医療一般|page:7

アルツハイマー病患者に対する有酸素運動のベネフィット/BMJ Open

 アルツハイマー病患者の認知機能や実行機能に対する身体活動の影響は、数多くの研究で調査されているものの、その結果は完全に一致しているとはいえない。また、特定のトレーニングや使用する評価ツールに関する研究も、不十分である。中国・湖南渉外経済学院のLinlin Yang氏らは、有酸素運動がアルツハイマー病患者のQOL、認知機能、抑うつ症状に及ぼす影響を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMJ Open誌2025年1月11日号の報告。  対象研究には、アルツハイマー病患者に対する介入として有酸素運動を用いたすべてのランダム化比較試験(RCT)を含めた。2024年3月12日までに公表された研究を、PubMed、Web of Science、Cochrane Library、EMBASE、Scopus、CINAHL、CNKIより、システマティックに検索した。2人の独立した著者により、定義された手法を用いてデータ選択、検索を行った。バイアスリスク、システマティックレビューおよびメタ解析、エビデンスの確実性の評価には、それぞれCochrane risk of bias tool、ランダム効果モデル、GRADE(Grading of Recommendations Assessment Development and Evaluation)ツールを用いた。研究間の異質性を評価するため、Stata MP V.18.0およびV.14.0を用いてメタ回帰を実施した。標準化平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を算出した。データは、Cochrane CollaborationのReview Manager V.5.4を用いてレビューした。結果の安定性および信頼性を確認するため感度分析を実施し、出版バイアスを確認するためファンネルプロットおよびEgger's testを用いた。出版バイアスの修正および評価には、Duval and Tweedie clipping methodを用いた。

体重減少には週何分くらいの有酸素運動が必要か

 ダイエットではどのくらいの時間、有酸素運動をすれば痩せることができるだろうか。この疑問について、英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンの公衆衛生学部疫学・生物統計学科のAhmad Jayedi氏らの研究グループは有酸素運動と脂肪率の指標との用量反応関係を明らかにするために文献の系統的レビューと用量反応のメタ解析を行った。その結果、週30分の有酸素運動は、成人の過体重または肥満者の体重、ウエスト周囲径および体脂肪値の緩やかな減少と関連していることが明らかになった。この結果はJAMA Network Open誌2024年12月26日号に掲載された。

がんが肺に転移しやすいのはなぜ?

 肺はがん細胞にとって魅力的な場所なのか、進行がん患者の半数以上で肺転移が認められる。その理由の一つとなり得る研究結果が報告された。この研究では、がんが転移した肺の中ではアミノ酸の一種であるアスパラギン酸の濃度が上昇しており、がん細胞が増殖しやすい環境が形成されている可能性のあることが示唆されたという。フランダースバイオテクノロジー研究機関(VIB、ベルギー)がん生物学センターのGinevra Doglioni氏らによるこの研究結果は、「Nature」に1月1日掲載された。  Doglioni氏は、「乳がんに罹患したマウスや患者の肺では、がんに罹患していないマウスや患者の肺に比べてアスパラギン酸のレベルが高いことが分かった。これは、アスパラギン酸が肺転移に重要な役割を果たしている可能性があることを示唆している」とVIBのニュースリリースで述べている。

よく笑う人にはオーラルフレイルが少ない

 笑う頻度が高い人にはオーラルフレイルが少ないことが明らかになった。福島県立医科大学医学部疫学講座の舟久保徳美氏、大平哲也氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に11月5日掲載された。  近年、笑うことが心身の健康に良いことを示唆するエビデンスが徐々に増えていて、例えば笑う頻度の高い人は心疾患や生活習慣病が少ないことが報告されている。一方、オーラルフレイルは、心身のストレス耐性が低下した要介護予備群である「フレイル」のうち、特に口腔機能が低下した状態を指す。オーラルフレイルでは食べ物の咀嚼や嚥下が困難になることなどによって、身体的フレイルのリスク上昇を含む全身の健康に負の影響が生じる。舟久保氏らは、このオーラルフレイル(以下、OFと省略)にも笑う頻度が関連している可能性を想定し、福島県楢葉町の住民を対象とする横断研究を行った。

コロナとインフル、臨床的特徴の違い~100論文のメタ解析

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザの鑑別診断の指針とすべく、中国・China-Japan Union Hospital of Jilin UniversityのYingying Han氏らがそれぞれの臨床的特徴をメタ解析で検討した。その結果、患者背景、症状、検査所見、併存疾患にいくつかの相違がみられた。さらにCOVID-19患者ではより多くの医療資源を必要とし、臨床転帰も悪い患者が多いことが示された。NPJ Primary Care Respiratory Medicine誌2025年1月28日号に掲載。  著者らは、PubMed、Embase、Web of Scienceで論文検索し、Stata 14.0でランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った。COVID-19患者22万6,913例とインフルエンザ患者20万1,617例を含む100の論文が対象となった。

日本における妊娠中の抗うつ薬継続投与、約10年の変化は

 近年、複数の日本の学会より周産期の抗うつ薬治療に関する治療ガイドラインが発表されており、最新の動向や妊娠中の抗うつ薬継続投与を評価し、出産前抗うつ薬処方を最適化することが重要であると考えられる。東北大学の石川 智史氏らは、日本での2012〜23年における妊娠中の抗うつ薬処方の変化を評価した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年1月10日号の報告。  対象は、2012〜23年に日本で出産した女性。妊娠中の抗うつ薬処方率、傾向、継続性について、大規模行政レセプトデータを用いて評価した。年次変化は、出産時女性の年齢に合わせて調整された多変量ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。

医師介入が死亡率に影響?がん患者診療のための栄養治療ガイドライン発刊

 日本人がん患者の栄養管理は、2022年より周術期栄養管理加算や外来栄養食事指導料が算定できるようになったことで、その管理体制は改善傾向にある。しかし、栄養治療が必要な患者に十分届いているとは言い難く、適切な栄養管理によってより良い予後をもたらすことが日本栄養治療学会(JSPEN)としての喫緊の課題になっている。そんな最中、2024年10月に『がん患者診療のための栄養治療ガイドライン 2024年版 総論編』が発刊されたため、作成ワーキンググループのガイドライン委員会前委員長である小谷 穣治氏(神戸大学大学院医学研究科外科系講座 災害・救急医学分野 教授)にがん患者の栄養管理の実際やガイドラインで押さえておくべき内容について話を聞いた。

ニンジンが糖尿病治療の助けになる?

 2型糖尿病の患者がニンジンを食べると、健康に良い効果を期待できるかもしれない。その可能性を示唆する、南デンマーク大学のLars Porskjaer Christensen氏らの研究結果が、「Clinical and Translational Science」に12月3日掲載された。同氏は大学発のリリースの中で、「われわれは、ニンジンが将来的には2型糖尿病の食事療法の一部として利用されるという、潜在的な可能性を秘めていると考えている」と記している。  この研究でChristensen氏らは、デンプン質の野菜に含まれる栄養素が生体に引き起こす代謝効果に着目し、マウスモデルを用いた実験を行った。特に、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)に対する作用を持つことが報告されている、ニンジンの可能性に焦点を当てた。なお、PPARγは、チアゾリジン薬という経口血糖降下薬の主要な作用標的でもある。

プレシジョン・オンコロジーの恩恵は平等か

 1998年以来、米食品医薬品局(FDA)により承認されたがん治療薬の43%は、がん細胞のゲノムバイオマーカーのプロファイリングを用いて患者を選択する、精密医療(プレシジョン・メディシン)に基づく治療法である。しかし、米国の民族的および人種的マイノリティーに属する人は、このようながん領域の精密医療(プレシジョン・オンコロジー)の恩恵を十分に受けておらず、がん治療へのアクセスにおける格差が依然として存在していることが、新たな研究により明らかになった。米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(MSK)のKanika Arora氏らによるこの研究結果は、「JAMA Oncology」に1月9日掲載された。

AMLへのベネトクラクス、ex vivoの感受性が奏効と生存延長を予測/Blood

 急性骨髄性白血病(AML)、とくに再発/難治性AMLにおいて、ベネトクラクスが奏効する可能性が高い患者を特定することは難しい。今回、フィンランド・ヘルシンキ大学のSari Kytola氏らによる前向き多施設共同第II相試験(VenEx)において、ex vivoベネトクラクス感受性は治療反応性と強く相関し、生存期間延長を予測することが示され、再発/難治性AMLや2次性AMLでベネトクラクス+アザシチジン併用療法の対象となる患者選択に有益であることが示唆された。Blood誌2025年1月23日号に掲載。

血中セロトニン低下は認知症や神経精神症状にどう影響しているか

 脳内のセロトニン調節不全は、認知症や神経精神症状と関連しているといわれている。しかし、機能低下、認知機能障害、軽度の行動障害、脳萎縮などの認知症前駆症状を検出するうえで、血中セロトニン濃度の有用性は、依然としてよくわかっていない。シンガポール国立大学のMing Ann Sim氏らは、高齢者における血中セロトニン濃度と認知症や神経精神症状との関連を評価するため、5年間のプロスペクティブ研究を実施した。Brain Communications誌2025年1月9日号の報告。  対象は、ベースライン時に認知機能障害のないまたは認知機能障害はあるものの認知症でない高齢者。対象患者の神経心理学的評価を毎年行った。認知機能の評価には、モントリオール認知評価、Global Cognition Z-scores、臨床的認知症尺度(CDR)を用いた(機能低下:ベースラインから0.5以上の増加)。軽度の行動障害は、ベースラインおよび毎年のNeuropsychiatric Inventory assessment(NPI)、脳萎縮はベースラインMRIから皮質および内側側頭葉の萎縮スコアを用いて評価した。その後、ベースライン時の血中セロトニン濃度と神経心理学的および神経画像的測定とを関連付け、横断的および縦断的に評価した。さらに、血中セロトニン濃度と横断的脳萎縮スコアとの関連性も評価した。

日本人HER2+進行乳がんへのペルツズマブ再投与、OS最終解析結果(PRECIOUS)/JCO

 ペルツズマブ治療歴のある、HER2陽性局所進行/転移乳がんに対し、ペルツズマブ再投与(ペルツズマブ+トラスツズマブ+主治医選択による化学療法)はトラスツズマブ+主治医選択による化学療法と比較して治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが、第III相PRECIOUS試験の主要解析結果として報告されている。今回、熊本大学の山本 豊氏らは、同試験の全生存期間(OS)の最終解析結果をJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年1月24日号で報告した。  PRECIOUS試験では、局所進行/転移乳がんに対する1次または2次治療としてペルツズマブを含む治療歴を有する患者を、ペルツズマブ再投与群(PTC群)とトラスツズマブ+主治医選択による化学療法群(TC群)に1:1の割合で無作為に割り付けた(PTC群110例、TC群109例)。主要評価項目は治験責任医師評価によるPFS、重要な副次評価項目はOS、独立中央評価によるPFSであった。

高齢者の卵摂取、多くても少なくてもダメ?

 卵の摂取量と70歳以上の高齢者の全死因死亡および死因別死亡との関連性を前向きに調査した結果、卵をまったく/まれにしか摂取しない群に比べて、週に1~6回摂取する群では全死因死亡および心血管疾患(CVD)死亡のリスクが低減したが、毎日摂取する群ではこの潜在的な有益性は認められなかったことを、オーストラリア・モナッシュ大学のHolly Wild氏らが明らかにした。Nutrients誌2025年1月17日号掲載の報告。  卵摂取と健康との関係は広く研究されているが、その結果はしばしば矛盾しており、さらに65歳以上の高齢者におけるエビデンスは限られている。卵にはタンパク質のほか、ビタミンやミネラルなども豊富に含まれており、高齢者の重要な栄養供給源であることから、研究グループは卵摂取と高齢者の死亡との関連性を評価するために前向きコホート研究を実施した。

飲酒は健康リスクに影響

 米国保健福祉省(HHS)は1月14日に発表した報告書の草案の中で、飲酒は早期死亡リスクを高める可能性があることを警告した。報告書によると、「米国では男女ともに1週間当たり7杯(米国の基準飲酒量〔ドリンク〕であるアルコール14g相当を1杯と表記)以上の摂取で1,000人中1人が飲酒に起因した死亡のリスクを負い、このリスクは1週間当たりの飲酒量が9杯以上になると100人中1人に高まる」という。  この報告書の目的は、健康リスクを最小限に抑えるための1週間当たりの飲酒量の基準値に関するエビデンスを得ることであった。ただし草案では、研究結果は要約されているが飲酒量に関する具体的な勧告は含まれていない。現行の米国のガイドラインでは、飲酒量に関して、男性は1日当たり2杯、女性は1杯を超えた量を飲むべきではないとの推奨が示されている。しかし、今回の報告書では、この基準を満たす量であってもリスクのある可能性が示唆されている。

加糖飲料により毎年世界で数百万人が糖尿病や心血管疾患を発症

 加糖飲料の影響で、世界中で毎年200万人以上の人が2型糖尿病(T2DM)を発症し、120万人以上の人が心血管疾患(CVD)を発症しているとする論文が、「Nature Medicine」に1月6日掲載された。米ワシントン大学のLaura Lara-Castor氏らの研究によるもので、論文の筆頭著者である同氏は、「T2DMやCVDによる早期死亡を減らすためにも、加糖飲料消費量削減を目指したエビデンスに基づく対策を、世界規模で直ちに推し進めなければならない」と話している。  この研究では、184カ国から報告されたデータを用いた統計学的な解析により、加糖飲料摂取に関連して発症した可能性のあるT2DMとCVDの新規患者数を推定した。その結果、2020年において、約220万人(95%不確定区間200~230万)の新規T2DM患者、および、約120万人(同110~130万)の新規CVD患者が、加糖飲料摂取に関連するものと推定された。この数はそれぞれ、2020年の新規T2DM患者全体の9.8%、新規CVD患者の3.1%を占めていた。また、加糖飲料摂取に起因するT2DM患者の死亡が8万人、CVD患者の死亡が約26万人と推定された。

血清ビタミンDレベルと片頭痛との関連

 ビタミンDは片頭痛の発症と関連していると考えられているが、その関連の本質は、十分に解明されているとはいえない。いくつかの研究において、ビタミンD欠乏と片頭痛との関連が示唆されているが、一貫性はなく、決定的な結果が得られていない。中国・河南中医薬大学のShunfa Hao氏らは、ビタミンDと片頭痛の関連をより深く理解するため、本研究を実施した。その結果、血清ビタミンDレベルと片頭痛有病率との間に、負の相関が認められたことを報告した。PloS One誌2025年1月3日号の報告。  対象患者は、2001〜04年の米国国民健康栄養調査(NHANES)データより抽出した9,142人。血清ビタミンDレベルの定義は、25(OH)D2+25(OH)D3(nmol/L)とした。片頭痛に関する情報は、NHANES質問票のその他の頭痛の項より、自由記入に基づき収集した。ビタミンDと片頭痛リスクとの関連性の評価には、多重ロジスティック回帰、smoothed curve fitting、層別化解析を用いた。

軽症例が多かった2023年の救急搬送の現状/消防庁

 総務省消防庁は、1月24日に「令和6年版 救急・救助の現況」を公表した。2023(令和5)年の救急出動件数(消防防災ヘリコプターを含む)は764万987件、搬送人員は664万3,379人だった。また、現場到着所要時間の平均は約10.0分だった。  救急出動件数は全体で764万987件(対前年比40万8,869件増、5.7%増)、搬送人員は664万3,379人(対前年比42万4,080人増、6.8%増)で前年と比較して救急出動件数、搬送人員ともに増加した。

治療転帰、男女医師で有意差~35研究のメタ解析

 これまでに、女性医師が治療した患者は男性医師が治療した患者よりも転帰が良く、医療費も低くなる可能性が報告されている。医師と患者の性別の一致も転帰に影響する可能性があるが、これまでの研究では有意差は確認されておらず、統合解析によるエビデンスはほとんどない。今回、米国・メイヨークリニックのKiyan Heybati氏らがランダム効果メタ解析を実施した結果、女性医師の治療を受けた患者は、男性医師の治療を受けた患者に比べ死亡率が有意に低く、再入院も少なかったことがわかった。BMC Health Services Research誌2025年1月17日号に掲載。

高齢者の集中力維持に最適な室温はどれくらい?

 室温は、高齢者の脳の健康に直接的な影響を与える可能性があるようだ。米マーカス加齢研究所のAmir Baniassadi氏らによる新たな研究で、65歳以上の高齢者が、「集中力を維持するのが困難だ」と報告する可能性が最も低い温度は20〜24℃であることが明らかになった。この研究の詳細は、「The Journals of Gerontology: Series A」に12月3日掲載された。  本研究の背景情報によると、人間は、加齢とともに気温の急激な変化に対応する能力が低下する。体温を調節する能力は加齢とともに低下するものだが、慢性疾患を抱えていたり、それに対する治療薬を服用していたりする場合には、その傾向がさらに強まる。研究室ベースの研究では、周囲の温度と認知機能は因果関係にあり、極端な温度の上昇が高齢者の認知機能に悪影響を与え得ることが示されている。

がん診断前の定期的な身体活動はがんの進行や死亡リスクを低下させる?

 がんと診断される前に運動を定期的に行っていた人では、がんとの闘いに成功する可能性が高まるようだ。がんの診断前に、たとえ低水準でも身体活動を行っていた人では、がんの進行リスクや全死亡リスクが低下する可能性のあることが明らかになった。ウィットウォーターズランド大学(南アフリカ)のJon Patricios氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Sports Medicine」に1月7日掲載された。  研究グループによると、運動ががんによる死亡のリスク低下に重要な役割を果たしていることに関しては説得力のあるエビデンスがあるものの、がんの進行に対する影響については決定的なエビデンスがない。