ワーケーションで動脈硬化予防?

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/02/06

 

 都会を離れた落ち着いた環境でリモートワークをする「ワーケーション」によって、動脈硬化の進行が抑制されることを示唆するデータが発表された。米ハーバード大学医学部および奈良県立医科大学医学部客員教授の根来秀行氏らの研究によるもので、詳細は「Healthcare」に10月15日掲載された。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック以降、在宅でのリモートワークが広がり、さらにワーケーションも注目されるようになった。ワーケーションは一般的に、リゾート地などの自然豊かな環境で心身を休めながら仕事をすることを指し、そのような新しい働き方による労働生産性への影響など、主に社会経済的な視点からの関心が寄せられている。その一方、労働者の健康への影響という視点での研究はまだ少ない。根来氏らは、このような背景から本研究を行った。

 研究対象は、大手民間企業の従業員20人(平均年齢33.9±8.9歳、女性11人、BMI22.3±2.8、体脂肪率26.5±9.3%)。全員が在宅勤務経験者で、前年の職場健診で異常を指摘されていない非喫煙者。千葉県勝浦市または静岡県浜松市の海岸沿いにある会員制リゾートホテルにて、4泊のワーケーションを行ってもらい、その前後およびホテル滞在期間中に、動脈硬化の進行に関連する検査を行った。

 滞在中のスケジュールは以下のとおり。朝7時に起床し、朝食とシャワーを済ませ、リンパマッサージを受けた後に、ミーティングとリモートワーク。11時30分~12時はウォーキングやラジオ体操などを行い、その後、昼食と仮眠。午後の就業は16時までとし、18~19時はジョギングや筋力トレーニングなどを行い、20~21時に夕食。22時に入浴し、23時以降の飲食は水、お茶、牛乳のみ摂取可とした。また、夕食後は電子機器の使用を禁止した。

 動脈硬化関連の検査として、朝食前に、AVI(中心動脈の血管壁の硬さの指標)、API(末梢動脈の血管壁の硬さの指標)、血圧、心拍数を測定した。また、研究参加者に3軸加速度センサーと携帯型心電計を身に着けて過ごしてもらい、それらのデータから、身体活動量や自律神経機能を評価した。

 これらの検査値のうちAVIとAPIはいずれも、ワーケーション期間中はベースライン(ワーケーション前)より有意に低値だった。収縮期/拡張期血圧は、測定部位や測定日による違いはあったものの、ベースラインより有意に低い値が複数のポイントで確認された。心拍数は滞在2日目に有意に低値だった。

 身体活動量については、運動以外での活動量と高強度運動の活動量が、ベースラインより有意に高かった。低~中強度運動の活動量は有意差がなく、総消費エネルギー量についても、ワーケーション期間の方が高値ではあったが有意差はなかった。自律神経機能に関しては、ワーケーション期間の睡眠時の高周波(HF)成分がベースライン値より有意に高値だった。これは、睡眠中に副交感神経の活性が亢進していたことを意味する。睡眠時のHF成分の値が高いほどAPIが低いという、有意な逆相関も認められた。

 まとめると、ワーケーション期間は睡眠時の副交感神経活性が亢進し、中心動脈と末梢動脈へかかるストレスが低下していたことが明らかになった。ただし、これらの有意な変化は、ワーケーション終了後の測定では全て非有意となり、ベースラインと同レベルに戻っていた。

 著者らは本研究には、研究参加者が1社のみの従業員であること、サンプル数が少ないことなどの限界点があるとした上で、「ワーケーションに健康上のメリットが存在することが示唆される。この知見は、COVID-19パンデミックで増加した在宅勤務労働者の健康維持対策に生かせるのではないか」と結論付けている。一方、今後の検討課題としては、ワーケーション終了とともに各検査指標がベースライン値に戻っていたことから、「日常生活においても、ワーケーションと同様のライフスタイルを維持できるような環境の模索が必要と考えられる」としている。

[2023年1月16日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら