ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:153

スタチンのノセボ効果が明らかに/Lancet

 スタチン治療の有害事象について、いわゆる「ノセボ効果」が認められることが明らかにされた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAjay Gupta氏らが、ASCOT-脂質低下療法(LLA)試験の二重盲検試験期と非盲検延長試験期の有害事象について解析した結果、盲検下ではみられなかったが非盲検下において、すなわち患者も医師もスタチン療法が実施されていると認識している場合にのみ、筋肉関連有害事象が過剰に報告されたという。これまで、無作為化二重盲検比較試験ではスタチン療法と有害事象との関連は示唆されていなかったが、観察研究では盲検試験に比べてさまざまな有害事象の増加が報告されていた。Lancet誌オンライン版2017年5月2日号掲載の報告。

直近10年、新薬の32%に販売中止・枠組み警告/JAMA

 2001年からの10年間に米国食品医薬品局(FDA)で承認を受けた222種の新規治療薬のうち、安全性への懸念から、市販開始後に販売中止や枠組み警告の追加などに至ったものが32%あったことが明らかにされた。なかでも、生物学的製剤や精神疾患治療薬、迅速承認や当局承認締め切り間際に承認を受けたものでその発生率が有意に高く、著者は「これらの新しい治療薬は、生涯にわたる継続的な安全性モニタリングが必要であることを強調するものである」と述べている。米国・ブリガム・ウィメンズ病院のNicholas S. Downing氏らによる検討で、JAMA誌2017年5月9日号に発表された。

バイスタンダーによる蘇生処置が予後を大幅に改善/NEJM

 バイスタンダーによる心肺蘇生(CPR)および除細動の実施は、脳障害/介護施設入所や全死因死亡の1年リスクを、いずれも3~4割と有意に低減することが示された。デンマーク・オールボー大学のKristian Kragholm氏らが2,855例を対象に行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2017年5月4日号で発表した。院外心停止へのバイスタンダーによる介入と長期機能アウトカムとの関連について、これまで大規模に検討されたことはなかった。

ネガティブ試験の出版割合は低くない?/BMJ

 ポジティブな転帰の試験は、ネガティブな転帰の試験よりも初回投稿時の採択率は高い傾向があるが、投稿や出版期日までの出版の割合はネガティブ試験の研究のほうが高く、試験期間を通じて研究段階バイアス(submission bias)や出版バイアス(publication bias)のエビデンスは認められないとの結果が、米国・グラクソ・スミスクライン社研究開発部のGary Evoniuk氏らの調査で示された。同氏らは、「出版率にのみ重点を置いた分析は、不成功に終わった出版に向けた取り組みを考慮していない」と指摘する。研究の成果は、BMJ誌2017年4月21日号に掲載された。2010年以降に実施された文献調査では、clinicaltrials.govや他の公的サイトに登録された試験の15~44%は医学誌に発表されていないという。統計学的に有意な転帰が得られなかった試験は出版の可能性が低く、出版された場合も試験終了から公表までの期間が長期に及ぶとされてきたが、今回の結果はこれらの知見とは相反するものであった。

低LDL-Cが認知症リスクを低減する可能性/BMJ

 PCSK9遺伝子およびHMGCR(HMG-CoA reductase)遺伝子のバリアントに起因するLDLコレステロール(LDL-C)の低下は、認知症やパーキンソン病の発症リスクを増加させず、LDL-C値の低下によりアルツハイマー型認知症のリスクが低減する可能性があることが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMarianne Benn氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年4月24日号に掲載された。コレステロールは脳のニューロンを取り囲むミエリンの主成分であるため、低LDL-C値はアルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの神経疾患のリスクを増大させる可能性が指摘されている。

高感度心筋トロポニンT、非心臓手術後の死亡と関連/JAMA

 非心臓手術施行例では、術後3日間の高感度心筋トロポニンT(hsTnT)のピーク値が30日死亡リスクと関連することが、カナダ・マックマスター大学のP.J.Devereaux氏らが行ったVISION試験で示された。心筋虚血の臨床所見がみられない場合でも、hsTnT値上昇は30日死亡と関連したという。研究の成果は、JAMA誌2017年4月25日号に掲載された。非心臓手術後心筋障害(myocardial injury after noncardiac surgery:MINS)は、術後30日以内に発症した心筋虚血に起因する心筋障害と定義され、死亡との独立の関連が確認されている。非高感度心筋トロポニンTアッセイに基づくMINSの診断基準が確立されているが、米国食品医薬品局(FDA)は最近、hsTnTの使用を承認し、世界的に多くの病院でhsTnTアッセイが用いられている。

染色体不安定性、NSCLC再発・死亡リスクを増大/NEJM

 染色体不安定性(chromosome instability)を介して誘導される腫瘍内不均一性(intratumor heterogeneity)は、非小細胞肺がん(NSCLC)の再発や死亡のリスクを高めることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMariam Jamal-Hanjani氏らTRACERxコンソーシアムの検討で示された。この知見は、肺がんの予後予測因子としての染色体不安定性の可能性を支持するものだという。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年4月26日号に掲載された。NSCLCの腫瘍内不均一性やゲノム進化(genome evolution)の詳細な探索については、小規模な後ろ向きコホート研究しか行われておらず、治療戦略の指針となる腫瘍内不均一性の臨床的重要性や、ドライバー・イベントのクローン性は不明とされている。

オピオイド依存、代替維持療法で全死亡リスク減/BMJ

 オピオイド依存症患者に対する、メサドン(商品名:メサペイン)やブプレノルフィン(商品名:レペタン)を用いた代替維持療法は、全死因死亡および過剰摂取死亡のリスクを大きく低下させる。スペイン・国立疫学センターのLuis Sordo氏らが、コホート研究を対象にしたシステマティックレビューとメタ解析により明らかにした。検討では、メサドンの治療導入期と治療中止直後は、死亡リスクが高いことも明らかにされた。著者は、「こうしたリスクを減らすためには、公衆衛生と臨床戦略の両輪で対処する必要がある」と述べたうえで、「今回の所見は重要であると思われるが、さらなる検討で、死亡リスクとオピオイド代替療法の比較ならびにそれぞれの治療期との比較における潜在的交絡や選択的バイアスを明瞭にすることが求められる」とまとめている。BMJ誌2017年4月26日号で発表された。

便潜血陽性、大腸内視鏡検査はいつまでにすべきか/JAMA

 免疫学的便潜血検査(FIT)陽性患者に対するフォローアップ大腸内視鏡検査の実施時期を明らかにする検討が、米国・カイザーパーマネンテ北カリフォルニアの研究部門のDouglas A. Corley氏らにより行われた。その結果、8~30日に実施群と比べて10ヵ月以降実施群は、大腸がんリスクが有意に高く、診断時に進行大腸がん(Stage III、IV)であるケースが有意に多いことが示された。FITは大腸がんスクリーニングで用いられる一般的な検査法で、陽性の場合は大腸内視鏡検査のフォローアップを受けることが必要とされている。しかしフォローアップ実施までの期間にはばらつきがあり、そのことが腫瘍の進行と結び付いている可能性が示唆されていた。JAMA誌2017年4月25日号掲載の報告。

腎疾患治療に格差、130ヵ国調査で明らかに/JAMA

 カナダ・アルバータ大学のAminu K. Bello氏らが、世界130ヵ国を対象に腎疾患への対応能力などについて調べた結果、地域間および地域内で、サービスや人的資源について顕著なばらつきが認められることが判明した。本研究は、「腎疾患は世界中で医療・公衆衛生上の重大な課題になっているが、ケアに関して入手できる情報は限定的である」として行われたが、結果を踏まえて著者は、「今回の調査の結果が、現在の各国の腎疾患治療の現状を正確に反映しているものならば、その質的改善に努めるよう知らしめるのに有用なものとなるだろう」と述べている。JAMA誌オンライン版2017年4月21日号掲載の報告。

腹部大動脈瘤、治療選択と予後に男女差/Lancet

 腹部大動脈瘤の治療・予後について男女差があることが、2000年以降に行われた試験データについて行った系統的レビューとメタ解析の結果、示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのPinar Ulug氏らが、ステントグラフト内挿術(EVAR)と外科的人工血管置換術(open repair)それぞれについて性別に調べた結果、女性は男性と比べてEVAR適応者の割合が低く、非介入率が高く、また手術死亡率が両修復術ともに高かったことが明らかにされた。本検討は、腹部大動脈瘤の予後は、女性のほうが男性よりも不良の可能性があるとの指摘を踏まえて行われたもので、結果を踏まえて著者は、「女性における腹部大動脈瘤治療マネジメントの改善が必要である」と述べている。Lancet誌オンライン版2017年4月25日号掲載の報告。

妊娠初期の抗うつ薬、児への影響は?/JAMA

 妊娠初期の妊婦の抗うつ薬服用は、交絡因子を調整すると非服用群と比較して早産のリスクがわずかに上昇したものの、在胎不当過小(SGA)、自閉症スペクトラム障害あるいは注意欠如・多動症(ADHD)のリスク増加との関連は確認されなかった。米国・インディアナ大学のAyesha C Sujan氏らが、「妊娠初期の抗うつ薬服用と出産や神経発達の問題との関連はセロトニンシグナル伝達の機能不全に起因する」という説の、対立仮説を検証する目的で行った後ろ向きコホート研究の結果を報告した。胎児期の抗うつ薬曝露は有害転帰と関連することが示唆されてきたが、先行研究では交絡が十分に説明されていなかった。JAMA誌2017年4月18日号掲載の報告。

2040年の世界の推計医療費は?/Lancet

 世界各国の医療費(health spending)は経済発展と関連しているが、過去20年間の傾向や関連性を検証した結果、一概に関連があるとは言い切れず、財源が乏しい国では医療費は低いことが示唆されたという。米国・ワシントン大学のJoseph L. Dieleman氏らが、世界184ヵ国の過去の国内総生産(GDP)、全部門の財政支出、財源ごとの医療費などを分析し、2015~40年の推定医療費を推算して報告した。著者は、「政策の変更によって医療費の増大につながる可能性はあるが、最貧国にとって他国からの支援は欠かせないままと思われる」とまとめている。財源の規模、とくに財源の確保は、医療へのアクセスや医療のアウトカムに影響するといわれており、医療費は経済発展とともに増大することと、一方で、医療費財源の制度(health financing systems)の違いによって非常に大きなばらつきがみられることが指摘されている。研究グループは、世界の医療費の将来推計は、政策責任者および立案者にとって有益であり、資金調達の不足(financing gaps)を明らかにすることができるとして本検討を行った。Lancet誌オンライン版2017年4月19日号掲載の報告。

小児期の不遇、青年期の自殺リスク増に影響/BMJ

 子供時代の境遇が不幸であると、その後の青年期における自殺率が有意に高まるという。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のCharlotte Bjorkenstam氏らが、スウェーデンで生まれた54万8,721例を対象としたコホート研究の結果、報告した。子供時代の境遇が不幸だと、青年期に自傷行為リスクが増すことは先行研究で示されていたが、自殺リスクとの関連については不明であった。BMJ誌2017年4月19日号掲載の報告。

自転車通勤者は徒歩通勤者より全死因死亡リスクが低い/BMJ

 自転車通勤は心血管疾患(CVD)・がん・全死因死亡のリスク低下と、徒歩通勤はCVDのリスク低下とそれぞれ関連していることが、英国・グラスゴー大学のCarlos A Celis-Morales氏らによる、前向きコホート研究の結果、明らかにされた。徒歩通勤や自転車通勤は、日常の身体活動を高めることができる方法として推奨されている。先行研究のメタ解析(被験者17万3,146例)において、有害な心血管転帰のリスク低下と関連することが報告されていたが、同報告の結果は、心代謝性エンドポイント(高血圧、糖尿病、脳卒中、冠動脈心疾患、CVDなどの発生)の範囲が不均一で徒歩通勤か自転車通勤かの区別がなされておらず、限定的なものであった。BMJ誌2017年4月19日号掲載の報告。

術前デキサメタゾン追加で術後24時間の嘔吐が低減/BMJ

 大腸および小腸の手術では、麻酔導入時にデキサメタゾン8mgの静脈内投与を追加すると、標準治療単独に比べ術後24間以内の悪心・嘔吐が抑制され、72時間までの制吐薬レスキュー投与の必要性が低減することが、英国・オックスフォード大学のReena Ravikumar氏らが実施したDREAMS試験で示された。デキサメタゾン追加による有害事象の増加は認めなかったという。研究の成果は、BMJ誌2017年4月18日号に掲載された。術後の悪心・嘔吐(PONV)は、最も頻度の高い術後合併症で、患者の30%以上にみられる。腸管の手術を受けた患者では、PONVは回復を遅らせることが多く、術後の栄養障害を引き起こす可能性もあるため、とくに重要とされる。デキサメタゾンは、低~中リスクの手術を受ける患者でPONVの予防に有効であることが示されているが、腸管手術を受ける患者での効果は知られていなかった。

1次予防のスタチン対象、ガイドラインによる差を比較/JAMA

 スタチンによる動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の1次予防が推奨される患者は、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)ガイドライン2013年版よりも、米国予防医療サービス対策委員会(USPSTF)の2016年版勧告を順守するほうが少なくなることが、米国・デューク大学のNeha J. Pagidipati氏らの検討で示された。ACC/AHAガイドラインで対象だが、USPSTF勧告では対象外となる集団の約半数は、比較的若年で高度の心血管疾患(CVD)リスクが長期に及ぶ者であることもわかった。研究の成果は、JAMA誌2017年4月18日号に掲載された。1次予防におけるスタチンの使用は、ガイドラインによって大きな差があることが知られている。USPSTFによる2016年の新勧告は、1つ以上のCVDリスク因子を有し、10年間CVDリスク≧10%の患者へのスタチンの使用を重視している。

再生不良性貧血、免疫抑制療法+エルトロンボパグが有望/NEJM

 重症再生不良性貧血患者に対する免疫抑制療法へのエルトロンボパグの追加は、血液学的奏効率の著明な改善と関連することが示された。米国・国立衛生研究所のDanielle M Townsley氏らが、治療歴のない重症再生不良性貧血患者を対象に、標準免疫抑制療法とエルトロンボパグの併用について検討した第I/II相試験の結果を報告した。後天性再生不良性貧血は、免疫介在性の骨髄破壊により生じ、免疫抑制療法が有効であるが、残存する幹細胞数の減少によりその効果が限られる可能性がある。これまでの研究で、免疫抑制療法では難治性の再生不良性貧血患者において、エルトロンボパグ(合成トロンボポエチン受容体作動薬)の投与により、約半数の患者で臨床的に有意な血球数の増加が得られることが示されていた。NEJM誌2017年4月20日号掲載の報告。

乾癬へのウステキヌマブvs. IL-23選択的阻害薬/NEJM

 中等症から重症の尋常性乾癬患者を対象に、インターロイキン(IL)-12およびIL-23を構成するサブユニットp40に対する抗体であるウステキヌマブと、IL-23のもう1つのサブユニットp19に特異的に結合しIL-23経路を阻害するヒト化IgG1モノクローナル抗体risankizumab(BI 655066)を比較した第II相試験において、risankizumabによるIL-23の選択的阻害はウステキヌマブよりも臨床効果が優れていることが示された。カナダ・K Papp Clinical ResearchのKim A Papp氏らが、北米および欧州の32施設で実施した48週間の多施設共同無作為化用量範囲探索試験の結果を報告した。IL-23は、乾癬の発症に極めて重要な役割を担っていることが知られている。IL-23経路を阻害する乾癬治療薬として最初に登場したのがウステキヌマブであるが、ウステキヌマブはIL-23とIL-12の両方を阻害する。そのため、IL-23を選択的に阻害する乾癬治療薬の開発が進められていたが、これまでIL-12/IL-23阻害薬と選択的IL-23阻害薬の有効性について直接比較した検討は行われていなかった。NEJM誌2017年4月20日号掲載の報告。

急性咽頭痛、デキサメタゾンで有意に改善/JAMA

 急性咽頭痛で抗菌薬の即時投与を必要としない成人患者に対し、経口デキサメタゾンの単回投与が、48時間後の症状完全消失に効果があることがわかった。なお24時間後の症状完全消失については、有意な改善はみられなかったという。英国・Nuffield Department of Primary Care Health SciencesのGail Nicola Hayward氏らが、英国プライマリケアベースで565例を対象に行った、プラセボ対照無作為化二重盲検試験で明らかにしたもので、JAMA誌2017年4月18日号で発表した。急性咽頭痛はプライマリケアで最も多い症状の1つで、それに対する不適切な抗菌薬投与も少なくないのが現状だという。