小児がんサバイバー、心臓放射線照射減少でCADリスク減/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2020/01/29

 

 小児がんの成人サバイバーでは、心臓放射線照射への曝露の歴史的な減少により、冠動脈疾患のリスクの低減がもたらされたことが、米国・セントジュード小児研究病院のDaniel A. Mulrooney氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2020年1月15日号に掲載された。小児がんの成人サバイバーは過去の治療に関連した合併症を有し、心筋症、心臓不整脈、冠動脈や弁膜、心膜の疾患などの心血管疾患は、晩期の健康アウトカム負担の主要な寄与因子とされる。一方、心毒性を有する治療への曝露パターンは時代とともに変化しており、現在のがん治療プロトコールは治癒率の改善に重点を置きつつ、長期的な有害作用の最小化に注力しているという。

治療プロトコールが心アウトカムに及ぼす影響を評価するコホート研究

 研究グループは、心毒性への曝露を最小化し長期的な健康を保持するようデザインされた現在のがん治療プロトコールの経時的な修正が、小児がんの成人サバイバーの重篤な心アウトカムに及ぼす影響を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。

 1970年1月1日~1999年12月31日の期間に、21歳未満で、白血病、脳腫瘍、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、腎腫瘍、神経芽腫、軟部組織肉腫、骨肉腫と診断され、5年生存を達成した患者2万3,462人(1970年代に治療を受けた患者6,193人[26.4%]、1980年代に治療を受けた患者9,363人[39.9%]、1990年代に治療を受けた患者7,906人[33.6%])が、解析の対象となった。診断時の年齢中央値は6.1歳(範囲0~20.9)で、最終フォローアップ時の年齢中央値は27.7歳(8.2~58.3)であった。比較群として、がんサバイバーの同胞5,057人を含めた。

 10年の治療時期別の心不全、冠動脈疾患、心臓弁膜症、心膜疾患、不整脈の累積発生率と95%信頼区間(CI)を算出した。イベントの重症度判定は、NCIのCTCAE基準に準拠した。多変量部分分布ハザードモデルを用いて10年ごとのハザード比(HR)を推算し、媒介分析で心毒性治療への曝露の有無別のリスクを評価した。

とくにホジキンリンパ腫サバイバーで冠動脈疾患リスク低減

 全体として、がんの診断から15年間の心不全の累積発生率は、1970年代(0.69%)および1980年代(0.74%)と比較して、1990年代(0.54%、いずれもp=0.01)で有意に低下した。また、がんの診断から20年間の冠動脈疾患の発生率も同様に、3つの年代を通じて低下した(1970年代0.38%、1980年代0.24%、1990年代0.19%、1970 vs.1980年代のp=0.02、1970 vs.1990年代のp=0.01)。

 一方、心臓弁膜症(1970年代0.06%、1980年代0.06%、1990年代0.05%)、心膜疾患(0.04%、0.02%、0.03%)、不整脈(0.08%、0.09%、0.13%)の累積発生率には、年代による有意な変化は認められなかった。

 1970年代に診断を受けたサバイバーに比べ、1980年代および1990年代に診断を受けたサバイバーは、心不全、冠動脈疾患、心臓弁膜症の発生率が低下したが、有意差が認められたのは冠動脈疾患のみであった(1970 vs.1980年代のハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.45~0.92、1970 vs.1990年代のHR:0.53、95%CI:0.36~0.77)。

 全体の冠動脈疾患のリスクは、心臓放射線照射で補正すると低下する傾向がみられ(HR:0.90、95%CI:0.78~1.05)、とくにホジキンリンパ腫のサバイバーでリスクが低減した(補正前HR:0.77、95%CI:0.66~0.89、心臓放射線照射で補正後HR:0.87、95%CI:0.69~1.10)。

 著者は、「小児がんの治療を適切に修正し、健康調査を進める取り組みが、サバイバーに利益をもたらすことが示されつつある」と指摘し、「他の心臓アウトカムのリスク低下を評価するには、さらなるフォローアップを要する」としている。

(医学ライター 菅野 守)