研修医の長時間勤務が患者に危険をもたらす可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/05/12

 

 長時間勤務をしている研修医はミスを犯す確率が高く、また患者に危険をもたらす可能性も高くなる実態を示すデータが報告された。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のLaura Barger氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Medicine」に4月12日掲載された。

 医師の長時間勤務による安全上のリスクの懸念は、これまでにも報告されてきている。ただしBarger氏らによると、それらの報告の多くは、医師養成機関卒業後1年目の研修医を対象とした研究だという。同氏らは今回、比較的経験を積んだと考えられる卒後2年目以降の研修医を対象とする調査を実施。その結果、既に報告されている卒後1年目の研修医と同程度のリスクが認められたという。Barger氏は、「経験が豊富な医師であっても、経験の少ない医師と同様の睡眠が必要。われわれの研究結果は、医師の長時間勤務に関する国のガイドラインの再検討を促すものだ」と述べている。

 米国では2011年に、全米医学アカデミー(NAM)の勧告に基づき卒後医学教育認定評議会(ACGME)が、卒後1年目の研修医の連続勤務を16時間までとするガイドラインを策定した。ただし、経験年数がより長い研修医には連続28時間という長時間勤務を認め、さらに全研修医の週当たりの勤務時間の上限は80時間とされている。一方、欧州では週48時間が上限。

 Barger氏らの今回の研究では、8学年度にわたる4,800人以上の卒後2年目以降の研修医を対象として、自分自身および患者の安全性に関わる事象の発生と、長時間勤務との関連が調査された。その結果、1週間に48時間を超えて勤務することが、ミスや有害事象の増加と関連のあることが明らかになった。

 具体的には、自己申告による医療ミス、予防可能な有害事象、致命的な予防可能な有害事象、放射線被ばく、皮膚の損傷などが有意に増加していた(全てP<0.001)。さらに、週60~70時間の勤務で医療ミスが2倍以上〔オッズ比(OR)2.36(95%信頼区間2.01~2.78)〕、予防可能な有害事象は約3倍〔OR2.93(同2.04~4.23)〕、致命的な予防可能な有害事象も3倍近く〔OR2.75(1.23~6.12)〕に増えていた。また、勤務明けの帰宅時の交通事故のリスクも上昇していた。

 なお、この研究は自己報告に基づくものだが、調査時にはカフェイン摂取や運動習慣など、他の健康習慣の質問と合わせて安全性の問題を尋ねており、回答者は研究の目的を知らされていなかった。

 論文の著者の1人である同院のCharles Czeisler氏は、付随短報(Opinion)を寄せている。その中で同氏は、「比較的経験を積んだ研修医であっても、長時間勤務により1年目の研修医と同じように有害事象のリスクが高くなり、その影響は患者にまで及んでいる。米国の外に目を向ければ、研修医は勤務時間の配慮された、より安全な環境でトレーニングを受けている国がある。われわれの調査結果は、米国のガイドラインを変更し、経験の豊かさにかかわりなく全ての研修医の勤務時間を、より安全性が確保されるように変更すべき時期にきていることを示している」と述べている。

[2023年4月14日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら