医療一般|page:141

除脂肪量指数でサルコペニアをスクリーニング

 比較的簡便な体組成の評価方法である、生体インピーダンス(BIA)法で測定した除脂肪量指数〔FFMI(除脂肪量(kg)を身長(m)の二乗で除した値)〕が、サルコペニアの低筋肉量スクリーニングに利用できる可能性を示唆するデータが報告された。早稲田大学スポーツ科学研究センター招聘研究員・明治安田厚生事業団体力医学研究所の川上諒子氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Medical Directors Association」に9月27日掲載された。  サルコペニアは筋肉量や筋力が低下した状態のことで、要介護などのリスクが上昇するため、早期介入による是正が重要。サルコペニア診断の低筋肉量判定には、二重X線エネルギー吸収測定(DXA)法または生体インピーダンス法による四肢筋肉量(ASM)の測定が必要とされる。このうち特に前者のDXA法は、測定機器が大型で可動性が乏しく健診会場などへ移動が困難なことや、コストや被曝の懸念があることが、現場での利用のハードルとなっている。後者のBIA法は機器に可動性があり、比較的低コストで被曝の懸念もないものの、ASMの測定が可能な機器はあまり普及していない。その一方で、除脂肪量指数(FFMI)であれば家庭用に普及している体組成計でも評価可能である。

治療抵抗性の幻聴に対する低刺激rTMS療法の有用性

 治療抵抗性の幻聴を有する患者に対する治療として、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法が注目されている。しかし、とくにクロザピン耐性症状が認められる患者における最適な刺激パラメータはよくわかっていない。フランス・リヨン大学のJerome Brunelin氏らは、治療抵抗性の幻聴を伴う統合失調症患者に対して、うつ病性障害への刺激パラメータが有用かどうかを調査するため、非盲検レトロスペクティブ研究を実施した。その結果、クロザピン耐性症状が認められる患者を含む治療抵抗性の幻聴に対し、低刺激rTMS療法(3週間で30セッション)は有用なアプローチであることが示唆された。International Journal of Clinical and Health Psychology誌2023年1~4月号の報告。

アナフィラキシーなどの治療を非専門医向けに/アレルギー総合ガイドライン改訂

 多くの診療科に関係するアレルギー疾患。2022年10月に刊行された『アレルギー総合ガイドライン2022』は、2019年版の全面改訂版だ。各診療ガイドラインのエッセンスを精選して幅広いアレルギー診療の基本をまとめ、前版より大幅なコンパクト化を実現した。編纂作業にあたった日本アレルギー学会・アレルギー疾患ガイドライン委員会委員長の足立 雄一氏(富山大学 小児科学講座 教授)に改訂のポイントを聞いた。 ――『アレルギー総合ガイドライン』は、各分野のガイドラインや診療の手引きの短縮版を合本してつくられています。これまではそのまま合本していたため、どうしても重複箇所が多くなり、2019年版は700ページを超えました。読者から「読みにくい」「重くて持ち運べない」といった声が出ており、今回はガイドライン委員が全ページに目を通して重複を削る作業をした結果、300ページ近いコンパクト化を図ることができました。

中程度の運動で乳がん患者の死亡リスクが60%減!?

 乳がん患者における日常動作以上の身体活動レベルと全死因死亡リスクの関連を評価した結果、中程度の身体活動であっても死亡リスクが60%低いことを、米国・カイザーパーマネンテ南カリフォルニアのLie Hong Chen氏らが明らかにした。身体活動による乳がんの発症リスク低減効果は知られているが、乳がんと診断された後の身体活動の効果に関する評価はまだ不十分であった。JAMA Netw Open誌2022年11月17日リサーチレター掲載の報告。  研究グループは、2年以上前に乳がんの診断を受け(生存期間中央値6年)、カリフォルニア州のヘルスケアプランのメンバーであった閉経後乳がん患者のコホート研究を実施した。対象は、1996~2012年に初期の乳がん(TNM分類0~II期)と診断された患者で、調査は2013年8月1日~2015年3月31日に行われ、2022年4月30日または患者死亡まで追跡された。  身体活動レベルと疲労度は、ゴーディン式余暇運動調査票(GSLTPAQ)およびFatigue Severity Inventory(簡易倦怠感尺度)の2つのアンケートによって聞き取った。身体活動レベルと全死因死亡リスクの関連を、年齢、乳がんの病期、疲労度、併存疾患、診断からの年数、人種・民族、不眠症とうつ病の既往、がん治療の種類(内分泌療法、化学療法、放射線治療)によって調整し、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。

マインドフルネスストレス低減法は不安の軽減に役立つ

 マインドフルネスストレス低減法(MBSR)には過度に不安を覚える人を落ち着かせる力があり、その効果は抗うつ薬の使用と同等である可能性が、新たな研究で示唆された。米ジョージタウン大学医療センターのElizabeth Hoge氏らによるこの研究結果は、「JAMA Psychiatry」に11月9日掲載された。  この研究では、不安障害の診断を有する276人の成人(平均年齢33歳、女性75%)が、8週間、MBSRを受ける群と、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のエスシタロプラム(商品名レクサプロ)による治療を受ける群に、1対1の割合でランダムに割り付けられた。MBSRは、毎週1回、2.5時間の講習を受け、毎日自宅で45分間の実習を行うほか、5週目と6週目の間に瞑想の講習を終日受けるという内容だった。試験参加者の不安のレベルは、CGI-S(Clinical Global Impression Severity scale)という7段階の評価スケールで評価した(1:正常、7:非常に重度の精神疾患)。

食事療法の自己評価は実際より高くなりがち

 米国心臓協会(AHA)学術集会(Scientific Sessions 2022、11月5~7日、米シカゴ/バーチャル開催)における、米ハーバードT. H.チャン公衆衛生大学院のJessica Cheng氏らの報告によると、何らかの食事療法に取り組んでいる人は、自分の食生活を実際よりも健康的だと過大評価しがちのようだ。減量のために食事療法を1年間続けた人に、自分の食事スタイルを評価してもらい医療者の評価と比較した結果、両者の評価が一致していたのは4人に1人にとどまり、さらに1年前からの改善幅が一致していたのはごくわずかだったという。

不幸な結婚生活は心筋梗塞後の回復の障壁に

 結婚生活がうまくいかなくて心を痛めることがあるが、結婚生活の破綻は本当に心臓に悪いことを示唆する研究結果が明らかになった。心筋梗塞を経験した人のうち、夫婦関係でストレスを抱えている人は、その後の回復状態の悪いことが、米イェール大学公衆衛生大学院のCenjing Zhu氏らの研究で示された。Zhu氏は、「夫婦間ストレスは、心筋梗塞発症後1年以内の転帰不良に独立して関連していることを、われわれは突き止めた」と説明している。この研究結果は米国心臓協会(AHA)学術集会(Scientific Sessions 2022、11月5~7日、米シカゴ/バーチャル開催)で発表された。

「肥満」との違いは?肥満症診療ガイドライン改訂

 11月24日に日本肥満学会(理事長:横手 幸太郎氏[千葉大学医学部附属病院長])は、『肥満症診療ガイドライン2022』についてプレスセミナーを開催した。  セミナーでは、肥満症の現況や治療に関する解説と今回刊行されたガイドラインの概要が説明された。また、本ガイドラインは12月2・3日に那覇市で開催される第43回日本肥満学会(会長:益崎 裕章氏[琉球大学大学院 医学研究科 内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座 教授])で発刊される。

母子手帳アプリ『母子モ』で疾患啓発/AZ

 アストラゼネカは、11月28日付のプレスリリースで、母子手帳アプリ『母子モ』を通じた早産児やRSウイルス感染症に関する情報提供を11月11日より開始したことを発表した。  RSウイルスは、2歳までにほとんどの乳幼児が感染するといわれており、早産児や生まれつき肺や心臓等に疾患を抱える乳児では感染すると重症化しやすいとされている。また、正期産であっても生後6ヵ月未満は感染後重症化するリスクが高いため、該当する年齢の乳幼児を持つすべての保護者に疾患情報や感染対策について知ってもらうことが重要である。

認知症で修正可能な危険因子は?~ランセット認知症予防モデルを検証

 認知症リスクに対し修正可能なリスク因子は、40%の影響を与えるといわれており、認知症の予防または進行遅延につながると考えられる。Lancet委員会による認知症予防のリスク因子ライフコースモデルは、一般集団においてまだ検証されていない。ニュージーランド・オタゴ大学のCharlotte Mentzel氏らは、高齢者の大規模データセットを用いて、本モデルの評価を行った。その結果、ニュージーランドの高齢者集団においてBMI、高血圧、聴覚障害、うつ病が、認知症の修正可能なリスク因子として確認されたことから、認知症予防のためのこれらのリスク因子に対する介入の信頼性が向上したことを報告した。Archives of Gerontology and Geriatrics誌オンライン版2022年11月2日号の報告。

1型2型ともに糖尿病はばね指のリスクと関連

 指が曲がった状態で動かしにくくなる、ばね指という症状が、糖尿病の人に多いことを示すデータが「Diabetes Care」11月号に掲載された。ルンド大学およびスコーネ大学病院(いずれもスウェーデン)のMattias Rydberg氏、Lars Dahlin氏らの研究によるもの。  ばね指は、指を曲げるための腱とその結合組織の肥厚を特徴とする状態。それらの肥厚のために、指が手のひらに向かって曲がった位置に固定され、痛みを生じやすい。多くの場合、ステロイド注射で治療できるが、手術が必要になることもある。

日本人では重症COVID-19にもレムデシビルが有効の可能性

 ICU入室を要する重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者にも、抗ウイルス薬のレムデシビルが有効であることを示すデータが報告された。発症9日以内に同薬が投与されていた場合に、死亡リスクの有意な低下が観察されたという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Medical Virology」に9月23日掲載された。  COVID-19に対するレムデシビルの有効性はパンデミックの早い段階で報告されていた。同薬は現在までに流行した全ての変異株に有効とされてきており、世界保健機関(WHO)のCOVID-19薬物治療に関するガイドラインの最新版でも、軽症患者への使用が推奨されている。ただし重症患者での有効性のエビデンスが少なく、同ガイドラインでも条件付きの推奨にとどまっている。

isCGMは低血糖予防に有効/京都医療センターほか

 低血糖予防教育に間歇スキャン式持続血糖測定器(isCGM)を用いることで低血糖時間や重症低血糖リスクが低減されることが、村田 敬氏(京都医療センター臨床栄養科)、坂根 直樹氏(同センター臨床研究センター 予防医学研究室長)らの19施設の糖尿病専門医と臨床研究専門家の共同研究により明らかとなった。詳細はDiabetes Research and Clinical Practice誌に11月13日掲載された。

ドキソルビシン、乳がん併用療法での休薬期間短縮可能に/サンドファーマ

 サンドファーマ株式会社は2022年11月24日、ドキソルビシン(一般名:アドリアシン注用10、同注用50)について、乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍薬との併用療法の場合、シクロホスファミド水和物との併用において、用法及び用量の医薬品製造販売承認事項一部変更承認を受けたことを発表した。 <製品概要> ・販売名: アドリアシン注用10 アドリアシン注用50 ・一般名:ドキソルビシン塩酸塩 ・効能・効果:変更なし ・用法・用量: <乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法> シクロホスファミド水和物との併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、1日量、ドキソルビシン塩酸塩として60mg(力価)/m2(体表面積)を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、1日1回静脈内投与後、13日間又は20日間休薬する。 この方法を1クールとし、4クール繰り返す。 なお、年齢、症状により適宜減量する。またドキソルビシン塩酸塩の総

ストレスや睡眠反応性が不眠症状に影響を及ぼすまでの期間

 米国・アリゾナ大学のJiah Yoo氏らは、ストレス曝露後の睡眠障害(睡眠反応性)と睡眠障害後のストレス反応(ストレス反応性)を自然主義的に毎日測定し、これらの反応性と不眠症との関連をレトロスペクティブに調査した。その結果、ベースライン時のストレス反応性と睡眠反応性は、11ヵ月後の不眠症状の悪化をそれぞれ独立して予測するだけでなく、相互に関連し予測していることが明らかとなった。著者らは、本調査結果は不眠症のストレス因子モデルの根底にあるプロセスを可視化し、睡眠とストレス反応性の長期的かつ自然主義的な測定の有用性を示唆していると述べている。Sleep誌オンライン版2022年10月27日号の報告。

男性と女性、性欲が強いのはどちら?

 驚く人はいないかもしれないが、男性の方が女性よりも性欲が強いことが、ザールラント大学(ドイツ)心理学部のJulius Frankenbach氏らの研究で示された。200件以上の研究データの解析から、男性の自己申告に基づく性欲は一貫して女性より強いことが明らかになったという。研究結果は、「Psychological Bulletin」に10月13日掲載された。  Frankenbach氏らは今回、1996年以降に発表された211件の研究データを収集し、性欲の性差についてメタアナリシスを実施した。これらの研究には、14歳以上の男女62万1,463人が含まれていた。

明るい寝室で寝ることが肥満やうつ症状、全身性炎症と関連

 約3,000人の一般住民を対象に、睡眠中の寝室の明るさと健康指標との関連を検討した研究(平城京スタディ)から、明るい寝室で寝ている人には、肥満、脂質異常、全身性炎症、うつ症状、睡眠障害が多いという結果が報告された。奈良県立医科大学疫学・予防医学講座の大林賢史氏らの研究であり、詳細は「Environmental Research」に9月21日掲載された。  寝室の明るさが健康リスクとなる可能性を示した研究は、過去にも報告されているが、それらは対象者数が限られていた。今回、大林氏らが実施した研究は、奈良県に居住する40歳以上の一般成人3,012人を対象とする大規模な疫学研究であり、照度計を用いて2日間にわたり睡眠中の寝室の明るさを測定した。

4回目接種後、医療者での抗体価推移と有効性の持続期間/NEJM

 4回目の新型コロナウイルスワクチン接種後の抗体価は2・3回目接種後と比較して違いはあるのか。そして上がった抗体価はどのくらい持続するのか。イスラエル・Sheba Medical CenterのMichal Canetti氏らは、同国の医療従事者における4回目接種後6ヵ月間の液性免疫応答とワクチン有効性を評価。2回目および3回目接種後と比較した。NEJM誌オンライン版2022年11月9日号のCORRESPONDENCEに掲載の報告より。  SARS-CoV-2検査および血清学的フォローアップ検査によって感染歴がないことが確認され、4ヵ月以上前に3回目接種を受けていた4回目接種者が対象。4回目接種後の液性免疫応答(IgGおよび中和抗体の測定によって評価)を、2回目および3回目の投与後と比較した。 ワクチンの有効性は、以下の期間(4回目の接種後7~35日、36~102日、または103~181日)ごとに4回目接種を受けた参加者の感染率を、3回接種者の感染率と比較することによって評価された。Cox比例ハザード回帰モデルを使用し、年齢、性別、および職業により調整され、経時的な感染率の違いを説明するための時間スケールとして暦時間が使用された。死亡や追跡不可となった参加者はいなかった。

SGLT2阻害で腎結石の形成抑制~日本人疫学データ、動物・細胞培養実験より

 阿南 剛氏(東北医科薬科大学医学部泌尿器科学/現:四谷メディカルキューブ 泌尿器科科長)と廣瀬 卓男氏(東北大学医学部内分泌応用医科学/東北医科薬科大学医学部)、菊池 大輔氏(東北医科薬科大学病院薬剤部)らの研究グループは、疫学研究よりナトリウムグルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬は日本の男性糖尿病患者での尿路結石の罹患割合の減少と関連していたことを確認し、動物実験などからSGLT2阻害が腎結石の形成抑制につながることを明らかにした。このことから、SGLT2阻害薬が腎結石に対する有望な治療アプローチになる可能性を示した。本研究はPharmacological Research誌オンライン版10月28日号に掲載された。

双極性うつ病に対する補助療法の有効性と安全性~メタ解析

 双極性うつ病に対する補助療法の有効性および安全性は、いまだ明らかとなっていない。杏林大学の丸木 拓氏らは、双極性うつ病に対しラモトリギン、リチウム、バルプロ酸の単剤療法の補助療法として使用された第2世代抗精神病薬、ラモトリギン、リチウム、バルプロ酸の有効性および安全性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、双極性うつ病に対する第2世代抗精神病薬、ラモトリギン、リチウム、バルプロ酸による補助療法は、ベネフィットとリスクの両方を上昇させる可能性があるものの、重度の有害事象においては有意差がないことが示唆された。著者らは、双極性うつ病に対する補助療法は、患者の併存疾患および状態を十分に考慮し、意思決定を共有したうえで進めていくことが重要であろうとまとめている。International Journal of Bipolar Disorders誌2022年10月21日号の報告。