ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:105

PPCI前の遠隔虚血プレコンディショニング、STEMI予後に有意義か/Lancet

 プライマリ経皮的冠動脈インターベンション(PPCI)を受けるST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者では、PPCI前に遠隔虚血コンディショニング(remote ischaemic conditioning:RIC)を行っても心臓死/心不全による入院は減少しないことが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDerek J. Hausenloy氏らが行ったCONDI-2/ERIC-PPCI試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年9月6日号に掲載された。RICは、上腕に装着したカフの膨張と解除を繰り返すことで、一時的に虚血と再灌流を引き起こす。これにより、PPCIを受けるSTEMI患者の心筋梗塞の大きさが20~30%縮小し、臨床アウトカムが改善すると報告されていたが、十分な検出力を持つ大規模な前向き研究は行われていなかった。

ベジタリアンは肉食より脳卒中リスク増/BMJ

 魚食や菜食主義(ベジタリアン)の人は、肉食の人と比較して虚血性心疾患の発生率は低かったが、ベジタリアンでは脳出血および全脳卒中の発生率が高いことが示された。英国・オックスフォード大学のTammy Y N Tong氏らが、ベジタリアンと虚血性心疾患および脳卒中との関連を調査した前向きコホート研究「EPIC-Oxford研究」の18年を超える追跡調査結果を報告した。これまでの研究では、ベジタリアンが非ベジタリアンより虚血性心疾患のリスクが低いことは報告されていたが、利用可能なデータが限られており、脳卒中に関するエビデンスは十分ではなかった。BMJ誌2019年9月4日号掲載の報告。

HFrEFへのsacubitril-バルサルタンは動脈スティフネスを改善?/JAMA

 左室駆出率(LVEF)が低下した心不全(HFrEF)患者において、sacubitril/バルサルタンはエナラプリルと比較し中心動脈スティフネスを有意に改善しないことが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAkshay S. Desai氏らが、sacubitril/バルサルタンによるHFrEFの治療が中心動脈スティフネスおよび心臓リモデリングを改善するかについて検証した無作為化二重盲検臨床試験「EVALUATE-HF試験」の結果を報告した。sacubitril/バルサルタンは、エナラプリルと比較しHFrEF患者の心血管死および心不全による入院を減少させることが示されており、血行動態や心臓リモデリングの改善と関連する可能性があった。著者は「今回の結果は、HFrEFに対するsacubitril/バルサルタンの作用メカニズムを理解するうえで手掛かりとなるだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2019年9月2日号掲載の報告。

高齢者下肢手術、VTE予防の最適な目標INR値は/JAMA

 ワルファリン治療を受けている65歳以上高齢者の股関節・膝関節置換術後に、国際標準化比(INR)目標値を1.8としても、同目標値2.5に対して、静脈血栓症(VTE)または死亡の複合アウトカムのリスクについて、非劣性の基準を満たさなかったことが報告された。米国・ワシントン大学セントルイス校のBrian F. Gage氏らが、1,650例の患者を対象に行った無作為化比較試験「Genetic Informatics Trial(GIFT)of Warfarin to Prevent Deep Vein Thrombosis」の結果で、JAMA誌2019年9月3日号で発表した。ワルファリン治療中の関節手術を受ける患者について、VTE予防のための最適なINR値は明らかになっていなかった。

低LDL-C・SBP値に関連の遺伝子変異体、CVリスクを減少/JAMA

 低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値・収縮期血圧(SBP)値の低下に関連する遺伝子変異体を有する人は、心血管リスクが有意に低いことを、英国・ケンブリッジ大学のBrian A. Ference氏らが、約44万人のバイオバンク登録者を追跡し明らかにした。これまで、LDL-C値とSBP値がより低いことと心血管疾患リスクとの関連は完全には定量化されていなかった。JAMA誌オンライン版2019年9月2日号掲載の報告。  研究グループは、2006~10年に英国バイオバンクに登録した43万8,952例について、2018年まで追跡調査を行った。被験者を、遺伝的LDL-Cスコアと遺伝的SBPスコアにより、それぞれの中央値以下・超で4群に分け、両スコアともに中央値以下の群を基準群とした。

PCI後の糖尿病合併安定CAD、チカグレロル追加が有望/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた糖尿病を伴う安定冠動脈疾患の治療では、チカグレロル+アスピリンはプラセボ+アスピリンに比べ、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合の発生を有意に抑制する一方で、大出血を増加させるものの、良好なネット臨床ベネフィット(net clinical benefit)をもたらすことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のDeepak L. Bhatt氏らが行ったTHEMIS-PCI試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年9月1日号に掲載された。PCIを受けた糖尿病合併安定冠動脈疾患患者は虚血性イベントのリスクが高く、とくにステント留置術を受けた患者のリスクは高いという。THEMIS-PCI試験は、THEMIS試験に参加した患者のうちPCIを受けた患者を対象とするサブスタディである。

STEMI合併多枝冠動脈疾患、完全血行再建術は有効か/NEJM

 ST上昇心筋梗塞(STEMI)を伴う多枝冠動脈疾患患者の治療では、非責任病変を含む完全血行再建術は、責任病変のみへの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と比較して、心血管死と心筋梗塞の複合のリスクだけでなく、心血管死+心筋梗塞+虚血による再血行再建術の複合をも有意に抑制することが、カナダ・マクマスター大学のShamir R. Mehta氏らが行ったCOMPLETE試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年9月1日号に掲載された。STEMI患者では、責任病変へのPCIは心血管死と心筋梗塞のリスクを低減するが、非責任病変へのPCIがこれらのイベントのリスクをさらに抑制するかは不明だという。

STEMIのプライマリPCI、新世代ステントが有望/Lancet

 直接的経皮的冠動脈インターベンション(プライマリPCI)を受ける急性期ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者では、1年後の標的病変不全の発生に関して、生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステントは耐久性ポリマー・エベロリムス溶出ステントよりも有効であることが、スイス・ジュネーブ大学病院のJuan F. Iglesias氏らが行ったBIOSTEMI試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年9月2日号に掲載された。超薄型ストラット金属プラットホームと生分解性ポリマーを組み合わせた新世代の薬剤溶出ステントは、薄型ストラットを用いた第2世代の薬剤溶出ステントに比べて、プライマリPCIを受ける急性心筋梗塞患者の血管治癒を促進し、臨床アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。

急性冠症候群へのプラスグレル、チカグレロルより高い有効性/NEJM

 ST上昇の有無を問わず急性冠症候群患者の治療では、プラスグレルはチカグレロルと比較して、1年後の死亡、心筋梗塞および脳卒中の複合の発生率が有意に低く、大出血の発生率は両群間に差はないことが、ドイツ心臓センターミュンヘンのStefanie Schupke氏らが行ったISAR-REACT 5試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年9月1日号に掲載された。抗血小板薬2剤併用療法(アデノシン二リン酸受容体拮抗薬とアスピリン)は、急性冠症候群の標準治療とされる。プラスグレルとチカグレロルは先行薬のクロピドグレルに比べ、血小板阻害作用が強く、効果の発現が迅速かつ安定しているとされる。一方、侵襲的評価が予定されている患者における、これらの薬剤による1年間の治療の相対的な優劣のデータはこれまでなかったという。

sacubitril -バルサルタンのHFpEFへの有効性/NEJM

 左室駆出率(LVEF)の保たれた心不全(HFpEF)患者において、ネプリライシン阻害薬sacubitrilとARBバルサルタンの合剤(sacubitril/バルサルタン)は、心血管死およびすべての心不全入院の複合エンドポイントを有意に低下させるという結果には至らなかった。米国・ハーバード・メディカル・スクールのScott D. Solomon氏らが、HFpEF患者を対象にsacubitril/バルサルタンとバルサルタンを比較する無作為化二重盲検試験「PARAGON-HF試験」の結果を報告した。LVEFが低下した心不全患者においては、sacubitril/バルサルタンにより心血管死および心不全による全入院のリスクが低下することが示されていたが、HFpEFに対する有効性はこれまで不明であった。NEJM誌オンライン版2019年9月1日号掲載の報告。

甲状腺機能低下症、TSH値と死亡率の関連は?/BMJ

 甲状腺機能低下症と診断された患者において、甲状腺刺激ホルモン(TSH)値が推奨される正常範囲内の場合は、長期的な健康アウトカム(全死因死亡、心房細動、虚血性心疾患、心不全、脳卒中/一過性脳虚血発作、骨折)で臨床的に意味のある差を示唆するエビデンスは確認されなかった。一方、TSH値が推奨範囲を外れる場合、とくに基準値上限を超える場合に、有害な健康アウトカムが確認されたという。英国・バーミンガム大学のRasiah Thayakaran氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。甲状腺ホルモン補充療法においてTSH値に特定の最適目標はなく、正常範囲内でのTSH値の違いが、患者のアウトカムに大きな影響を与えるかどうかについては、これまで不明であった。BMJ誌2019年9月3日号掲載の報告。

インフルエンザ予防効果、N95マスクvs.医療用マスク/JAMA

 外来医療従事者(HCP)におけるN95マスクと医療用マスク装着によるインフルエンザ予防効果を調べた結果、インフルエンザの罹患率について有意差は認められなかったことが示された。米国疾病予防管理センター(CDC)のLewis J. Radonovich Jr氏らが、米国の7医療センター・137外来部門で行ったクラスター無作為化プログマティック効果比較試験の結果で、JAMA誌2019年9月3日号で発表した。両マスクの効果については結論が出ていなかった。

HFrEFへのsacubitril -バルサルタン、1年後のLVEF有意に改善/JAMA

 駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において、sacubitril/バルサルタン投与はNT-proBNP値を低下し、12ヵ月時点の心臓容積・心機能マーカーの改善とわずかだが有意に関連することが明らかにされた。米国・マサチューセッツ総合病院のJames L. Januzzi Jr氏らが、794例の患者を対象に行った前向き非盲検試験の結果で、これまでsacubitril/バルサルタン投与の、心臓リモデリングへの影響は明らかになっていなかった。著者は「観察された心臓の逆リモデリングは、HFrEF患者においてsacubitril/バルサルタンの機械的効果をもたらす可能性を示唆するものといえる」とまとめている。JAMA誌オンライン版2019年9月2日号掲載の報告。

心房細動合併安定CAD、リバーロキサバン単剤 vs.2剤併用/NEJM

 血行再建術後1年以上が経過した心房細動を合併する安定冠動脈疾患患者の治療において、リバーロキサバン単剤による抗血栓療法は、心血管イベントおよび全死因死亡に関してリバーロキサバン+抗血小板薬の2剤併用療法に対し非劣性であり、大出血のリスクは有意に低いことが、国立循環器病研究センターの安田 聡氏らが行ったAFIRE試験で示された。研究の成果は2019年9月2日、欧州心臓病学会(ESC)で報告され、同日のNEJM誌オンライン版に掲載された。心房細動と安定冠動脈疾患が併存する患者における最も効果的な抗血栓治療の選択は、個々の患者の虚血と出血のリスクの注意深い評価が求められる臨床的な課題とされている。

PCI後の心房細動、エドキサバンベース治療の安全性は?/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた心房細動患者では、抗血栓薬による出血のリスクに関して、エドキサバンベースのレジメンはビタミンK拮抗薬(VKA)ベースのレジメンに対し非劣性であることが、ベルギー・ハッセルト大学のPascal Vranckx氏らが行ったENTRUST-AF PCI試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年9月3日号に掲載された。エドキサバンは、心房細動患者において、脳卒中および全身性塞栓症の予防効果がVKAと同等であり、出血や心血管死の発生率は有意に低いと報告されている。また、患者の観点からは、VKAよりも使用が簡便とされる。一方、PCI施行例におけるエドキサバンとP2Y12阻害薬の併用治療の効果は検討されていないという。

閉経後ホルモン療法、5年以上で乳がんリスク増大/Lancet

 先進国の平均体重の女性では、閉経後ホルモン療法(MHT)を50歳から5年間受けた場合の50~69歳における乳がんリスクの増加は、エストロゲン+プロゲスターゲン毎日投与では約50人に1人であり、エストロゲン+プロゲスターゲンの月に10~14日投与では70人に1人、エストロゲン単独では200人に1人であるとの調査結果が、英国・オックスフォード大学のValerie Beral氏らCollaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancerによって示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年8月29日号に掲載された。MHTの種類別の乳がんリスクに関する既報の知見には一貫性がなく、長期的な影響に関する情報は限定的だという。

CABGが3枝病変には有益?SYNTAX試験の10年死亡率/Lancet

 冠動脈3枝病変および左冠動脈主幹部病変の治療において、第1世代パクリタキセル溶出ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)では、10年間の全死因死亡に差はなく、3枝病変患者ではCABGの生存利益が有意に大きいが、左冠動脈主幹部病変患者ではこのような利益はないことが、オランダ・エラスムス大学のDaniel J F M Thuijs氏らが行ったSYNTAX試験の延長試験であるSYNTAXES(SYNTAX Extended Survival)試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年9月2日号に掲載された。SYNTAX試験は、de-novo 3枝および左冠動脈主幹部病変患者における第1世代パクリタキセル溶出ステントを用いたPCIとCABGを比較する非劣性試験であり、最長5年のフォローアップでは、全死因死亡率はPCIが13.9%、CABGは11.4%(p=0.10)と報告されている。

GABAA受容体を標的とした新規抗うつ薬の展望/NEJM

 GABAA受容体に対する選択的ポジティブアロステリックモジュレーターのSAGE-217を14日間連日経口投与した結果、プラセボと比較して15日目のうつ症状が改善したが、有害事象の頻度はSAGE-217群で多かった。米国・Sage TherapeuticsのHandan Gunduz-Bruce氏らが、大うつ病性障害(うつ病)患者を対象とした第II相二重盲検比較試験の結果を報告した。うつ病の発症にGABAの神経伝達障害が関与していることが示唆されているが、大うつ病治療におけるSAGE-217の有効性および安全性は不明であった。NEJM誌2019年9月5日号掲載の報告。

静脈瘤治療、5年後のQOLと費用対効果を比較/NEJM

 静脈瘤治療5年後の疾患特異的QOLは、フォーム硬化療法に比べ血管内レーザー焼灼術あるいは手術のほうが良好であり、費用対効果の確率的モデルで1QALY獲得の支払い意思額(willingness-to-pay)の閾値を調べたところ、2万ポンド(2万8,433ドル)でレーザー焼灼術の支持する割合が最多となることが示されたという。英国・グラスゴー大学のJulie Brittenden氏らが、静脈瘤治療とQOLおよび費用対効果との関連を評価した多施設共同無作為化比較試験「Comparison of Laser, Surgery, and Foam Sclerotherapy trial:CLASS試験」の5年時における主要解析の結果を報告した。血管内レーザー焼灼術と超音波ガイド下フォーム硬化療法は、一次性静脈瘤の治療に対する外科手術の代替療法として推奨されてきたが、長期的な相対的有効性についてはこれまで不明であった。NEJM誌2019年9月5日号掲載の報告。

遺伝子検査活用のプライマリPCI、出血を2割減/NEJM

 プライマリ経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行う患者において、CYP2C19遺伝子検査に基づく経口P2Y12阻害薬の治療は、チカグレロルまたはプラスグレルを投与する標準治療に対して、12ヵ月時点の血栓イベントに関して非劣性であり、出血の発現頻度は有意に低減したこと(ハザード比:0.78)が示された。オランダ・St. Antonius HospitalのDaniel M. F. Claassens氏らが、2,488例を対象に行った無作為化非盲検評価者盲検化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年9月3日号で発表した。