医療一般|page:99

コロナ感染しても無症状な人の遺伝的特徴

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患すると、大多数に咳や喉の痛みなどの症状が現れるが、奇妙なことに、約5人に1人では何の症状も現れない。この現象には、ある遺伝的バリアントが関与しているようだ。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)神経学および疫学・生物統計学分野教授のJill Hollenbach氏らによる研究において、HLA(ヒト白血球抗原)-B遺伝子の特定のアレル(対立遺伝子)を保有している人では、新型コロナウイルスに感染しても症状の現れない可能性が、保有していない人の2倍以上であることが示された。この研究の詳細は、「Nature」に7月19日掲載された。

入れ歯は肺炎リスクを高める?

 入れ歯の表面に有害な細菌がコロニーを形成していることがあり、それが肺炎の発症につながる可能性のあることが、新たな研究で示された。英カーディフ大学のJoshua A. Twigg氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Medical Microbiology」に6月21日掲載された。  この研究では、入れ歯の表面が肺炎の潜在的な原因菌にとってコロニーを形成しやすい場所であり、入れ歯表面で増殖した細菌が、肺炎リスクの高い人に肺炎を引き起こす可能性があるという仮説が検証された。対象は、肺炎に罹患していない介護施設に入居している高齢者35人と、肺炎の確定診断を受けた高齢の入院患者26人で、いずれの対象者も入れ歯を装着していた。Twigg氏らは、対象者の舌の背部、入れ歯が接触する部分の口蓋粘膜、および入れ歯からサンプルを採取してDNAを抽出し、16S rRNAメタタクソノミックシーケンシング(環境中の微生物集団の組成や多様性を調べるための分子生物学的手法)と定量PCR分析により細菌の種類と量を特定した。その上で、肺炎を引き起こす可能性のある細菌の量について、両群間で有意差があるのかどうかを調べた。対象とされた細菌には、肺炎桿菌、肺炎球菌、大腸菌、セラチアなどが含まれていた。

国産初の新型コロナmRNAワクチンを追加免疫として承認、供給なし/第一三共

 第一三共は8月2日のプレスリリースにて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する起源株1価mRNAワクチン「ダイチロナ筋注」(DS-5670)について、「SARS-CoV-2による感染症の予防」を適応とした追加免疫における国内製造販売承認を取得したことを発表した。本剤については、2023年1月に国内製造販売承認申請を行い、COVID-19に対する国産初のmRNAワクチンとして今回承認に至った。本剤は、冷蔵(2~8度)での流通・保管が可能となるため、医療現場での利便性の向上が期待される。

認知機能維持に重要なのは?運動vs.睡眠

 身体活動と睡眠はともに認知機能と認知症リスクに関連する重要な因子であるが、それらがどのように相互に作用しているかは十分に検討されていない。そこで、英国・University College LondonのMikaela Bloomberg氏らが、身体活動と睡眠時間の組み合わせと10年間の認知機能の推移の関連について研究を行った結果、高頻度・高強度の運動を行っていても、睡眠時間が短い場合では認知機能低下が速かったことを明らかにした。The Lancet Healthy Longevity誌2023年7月号の報告。  研究グループは、2008年1月1日~2019年7月31日に2年ごとに追跡調査が実施された英国の老化に関する縦断的研究のデータ(English Longitudinal Study of Ageing)を分析した。対象は、ベースライン時に認知機能が正常な50歳以上の人で、追跡調査期間中に認知症の診断を報告した場合は除外された。身体活動量と夜間の睡眠時間は自己申告で聴取され、エピソード記憶評価や言語流暢性検査によって複合認知機能スコアが算出された。線形混合モデルを用いて、身体活動量(身体活動の頻度と強度から算出)、および睡眠時間(6時間未満、6~8時間、8時間超)と、認知機能低下率の関連を検討した。

アフターコロナの今、「MR不要論」を考える

 COVID‐19の拡大後、MR数は減少傾向にあり、製薬企業の営業拠点の見直し等も急速に進んだ。アフターコロナにおいて、製薬企業担当者は本当に必要なのだろうか? この疑問について、医師・製薬企業・メディカルスタッフ、それぞれの立場から率直に語り合う機会が設けられた。2023年7月22日(土)、第10回日本糖尿病協会年次学術集会のEXPERT社員シンポジウムで語られた内容を抜粋して紹介する。  医療用医薬品の情報提供には、厳格な法規制があることはよく知られる。具体的に、競合品との比較データや症例紹介が不可となる場合が存在する。反面、臨床現場からは、同効薬の使い分けや効果を発揮しやすい症例像への情報ニーズは高い。そのため、医薬情報担当者であるMRは、自分たちの提供する情報と医療者が求める情報に「乖離がある」と認識しているようだ。2023年6月実施のMR1,407名を対象としたアンケート調査の結果では、「求めたい情報提供に乖離はありますか?」の回答結果は「乖離がある」(17%)、「やや乖離がある」(67%)と乖離を感じるMRが大半であり、「乖離はない」と回答したMRは17%だった。また「情報提供の障壁となっているものは何ですか?(複数回答)」という質問では「面会できない」(74%)が最多で、次いで「販売情報提供ガイドライン」(54%)が挙げられた。

日本人NSCLCへのICI、PPI使用者は化学療法の併用が必要か/京都府立医大ほか

 現在、PD-L1高発現の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する初回治療の選択肢として、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)単剤療法、複合免疫療法が用いられている。しかし、その使い分けの方法は明らかになっていない。また、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、抗菌薬の使用歴があるNSCLC患者は、ICI単剤療法の効果が減弱する可能性が指摘されている。そこで、京都府立医科大学大学院の河内 勇人氏らは、ペムブロリズマブ単剤療法、複合免疫療法の効果と各薬剤の使用歴の関係について検討した。その結果、PPIの使用歴がある患者は、複合免疫療法の効果がペムブロリズマブ単剤療法と比較して良好であった。一方、PPIの使用歴がない場合は、治療効果に有意差は認められなかった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年7月11日号で報告された。  国内13施設において、初回治療としてペムブロリズマブ単剤療法(単剤療法群)またはペムブロリズマブと化学療法の併用療法(併用療法群)を受けたPD-L1高発現(TPS≧50%)のNSCLC患者425例を後ろ向きに追跡し、治療開始時の薬剤使用歴(PPI、抗菌薬、ステロイド)を含む患者背景と治療効果の関連を検討した。単剤療法群と併用療法群の比較は、傾向スコアマッチングにより背景因子を揃えて行った。

手術前はオゼンピックやウゴービの使用を控えるべし

 米国麻酔科学会(ASA)が6月29日、話題の肥満症治療薬であるオゼンピックやウゴービ(いずれも一般名はセマグルチド)の使用者で、全身麻酔を伴う手術を受ける予定のある人は、手術前日、または手術当日にこれらの薬剤の使用を控えるべきだとする指針を提示した。  糖尿病治療薬として知られるオゼンピックやウゴービを含むGLP-1受容体作動薬は、インスリンの分泌を促すとともに食欲抑制効果を有することから、肥満症治療薬としても注目を浴びている。GLP-1受容体作動薬には、胃の消化運動を抑制して摂取した食べ物をより長く胃の中にとどめておく作用がある。そのため、この薬剤を使用すると、食べる量が減り、それが減量につながる。

急性期統合失調症に対する長時間作用型注射剤抗精神病薬~メタ解析

 長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬は、統合失調症の再発予防効果が期待できるが、急性期患者においてもベネフィットをもたらす可能性がある。ドイツ・ミュンヘン工科大学のDongfang Wang氏らは、急性期統合失調症患者に対する第2世代抗精神病薬(SGA)のLAIに関するエビデンスのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、急性期統合失調症に対し、SGA-LAIは効果的な治療選択肢であることを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2023年6月23日号の報告。

摂食障害の薬物療法に関するWFSBPガイドライン2023

 摂食障害の薬物療法に関する世界生物学的精神医学会連合(WFSBP)のガイドライン2023では、診断および精神薬理学的進歩、エビデンスレベル、推奨度などの評価に関して、最新の推奨内容に更新されている。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのHubertus Himmerich氏らは、本ガイドラインの更新内容のレビューを行った。The World Journal of Biological Psychiatry誌オンライン版2023年4月24日号の報告。  摂食障害のWFSBPタスクフォースは、関連文献をレビューし、エビデンスレベルおよび推奨度のランク付けを行った。

地域枠出身の研修医の臨床能力は低いのか

 医師の偏在を解消するために医学部で地域枠の導入が進んでいる。2021年度には入学者全体の18.7%が地域枠学生となっている。その一方で、入学試験での成績は一般枠入学者に比べ、地域枠入学者で低い傾向にあることが知られ、入学後の学習能力や臨床能力の差異について懸念が示されてきた。  これら懸念事項について福井 翔氏 (杏林大学 総合医療学)、西崎 祐史氏 (順天堂大学 医学教育研究室)、徳田 安春氏 (群星沖縄臨床研修センター)らの研究チームは、日本全国の臨床研修医(postgraduate year[PGY]-1およびPGY-2)を対象に実施した基本的臨床能力評価試験(GM-ITE:General Medicine In-Training Examination)の結果と、研修教育環境に関するアンケート結果を用いて、地域枠卒業生のGM-ITEスコアの特徴を調査した。

乾癬・湿疹の重症度、なぜ患者と医師で認識が異なるか

 乾癬や湿疹を有する患者と医師の間で、重症度の認識の違いとその要因を調べた結果、認識の不一致は46.3%に認められた。医師は視覚的な客観的尺度を重視したのに対し、患者は疾患の身体的、機能的、感情的な影響を重視したことが要因として示された。また、これらが患者のレジリエンス(回復力)、自己効力感、否定的な社会的比較と関連していること、医師は重症疾患に遭遇する頻度が高いため、軽症例を過小評価してしまう可能性も示唆された。シンガポール・National University Healthcare SystemのValencia Long氏らが患者と医師1,053組を対象とした横断研究を実施し、以上の結果が示された。著者は、「本研究により明らかになった患者と医師の認識の不一致の要因が、認識の不一致を小さくするための認知行動的介入の潜在的なターゲットになる」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年7月12日号掲載の報告。

適量の飲酒、非飲酒より死亡率低い?~女性コホート

 女性の中年期のアルコール摂取量と全死亡率およびがん死亡率の関連について、オーストラリア・メルボルン大学のYi Yang氏らが持続的仮説的介入で検討した結果、全死亡率はまったくアルコールを摂取していなかった場合よりもある程度の量(エタノール30g/日以下)を摂取していたほうが低くなっていた可能性が示唆された。一方、がん死亡率では明らかではなかった。American Journal of Epidemiology誌オンライン版2023年7月24日号に掲載。  本研究は、1996~2016年に定期的に収集されたAustralian Longitudinal Study on Women's Health 1946~51年出生コホートのデータを用いた。ベースライン時に女性をさまざまなアルコール摂取量(エタノール0~30g/日超、または30g/日超の場合は20g/日以下に減量)に割り付け、摂取量を継続した場合の全死亡率およびがん死亡率を推定した。

睡眠リズムの乱れで若年者の血圧上昇に対する内臓脂肪の影響が増大する

 若年者では、血圧上昇に対する内臓脂肪組織(VAT)の影響は、睡眠リズムが乱れると増大するという研究結果が「Hypertension」に3月6日掲載された。  VATは心血管代謝系の健康状態に影響し、また両者は同時に睡眠リズムの影響を受けることが知られている。米ペンシルベニア州立大学医学部のNatasha Morales-Ghinaglia氏らが行った今回の後ろ向きコホート研究では、VAT(肥満)が心血管代謝系の健康状態(血圧)に影響を及ぼす際における調整変数(moderator)としての睡眠リズムの役割について検討した。  対象はPenn State Child Cohortに参加した若年者303人(平均年齢16.2±2.2歳、女性47.5%)。アクチグラフを用いて7晩にわたり、総睡眠時間および標準偏差、睡眠中央時刻(就寝時刻から起床時刻までの中央の時刻)および標準偏差を、通学日・非通学日、平日・週末別に算出した。睡眠中央時刻および標準偏差(睡眠の不規則性)が、VATと収縮期血圧(SBP)/拡張期血圧(DBP)との関連に対する調整変数となるか否かを、多変量線形回帰モデルにより人口統計学的因子、総睡眠時間および標準偏差を調整して解析した。VATは二重エネルギーX線吸収スキャンにより測定し、血圧は座位で測定した。

1回の内視鏡治療で2型糖尿病患者のインスリン治療が不要になる可能性

 1時間ほどの内視鏡治療で、2型糖尿病患者のインスリン治療が不要となる可能性を示唆する研究結果が、米国消化器病週間(DDW2023、5月6~9日、米国・シカゴ)で報告された。アムステルダム大学(オランダ)のJacques Bergman氏らの研究によるもの。同氏はDDW2023に合わせて開催されたメディア対象ブリーフィングにおいて、「1回の介入で少なくとも1年間は治療効果が維持された。この治療法は2型糖尿病の管理を大きく変えるかもしれない」と語った。  検討された新たな治療法は、電気パルスを用いて十二指腸の粘膜の表層を切除する内視鏡手術で、「Recellularization via electroporation therapy(ReCET)」と名付けられている。この治療法が奏効するメカニズムはまだ完全には理解されていない。ただし研究者らは、十二指腸のシグナル伝達の異常のためにインスリン抵抗性が生じている状態で、組織構造を維持したまま、シグナル伝達が劣化した細胞のアポトーシスと再生を誘導することが、インスリン感受性の回復につながると考えている。また、熱などを用いるアブレーションと異なり、組織へのダメージが少ないため、治療に伴う合併症のリスクが低いことも、この手法のメリットとして挙げられるという。

ウクライナの戦争負傷者で薬剤耐性菌が増加

 ウクライナで戦争により負傷して入院した患者の多くが、極度の薬剤耐性を獲得した細菌に感染していることが、ルンド大学(スウェーデン)臨床細菌学分野教授のKristian Riesbeck氏らによる研究で示された。研究グループは、このような状況が戦争により荒廃したウクライナの負傷者や病人に対する治療をいっそう困難なものにしているとの危惧を示している。この研究は、「The Lancet Infectious Diseases」7月号に掲載された。  Riesbeck氏は、「私はこれまでに多くの薬剤耐性菌と患者を目にしてきたため慣れているが、今回目撃したほど強烈な薬剤耐性菌に遭遇したことは、これまでなかった」と話している。

NAFLD・NASHが名称変更!?新しい名称は…

 「非アルコール性脂肪肝疾患 (NAFLD:nonalcoholic fatty liver disease、わが国ではナッフルディ、ナッフルドと呼ばれる) と非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH:nonalcoholic steatohepatitis 、ナッシュ) が名称変更される」と、先日開催された欧州肝臓学会国際肝臓学会議(EASL-ILC)2023で発表された。以前から欧米ではNAFLDやNASHという用語が患者への偏見になるという声が上がっていたようで、今回、米国・シカゴ大学のMary E. Rinella氏らは論文などの趣意に関する専門家や患者支援者が命名法や定義の変更について支持しているか否かを調査した。その結果、改名に際し“metabolic”(代謝性)という用語を含めることが求められ、新たな名称としてNAFLDはMASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)へ、NASHはMASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)への変更が望ましいことが明らかになった。Journal of Hepatology誌2023年6月24日号掲載の報告。

包括的がんゲノムプロファイリングリキッドバイオプシーGuardant360 CDx がん遺伝子パネル販売開始

 ガーダントヘルスジャパンは、固形がん患者を対象とした包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)用リキッドバイオプシー Guardant360 CDx がん遺伝子パネル(以下、Guardant 360 CDx)について、2023年7月24日より保険償還が開始され、同日より販売すると発表した。併せて、エスアールエルによる検査の受託が開始される。  Guardant 360 CDxは、血中循環腫瘍DNA (ctDNA) を次世代シークエンサーによって解析するがん遺伝子パネル検査として、2022年3月10日に厚生労働省より承認されている。固形がん患者の血液検体から、がんに関連の74遺伝子を網羅的に調べることが可能。

乳がん診断から手術までの期間、生存率への影響は?

 乳がん診断から手術までの期間が2週間を超えた患者では生存率が低かったことが、中国・上海交通大学医学部のSiji Zhu氏らの研究で示された。著者らは「今回の結果は、生存率を改善するためにできるだけ診断後早期に治療を開始する努力が必要であることを示唆している」と述べている。Scientific Reports誌2023年7月26日号に掲載。

双極性障害の5年間の再発率とそれに関連する要因~レトロスペクティブコホート研究

 双極性障害患者の再発率に関するエビデンスは、とくに英国において不足している。英国・バーミンガム大学のDanielle Hett氏らは、英国の健康保健サービスより定期的なケアを受けている双極性障害患者を対象に、5年間の再発率および関連性の評価を行った。その結果、英国で2次的メンタルヘルスサービスを受けている双極性障害患者の約4人に1人は、5年間で再発を経験していた。トラウマ、自殺傾向、精神症状の残存、併存疾患などは、双極性障害患者の再発と関連していることから、再発予防の観点からもこれらの因子を考慮し、対処することが求められると報告した。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年6月30日号の報告。

コロナの急性期症状、男女差は?

 男性のほうが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状が重症化しやすく死亡率が高いという、性別による差異が報告されている。その理由として、男性のほうが喫煙率や飲酒率、予後悪化に関連する併存疾患を有している割合が高いなどの健康格差が示唆されている1)。今回、COVID-19の急性期症状の性差を調査したところ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性と判定された男性では発熱や悪寒といった特定の症状の発現率が女性よりも高いことが、米国・テキサス大学ヒューストン健康科学センター/アーカンソー医科大学のJenil R. Patel氏らにより明らかになった。Preventive Medicine Reports誌2023年10月号掲載の報告。