医療一般|page:302

アルツハイマー病の症状を抑制する初の薬剤となるか~aducanumab第III相試験の新たな解析結果

 バイオジェンとエーザイは2019年10月22日、早期アルツハイマー病(AD)患者に対する第III相試験において無益性解析に基づき中止となったaducanumabについて、中止後に新たに利用可能となったデータを追加し解析した結果から、米国食品医薬品局(FDA)との協議に基づいて、2020年に承認申請を予定していることを発表した。aducanumabが承認された場合、早期アルツハイマー病の臨床症状悪化を抑制する最初の治療薬となるとともに、アミロイドベータ(Aβ)の除去が臨床上のベネフィットをもたらすことを実証する世界初の薬剤となるという。

アテゾリズマブ+ベバシズマブ、肝細胞がんの生存を改善(IMbrave150)/Roche

 アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)とベバシズマブ(同:アバスチン)の併用が肝細胞がん(HCC)の1次治療において生存を改善した。  Roche社は、2019年10月21日、切除不能肝細胞がん(HCC)を対象にしたアテゾリズマブとベバシズマブ併用の第III相IMbrave150試験において、全生存(OS)および無増悪生存(PFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示したことを発表した。  IMbrave150は、未治療の切除不能HCCの501例を対象とした、国際多施設共同非盲検第III相試験。対象患者は無作為にアテゾリズマブとベバシズマブ併用またはソラフェニブに割り付けられ、許容できない毒性または臨床的利益の喪失まで、治療を受けた。主要評価項目は、独立審査委員会(IRF)によるOSとPFSである。IMbrave150試験のデータは、今後の医学学会で発表される予定。

脳転移のあるPD-L1陽性肺がんにもペムブロリズマブ単剤が有効/ESMO2019

 米メイヨークリニックのAaron S. Mansfield氏は、ペムブロリズマブに関する臨床試験であるKEYNOTE-001、010、 024、042の統合解析結果から、脳転移があるPD-L1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するペムブロリズマブ単独療法は、脳転移なしと同等以上の予後改善効果があると欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。  統合解析に用いた4試験(KEYNOTE-001、010、024、042)のうちKEYNOTE-001のみが単群試験で、その他はいずれも化学療法との比較試験である。

日本で広域抗菌薬が適正使用されていない領域は?

 抗菌薬の使用量は薬剤耐性と相関し、複数の細菌に作用する広域抗菌薬ほど薬剤耐性菌の発生に寄与する。日本の抗菌薬使用量は他国と比べ多くはないが、セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライドといった経口の広域抗菌薬の使用量が多い。AMR臨床リファレンスセンターは9月24日、11月の「薬剤耐性(AMR)対策推進月間」を前にメディアセミナーを開催。日馬 由貴氏(AMR臨床リファレンスセンター 薬剤疫学室室長)、具 芳明氏(同 情報・教育支援室室長)らにより、最新の使用量データや市民の意識調査結果が報告された。

魚類や多価不飽和脂肪酸摂取と産後うつ病リスク~JECS縦断研究

 妊婦は、胎児の成長に必要なn-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)のレベルを高める必要がある。母親の魚類やn-3 PUFAの摂取が、産後うつ病リスクを低下させることを示唆するエビデンスが報告されているが、その結果に一貫性はない。富山大学の浜崎 景氏らは、日本人女性における妊娠中の魚類やn-3 PUFAの摂取と産後うつ病リスクとの関連について調査を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2019年9月19日号の報告。  日本人集団において、出産後6ヵ月までの母親の産後うつ病リスクおよび1年間の重篤な精神疾患リスクの低下に、妊娠中の魚類やn-3 PUFAの食事での摂取が関連しているかについて調査を行った。JECS(子どもの健康と環境に関する全国調査)の10万3,062件のデータより除外と重複処理を行った後、出産後6ヵ月は8万4,181人、1年間は8万1,924人について評価を行った。リスク低下の評価には、多変量ロジスティック回帰および傾向テストを用いた。

統合失調症の治療反応とグルタミン酸およびGABAレベルとの関連

 ドパミン作動性抗精神病薬に対する治療反応不良は、精神疾患の治療における大きな課題であり、初発時に治療反応不良患者を特定するマーカーが求められている。これまでの研究で、初発時の治療反応不良患者では治療反応患者と比較し、グルタミン酸(Glu)およびγ-アミノ酪酸(GABA)レベルが増加していることがわかっている。しかし、健康対照群の参照レベルを用いて、治療反応不良患者を特定できるかはよくわかっておらず、デンマーク・コペンハーゲン大学のKirsten B. Bojesen氏らが検討を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2019年9月16日号の報告。

新たなJAK阻害薬、中等症~重症の成人アトピー性皮膚炎に有効

 アトピー性皮膚炎(AD)に対するJAK阻害薬の開発が進んでいる。開発中の経口JAK1選択的阻害薬abrocitinib(PF-04965842)について、中等症~重症の成人ADに対する短期使用の有効性および忍容性が、第IIb相プラセボ対照無作為化試験で確認された。カナダ・SKiN Centre for DermatologyのMelinda J. Gooderham氏らが報告した。abrocitinibは、ADの病理生理学的特性に重要な役割を担うサイトカイン(IL-4、IL-13、IL-31、インターフェロンγなど)のシグナル伝達を阻害する。今回の第II相試験では、200mg、100mg、30mg、10mgの各用量を1日1回投与し、プラセボとの比較検証を行った。なお、本試験の結果を受けてabrocitinibの200mgと100mgの有効性と安全性を評価する第III相試験が行われている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年10月2日号掲載の報告。

EGFR陽性NSCLC1次治療、ベバシズマブ+エルロチニブがPFS改善(CTONG 1509)/ESMO2019

 EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療としてのベバシズマブ+エルロチニブ併用療法の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、中国・Guangdong Lung Cancer InstituteのQing Zhou氏より発表された。  CTONG 1509試験は、中国国内の14施設で実施されたオープンラベルの無作為化比較第III相試験である。症例登録期間は、2016年4月~2017年7月であり、主解析に用いたデータのカットオフは2019年1月であった。

EGFR陽性肺がん1次治療でのエルロチニブ+ラムシルマブ、T790M発現との関係は?(RELAY)/ESMO2019

 EGFR変異陽性のNSCLCでは、第1、2世代EGFR-TKIの1次治療により30~60%の患者でT790M変異による耐性が発現する。近畿大学の西尾 和人氏らは、EGFR変異陽性のNSCLCでのラムシルマブ・エルロチニブ併用(以下、RAM+ERL)の効果を検証した第III相RELAY試験の結果から、この2剤併用がEGFRの2次変異であるT790M変異の発生を遅延させる可能性があると欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で発表した。  RELAY試験は未治療のEGFR変異陽性進行NSCLC患者(449例)を対象に、RAM+ERLとプラセボ+エルロチニブ(以下、PL+ERL)を比較した第III相国際共同二重盲検無作為化試験で、併用群における無増悪生存期間(PFS)の有意な延長が報告されている(HR:0.591、p<0.0001)。T790M発現については、PD後30日後のRAM+ERL群と対照群で差はみられていない(43%対47%)。

医師の認知症リスク~コホート研究

 より良い医療知識を多く有している医師は、認知症リスクが低いのではないだろうか。この疑問を明らかにするため、台湾・Chi-Mei Medical CenterのLi-Jung Ma氏らが検討を行った。Aging Clinical and Experimental Research誌オンライン版2019年8月19日号の報告。  医師2万9,388人、一般集団5万人、医師以外の医療従事者3万446人を含む、全国規模の人口ベース調査を実施した。2006~12年の病歴を追跡し、3群間および医師のサブグループ間で認知症有病率の比較を行った。

終末期には患者家族との意思疎通に訓練が必要

 2010年10月2日~4日の3日間、都内において「第47回 日本救急医学総会・学術集会」(会長:田中 裕[順天堂大学大学院医学研究科救急災害医学 教授])が、「不断前進、救命救急 今、ふたたび『仁』」をテーマに開催された。  学会では、「病院前診療」「心肺蘇生」「外傷診療」「敗血症診療」などをテーマに特別講演、シンポジウム、パネルディスカッションをはじめ、さまざまな企画が開催されたほか、市民向けには敗血症の説明講座やAEDを使用した実技講習会などが開催された。

ニボルマブ+低用量イピリムマブ、NSCLCのOS有意に改善(CheckMate-227)/ESMO2019

 イピリムマブとニボルマブの併用は、悪性黒色腫や腎細胞がんにおいて全生存期間(OS)の改善を示している。非小細胞肺がん(NSCLC)においても、イピリムマブの用法・用量の肺がんへの適正化(1mg/kg 6週ごと投与)により、有効性を示す試験結果が報告されている。CheckMate-227試験は、ニボルマブベースの治療と化学療法を比較したオープンラベル無作為化第III相試験。同試験は、Part1とPart2で構成されており、Part1の結果として、高腫瘍変異負荷(TMB≧10mut/Mb)患者におけるイピリムマブ・ニボルマブ併用の化学療法に対する無増悪生存期間(PFS)の延長が報告されている。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)では、Part1の最終結果、とくにPD-L1≧1%の患者における主要評価項目であるイピリムマブ+ニボルマブ対化学療法の全生存期間(OS)のデータについて、スイス・ローザンヌ大学のSlonge Peters氏が発表した。

局所進行胃がんに対するDOSによる術前化学療法の追加効果(PRODIGY)/ESMO2019

 局所進行胃がんに対する術後S-1治療への術前ドセタキセル+オキサリプラチン+S-1(DOS)の追加効果を検討したPRODIGY試験の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で報告された。韓国・蔚山大学校のYoon-Koo Kang氏による発表。  アジアにおいて、胃切除リンパ節郭清(D2)とそれに続く術後化学療法は、切除可能進行胃がんに対する標準治療となっている。PRODIGY試験は、標準治療へのDOSの術前化学療法追加による効果を検証した第III相試験である。

日本高血圧学会、台風19号被災者向けのQAと総会概要を発表

 10月15日、特定非営利活動法人日本高血圧学会(JSH)は、10月25-27日に開催される第42回日本高血圧学会総会に先立ち、プレスセミナーを開催した。  冒頭に、理事長の伊藤 裕氏が、台風19号による甚大な被害を踏まえ、学会としての対応を発表した。「甚大な被害が広範囲に広がり、避難生活が長引く被災者も多くなると考えられる。ストレスや血圧の管理が不十分となり、いわゆる『災害高血圧』が生じて、脳卒中や心疾患につながることを懸念している」と述べた。最初の対応としては、被災地の高血圧患者から多く寄せられる質問と回答をまとめ「台風19号により被害を受けられた皆さまへ」と題して学会サイトに発表した。

スボレキサントの睡眠改善効果と聴覚刺激による目覚め効果

 不眠症患者の夜間の反応性に対するデュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)スボレキサントの安全性プロファイルについて、米国・Thomas Roth Sleep Disorders and Research CenterのChristopher L. Drake氏らが、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験により検討を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌2019年9月15日号の報告。  不眠症患者(DSM-5診断)12例を対象に、スボレキサント10mg群、スボレキサント20mg群、プラセボ群にランダムに割り付けた。薬物最大血中濃度に達した時点で、安定期N2睡眠中に聴覚刺激音を再生し、目覚めるまで5デシベル(db)ずつ増加した。覚醒時のdbを聴覚刺激覚醒閾値(AAT)とし、群間比較を行った。また、85db超の割合についても比較を行った。最終的に、閾値周辺(80db、90db)を用いて感度分析を実施した。

わが国の肺がんの静脈血栓塞栓症の発生率(Rising-VTE)/WCLC2019

 静脈血栓塞栓症(VTE)は、悪性腫瘍でよくみられる合併症である。しかし、肺がんの診断時のVTEの発生率についてはほとんど知られていない。日本の40施設を対象とした多施設前向き観察研究Rising-VTE/NEJ037について、県立広島病院の濱井 宏介氏が世界肺癌学会(WCLC2019)で発表した。  Rising-VTE/NEJ037の対象は、切除または放射線治療不能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者。VTEは造影CTまたは下肢エコー検査に基づき診断された。試験の主要評価項目は、中央判定委員会が評価する登録後2年間の症候性および無症候性の再発または新たに診断されたVTEの発症率である。

男性乳がん死亡率、女性乳がんより高い?/JAMA Oncol

 乳がんは男性患者と女性患者で生存率に差があることが報告されているが、性差が関連する要因について、大規模なデータ解析に基づく知見が示された。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのFei Wang氏らは全米がん登録コホート研究にて、乳がん診断後の死亡率は、臨床的特徴、治療因子、治療を受ける機会を考慮しても、女性患者より男性患者で高いことを明らかにした。乳がん死の性差を理解することは、がん治療とサバイバーのケアに関する戦略を立てるうえで基本となる。結果を受けて著者は、「死亡率の性差をなくすためには、とくに生物学的属性、治療コンプライアンス、ライフスタイルなど他の要因を特定する必要があろう」と指摘している。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月19日号掲載の報告。

がん患者におけるVTEとAF、わが国の実際/腫瘍循環器学会

 固形がん患者の2~8%に悪性腫瘍関連静脈血栓塞栓症(CA-VTE)が合併すると欧米より報告されている。アジア人は白人と比較してCA-VTEの合併率が低いとの報告もあるが、日本人の固形腫場患者を対象としたCA-VTEの合併率の報告は少ない。神戸大学の能勢 拓氏らは、自施設における新規固形がん患者を対象として後方視的に情報を収集し、第2回日本腫瘍循環器学会で発表した。  対象は2,735例で、観察期間中央値は103日であった。CA-VTEが認められ、合併率は3.3%(2,735例中92例)で、欧米の報告と同等であった。CA-VTE合併例の年齢中央値は70歳で、52%が女性であった。症候ありは47%で、Dダイマー正常値(<1.0μg/mL)は5.4%であった。

BRAF V600E変異大腸がんに対するビニメチニブ、エンコラフェニブ、セツキシマブの3剤併用(BEACON CRC)/ESMO2019

 スペインVall d’Hebron 大学病院のJosep Tabernero氏は、転移のあるBRAF V600E変異大腸がんに対する、BRAF阻害薬アンコラフェニブ、MEK阻害薬ビニメチブ、抗EGFR抗体セツキシマブの3剤併用療法を検証した無作為化非盲検の第III相試験BEACON CRCの結果を発表。この3剤併用療法あるいはアンコラフェニブとセツキシマブの併用療法は、従来のFOLFIRI療法あるいはイリノテカンにセツキシマブを加えた治療法に比べ、全生存期間(OS)、奏効率(ORR)を有意に改善すると報告した。