犬ががんと診断される平均年齢には、体重、性別、犬種が影響しており、大型で純血種の雄犬は、比較的若い年齢でがんになり得ることが明らかにされた。研究グループは、「この知見は、犬のがんスクリーニングに関するガイドライン作成に役立つ可能性がある」と述べている。米PetDx社のJill Rafalko氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS ONE」に2月1日掲載された。
がんは成犬の主要な死因であり、人間と同様、早期に発見できれば効果的に治療することも可能になる。犬のがんスクリーニングは、主に、毎年の身体診察とルーチンで行われる臨床検査に頼っている。ただ、この方法は、前臨床段階のがんを検出する上では甚だ不十分である。近年、血液検査でがんを発見するリキッドバイオプシーが登場した。これは、次世代シークエンサーを用いて血液中のセルフリーDNAの塩基配列を解析し、そのデータを基にがんを発見するものである。研究グループによると、リキッドバイオプシーが登場したことで、犬のがんスクリーニングに関する議論は、「どのようにして行うか」から「いつ行うべきか」にシフトしつつあるという。
この「いつ行うべきか」という疑問に取り組んだのが、今回の研究である。Rafalko氏らは、がんと診断された犬3,452頭(雄1,900頭、雌1,552頭)のデータを分析して、犬種と体重、性別ごとにがん診断時の年齢中央値を算出した。
対象とされた犬のうち純血種は2,537頭(1〜20歳、平均年齢8.2歳、年齢中央値8.0歳)で、犬種として多かったのは、ゴールデンレトリバー(422頭)、ラブラドールレトリバー(397頭)、ボクサー(178頭)、ロットワイラー(168頭)、ジャーマンシェパード(102頭)などであった。10頭以上から成る43犬種を対象にがん診断時の年齢中央値を割り出したところ、最も低かったのはマスチフ(5歳)であり、次いで、セントバーナード、グレートデーン、ブルドッグ(6歳)、アイリッシュウルフハウンド(6.1歳)、ボクサー(6.2歳)、ビズラ、バーニーズマウンテンドッグ(7.0歳)が続いた。年齢中央値が最も高かったのはビションフリーゼで11.5歳であった。また、がん診断時の平均年齢は、純血種の犬で8.2歳(年齢中央値8.0歳)であったが、「ミックス犬またはその他の犬」とされた犬では9.2歳(年齢中央値9.5歳)であった。
体重のデータが得られた犬2,551頭(2.5〜98.0kg、平均値30.3kg、中央値30.6kg)では、体重が重くなるほど、がん診断時の年齢が低いことが判明した。例えば、がん診断時の年齢中央値は、2.5〜5kgの犬で11歳であるのに対して、75kg以上の犬では5歳であった。さらに、雌犬は雄犬よりもがん診断時の平均年齢が有意に高く(雄8.3歳、雌8.7歳)、避妊手術を受けた雌犬と去勢手術を受けた雄犬についても同様の結果だった(雄8.5歳、雌8.9歳)。しかし、避妊・去勢手術を受けていない犬では、がん診断時の平均年齢に有意差は認められなかった(雄7.6歳、雌7.3歳)。
こうした結果を受けて研究グループは、「がんのスクリーニング検査を開始すべき年齢は犬種や体重によって異なるものの、7歳以降には、どの犬も検査を受けるべきことが明らかになった。犬種によっては4歳から受け始めることで、ベネフィットを得られるかもしれない」と述べている。その上で、犬種や体重ごとのがん診断時の年齢中央値に達する2年前からがんの血液検査を受け始めることを勧めている。
[2023年2月2日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら