精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:109

がんと共に生きる人々を支えるために、医師ができること/武田

 がん治療の進歩は目覚ましく、新たな治療法が続々と登場している。しかし、がん患者の精神・心理的苦痛に対する支援はどうだろうか。がん患者が抱える課題と、それに対する取り組みについての理解を深めることを目的に、武田薬品工業は「がんになっても“誰一人取り残されない社会”を作るために」をテーマとして、2023年1月27日にメディアセミナーを開催した。  セミナーの前半では、大西 秀樹氏(埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科 診療部長・教授)が「がん患者さん・ご家族の心理社会的支援の必要性」をテーマに、心理支援の重要性を語った。後半では、坂本 はと恵氏(国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター 副サポーティブケアセンター長)が「がん相談支援センターの役割と現状」をテーマに、がん相談支援センターの具体的な業務内容を紹介し、医療者・患者への周知の重要性を述べた。セミナーの座長は、悪性リンパ腫の罹患経験を有する天野 慎介氏(一般社団法人全国がん患者団体連合会 理事長)が務めた。

昼寝とうつ病になるリスク~メタ解析

 いまだ議論の余地が残る昼寝とうつ病リスクとの関連について、中国・江西科技師範大学のLiqing Li氏らはメタ解析を実施し、これらの関連性を明らかにしようと試みた。その結果、昼寝はうつ病の予測因子であることが示唆された。Frontiers in Psychology誌2022年12月15日号の報告。  2022年2月までに公表された研究を、PubMed、Embase、Web of Science、China National Knowledge Infrastructure databasesより検索し、解析に含めた研究のリファレンスリストの情報も併せて収集した。ランダム効果モデルを用いて、複合エフェクトサイズを推定した。

6つの“健康的な生活習慣”で高齢者の記憶力低下が遅延/BMJ

 健康的な生活習慣(喫煙をしない、飲酒をしない、健康的な食事、定期的な運動、活発な認知活動と社会的接触を組み合わせた)は、アポリポ蛋白E(APOE)ε4遺伝子型保有者においても、記憶力低下の進行を遅らせることを、中国・首都医科大学のJianping Jia氏らが地域住民を対象とした10年間の前向きコホート研究「China Cognition and Ageing Study(COAST)」の結果、報告した。健康的な生活習慣が認知機能に及ぼす影響に関する研究は増えているが、記憶力への影響に目を向けた研究は少なく、長期にわたる健康的な生活習慣と記憶力低下との関係を評価するには不十分なものであり、また遺伝的リスクとの相互作用は考慮されていなかった。著者は、「今回の研究は、記憶力の低下から高齢者を守るための重要な情報を提供するだろう」とまとめている。BMJ誌2023年1月25日号掲載の報告。

統合失調症患者の睡眠構造に対するブレクスピプラゾールの影響

 ブレクスピプラゾールは、日本において統合失調症治療に広く用いられている非定型抗精神病薬の1つである。これまでの研究では、睡眠変数に対するいくつかの抗精神病薬による治療効果が報告されているが、統合失調症患者の睡眠構造に対するブレクスピプラゾールの影響については、十分に検討されていない。長野・栗田病院の荒井 勇輔氏らは、統合失調症患者を対象に、睡眠構造に対するブレクスピプラゾールの影響を検討した。その結果、ブレクスピプラゾールの併用は、統合失調症患者の睡眠構造に変化を及ぼす可能性が示唆されたが、多重比較補正後では有意な差は認められなかった。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年1月6日号の報告。

SNRI使用と口渇リスク

 口腔乾燥症や口渇は唾液量の減少および欠如を起因とする状態であり、特定の薬剤の使用に続発してみられる。Joseph Katz氏らは、口腔乾燥症患者とセロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)使用との関連を分析した。その結果、SNRIを使用している患者は、使用していない患者と比較し、口渇リスクが約5倍であることが明らかとなった。結果を踏まえて著者らは、SNRIを処方する専門医、唾液の産生やQOLへのSNRIによる影響を認識していない医師、口腔乾燥症の治療に携わっている歯科医師にとって、本結果は有益な情報であろうと報告している。Quintessence International誌オンライン版2023年1月10日号の報告。

日本人片頭痛患者に対するフレマネズマブ オートインジェクターの第III相臨床試験

 ヒト化抗CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)モノクローナル抗体であるフレマネズマブは、片頭痛発作の発症抑制を適応とする皮下注射製剤である。2022年、フレマネズマブに、自宅での自己注射が可能となるオートインジェクター(AI)製剤が新たな選択肢として加わった。獨協医科大学の平田 幸一氏らは、フレマネズマブのAI製剤の安全性を調査するために実施された第III相臨床試験の結果を報告した。その結果、自宅でのフレマネズマブのAI製剤自己注射は、一般的な安全性および良好な忍容性が認められた。著者らは、有用性およびアドヒアランス改善の観点から、フレマネズマブのAI製剤による投与戦略は臨床的に意義があると考えられると報告している。Expert Opinion on Drug Safety誌オンライン版2022年12月28日号の報告。

統合失調症発症と昼寝の頻度との関係

 統合失調症と昼寝の頻度との関連について、中国・温州医科大学のJun Ma氏らが調査を行った。その結果、昼寝の頻度の増加と統合失調症発症との間に双方向の関連が認められ、統合失調症の進行や治療に対する潜在的な介入として昼寝の頻度をコントロールする意義が示唆された。BMC Psychiatry誌2022年12月13日号の報告。  昼寝の頻度と統合失調症に関連する上位の遺伝的バリアントのゲノムワイド関連解析(GWAS)によって得られる要約統計量(summary statistics)を用いて、双方向2サンプルメンデルランダム化解析を実施した。昼寝に関するGWASの一塩基多型(SNP)のデータは、英国バイオバンク(45万2,633例)および23andMeコホート研究(54万1,333例)より抽出し、統合失調症に関連するGWASは、Psychiatric Genomics Consortium(PGC:3万6,989件、症例:11万3,075例)より抽出した。逆分散加重(IVW)分析を主要な方法として用い、加重中央値、MR-Robust、Adjusted Profile Score(RAPS)、Radial MR、MR-Pleiotropy Residual Sum Outlier(PRESSO)を感度分析として用いた。

高齢者の歩行速度と認知症リスク~久山町研究

 九州大学の多治見 昂洋氏らは、高齢者の歩行速度と脳体積および認知症発症リスクとの関連を調査した。その結果、最高歩行速度が低下すると認知症リスクが上昇しており、この関連には海馬、島皮質の灰白質体積(GMV)減少および白質病変体積(WMHV)増加が関連している可能性が示唆された。Archives of Gerontology and Geriatrics誌2023年3月号の報告。  MRIを実施した65歳以上の認知症でない日本人高齢者1,112人を対象に、5.0年間(中央値)フォローアップを行った。対象者を、年齢および性別ごとに最高歩行速度の四分位により分類した。GMVおよびWMHVの測定には、voxel-based morphometry(VBM)法を用いた。最高歩行速度とGMVとの横断的な関連を評価するため、共分散分析を用いた。最高歩行速度と認知症発症リスクとの関連を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。最高歩行速度と認知症との関連に対する脳体積の影響を検討するため、媒介分析を行った。

統合失調症治療における抗精神病薬処方の臨床的決定因子~コホート研究

 統合失調症の治療では主に抗精神病薬が用いられるが、近年、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用頻度が高まっている。米国・ニューヨーク医科大学のEmily Groenendaal氏らは、抗精神病薬の使用(LAI vs.経口)、薬剤クラス(第1世代抗精神病薬[FGA]vs.第2世代抗精神病薬[SGA])、臨床アウトカムの観点から、抗精神病薬選択の予測因子を特定しようと試みた。その結果、LAIか経口、FGAかSGAといった抗精神病薬の選択には、疾患重症度と罹病期間が影響を及ぼす可能性が示唆された。LAI抗精神病薬は、より重症な患者に使用される場合が多かったが、再入院率は経口抗精神病薬と同様であり、重症患者に対するLAI抗精神病薬使用が支持される結果となった。また、若年患者にはLAI抗精神病薬、高齢患者にはFGAが使用されていることが明らかとなった。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2022年12月28日号の報告。

高齢ドライバーの運転事故は減少しているか/筑波大

 高齢者の自動車運転に起因する事故が後を絶たない。交通安全推進のため、75歳以上のドライバーを対象に、2009年から運転免許更新時の認知機能検査が義務化され、2017年からその検査結果の運用方法が変更された。これら運用変更後に、高齢ドライバーの事故は減少したのだろうか。  市川 政雄氏(筑波大学医学医療系教授)らの研究グループは、2012~19年までに全国で発生した高齢ドライバーによる交通事故のデータを用い、2017年の運用変更後に、75歳以上のドライバーの事故数が、認知機能検査の対象外である70~74歳と比べ、どの程度変化したのか分析した。また、75歳以上の高齢者が自転車や徒歩で移動中に負った交通外傷の数にも変化があったのか、同様に分析した。