精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:91

認知症における抗精神病薬処方を合理化するための介入

 認知症介護施設の入居者に対する不適切な抗精神病薬投与は問題となっている。この問題に対処するため、施設スタッフの教育やトレーニング、アカデミック・ディテーリング、新たな入居者評価ツールで構成された「認知症に対する抗精神病薬処方の合理化(RAPID:Rationalising Antipsychotic Prescribing in Dementia)」による複合介入が開発された。アイルランド・ユニバーシティ・カレッジ・コークのKieran A. Walsh氏らは、認知症介護施設の環境下におけるRAPID複合介入の利用可能性および受容性を評価するため、本研究を実施した。また、向精神薬の処方、転倒、行動症状に関連する傾向についても併せて評価した。その結果、RAPID複合介入は広く利用可能であり、関係者の受容性も良好である可能性が示唆された。著者らは、今後の大規模研究で評価する前に、実装改善のためのプロトコール変更やさらなる調査が必要であるとしている。Exploratory Research in Clinical and Social Pharmacy誌2022年10月10日号の報告。

日本人統合失調症患者における認知機能と社会機能との関係

 統合失調症患者の活動性低下、就労困難、予後不良には、社会機能障害が関連していると考えられる。統合失調症患者の社会機能には、注意力や処理速度などの認知機能が関連しているが、認知機能と社会機能との関連はあまりよくわかっていない。そのため、社会機能に影響を及ぼす因子を明らかにすることは、統合失調症の治療戦略を考えるうえで重要である。金沢医科大学の嶋田 貴充氏らは、統合失調症患者の社会機能に影響を及ぼす因子をレトロスペクティブに分析し、統合失調症患者の認知機能と社会機能との間に有意な相関が認められたことを報告した。Journal of Clinical Medicine Research誌2022年9月号の報告。

治療抵抗性うつ病、psilocybin単回投与の有効性は/NEJM

 治療抵抗性うつ病治療への使用が検討されているpsilocybinについて、25mg単回投与は同1mg単回投与と比較して、3週時までのうつ病スコアが有意に低下したが、有害事象と関連していた。英国・COMPASS PathfinderのGuy M. Goodwin氏らが、欧州および北米の10ヵ国22施設で実施されたpsilocybinの第II相無作為化二重盲検用量設定試験の結果を報告した。NEJM誌2022年11月3日号掲載の報告。  研究グループは、2019年3月1日~2021年9月27日の期間に、臨床評価に基づき精神病性の特徴を伴わない大うつ病性障害のDSM-5診断基準を満たし、現在のうつ病エピソードに対してMGH-ATRQに基づく用量と治療期間(8週以上)による2~4回の適切な治療を行うも効果が不十分であった18歳以上の治療抵抗性うつ病患者を対象に、心理学的サポートに加えてpsilocybinの合成製剤であるCOMP360を25mg、10mgまたは1mg(対照)の単回投与を受ける群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。

統合失調症に対するアリピプラゾールの適切な投与量~メタ解析

 薬理学の基本は、薬物の血中濃度と効果との関係であると考えられるが、多くの臨床医において、血中濃度測定の価値は疑問視されているのが現状である。そのため、治療基準用量の検討が、十分に行われていないことも少なくない。ドイツ・ハイデルベルク大学のXenia M. Hart氏らは、統合失調症および関連障害患者における脳内の受容体をターゲットとする抗精神病薬アリピプラゾールの血中濃度と臨床効果および副作用との関連を評価するため、プロトタイプメタ解析を実施した。その結果、ほとんどの患者において、アリピプラゾール10mgでの開始により血中および脳内の有効濃度に達することが示唆された。Psychopharmacology誌2022年11月号の報告。

近年の米国うつ病有病率―2015~20年調査

 うつ病は一般的に認められる精神疾患だが、致死的な状態を引き起こす可能性がある。COVID-19パンデミックによるうつ病問題の深刻化が、いくつかのデータで示されている。米国・ニューヨーク市立大学のRenee D. Goodwin氏らは、米国におけるCOVID-19パンデミックがメンタルヘルスへ及ぼす影響に対し包括的に対処するため、パンデミック前のうつ病有病率の定量化を試みた。その結果、2015~19年にかけて、うつ病治療件数が相応に増加していないにもかかわらず、うつ病患者の増加が認められており、2020年には過去1年間のうつ病患者数が米国人の10人に1人、青年および若年成人では5人に1人にまで増加していることが明らかとなった。結果を踏まえ著者らは、このメンタルヘルスに関する危機的状況に対処するため、エビデンスに基づく予防や介入、多面的な公衆衛生キャンペーンなどの対策が早急に必要であろうと述べている。American Journal of Preventive Medicine誌2022年11月号の報告。

ICUせん妄患者へのハロペリドール、生存や退院増につながらず/NEJM

 せん妄を有する集中治療室(ICU)入室患者において、ハロペリドールによる治療はプラセボと比較して、生存日数の有意な延長および90日時点の有意な退院数増大のいずれにも結び付かないことが示された。デンマーク・Zealand University HospitalのNina C. Andersen-Ranberg氏らが多施設共同盲検化プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。ハロペリドールはICU入室患者のせん妄治療にしばしば用いられるが、その効果に関するエビデンスは限定的であった。NEJM誌オンライン版2022年10月26日号掲載の報告。  研究グループは、急性症状でICUに入室したせん妄を有する18歳以上の成人患者を対象に、ハロペリドール治療がプラセボ治療と比較して、生存日数および退院数を増大するかどうかを検討した。試験は2018年6月14日~2022年4月9日に、デンマーク、フィンランド、英国、イタリア、スペインのICUで行われた。

非感情性精神病患者の就労に対する抗精神病薬の影響

 抗精神病薬の使用が初回エピソード非感情性精神病(nonaffective psychosis)の就労障害低下と関連しているかを明らかにするため、カナダ・オタワ大学のMarco Solmi氏らは、検討を行った。その結果、初回エピソード非感情性精神病に対する抗精神病薬(とくに長時間作用型注射剤)の使用は、未使用の場合と比較し、就労障害リスクを30~50%低下させ、この影響は初回診断5年超でも継続していることを報告した。このことから著者らは、非感情性精神病の初回エピソード後、できるだけ早期に抗精神病薬治療を開始することの意義を強調した。The American Journal of Psychiatry誌オンライン版2022年10月6日号の報告。

不眠症患者の死亡リスクに対する睡眠薬の影響~J-MICC研究

 不眠症患者の死亡リスクに関する研究では、一貫した結果が得られていない。不眠症の治療では、睡眠のコントロールよりも、睡眠薬の使用が死亡リスクを高める可能性があるにもかかわらず、死亡リスクに対する睡眠薬の影響については、これまでよくわかっていなかった。佐賀大学医学部附属病院の祖川 倫太郎氏らは、日本の大規模サンプルにおける全死亡リスクと睡眠薬使用との関連を、併存疾患の影響を考慮したうえで評価した。その結果、睡眠薬の使用と全死亡率との間に、性別および年齢による関連性が観察されたことを報告した。Sleep Medicine誌オンライン版2022年9月28日号の報告。

認知症患者のインフルエンザワクチン接種の抗体反応に対する光曝露の影響

 認知症受け入れ施設の照明条件を改善すると、患者の睡眠、概日リズム、健康状態の改善がみられる。スイス・Ecole Polytechnique Federale de LausanneのMirjam Munch氏らは、日中に明るい光を浴びると、認知症患者のインフルエンザワクチン接種に対する免疫応答がサポートされる可能性について報告を行った。この結果は、毎日より多くの光を浴びることで、認知症患者の免疫応答が上昇することを示唆しており、今後の研究において、定期的な光曝露がヒトの免疫系に対し直接的または安定した概日睡眠覚醒リズムを介して良い影響を及ぼすかが明らかになることが期待される。Brain, Behavior, & Immunity - Health誌2022年9月20日号の報告。

慢性期統合失調症における抗精神病薬の減量・中止後の再発リスク因子~メタ解析

 精神疾患の再発予防に抗精神病薬による維持療法は有効だが、高用量での使用はリカバリーを妨げる可能性がある。そのため、慢性期統合失調症患者では、抗精神病薬の減量または中止が検討される。オランダ・Mental Health Services RivierduinenのJan P. A. M. Bogers氏らは、抗精神病薬の減量に伴う精神疾患再発のリスク因子を特定しようと試みた。その結果、慢性期統合失調症患者における抗精神病薬の減量では、精神疾患再発のリスク因子を考慮する必要があること、抗精神病薬の比較的急激な減量を行う場合でもハロペリドール換算3~5mgを最低用量とすることなどが報告された。また、著者らは、抗精神病薬の漸減は投与中止に伴う再発を回避し、必要最低用量を達成できる可能性があるとしている。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2022年10月6日号の報告。