基多型(SNP)に基づく遺伝的リスクスコアを用いれば、初回冠動脈心疾患の発症リスクが約70%増大しているヨーロッパ系人種の20%を同定可能なことが、フィンランド・ヘルシンキ大学のSamuli Ripatti氏らが行った症例対照研究とプロスペクティブ・コホート研究の結果から明らかとなった。冠動脈心疾患の原因は複雑であり、ライフスタイルや遺伝的因子の影響が大きく、早発性の冠動脈心疾患の家族歴は独立のリスク因子である。症例対照研究のデザインを用いた全ゲノム関連試験では、冠動脈心疾患、心筋梗塞あるいはこの双方と関連する13の遺伝子領域のSNPが同定されている。Lancet誌2010年10月23日号掲載の報告。

抗凝固療法のマネジメント、自己測定管理 vs 外来管理

ワルファリン(商品名:ワーファリンなど)抗凝固療法の効果を臨床で十分に享受するためのマネジメント方法について、有望な戦略と示唆されていた自宅で測定できる携帯型指穿刺装置を使った自己測定管理が、外来で行う質の高い静脈血漿検査による測定管理にまさらなかったことが報告された。全米28の退役軍人病院から約2,900人が参加した、Durham退役軍人病院のDavid B. Matchar氏らによる前向き無作為化非盲検試験「THINRS」からの報告で、NEJM誌2010年10月21日号で掲載された。これまで報告されていたほど、初発の脳卒中・大出血・死亡までの期間について、毎週行う自己測定管理が毎月の外来管理と比べ長くはなかったという。

新生児聴覚スクリーニング、生後2週間までに実施が発達アウトカム良好

新生児聴覚スクリーニングは、生後2週間までに行った方が、生後9ヵ月に実施するよりも、永久小児聴覚障害児の3~5歳時点での発達アウトカムが良好であることが、オランダ・ライデン大学メディカルセンターのAnna M. H. Korver氏らが、約57万人の小児を対象に行った試験で明らかになった。新生児聴覚スクリーニングは世界各国で実施されているが、同プログラム実施時期を支持する確固たるエビデンスはほとんどない。JAMA誌2010年10月20日号発表より。

閉経後女性へのホルモン補充療法、乳がん死亡リスクも増加の傾向

閉経後女性への、エストロゲン+プロゲスチンのホルモン補充療法は、侵襲性乳がんやリンパ節転移陽性のリスクが増加すること、乳がんによる死亡のリスクも同併用療法とともに増加する傾向にあることが報告された。米国UCLAメディカルセンターのRowan T. Chlebowski氏らが、約1万7,000人の女性をおよそ11年追跡した「Women’s Health Initiative」(WHI)から明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月20日号で発表した。すでに発表された追跡期間約8年のWHIの結果で、エストロゲン+プロゲスチン投与により乳がんリスクが増加することは明らかになっていたが、乳がん死亡率については未報告だった。

妊婦へのDHAサプリメント、産後うつや子どもの発達に効果みられず

妊婦に対し、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含むサプリメントを投与しても、産後うつ病の改善や、子どもの認知・言語能力の発達には効果がみられないことが明らかにされた。オーストラリアWomen’s and Children’s Health Research InstituteのMaria Makrides氏らが、約2,400人の妊婦を対象に行った、無作為化二重盲検試験「DHA to Optimize Mother Infant Outcome」(DOMInO)の結果によるもので、JAMA誌2010年10月20日号で発表されている。

アプガースコアは脳性麻痺発症の堅密な指数である

新生児に対し行われるアプガー測定でのスコア低値は、脳性麻痺と強く関連していることが明らかにされた。関連は標準出生体重児で強く、低出生体重児ではわずかで、特に四肢麻痺との関連が強いという。ノルウェー公衆衛生研究所のKari Kveim Lie氏らが、住民ベースのコホート研究の結果、報告したもので、BMJ誌2010年10月16日号(オンライン版2010年10月7日号)で発表された。

臨床治験データは義務的に公表すべきである

ドイツがん学会のDirk Eyding氏らは、「Reboxetineは、概して無効であり、場合によっては有害となり得る抗うつ薬である。公表されているエビデンスは、出版バイアスがかかったものである」ことをBMJ誌2010年10月16日号(オンライン版2010年10月12日号)で発表した。未発表論文を含めたプラセボまたは選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)との対照試験データの、システマティックレビューとメタ解析の結果を踏まえたもので、「本結果は、過去の薬理学的データも含め臨床治験の結果は、公表を義務化する必要性があることを強調するものだ」と結論している。

ACSに対するticagrelor、遺伝子型を問わずクロピドグレルよりも有効:PLATO試験サブ解析

急性冠症候群(ACS)患者の抗血栓療法では、CYP2C19遺伝子およびABCB1遺伝子の遺伝子型にかかわらず、ticagrelorがクロピドグレル(商品名:プラビックス)よりも有効なことが、スウェーデン・ウプサラ大学のLars Wallentin氏らが行ったPLATO試験の遺伝子解析で明らかとなった。本試験では、ticagrelorの高い効果とともに冠動脈バイパス術(CABG)非施行例では大出血が増加することが確認されている。一方、CYP2C19遺伝子、ABCB1遺伝子の遺伝子型がクロピドグレルの効果に影響を及ぼすことが知られているが、ticagrelorのアウトカムへの影響は解明されていなかった。Lancet誌2010年10月16日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載の報告。

クロピドグレル治療中の虚血イベント再発リスクが高い患者とは?

ABCB1遺伝子3435TTホモ接合体を持つ者は抗血小板能が低下しており、特に経皮的インターベンションを施行された急性冠症候群(ACS)患者ではクロピドグレル(商品名:プラビックス)治療中の虚血イベントの再発リスクが高いことが、米国ブリガム&ウィメンズ病院循環器科のJessica L Mega氏らが実施したTRITON-TIMI 38試験の薬理遺伝学的解析で示された。クロピドグレルおよびprasugrelはP糖蛋白(P-gp)を介して細胞外に排出される。P-gpはABCB1遺伝子(MDR1遺伝子とも呼ばれる)によってコードされ、ABCB1遺伝子多型(特に3435C→T)は薬剤の輸送や効果に影響を及ぼす可能性があるという。Lancet誌2010年10月16日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載の報告。

変形性膝関節症の新しい疼痛治療tanezumabの有効性と安全性は?

変形性膝関節症の新しい疼痛治療として開発中の、神経成長因子(NGF)を標的とするヒト型モノクローナル抗体tanezumabの、安全性と鎮痛効果を検討するproof-of-concept試験の結果が、NEJM誌2010年10月14日号(オンライン版2010年9月30日号)に掲載された。米国カリフォルニア大学デイビス校のNancy E. Lane氏らによる発表で、tanezumab投与により、中等度~重度の変形性膝関節症患者の関節痛軽減と機能改善が認められたこと、軽度~中等度の有害事象との関連などが報告された。

ネビラピン服用者にはネビラピンを含まないレジメンが優れる

HIV感染妊婦に対し、母子感染を防止する目的での抗レトロウイルス薬投与は、3剤併用療法を受けていない場合は、ネビラピン(商品名:ビラミューン)単独投与がWHOによって推奨されている。しかしネビラピンは母子感染を減らすものの、服用した妊婦の大半にネビラピン耐性ウイルスが出現。耐性ウイルスは時間とともに減少するが低レベルの持続が、ネビラピン単独療法後6~18ヵ月で開始される3剤併用療法の効力を弱めることが懸念されている。今後、数十万規模での服用者が予想される中、米国ブリガム&ウィメンズ病院のS. Lockman氏ら研究グループは、ネビラピン服用者に対する3剤併用療法には、ネビラピンを含まないレジメンの方がよいかどうかをオープンラベル無作為化試験で検討した。NEJM誌2010年10月14日号掲載より。

がんスクリーニング、進行がん患者へのベネフィットは疑問なのに相当割合で続行

がんスクリーニングがルーチンのプライマリ・ケアに組み込まれているが、余命が限られている進行がん患者に対してはベネフィットに疑問があるものの、相当割合で実施されていることが調査により明らかになった。米国Sloan-Kettering記念がんセンターのCamelia S. Sima氏らが、約9万人の進行がん患者と、その対照群について調べた結果によるもので、JAMA誌2010年10月13日号で発表した。

CABG周術期の輸血実施率、病院間で85%差以上と大幅なバラつき:米国

米国で冠動脈バイパス術(CABG)の術中・術後の輸血率は、医療機関によって85%差以上の大幅な格差があることが明らかになった。またその原因が、患者の年齢、性別、症状の程度といったケース・ミックスにあると説明できるのは、約2割程度だったという。周術期の輸血はコスト高の割に安全面に不安があり、実施を減らそうとの動きがある。しかし実施の現状については明らかになっていなかった。そこで米国Duke大学医療センター周術期臨床研究部門のElliott Bennett-Guerrero氏らが、10万人超のCABGを実施した患者について観察コホート試験を実行。JAMA誌2010年10月13日号で発表した。

従来心血管リスク+CKDステージ情報で、冠動脈心疾患リスクを改善?

慢性腎臓病(CKD)は病期ステージ1から、もともと血管疾患が認められなかった人のその後の冠動脈心疾患リスクを上昇することが報告された。イギリス・ケンブリッジ大学公衆衛生プライマリ・ケア部門のEmanuele Di Angelantonio氏らが、約1万7,000人の住民ベースの前向きコホート研究で明らかにしたもので、BMJ誌2010年10月9日号(オンライン版2010年9月30日号)で発表された。

乳幼児の喘鳴は、細菌感染、ウイルス感染とそれぞれ独立して関連

乳幼児における急性の喘鳴と細菌感染には、有意な関連があることが明らかにされた。デンマーク・コペンハーゲン大学のHans Bisgaard氏らが、前向き出生コホート研究を行い報告したもので、関連はウイルス感染と同様だが独自のものだという。ガイドラインでは、乳幼児の喘鳴には抗菌薬投与をルーチンに行わないよう勧告している。無作為化試験による喘鳴への抗菌薬投与の有効性も報告されていないが、欧米での最近の就学前児童を対象とした調査で、ウイルス感染による急性喘鳴例では抗菌薬が最も多く処方されていることが明らかになっている。こうした背景を受けBisgaard氏らは、これまで研究報告がされていない喘鳴と気道への細菌感染との関連、およびその関連がウイルス感染のものとは別のものなのか調査を行った。BMJ誌2010年10月9日号(オンライン版2010年10月4日号)掲載より。