ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:334

多因子転倒防止プログラムは短期入院では効果なし

高齢者転倒予防の多因子転倒防止プログラムの有効性について、入院期間が長期にわたる亜急性期およびリハビリテーション病棟での研究報告はあるが、入院期間が短い高齢者病棟においてもプログラムは有効なのか。シドニー大学のRobert G Cumming氏らが調査を行った。BMJオンライン版2008年3月10日付公表、本誌は2008年4月5日号で収載された。

MMRワクチン再びの推進突破口はどこにあるか

 英国でMMRワクチン接種が導入されたのは1988年。生後13ヵ月までの接種が推奨され1995年には2歳児までの接種率が92%に達したが、1998年にワクチン接種が自閉症や腸疾患と関連するとの調査報告がされ79%(2003年)まで落ち込んだ。その後、報告は根拠のないものと証明されたが、一部の親はいまだに否定的で最新接種率(2007年7~9月)は85%にとどまっている。英国UCL 小児保健研究所のAnna Pearce氏らは、ワクチン接種推奨のターゲットを絞り込むため、接種に影響している因子について検証した。BMJオンライン版2008年2月28日付、本誌2008年4月5日号より。

乳幼児の重症ロタウイルス胃腸炎の予防に経口生ワクチンRIX4414が有効

2歳までの乳幼児の重症ロタウイルス胃腸炎に対しロタウイルスワクチンRIX4414が有効なことが、ラテンアメリカ10ヵ国で実施されたHuman Rotavirus Vaccine Study Groupの検討で明らかとなった。ロタウイルスは世界的に乳幼児の重症胃腸炎の主たる原因とされる。下痢関連入院の1/3以上に関与し、年に約52万7,000人の5歳以下の乳幼児が死亡し、開発途上国では最も頻度の高い死亡原因であるという。ブラジル保健省Evandro Chagas研究所のAlexandre C Linhares氏がLancet誌2008年4月5日号で報告した。

女性に対するDVは、人権侵害かつ深刻な公衆衛生上の問題を引き起こす

「女性に対する親密な男性パートナーによる暴力は、人権侵害だけでなくその帰結として深刻な公衆衛生上の問題を引き起こす」――WHO主導の研究グループが日本を含む10ヵ国のデータをまとめ、Lancet誌2008年4月5日号で報告した。女性の外傷の主原因が身体的虐待であることを示す多くの報告がある一方で、男性パートナーによる虐待がもたらす不良な健康アウトカムは外傷に限らず、はるかに広範囲に及ぶことが指摘されている。WHOとの共同研究に当たったPATH(Program for Appropriate Technology in Health)のMary Ellsberg氏による報告。

エゼチミブの動脈硬化抑制効果は確認できず

日本では昨年発売となった高脂血症治療剤エゼチミブ(国内商品名:ゼチーア錠)。スタチン系薬剤シンバスタチンとの併用でのアテローム性動脈硬化症に対する効果について、臨床試験「ENHANCE」の結果が公表された。Academic Medical Center(オランダ)John J.P. Kastelein氏らによる試験結果の公表は米国心臓学会で席上と同時に、同日発行のNEJMオンライン版(2008年3月30日付)で世界に伝えられた。本誌では2008年4月3日号にて掲載。

乳癌予後予測の精度アップと治療戦略改善にゲノム情報統合が有効

デューク大学(米国)ゲノム研究所のChaitanya R. Acharya氏らは、「遺伝子発現プロファイルの活用が乳癌の予後予測と治療戦略に有益をもたらす」として、ゲノム情報と臨床像および病理学的危険因子(米国で「Adjuvant! Online」と呼ばれている乳癌再発リスクのオンラインシミュレーションシステムの集約情報)を統合し、初期乳癌の予後予測の精度アップと治療戦略改善が図れるかどうかを検討した。JAMA誌2008年4月2日号より。

2型糖尿病患者の冠動脈硬化症にはグリメピリドよりピオグリタゾン

経口糖尿病治療薬であるインスリン抵抗性改善薬のピオグリタゾン(国内商品名:アクトス)とグリメピリド(SU剤)について、2型糖尿病患者の冠動脈硬化症に対する進行抑制効果を比較した臨床試験「PERISCOPE」の結果が2008年3月31日、米国の心臓学会で発表。クリーブランド・クリニック(米国)のSteven E. Nissen氏らは、「ピオグリタゾンのほうが動脈硬化進展の抑制効果が高い」と報告した。報告は同日のJAMA誌オンライン版で公表された(本誌2008年4月2日収載)。

ブルセラ症にはアミノグリコシド系抗生物質を含む併用レジメンの長期投与が有効

ヒトのブルセラ症の治療では、アミノグリコシド系抗生物質を含む3剤あるいは2剤併用レジメンの有効性が高いことが、イスラエルRabin医療センターBeilinson病院のKeren Skalsky氏らが実施したメタ解析で明らかとなった。ブルセラ症は世界で最も多い人獣共通感染症で、新規発症は毎年50万例以上に及ぶ。抗生物質の併用レジメンの無作為化対照比較試験が数多く行われているが、包括的なエビデンスは確立されていない。BMJ誌2008年3月29日号(オンライン版2008年3月5日号)掲載の報告。

多剤耐性結核患児へのフルオロキノロン投与は侵襲性肺炎球菌疾患を招く

 多剤耐性結核(MDRTB)に罹患した子どもの治療にフルオロキノロンを使用すると、レボフロキサシン(LVFX)非感受性肺炎球菌およびその院内伝搬に起因する侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)の発現を招くことが、Anne von Gottberg氏らGERMS-SA(南アフリカ)の研究グループによって明らかにされた。現在、抗生物質に対する肺炎球菌の耐性獲得が世界的な問題となっており、フルオロキノロンなど比較的新しい薬剤に対する耐性菌は、とくに市中肺炎の経験的治療(empiric treatment)において重要とされる。Lancet誌2008年3月29日号(オンライン版2008年3月21日付)掲載の報告。

第2世代抗精神病薬が第1世代より優れるとはいえない

統合失調症の初期症状に対する抗精神病薬治療は少なくとも1年間は有効であるが、第2世代の薬剤が第1世代よりも優れるとはいえないことが、EUFEST(European First-Episode Schizophrenia Trial)試験の結果から明らかとなった。第2世代抗精神病薬が上市されて10年以上が経過した。当初から、第1世代より有効で運動系の副作用も少ないとされるが、反対意見も多かった。オランダUtrecht医科大学Rudolf Magnus神経科学研究所のRene S Kahn氏が、Lancet誌2008年3月29日号で報告した。

妊娠中期に子宮頸管の長い初産女性は帝王切開のリスクが高い

正期産となるかは妊娠初期の子宮の膨張に依存されることは、生理学および生化学の研究によって示唆されている。また妊娠中期の子宮頸管の短縮が自然早産のリスク増加に関係していることも知られている。英国ケンブリッジ大学産科・婦人科のGordon C.S. Smith氏らは、逆に妊娠中期に子宮頸管が長いままだと、正期産で帝王切開分娩になるリスクの増大につながるのではないかと仮説を立てた。NEJM誌2008年3月27日号より。

冠動脈カルシウムは人種・民族を問わず冠動脈イベントリスクの独立因子

CTにより測定される冠動脈カルシウムスコアは、従来のリスク因子とは別に冠動脈性心疾患が予測できる独立したリスク因子であることが報告されている。ただしこれは白人を母集団にした場合で、その他の人種・民族集団においても独立したリスク因子となりうるかどうかは明らかではない。カリフォルニア大学放射線部門のRobert Detrano氏らは、白人、黒人、ヒスパニック系、アジア人(中国人)の4つの人種・民族集団を対象とした循環器系疾患の前向き研究であるMESA(Multiethnic Study of Atherosclerosis)参加者のデータを用い検証した。NEJM誌2008年3月27日号にて掲載。

ホモ接合性も発癌リスク評価やマネジメントにおいて重要

癌は、生殖細胞変異と体細胞イベントから生じる多重遺伝子性疾患だが、癌組織におけるヘテロ接合消失(LOH)を研究していた米国クリーブランド・ゲノム医学研究所のGuillaume Assie氏らは「生殖細胞の癌組織には、ホモ接合性(homozygosity)の傾向を持つ特異的な遺伝子座が存在する」として、ホモ接合性が発癌リスク評価やマネジメントで重要な素因となる可能性を示唆した。JAMA誌2008年3月26日号より。

早産児は幼年期死亡・早産児出産リスクが高い

早産は小児の罹病率や死亡率を高める主要な要因とされるが、長期にわたる健康や生活の質への影響については明らかにされていない。米国ノースカロライナ州にあるデューク大学医療センターのGeeta K. Swamy氏らのグループは、早産の、生存、生殖、そして次の世代の早産といった長期的な影響を調べる縦断観察研究を行った。JAMA誌2008年3月26日号の報告より。

消化不良にPPIによる胃酸分泌抑制は適切な初期治療

プライマリ・ケアにおける消化不良の初期治療では、ピロリ菌の検査・除菌とプロトンポンプ阻害薬(PPI)による胃酸分泌抑制の費用効果および症状抑制効果は同等であり、PPIは適切な治療戦略であることがMRC-CUBE試験の結果により示された。BMJ誌2008年3月22日号(オンライン版2008年2月29日号)で、英国Birmingham大学プライマリ・ケア科のBrendan C Delaney氏が報告した。英国の消化不良の治療ガイドラインでは、上部消化管の腫瘍が疑われる徴候がない場合は、これら2つの管理法が推奨されている。

スタチンは慢性腎疾患患者の心血管死を低減する

スタチンは、慢性腎疾患(CKD)患者の心血管死を一般人口と同程度にまで低減することが、無作為化試験のメタ解析の結果から明らかとなった。オーストラリアSydney大学公衆衛生学腎臓臨床研究センターのGiovanni F M Strippoli氏らが、BMJ誌2008年3月22号(オンライン版2008年2月25日版)で報告した。CKD患者は心血管病のリスクが増大している。スタチンは一般人口において心血管死や全原因死亡を低減することがわかっているが、CKD患者におけるスタチンの役割については不明な点が多い。

結腸・直腸癌の肝転移に対する手術+化学療法は適格例、切除例に有効

結腸・直腸癌の肝転移に対し、手術と術前・後の化学療法を併用すると適格例および切除例の無増悪生存率(PFS)が改善することが、Bernard Nordlinger 氏らEORTC Intergroupの検討で明らかとなった。毎年、世界で約100万人が結腸・直腸癌と診断され、その40~50%に肝転移がみつかる。転移巣が切除可能な場合は5年生存率は35%に達するが、切除しても75%が再発するという。そのため、再発リスクを低減させるアプローチの探索が進められている。Lancet誌2008年3月22日号掲載の報告。

関節リウマチに対する新たな生物学的製剤トシリズマブの有用性を確認

関節リウマチ治療における新たな生物学的製剤として、日本で開発されたヒト化抗インターロイキン(IL)-6受容体モノクローナル抗体トシリズマブ(商品名:アクテムラ)の有用性を示唆する第III相試験(OPTION study)の結果が、オーストリアVienna医科大学リウマチ科のJosef S Smolen氏によりLancet誌2008年3月22日号で報告された。IL-6は免疫および炎症反応に広範な作用を及ぼすが、この系を介して関節リウマチの発症にも関与すると考えられている。トシリズマブは、すでに日本およびヨーロッパの第II相試験で関節リウマチに対する有効性が示されていた。