医療一般|page:115

北里大、コロナへのイベルメクチン第III相の論文公表

 北里大学が主導して実施した、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を対象としたイベルメクチンの第III相臨床試験「CORVETTE-01」の結果については、2022年9月に同大学によって、主要評価項目においてプラセボとの統計学的有意差がなく、有効性が認められなかったことが発表されていた。本試験の結果が、Frontiers in Medicine誌2023年5月22日号に掲載された。

TTF-1は肺腺がんにおけるICI+化学療法の効果予測因子となるか/日本呼吸器学会

 肺腺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法の効果予測因子として、TTF‐1(Thyroid transcription factor-1)の可能性が研究されている。  TTF-1は甲状腺・肺・脳で認められる遺伝子調節蛋白である。肺腺がんにおいても、TTF−1との研究が報告されている。  肺腺がんではTTF-1陽性が多く60〜80%を占め、陰性は20〜40%である。TTF-1陽性例に比べ、陰性例は予後不良であるとされる。また、TTF-1の発現の有無は、化学療法薬ペメトレキセドの効果に影響を及ぼすとの報告がある。しかし、肺腺がんにおける、ICIとペメトレキセドを含む化学療法との併用療法とTTF-1発現の関係については十分に研究されていない。第63回日本呼吸器学会学術講演会でも、肺腺がんとTTF-1の関係を検討した研究がいくつか報告された。

乳房切除術中のリンパ節生検は過剰治療につながる可能性も

 早期の乳がんと診断され乳房切除術を受ける女性に対し、術中にリンパ節(腋窩リンパ節)への転移の有無を調べる、腋窩センチネルリンパ節生検(以下、センチネルリンパ節生検)が行われた場合、術後にその後の治療方針が検討された場合と比べて、過剰治療につながりやすくなる可能性のあることが、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院および米ダナ・ファーバーがん研究所の乳房腫瘍外科医Olga Kantor氏らが実施した研究で示された。この研究結果は米国乳腺外科学会(ASBrS 2023、4月26~30日、米ボストン)で発表された。

運動は本当に認知機能に良い?

 運動が認知機能に対して良い影響を与えるとするこれまでの研究報告には、解釈上の注意点があり、それらの点を考慮すると、運動による認知機能保護作用はほとんど見られないとする論文が、「Nature Human Behaviour」に3月27日掲載された。グラナダ大学(スペイン)のLuis Ciria氏らの研究によるもの。  Ciria氏によると、運動の身体的健康に対するメリットのエビデンスは、過去1世紀にもわたって着実に蓄積されてきており、認知機能上のメリットとなる可能性も示されているという。ただし、後者については、研究参加者が少ない、潜在的なバイアスリスクが高いなど、研究の質が低いものが少なくないとのことだ。

大動脈弁狭窄症の死亡率の動向~日本含む高所得国

 カナダ・トロント大学の日尾野 誠氏らが、日本を含む高所得国8ヵ国における2000~20年の大動脈弁狭窄症の死亡率の動向を調査した結果、粗死亡率は8ヵ国とも増加したが、年齢標準化死亡率は3ヵ国(ドイツ、オーストラリア、米国)で減少傾向に転じ、80歳以上では8ヵ国で減少傾向に転じたことがわかった。Heart誌オンライン版2023年5月14日号に掲載。  本研究では、英国、ドイツ、フランス、イタリア、日本、オーストラリア、米国、カナダにおける2000~20年の大動脈弁狭窄症による死亡率の動向を調べるために、WHOのデータベースを用いて10万人当たり粗死亡率および年齢標準化死亡率、3つのグループ(64歳未満、65~79歳、80歳以上)の年齢層別死亡率を算出した。年間変化率は、結合点回帰を用いて分析した。

成人肺炎診療ガイドラインを先取りした肺炎の予防戦略/日本呼吸器学会

 肺炎は日本人の死因の5位に位置する主要な疾患である。高齢になるにつれて発生率、死亡率が高くなり、65歳以上の高齢者が死亡者全体の95%以上を占めている。したがって、高齢者肺炎の予防が重要といえる。本邦において、医療関連肺炎(HCAP)では肺炎球菌に加えて口腔内連鎖球菌、嫌気性菌が多かったという報告もあり、高齢者肺炎の予防戦略は「肺炎球菌ワクチン」と「口腔ケア」が2本柱といえる。改訂中の肺炎診療ガイドラインでは、これに対応して「肺炎の予防に口腔ケアを推奨するか」というCQ(クリニカルクエスチョン)が設定され、システマティックレビュー(SR)が実施された。

統合失調症における抗精神病薬の多剤併用と単剤療法の安全性比較

 東フィンランド大学のHeidi Taipale氏らは、抗精神病薬の単剤療法と比較した多剤併用療法の安全性を検討した。その結果、抗精神病薬の単剤療法は、多剤併用療法と比較し、重度の身体的併存症による入院リスクの低下と関連していないことが示唆された。著者らは、安全性の問題に関する既存のエビデンスがない以上は、ガイドラインで抗精神病薬の多剤併用療法の代わりに単剤療法を推奨するべきではないとしている。The American Journal of Psychiatry誌2023年5月1日号の報告。  フィンランドの全国入院患者レジストリより統合失調症患者6万1,889例を特定し、1996~2017年にわたりフォローアップ調査を行った(フォローアップ期間中央値:14.8年[IQR=7.4~22.0])。非精神疾患および心血管系による入院など、重度の身体的併存症リスク(調整ハザード比:aHR)を、抗精神病薬の単剤療法と多剤併用療法における7つの用量カテゴリで比較した。7つの用量カテゴリは、1日当たりの服用量(DDD:defined daily doses)0.4未満、0.4~0.6未満、0.6~0.9未満、0.9~1.1未満、1.1~1.4未満、1.4~1.6未満、1.6以上であった。選択バイアスを除外するため、個別分析(Within-individual analysis)を用いた。

がん死亡率、ファストフード店の多さと関連

 住居地を選ぶ際にスーパーや飲食店へのアクセスの良さを考慮する人は少なくない。今回、米国・オーガスタ大学のMalcolm Seth Bevel氏らは米国における飲食店へのアクセス条件が肥満関連のがん死亡率と関係するのかどうかを調査した。近年、野菜などの生鮮食料品が入手困難な地域はFood Desert(食の砂漠)と呼ばれ、一方でファストフード店が多く集中し生鮮食品を取り扱う店が少ない地域はFood Swamp(食品沼)と呼ばれている。  今回の横断研究では、2012年、2014~15年、2017年、2020年の米国農務省(USDA)のFood Environment Atlasと、2010~20年の米国疾病予防管理センター(CDC)の18歳以上の成人の死亡率データを使用し、Food DesertとFood Swampの両スコアと肥満関連のがん死亡率との関連について調査した。

高齢化の進む米国、在宅介護利用者の増加に介護士の数が追いつかず

 高齢化が進む米国では過去10年間、老人ホームよりも自宅で介護士の手を借りながら日常生活動作をこなすこと(Home and Community-Based Services;HCBS、自宅およびコミュニティーに根差したサービス)を好む人が増加している。しかし、そのようなHCBSのニーズが大きな高まりを見せる一方で、それに対応できる介護士の増加の幅はわずかであることが、新たな調査から明らかになった。米ペンシルベニア大学Leonard Davis Institute of Health EconomicsのAmanda Kreider氏とRachel Werner氏らによるこの調査結果は、「Health Affairs」に4月19日掲載された。

初夏はとくに注意!熱帯夜で死亡リスク増~47都道府県のデータ解析

 高過ぎる気温は死亡リスク上昇につながることが示唆されているが、ほとんどの研究は最高気温や平均気温を使用している。しかし、気温上昇は最高気温より最低気温のほうが速い。今回、筑波大学のSatbyul Estella Kim氏らは、最低気温が高い熱帯夜と死亡リスクとの関連を検討した。その結果、熱帯夜により死亡リスクが有意に増加し、さらに晩夏より初夏の熱帯夜で死亡リスクが高いことがわかった。Environmental Health Perspective誌2023年5月号に掲載。

脂漏性皮膚炎に1日1回のroflumilast外用薬が有望

 脂漏性皮膚炎による紅斑、鱗屑、そう痒の治療において、1日1回塗布のroflumilastフォーム0.3%(泡[フォーム]を形成する製剤)は、良好な有効性、安全性、および局所忍容性を示した。米国・オハイオ大学のMatthew J. Zirwas氏らが第IIa相二重盲検溶媒対照並行群無作為化試験の結果を報告した。脂漏性皮膚炎に対する局所治療の選択肢は、有効性や安全性の観点から限られている。脂漏性皮膚炎はあらゆる年代にみられ、全世界の有病率は5%以上とされる。roflumilastは選択的ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害薬であり、抗炎症作用を有する。経口薬は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬として承認されており(本邦未承認)、外用薬は2022年7月に慢性尋常性乾癬への適応で米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。著者は、「今回の結果は、本剤の非ステロイド系外用薬としてのさらなる研究を支持するものである」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年5月3日号掲載の報告。

他の抗CGRP抗体への切り替えが有効な片頭痛患者の特徴は

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を介したモノクローナル抗体(mAb)は、片頭痛治療に有効な治療薬として承認されている。特定のmAbで治療反応が得られなかった患者に対し、別のmAbへ切り替えることで、ある程度の有効性が得られることが示唆されている。イタリア・フィレンツェ大学のLuigi Francesco Iannone氏らは、抗CGRP/リガンドmAbで治療反応が得られなかった患者における抗CGRP/受容体mAbへの切り替えによる治療効果、およびその逆における効果を評価した。その結果、特定の抗CGRP mAbで効果が不十分であった場合、他の抗CGRP mAbへの切り替えは臨床上の重要なオプションである可能性が示唆された。Cephalalgia誌2023年4月号の報告。

軽度の心筋梗塞経験者にβ遮断薬の長期投与は必要ない?

 心筋梗塞を経験した人は通常、その後、何年にもわたってβ遮断薬を服用する。しかし、生じた心筋梗塞が軽度だった場合には、その必要はない可能性のあることが新たな研究で明らかになった。心臓のポンプ機能が正常な心筋梗塞の患者に1年以上β遮断薬を投与しても、投与しなかった患者と比較して心血管アウトカムが改善するわけではないことが示されたのだ。ウプサラ大学(スウェーデン)医学部の循環器専門医であるGorav Batra氏らによるこの研究結果は、「Heart」に5月2日掲載された。

認知症の人に配偶者の死を伝えるべきか?

 認知症の人の配偶者が亡くなった場合に、その事実を伝えるべきだろうか。また、伝えた場合や伝えなかった場合に、どのような問題が発生し得るのだろうか。このような疑問について、国内のケアマネージャーを対象に行った調査の結果が、「European Journal of Investigation in Health, Psychology and Education」に2月8日掲載された。東京大学医学部医学倫理学分野・秩父市立病院の加藤寿氏らの研究によるもの。  認知症の人に対しても自律的な人間として接し、患者本人の知る権利に配慮する必要がある。

砂糖代替品に体重減少効果はなく、むしろ疾病リスク高める/WHOガイドライン

 世界保健機関(WHO)は、2023年5月15日付で、非糖質系甘味料(non-sugar sweeteners:NSS)に関するガイドラインを公開し、体重コントロールや非伝染性疾患(NCD)のリスク低減を目的としてNSSを摂取しないよう勧告する、と発表した。  この勧告は、新たな研究のシステマティックレビューの結果に基づいたもので、NSSの使用は、成人および小児の体脂肪を減らすうえで長期的な利益をもたらさないことを示唆している。さらにシステマティックレビューの結果として、成人の2型糖尿病、心血管疾患、死亡率のリスク増加など、NSSの長期使用による望ましくない影響の可能性が示唆されている。

進行乳がんへのHER3-DXd、効果予測因子は?(ICARUS-BREAST01)/ESMO BREAST 2023

 HR+/HER2-の進行乳がん患者に対し、HER3を標的としたpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)を投与した第II相ICARUS-BREAST01試験において、ベースライン時のHER3+の血中循環腫瘍細胞(CTC)数が多い患者、または1サイクル後にHER3+のCTC数が大きく減少した患者では、治療反応が早期に得られやすい傾向にあったことを、フランス・Gustave RoussyのBarbara Pistilli氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。  これまで、HER3+の再発/転移乳がん患者(HR+/HER2-、HER2+、トリプルネガティブ)に対する第I/II相U31402-A-J101試験において、HER3-DXdの有効性と安全性が示されている。この有用性はすべてのサブタイプで同様であり、HER3-DXdはHER3の発現量にあまり依存しない可能性が示唆されており、HER3-DXdに対する反応性/抵抗性のバイオマーカーは不明である。

認知症のリスク軽減とスクリーニングに対する意識調査

 認知症に対する薬理学的および非薬理学的介入は進歩しており、将来の認知症予防において、対象を絞ったスクリーニングやライフスタイルの改善に組み込まれていくことが期待される。認知症予防を推進していくうえで、コミュニティの関与を妨げる潜在的な問題を解決することは、認知症予防へのアクセスや実現の可能性を最大化するために重要である。オーストラリア・認知症研究連携センター(DCRC)のNikki-Anne Wilson氏らは、認知症のリスク軽減とスクリーニングに対する現在の考えおよび問題点を調査した。その結果、認知症のリスク軽減行動やスクリーニングに対する意欲が社会人口統計学的要因と有意に関連していることが明らかとなった。Alzheimer's Research & Therapy誌2023年4月10日号の報告。

高サポートのスポーツブラ着用でランニングパフォーマンスが向上

 良質なスポーツブラの長所は、そのサポート力だけではないようだ。サポート力の高いスポーツブラを着用している女性ではランニングパフォーマンスも向上する可能性が、新たな研究で示唆された。米メンフィス大学ブレストバイオメカニクス研究センターのDouglas Powell氏らによる研究で、「Frontiers in Sports and Active Living」に4月21日掲載された。  Powell氏は、「この研究は、胸部のサポートと全身のバイオメカニクスに関する一連の研究調査の一つだ。われわれは、運動中の女性に生じる乳房の痛みを軽減するための方法を見つけたかった」と話している。

白髪が増えるのは毛包の幹細胞に原因がある?

 加齢とともに白髪が増えるのは、髪の色を作る幹細胞が毛包の中で「動けなく」なり、機能しなくなるためであることが、新たな動物実験から明らかになった。米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部皮膚科・細胞生物学科の伊藤真由美氏らによる研究で、「Nature」に4月19日掲載された。  毛髪の色は、毛包のバルジ領域に存在するメラニン細胞幹細胞(McSC)によってコントロールされている。毛髪が成長期に入ると、McSCは活性化されて下方へ移動し、毛髪を黒や金などにするメラニン色素を生成するメラノサイト(色素細胞)へと分化し、その色素が取り込まれて毛髪に色が付く。毛髪が白くなるのは、McSCをメラノサイトに分化させるシステムが機能しなくなるためである。今回、伊藤氏らは、このMcSCシステムが機能不全に陥るメカニズムを解明するために、マウスを用いた実験を行った。

尿酸値の低さとCOVID-19重症化リスク上昇の関連には炎症が関与

 尿酸値が低い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者は重症化リスクが高く、そのメカニズムとして、尿酸値の低さのために炎症反応が亢進していることの関与が想定されるとする研究結果が報告された。大阪公立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学の藏城雅文氏らの研究によるもので、詳細は「Biomedicines」に3月10日掲載された。  尿酸値は高すぎると痛風などのリスクとなるが、一方で尿酸には強力な抗酸化作用があるため、低すぎることでも腎機能低下などのリスクが上昇することが分かっている。またCOVID-19パンデミック以降は、尿酸値の低さとCOVID-19重症化リスクの高さとの関連を示唆する研究結果も報告されている。ただし、そのメカニズムについてはまだ不明点が多い。藏城氏らは、COVID-19重症化リスク因子である、炎症、肺胞損傷、凝固能亢進という3点と、尿酸値の低さとの関連に焦点を当て、患者データを用いた後方視的観察研究を行った。