医療一般|page:99

血液検査が双極性障害の診断に有用か

 双極性障害に関連するバイオマーカーを検出できる簡単な血液検査の開発に関する報告が、「JAMA Psychiatry」に10月25日発表された。論文の筆頭著者である、英ケンブリッジ大学のJakub Tomasik氏は、この検査法により双極性障害の診断が容易になる可能性があると話している。  Tomasik氏は、「双極性障害は、気分が落ち込むうつ状態(うつ病エピソード)と気分が高揚する躁状態(躁病エピソード)を繰り返す精神疾患だ。ただ、双極性障害患者はたいていの場合、うつ病エピソードのときにしか医師の診察を受けない。そのため、間違って大うつ病性障害(以下、うつ病)と診断されている患者は少なくない」と説明する。一方、論文の上席著者であり同大学ニューロテクノロジー分野教授のSabine Bahn氏は、「双極性障害とうつ病は別の疾患として扱う必要がある。双極性障害患者に、気分安定薬を加えずに抗うつ薬のみを処方すると、躁病エピソードを誘発してしまう可能性がある」と同大学のニュースリリースで語っている。

日常生活の中の短時間の身体活動でも寿命が延びるか

 日常生活における家事などの身体活動であっても、寿命延伸につながる可能性を示唆するデータが報告された。シドニー大学(オーストラリア)のMatthew Ahmadi氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Public Health」10月号に掲載された。数分程度の身体活動でも有意な影響が認められるという。ただし、身体活動の持続時間がより長くより高強度である場合に、寿命に対してより大きな影響が認められるとのことだ。  この研究では、英国で行われている大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータが解析に用いられた。余暇時間に積極的な運動を行っていない成人2万5,241人(平均年齢61.8±7.6歳、女性56.2%)を7.9±0.9年間追跡。身体活動量はウェアラブルデバイスにより把握した。追跡期間中に主要心血管イベント(MACE)が824件発生し、全死亡(あらゆる原因による死亡)は1,111人だった。なお、これまでの研究で、健康アウトカムとの関連が検討されていた最も短い身体活動持続時間は10分であることから、今回の研究では持続時間10分未満の身体活動の影響が検討された。

侵襲的⼈⼯呼吸を要したCOVID-19患者は退院半年後も健康状態が不良

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が重症化してICUで長期にわたる侵襲的人口呼吸(IMV)を要した患者は、退院後6カ月経過しても、身体的な回復が十分でなく、不安やふさぎ込みといった精神症状も高率に認められることが明らかになった。名古屋大学大学院医学系研究科救急・集中治療医学分野の春日井大介氏らの研究結果であり、詳細は「Scientific Reports」に9月4日掲載された。  IMVの離脱後には身体的・精神的な後遺症が発生することがある。COVID-19急性期にIMVが施行された患者にもそのようなリスクのあることが、既に複数の研究によって明らかにされている。ただし、それらの研究の多くはICU退室または退院直後に評価した結果であり、かつ評価項目が限られており、COVID-19に対するIMV施行後の長期にわたる身体的・精神的健康への影響は不明。春日井氏らは、同大学医学部附属病院ICUに収容されたCOVID-19患者を対象とする前向き研究により、この点を検討した。

統合失調症患者における抗精神病薬誘発性糖尿病性ケトアシドーシスのリスク評価~医薬品副作用データベース解析

 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は、生命を脅かす重篤な状態であり、抗精神病薬により引き起こされる可能性がある。アジア人糖尿病患者は、白人と比較し、インスリン抵抗性が低いといわれている。これまでに報告されている抗精神病薬に関連したDKAの研究は、すべて欧米人を対象としているため、これらのデータが日本人でも同様なのかは、不明である。獨協医科大学の菅原 典夫氏らは、自発報告システムデータベースである日本の医薬品副作用データベースを用いて、抗精神病薬とDKAとの関連を分析した。その結果から、統合失調症患者のDKA発現にはオランザピン治療が関連していることが明らかとなった。とくに、男性患者において、DKAリスクが高いことも確認された。Journal of Psychosomatic Research誌オンライン版2023年10月19日号の報告。

ステロイド処方医は知っておきたい、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症のガイドライン改訂

 『グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2023』が8月に発刊。本書は、ステロイド薬処方医が服用患者の骨折前/骨密度低下前の管理を担う際に役立ててもらう目的で作成された。また、ステロイド性骨粗鬆症の表現にはエストロゲン由来の病態も含まれ、海外ではステロイド性骨粗鬆症と表現しなくなったこともあり、“合成グルココルチコイド(GC)服用による骨粗鬆症”を明確にするため、本改訂からグルココルチコイド誘発性骨粗鬆症(GIOP)と表記が変更されたのも重要なポイントだ。9年の時を経て治療薬に関する膨大なエビデンスが蓄積された今回、ガイドライン作成委員会の委員長を務めた田中 良哉氏(産業医科大学第一内科学講座 教授)に、GIOPにおける治療薬の処方タイミングや薬剤選択の方法などについて話を聞いた。

重症コロナ患者に対するスタチンとビタミンCの治療効果、対照的な結果に

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者を対象に、広く使用されている安価なスタチン系薬のシンバスタチンとビタミンCのそれぞれの有効性を調べた2件の臨床試験で、大きく異なる結果が示された。これらの試験は感染症の患者を対象とした進行中の国際共同研究「REMAP-CAP(Randomised, Embedded, Multi-factorial, Adaptive Platform Trial for Community-Acquired Pneumonia)」の一環で実施され、スタチン系薬に関する試験の詳細は「The New England Journal of Medicine(NEJM)」、ビタミンCに関する試験の詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」にいずれも10月25日掲載されるとともに、欧州集中治療医学会(ESICM 2023、10月21~25日、イタリア・ミラノ)でも発表された。

ソーシャルメディアの閲覧が子どものスポーツ離れの一因に

 TikTokやInstagramなどのソーシャルメディアに投稿された写真には、体型が大幅に加工された非現実的なものが少なくない。70人の子どもを対象にした予備的な研究で、そのような理想化されたアスリートの写真を目にした子どもは、自分の体型がそのスポーツには適していないと思い込んでやめてしまう可能性のあることが示された。米Nemours小児病院のスポーツドクターであるCassidy M. Foley Davelaar氏らによるこの研究結果は、米国小児科学会(AAP)のNational Conference & Exhibition(AAP Experience 2023、10月20〜24日、米ワシントン)で発表された。

地中海食と運動の組み合わせは脂肪の燃焼と筋肉量の増加に有効

 色とりどりの野菜や果物、健康的な脂質、脂肪分の少ないタンパク質が豊富な地中海食と、定期的な運動およびカロリー制限の組み合わせは、高齢者の腹部の脂肪(内臓脂肪)の減少と筋肉量の増加に役立つことが、スペインで実施された研究で明らかにされた。バレアレス諸島保健研究所(スペイン)のDora Romaguera氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月18日掲載された。  内臓脂肪は炎症の原因となることが知られており、心疾患や脳卒中、糖尿病、特定のがんと関連することも示されている。一方、筋肉量は加齢とともに減少することが知られており、筋肉量が減少すると、筋力低下や運動能力の低下、転倒の可能性が高くなる。

日本人統合失調症患者の院内死亡率と心血管治療との関連性

 統合失調症は、心血管疾患(CVD)リスクと関連しており、統合失調症患者では、CVDに対する次善治療が必要となるケースも少なくない。しかし、心不全(HF)により入院した統合失調症患者の院内予後およびケアの質に関する情報は限られている。京都府立医科大学の西 真宏氏らは、統合失調症患者の院内死亡率および心不全で入院した患者の心血管治療との関連を調査した。その結果から、統合失調症は心不全により入院した非高齢患者において院内死亡のリスク因子であり、統合失調症患者に対する心血管治療薬の処方率が低いことが明らかとなった。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌2023年10月18日号の報告。

EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法は日本人でもPFS改善(FLAURA2)/日本肺癌学会

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬のオシメルチニブと化学療法の併用療法は、オシメルチニブ単剤と比べて無増悪生存期間(PFS)を改善することが、国際共同第III相無作為化比較試験FLAURA2試験で報告されている(治験担当医師評価に基づくPFS中央値は併用群25.5ヵ月、単独群16.7ヵ月、ハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.49~0.79)。本試験の日本人集団の結果について、小林 国彦氏(埼玉医科大学国際医療センター)が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した。

ファイザーのコロナワクチン、インフルワクチンと同時接種の有効性は?

 ファイザーの新型コロナワクチン(BA.4/5対応2価)と季節性インフルエンザワクチンを同時に接種した場合、別々に接種した場合と比べて有効性に差があるかを、米国の18歳以上の約344万人を対象に、米国・ファイザー社のLeah J. McGrath氏らの研究グループが調査した。その結果、コロナワクチンとインフルワクチンの同時接種は、それぞれ単独で接種した場合と比較して同等の有効性があることが示された。JAMA Network Open誌2023年11月8日号に掲載。  本研究では、2022年8月31日~2023年1月30日に、ファイザーの新型コロナワクチン(BA.4/5対応2価)のみ、インフルワクチンのみ、または両方を同日接種した、米国の民間医療保険に加入している18歳以上の344万2,996人を対象に、後ろ向き比較試験を実施した。1価ワクチンまたは他社の新型コロナワクチン接種者は除外した。65歳以上は、強化型インフルワクチン接種者のみを対象とした。主な転帰および評価基準は、COVID-19関連およびインフルエンザ関連の入院、救急(ED)や緊急診療(UC)の受診、および外来受診とした。ワクチン接種群間の残存バイアスを検出するため、尿路感染と不慮の傷害の2つのネガティブコントロールアウトカム(NCO)を評価した。

マクロ地中海食、乳がんの再発予防効果なし?

 いくつかの前向き研究で、食事の質の向上が乳がん患者の生存率改善と関連することが示唆されているが、乳がん特異的死亡率への影響については定まっていない。今回、イタリア・Fondazione Istituto Nazionale TumoriのFranco Berrino氏らがマクロ地中海食(地中海食に味噌や豆腐などの日本由来のマクロビオティックを取り入れた食事)による乳がん再発抑制効果を無作為化比較試験(DIANA-5試験)で検討したところ、再発抑制効果は示されなかった。しかしながら、推奨される食事の順守度による解析では、推奨された食事への変化率が上位3分位の女性では有意に予後が良好だったという。Clinical Cancer Research誌オンライン版2023年10月17日号に掲載。

20分強の身体活動でも座位時間の悪影響を相殺できる可能性

 座位時間が長い人では死亡リスクが高まるが、1日にわずか20分強の中強度から高強度の身体活動(moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)を行うことで、そのリスクを相殺できる可能性が、新たな研究で示唆された。ノルウェー北極大学(UiT)のEdvard Sagelv氏らによるこの研究の詳細は、「British Journal of Sports Medicine」に10月24日掲載された。Sagelv氏は、「何らかの理由で1日の大半を座位で過ごす人でも、少量の身体活動を行うことで死亡リスクは大幅に低減し得る」と述べている。

VR技術がため込み症の治療に役立つ可能性示唆

 ため込み症の人が散らかった部屋を片付けるのにバーチャルリアリティー(VR)を利用したプログラムが役立つ可能性のあることを、米スタンフォード大学医学部精神医学・行動科学教授のCarolyn Rodriguez氏らが報告した。この研究結果は、「Journal of Psychiatric Research」10月号に掲載された。  米国では罹患率が2.5%と推定されているため込み症が精神疾患の一つとして定義されたのは、わずか10年前のことに過ぎない。ため込み症患者は、本人の身の安全性や人間関係、仕事の能力を損なうレベルにまで物をため込む環境を作り出す可能性があるが、スティグマや羞恥心から助けを求めることを控えることもある。ため込み症には遺伝的要因の関与が示唆されているが、それだけが原因とは考えられていない。また、その重症度は10年ごとに高まる可能性も指摘されている。ため込み症の主な治療法の一つは、対面での片付けの訓練を含む認知行動療法だが、この方法では臨床医に危険が及ぶ場合がある。

妊婦禁忌のコロナ治療薬は慎重に処方・調剤を、5団体が合同声明文を発表

 妊婦にとって禁忌とされる新型コロナウイルス感染症の治療薬が処方・調剤され、その後に患者が妊娠していることが判明した事例が多数報告されていることから、11月14日付で、日本感染症学会、日本化学療法学会、日本産科婦人科学会、日本医師会、日本薬剤師会の5団体は、診療に携わる医療関係者および治療を受ける女性患者のそれぞれに向けて合同声明文を発表した。  現在承認されている経口コロナ治療薬は、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)、エンシトレルビル(商品名:ゾコーバ)、ニルマトレビル・リトナビル(商品名:パキロビッドパック)である。そのうち、モルヌピラビルとエンシトレルビルは、動物実験で催奇形性や胚・胎児致死などが認められているため、妊婦または妊娠している可能性のある女性への投与が禁忌となっている。

EGFR陽性NSCLC、オシメルチニブ+化学療法で脳転移巣の病勢進行リスクを42%低下(FLAURA2)/AZ

 アストラゼネカは2023年11月1日付のプレスリリースにて、第III相FLAURA2試験の探索的解析において、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)と化学療法の併用療法はオシメルチニブ単剤療法と比較して、ベースライン時に脳転移を有していたEGFR遺伝子変異陽性の転移のある進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者(本臨床試験に参加した患者の40%)における中枢神経系(CNS)の無増悪生存期間(PFS)を42%改善したと発表した。本結果は、10月21日にスペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告された。

赤ワインやコーヒーがコロナ重症化リスクを増大

 いくつかの食習慣と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染感受性や入院・重症化リスクとの間には因果関係があり、とくに赤ワイン摂取は入院と重症化のいずれのリスクも有意に増大させることが、中国・Yantai Yuhuangding HospitalのXiaoping Li氏らのメンデルランダム化研究により明らかになった。British Journal of Nutrition誌オンライン版2023年11月6日号掲載の報告。  食習慣とCOVID-19リスクとの関連は数多くの観察研究によって報告されている。しかし、交絡変数や研究の限界のためその関連はまだ不明確であり、より厳密なデザインの研究が求められていた。そこで研究グループは、メンデルランダム化研究を実施し、食習慣とCOVID-19の感受性、入院・重症度の関連を推定した。解析は逆分散加重法を主要な方法として用い、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。

早期アルツハイマー病患者のQOLに対するレカネマブの有用性~第III相試験

 レカネマブは、アミロイドβプロトフィブリルに高い親和性を示すヒト化IgG1モノクローナル抗体である。第III相試験において、レカネマブは早期アルツハイマー病のアミロイドマーカーを減少させ、18ヵ月時点での認知および機能の臨床的エンドポイントの低下を軽減することが示唆されている。カナダ・Toronto Memory ProgramのSharon Cohen氏らは、Clarity AD試験での健康関連QOL(HRQoL)の結果について、評価を行った。その結果、レカネマブは、HRQoLの相対的な維持および介護者の負担軽減と関連しており、さまざまなQOL尺度においてベネフィットが確認された。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌2023年号の報告。

不適切処方の発生率は診療看護師とプライマリケア医で同等

 診断や処方を行うことができる米国の診療看護師(ナース・プラクティショナー)が高齢患者に不適切な処方を行う確率はプライマリケア医と同等であることが、新たな研究で示唆された。米スタンフォード大学健康政策・健康法分野のDavid Studdert氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に10月24日掲載された。  診療看護師は、正看護師が一定の経験を積んだ後に大学院で所定の単位を取得して認定試験に合格した者で、医師と同様に病気の診断や治療計画の立案などを行うことができる。以前よりプライマリケア医不足に直面している米国では、診療看護師がそのギャップを埋めるのに重要な役割を担っている。ただ、診療看護師に関しては、処方が一つの争点となっている。現在、多くの州が診療看護師に完全な処方権を認めている一方で、患者の安全性を理由に診療看護師が処方できる薬の種類を制限したり、処方や診断などに医師の監督を求める州も存在する。

太ったシェフのイラストを食事に添えると、認知症の人の食事量が増える

 認知症の高齢者の食事摂取量を増やすユニークな方法が報告された。太ったシェフのイラストをトレイに添えておくと、完食をする人が増えるという。日本大学危機管理学部の木村敦氏、医療法人社団幹人会の玉木一弘氏らの研究結果であり、詳細は「Clinical Interventions in Aging」に9月1日掲載された。  認知症では食事摂取量が少なくなりがちで、そのためにフレイルやサルコペニアのリスクが高まり、転倒・骨折・寝たきりといった転帰の悪化が起こりやすい。認知症の人の食欲を高めて摂取量を増やすため、これまでに多くの試みが行われてきているが、有効性の高い方法は見つかっていない。