日本語でわかる最新の海外医学論文|page:15

米国、オピオイド使用障害への救急医によるブプレノルフィン処方増加/JAMA

 米国では、オピオイド使用障害(OUD)とOUD関連死亡率が依然として高く、その抑止対策の1つとして、有効性が確認されているオピオイド受容体の部分作動薬であるブプレノルフィンの投与を救急診療科にも拡大しようという取り組みが全国的に進められている。米国・カリフォルニア大学のAnnette M. Dekker氏らはこの取り組みの現況を調査し、2017~22年にカリフォルニア州の救急医によるOUDに対するブプレノルフィン処方が大幅に増加しており、患者の約9人に1人は1年以内に継続処方を開始していることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年2月19日号に掲載された。

ALSへのσ1受容体作動薬pridopidineは有効か?/JAMA

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療標的として、運動ニューロンに発現しているσ1(シグマ1)受容体(S1R)が注目を集めている。米国・Barrow Neurological InstituteのJeremy M. Shefner氏らは、「HEALEY ALS Platform試験」において、ALSの治療ではプラセボと比較してS1R作動薬pridopidineは疾患の進行に有意な影響を及ぼさず、有害事象や重篤な有害事象の頻度に臨床的に意義のある差はないことを示した。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2025年2月17日号で報告された。

肥満患者における鎮静下消化器内視鏡検査中の低酸素症発生に対する高流量式鼻カニュラ酸素化の有用性(解説:上村直実氏)

消化器内視鏡検査は苦痛を伴う検査であると思われていたが、最近は多くの施設で苦痛を軽減するため、検査時に鎮静薬や鎮痛薬を用いた鎮静法により大変楽に検査を受けられるようになっている。しかし、内視鏡時の鎮静に対する考え方や方法は国によって大きく異なっている。米国では、内視鏡検査時の鎮静はほぼ必須であり、上下部消化管内視鏡検査受検者のほぼすべてが完璧な鎮静効果を希望するため、通常、ベンゾジアゼピン系薬品とオピオイドの組み合わせを使用して実施される。具体的には、ベンゾジアゼピン系催眠鎮静薬のミダゾラムとオピオイド鎮痛薬のフェンタニルの組み合わせが、最も広く利用されている。

頭痛が自殺リスクに及ぼす影響

 これまでの研究では、片頭痛と自殺リスクとの関連が示唆されているが、さまざまな頭痛疾患と自殺企図および自殺リスクとの関連を評価した研究は限られている。デンマーク・オーフス大学のHolly Elser氏らは、片頭痛、緊張性頭痛、外傷後頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛(TAC)と自殺企図および自殺リスクとの関連を調査した。JAMA Neurology誌オンライン版2025年2月3日号の報告。

コーヒーに入れても糖尿病リスクが上がらないものは?

 コーヒー摂取は、一貫して2型糖尿病のリスク低下と関連しているが、砂糖やコーヒークリームを添加することによってこの関連が変化するかどうかは不明である。今回、スペイン・ナバーラ大学のMatthias Henn氏らが、コーヒーに砂糖や人工甘味料を加えるとコーヒーの摂取量増加と2型糖尿病リスクとの逆相関が大幅に弱まるものの、クリームを使用しても逆相関は変わらないことを示唆した。American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2025年1月18日号掲載の報告。  研究者らは、コーヒー摂取と2型糖尿病のリスクとの関連について、砂糖、人工甘味料、クリーム、または非乳製品のクリーム(コーヒーホワイトナー)の添加を考慮して分析を行った。調査には看護師健康調査(Nurses' Health Study:NHS、1986~2020年)、NHS II(1991~2020年)、医療者追跡調査(HPFS、1991~2020年)の3つの大規模前向きコホートを用い、質問表でコーヒーの消費量、添加の有無、2型糖尿病の発症状況などを確認。時間依存Cox比例ハザード回帰モデルを使用し、多変量調整してハザード比(HR)を算出した。

GLP-1受容体作動薬は目に悪影響を及ぼす?

 減量薬として広く使用されているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、まれに視力障害を引き起こす可能性のあることが分かってきた。しかし、新たな小規模研究によると、現時点では、そのような目の合併症の原因がGLP-1RAであるのかどうかについての結論は出せないという。米ユタ・ヘルス大学のジョン・A・モラン・アイセンターのBradley Katz氏らによるこの研究は、「JAMA Ophthalmology」に1月30日掲載された。  この研究を実施するきっかけとなったのは、論文の筆頭著者であるKatz氏が、ある患者において、GLP-1RAのセマグルチドの使用開始後に片方の目の視力が突然、痛みもなく低下したことに気付いたことだったという。患者は一時的にセマグルチドの使用を中止したが、使用を再開したところ、もう片方の目にも視力低下が起こったという。不安を感じたKatz氏は、メーリングリストを通じて他の眼科医に同じようなことが起きていないかを尋ねた。その結果、GLP-1RAの使用後に目の視神経周辺の血管の機能障害など視力を低下させるような問題が起こった症例として、9例の報告が寄せられた。

尿を用いた遺伝子検査で進行性前立腺がんを高精度で検出

 前立腺がんの診断を受けた場合には、どうすればよいのだろうか。がん自体が命に関わるものではない場合でも、治療の結果として失禁や勃起不全に悩まされることは少なくない。患者によっては、不安を抱えはするが、がんとともに生きながら経過観察を続ける方が良い場合もある。  こうした中、尿サンプルを用いた遺伝子解析に基づく新しい検査が、早期死亡につながる可能性の高い進行性の前立腺がんの特定に役立つ可能性が示された。研究グループは、この検査が、前立腺がんを治療すべきか、経過観察すべきかを判断する際に役立つ可能性があるとしている。米ミシガン大学泌尿器科学分野のGanesh Palapattu氏らによるこの研究結果は、「The Journal of Urology」に1月21日掲載された。

高齢者のコレステロール値の変動は脳の健康に関与

 コレステロール値が年ごとに急上昇したり急降下したりする高齢者は、認知症や認知機能低下のリスクが高い可能性のあることが、新たな研究で示唆された。モナシュ大学(オーストラリア)のZhen Zhou氏らによる同研究で、コレステロール値の変動幅が最も大きい高齢者では、最も小さい高齢者と比べて認知症のリスクが60%高いことが示されたという。詳細は、「Neurology」に1月29日掲載された。Zhou氏は、「毎年測定したコレステロール値の変動幅は、ある時点で測定されたコレステロール値よりも多くの情報をもたらし、認知症リスクのある人を特定するための新たなバイオマーカーとなり得ることを示唆する研究結果だ」と米国神経学会(AAN)のニュースリリースで述べている。

血栓溶解療法なしの急性期脳梗塞、nerinetideの有用性は?/Lancet

 シナプス後肥厚部タンパク質95(PSD-95)を阻害するエイコサペプチドであるnerinetideは、発症後12時間以内の急性期虚血性脳卒中患者において良好な機能的アウトカムの達成割合を改善しなかった。重篤な有害事象との関連はみられなかった。カナダ・カルガリー大学のMichael D. Hill氏らが、カナダ、米国、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、スイス、オーストラリア、シンガポールの77施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「ESCAPE-NEXT試験」の結果を報告した。先行のESCAPE-NA1試験で、nerinetideは静脈内血栓溶解療法の非併用集団において機能的アウトカムの改善と関連していたが、血栓溶解療法との併用における有益性は確認されていなかった。

臨床意思決定支援システム、不適切な画像診断依頼を減らせず/JAMA

 臨床意思決定支援システム(CDSS)を導入しても、大学病院における医師による不適切な画像診断依頼の数は減少しなかった。オランダ・エラスムスMC大学医療センターのStijntje W. Dijk氏らが、CDSSとしての欧州放射線学会(ESR)iGuideの導入が医師の画像検査発注行動の適切性に与える影響を評価する目的で実施したクラスター無作為化臨床試験「Medical Imaging Decision And Support trial:MIDAS試験」の結果を報告した。医療画像診断が広く使用されていることを考慮すると、適切性を向上させるための介入の有効性を評価することは、医療資源と患者のアウトカムの最適化において非常に重要とされる。JAMA誌オンライン版2025年2月10日号掲載の報告。

高齢透析患者のHb値と死亡の関連、栄養状態で異なる可能性/奈良県立医科大

 血液透析を受けている患者における最適なヘモグロビン(Hb)値は依然として議論が続いている。今回、日本における高齢の透析患者では、Hb値と死亡と関連は栄養状態によって異なり、栄養リスクの低い群ではHb値が10.0g/dL未満および13.0g/dL以上の場合に死亡リスクが増大したが、栄養リスクの高い群ではHb値が死亡に与える影響は弱まったため、栄養不良の高齢患者では貧血管理よりも栄養管理を優先する必要があることを、奈良県立医科大学の孤杉 公啓氏らが明らかにした。Journal of Renal Nutrition誌オンライン版2025年1月24日号掲載の報告。

「DNAR」を説明できますか?高齢者救急について日本救急医学会が提言

 日本救急医学会では、高齢者救急に関連する学会・団体と共同で、⾼齢者が救急医療を必要としたときに適切で意に沿った医療を受けることができ、その後も納得できる暮らし⽅を選ぶことができるようにすることを目的として、「高齢者救急問題の現状とその対応策についての提言2024」を策定、2025年2月号の学会雑誌に掲載した。医療・福祉従事者のほか、市民、施設職員、救急隊員などそれぞれの立場に向けて提言を提示している。また、高齢者救急に関する用語が正しく使用されていない状況があることから、臨床現場で正しく使⽤されるようになることを目的として、「高齢者救急に関する用語の統一概念」が策定された。

COVID-19が日本の精神科医療に及ぼした影響

 COVID-19パンデミック中、日本では他の多くの国とは対照的に自殺が増加した。北海道大学の阿部 計大氏らは、COVID-19パンデミック中の日本における精神疾患患者の外来および入院治療へのアクセスが維持されていたかどうかを調査した。Social Science & Medicine誌2025年2月号の報告。  日本の急性期病院242施設のデータを用いて、COVID-19前後(2015〜19年vs.2020年)の精神疾患患者の精神科入院を比較するため、ポアソン回帰による差分分析を行った。2020年4月の日本政府による緊急事態宣言を外生的ショックとみなした。主要アウトカムには、統合失調症、気分障害、不安症、認知症、アルコール関連疾患の入院患者数および入院した外来患者数を含めた。

脊髄刺激療法が脊髄性筋萎縮症患者の筋力回復を促す

 脊髄の硬膜外腔に挿入した電極を通して電気刺激を与える脊髄刺激療法が、脊髄性筋萎縮症(SMA)患者の筋肉の機能回復を促し、運動機能の強化や歩行機能の改善につながる可能性のあることが、新たな研究で示された。SMAは徐々に筋力が低下する遺伝性疾患の一つだが、1カ月間の小規模な予備的研究で、3人のSMAの成人にデバイスを植え込んで微弱電流で脊髄を刺激したところ、予想外の改善が認められたという。米ピッツバーグ大学のMarco Capogrosso氏らによるこの研究は、「Nature Medicine」に2月5日掲載された。

血液検査で大腸がんを正確に検出/ASCO-GI

 実験的な血液検査をベースにした大腸がんスクリーニング検査により、平均的な大腸がんリスクを有する45歳以上の成人において、大腸がんを効果的に検出できることが示された。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部のAasma Shaukat氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI 2025、1月23〜25日、米サンフランシスコ)で発表された。Shaukat氏は、「このような血液検査は、大腸がんのスクリーニング検査の受診率を高めるのに役立つ可能性がある」と述べている。  現状では、大腸がんのスクリーニング検査のゴールドスタンダードは大腸内視鏡検査であるが、この検査では事前に下剤服用や食事調整などの準備が必要な上に、検査時には麻酔や鎮静薬を使用する。便中の血液の有無を調べる便潜血検査も大腸がんのスクリーニングに用いられるが、現在のガイドラインでは毎年の検査実施が必要である。こうした現状を踏まえてShaukat氏は、「便利で安全、かつ実施も容易な新たな大腸がんスクリーニング検査の手段が求められている」と話す。

世界初、遺伝子編集ブタ腎臓の異種移植は成功か/NEJM

 米国・マサチューセッツ総合病院の河合 達郎氏らは、遺伝子編集ブタ腎臓をヒトへ移植した世界初の症例について報告した。症例は、62歳男性で、2型糖尿病による末期腎不全のため69の遺伝子編集が施されたブタ腎臓が移植された。移植された腎臓は直ちに機能し、クレアチニン値は速やかに低下して透析は不要となった。しかし、腎機能は維持されていたものの、移植から52日目に、予期しない心臓突然死を来した。剖検では、重度の冠動脈疾患と心室の瘢痕化が認められたが、明らかな移植腎の拒絶反応は認められなかった。著者は、「今回の結果は、末期腎不全患者への移植アクセスを拡大するため、遺伝子編集ブタ腎臓異種移植の臨床応用を支持するものである」とまとめている。NEJM誌オンライン版2025年2月7日号掲載の報告。

米国、中絶禁止法施行の州で乳児死亡率が上昇/JAMA

 米国において中絶禁止法を導入した州では、施行後の乳児死亡率が、施行前の乳児死亡率に基づく予測値と比べて上昇したことが明らかにされた。乳児死亡の相対増加率は、先天異常による死亡で大きく、黒人や南部の州などベースラインの乳児死亡率が平均より高い集団でも大きかったという。米国・ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のAlison Gemmill氏らが報告した。最近の中絶禁止法の施行が乳児死亡率に及ぼす影響については十分に理解されておらず、また、中絶禁止法が乳幼児の健康における人種的・民族的格差とどのように相互作用するかについてはエビデンスが限られていた。JAMA誌オンライン版2025年2月13日号掲載の報告。

抗CD3/CD20二重特異性抗体エプコリタマブ、再発難治性濾胞性リンパ腫に適応拡大の承認を取得/ジェンマブ

 ジェンマブ株式会社は2025年2月20日、抗CD3/CD20二重特異性抗体エプコリタマブ(商品名:エプキンリ)について、2つ以上の前治療歴を有する再発又は難治性の濾胞性リンパ腫(Grade1~3A)に対する用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認を厚生労働省より取得した。  今回の承認はRR FLを含む成熟B細胞性非ホジキンリンパ腫を対象に、エプコリタマブ単剤の安全性および有効性を評価した海外非盲検多施設共同第I/II相臨床試験(EPCORE NHL-1/GCT3013-01試験)と国内第I/II相臨床試験(EPCORE NHL3/GCT3013-04試験)等の結果に基づいている。

朝食の習慣や質と抑うつ症状との関連

 朝食は、1日で最も重要な食事とみなされることが多く、身体的および精神的健康に影響を与えると考えられる。多くの研究では、朝食を抜くことがうつ病に及ぼす影響に焦点が当てられているが、朝食の質や朝食時間について調査した研究はほとんどない。中国・西安交通大学のMengzi Sun氏らは、朝食習慣および朝食の質と抑うつ症状との関連性を調査した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年1月23日号の報告。  対象は、2007〜18年の全国健康栄養調査(NHANES)の20歳以上の参加者2万3,839人。朝食習慣は、24時間食事回想法を2回実施して評価した。朝食摂取の有無とその時間を記録した。朝食の質を評価するため、朝食の質スコア(BQS)を算出した。抑うつ症状の評価には、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。関連性の評価には、バイナリロジスティック回帰を用いた。  主な結果は以下のとおり。

乳がん発見のためのWGSを用いたctDNAアッセイ

 乳がんにおいて、全ゲノムシークエンス(WGS)を用いた循環腫瘍DNA(ctDNA)アッセイにより、ベースライン時および追跡調査時の検出が改善され、臨床的な再発診断までの期間(リードタイム)が長くなることが、英国・The Institute of Cancer ResearchのIsaac Garcia-Murillas氏らによる後ろ向き研究で示唆された。Annals of Oncology誌オンライン版2025年2月4日号に掲載。