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治療抵抗性高血圧の血圧コントロールのために有用なのは、アドヒアランスの改善か、薬物治療の強化か?

 治療抵抗性高血圧の要因には、血圧測定上の問題、白衣現象、アドヒアランス不良のような偽治療抵抗性、生活習慣の問題、薬物治療の問題、二次性高血圧があるが、これらの要因の解消が血圧コントロールにつながるかは明らかにされていなかった。Daugherty氏らは治療抵抗性高血圧患者のデータをレトロスペクティブに解析した結果、血圧コントロールの改善と薬物治療の強化は有意な相関を示したが、血圧コントロールの改善とアドヒアランスの改善とは有意な相関を認めなかったことをHypertension誌に発表した。Daugherty氏らは、なぜ血圧コントロール不良例が薬物治療の強化を受け入れないのかを調査する必要性があることを強調している。

 『あめいろぐピックアップ』(第三回)透析をやめるとき

 Medical U of South Carolinaで腎臓内科研修中 サウスキャロライナ医科大学腎臓内科 三枝 孝充(さいぐさ たかみつ) 2012年8月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 紹介:「あめいろぐ http://ameilog.com/ 」は米国で働く日本人医療従事者による情報発信ブログポータルサイトです。米国で活躍する様々な専門科の医師やコメディカルが、現場から生き生きとした情報を日々発信しています。このシリーズでは、その中から選りすぐりの記事を皆さまにお届けします。 「透析をやめるとき」 余命6ヶ月といわれた癌患者に積極的な治療でなく緩和医療(palliative care)をオファーすることに抵抗は少ないと思いますが、余命が同程度と思われるESRD(末期腎不全)患者に透析を提供しないまたは透析をやめることに抵抗を感じる人は多いと思います。

検証!「痛み」と「うつ」関係は?:山口大学

 末梢神経障害による気分障害を伴う神経障害性疼痛はQOLに影響を及ぼす重大な問題である。最近の研究では、大脳辺縁系の脳由来神経栄養因子(BDNF)の欠乏がpain-emotion(痛みの感情)を生じさせることが示唆されている。BDNFは4-メチルカテコール(4-MC)により培養神経細胞で誘発されるが、pain-emotionにおけるBDNFの役割は十分にわかっていない。山口大学 福原氏らは、BDNFが末梢神経障害後の慢性疼痛時に脳やうつ病様症状に対しどのように関与しているかを評価し、脳室内の4-MCが慢性疼痛を防ぎ、抗うつ効果を発揮するかどうかを検討した。その結果、BDNFの強化はうつ病を伴う慢性疼痛の新たな治療戦略となる可能性があることをCell Mol Neurobiol誌2012年8月号にて報告した。

被災地で心を病む人々と、ともに生きる―不幸な人?挑戦者? ―

相馬中央病院 副院長 小柴 貴明  2012年8月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 被災地 相馬市にある相馬中央病院周辺には、心の風邪に罹った患者さんが多い。風邪の程度は、軽いものから、かなりの重症まである。こういった患者さんは、診察室に入って来られた瞬間の表情が、どこか違う。うつむき加減で、来られる患者さん。険しい表情の患者さん。落ち着きのない患者さん。

ARBを含まない3剤併用療法で1ヵ月以内に30mmHgの降圧を達成:レニン阻害薬+Ca拮抗薬+利尿薬

 今や、ARB+Ca拮抗薬+利尿薬の3剤併用療法が降圧治療におけるゴールデンスタンダードとして繁用されている。この3剤以外の併用療法で、強力な降圧効果が期待できる組み合わせは存在するのか?2009年、わが国においてもレニン阻害薬アリスキレン(販売名=ラジレス)が登場し、10余年ぶりの新しい作用機序の降圧薬が治療のラインナップとして加わったが、Lacourcière氏らはアリスキレンを含めた3剤併用療法が2剤併用療法に比べ、有意に強力な降圧効果を発揮することをJournal of Hypertension誌に発表した。なお、この論文は出版前の7月22日に公開された。3剤併用療法では降圧治療開始から2週以内に、2剤併用療法より優れた治療経過を示した。

慢性期統合失調症患者に新たな一手!「高酸素吸入療法」

 神経障害に対する高酸素療法については、いくつかの研究で肯定的な結果が示されている。また、統合失調症患者では脳への酸素供給を増加させることにより、ミトコンドリア機能障害によるエネルギー代謝障害や前頭葉機能低下が改善される可能性がある。Bloch氏らは統合失調症の有用な治療法として高酸素吸入療法が選択肢となりうると考え、検討を行った。J Clin Psychopharmacol誌2012年8月号の報告。

病床規制の問題3 誘発された看護師引き抜き合戦

亀田総合病院 小松 秀樹 2012年8月9日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 千葉県は極端に医師、看護師が不足している。このため相当数の許可病床が稼働していない。平成23年度千葉県保健医療計画によると、平成20年末の千葉県の人口10万対医療施設従事医師数、就業看護職員数のいずれも、全国45位だった。しかも、埼玉県、神奈川県と並んで全国屈指のスピードで高齢化が進行しつつある。これに伴い医療・介護の需要が急速に増加しつつある。

福島の病院が、初めての研修医を迎えて

南相馬市立総合病院・神経内科 小鷹 昌明 2012年8月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 福島県南相馬市の病院が、はじめて研修医を受け入れたのは、震災後500日が経過しようとする頃だった。 当院の研修シラバスには、次のような文言が謳われている(これは、昨年より亀田総合病院から出向してきた“原澤慶太郎・在宅診療科医師”の掲げた目的である)。 まずは一読してもらいたい。

がん患者のせん妄治療に有効な抗精神病薬は…

 入院がん患者ではせん妄を発症することは少なくない。せん妄の治療においては、しばしば抗精神病薬が用いられる。日本医科大学武蔵小杉病院 岸氏らは、非定型抗精神病薬であるリスペリドンのがん患者のせん妄に対する有効性を検証するとともに、重症度による評価を行った。Psychiatry Clin Neurosci誌オンライン版2012年8月号の報告。

ドネペジル「新たな抗血管新生治療」の選択肢となりうるか?

ドネペジルは可逆的アセチルコリンエステラーゼ阻害薬であり、アルツハイマー病(AD)患者に使用される。最近の研究では、ドネペジル治療により末梢血単核球(PBMC)で炎症性サイトカインの産生を抑制することが報告されている。また、筋組織に由来する炎症性サイトカインが、下肢虚血モデルにおいて血管新生に重要な役割を果たすとの報告もある。九州大学 宮崎氏らは片側大腿動脈結紮にて作成した下肢虚血モデルマウスを用い、ドネペジルの虚血下肢での血管新生に及ぼす影響を検証した。Clin Sci (Lond)誌2012年8月号の報告。

北茨城市のSOS

関西医科大学5年 宮崎 貴子 2012年8月6日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 事の始まりは、大学の社会医学実習である。 社会医学実習は、基本的に福祉施設や保健所で行うことが多い。私は自主テーマ班に配分された。自主テーマ班は自ら研修先を手配し、研修内容も自ら決めることができる。様々な人との出会いがあり、東京で研修を受けることになった。

メチルフェニデート使用で“喫煙”が加速

注意欠陥多動性障害(ADHD)患者は一般人と比較して喫煙率が高く、低年齢から喫煙を開始しており、禁煙が困難な場合が多い。そして、メチルフェニデートを使用することで喫煙の増加が短期的にみられることも、実験データから明らかになっている。しかし、長期的な影響に関してはまだわかっていない。Bron氏らは、メチルフェニデートにナイーブなADHD患者に対するメチルフェニデートの使用が、喫煙に与える短・長期的な影響、およびニコチンへの欲求に与える影響に関して調査を行った。Eur Neuropsychopharmacol誌オンライン版2012年7月17日号の報告。

南相馬市の優しい人々のこと

雲雀ヶ丘病院 堀 有伸 2012年8月2日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 筆者は、今年の4月から志願して福島県南相馬市にある精神科単科の雲雀ヶ丘病院の常勤医になりました。震災前のこちらの病院では4病棟が稼働し、定床は250人強でした。現在は60床の閉鎖病棟が一つのみ再開されていて、ここが福島県の相双地区で唯一の入院できる精神科病棟となっています。常勤医は3人のみで、各方面からさまざまなご支援をいただいておりますが、厳しい勤務体制が続いています。

難治性うつ病に対するアプローチ「SSRI+非定型抗精神病薬」

うつ病患者のうち、抗うつ薬が奏効するのはわずか2/3程度であり、治療に難渋することも少なくない。近年、抗うつ薬に非定型抗精神病薬を併用するうつ病の薬物治療は、効果的かつ高い忍容性が認められるといわれている。産業医科大学 吉村氏らは難治性うつ病患者におけるSSRIとアリピプラゾールとの併用による有効性を検討した。Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry誌オンライン版2012年7月17日号の報告。