医療一般|page:77

EGFR変異陽性NSCLCの1次治療、治験不適格患者へのオシメルチニブの効果は?

 オシメルチニブはFLAURA試験(未治療のEGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん[NSCLC]患者を対象に、オシメルチニブと他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬を比較した試験)の結果1)に基づき、EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移NSCLC患者の1次治療に広く用いられている。実臨床においては、臨床試験への登録が不適格となる患者にも用いられるが、その集団における治療成績は明らかになっていない。そこで、カナダ・BC Cancer AgencyのJ. Connor Wells氏らがリアルワールドデータを用いて解析した結果、半数超の患者がFLAURA試験への登録が不適格であり、不適格の患者は適格の患者と比較して大幅に全生存期間(OS)が短かったことが示された。本研究結果は、Lung Cancer誌オンライン版2024年3月4日号で報告された。

便潜血検査でのがん検診、有効性を評価~38万人を14年間追跡

 便潜血検査を用いた大腸がん定期検診で、大腸がん死亡率をどれくらい低下させられるのか。スウェーデン・SodersjukhusetのJohannes Blom氏らが、便潜血検査による大腸がん定期検診時期による大腸がん死亡率を、前向きコホート研究で検討した。その結果、60~69歳の検診対象住民のうち、最初の5年間に検診案内が届いた人は、それより遅く届いた人や届かなかった人に比べて、14年間の追跡期間において大腸がん死亡率が14%減少したことがわかった。JAMA Network Open誌2024年2月27日号に掲載。  本試験は、スウェーデン・ストックホルム-ゴットランド地域の1938~54年生まれの検診対象者(60~69歳)を対象に、2008年1月1日~2021年12月31日に実施された。住民は2年ごとの便潜血検査(グアヤック法)による大腸がん検診に早期(2008~12年)または後期(2013~15年)に案内されるか、またはまったく案内されておらず、早期に案内された大腸がん人を曝露群、後期に案内された人または案内されなかった人を対照群とした。主要評価項目は大腸がん死亡率とした。超過死亡数は、大腸がんに罹患した人の全死因死亡数から、CRCに罹患しなかった場合に予想される死亡数を引いた。また、死亡数と人年に基づくポアソン回帰分析を用いて、死亡の発生率比(RR)と95%信頼区間(CI)を追跡年数と到達年齢で調整し推定した。

肥満症治療薬のチルゼパチドで肥満者の血圧が低下

 肥満症治療薬のZepbound(ゼップバウンド、一般名チルゼパチド)の効果は、体重の減少や糖尿病コントロールの改善にとどまらないようだ。米テキサス大学サウスウェスタン医療センター心臓病学部長のJames de Lemos氏らによる研究で、チルゼパチドを使用した肥満患者では収縮期血圧(上の血圧)が有意に低下し、同薬が肥満者の血圧コントロールにも有効である可能性が示唆されたのだ。チルゼパチドの製造販売元であるEli Lilly社の資金提供を受けて実施されたこの研究の詳細は、「Hypertension」に2月5日掲載された。

高アルカリ水での尿路結石再発予防は困難

 「アルカリ水」として販売されている飲料を、尿路結石の予防目的で飲んだとしても、効果を得られる可能性は低いのではないかとする論文が発表された。それらの飲料に含まれているアルカリ成分は少なすぎて、尿のpHレベルに影響を与えるほどではないという。米カリフォルニア大学アーバイン校のRoshan Patel氏らの研究によるもので、詳細は「The Journal of Urology」に2月1日掲載された。研究グループによると、アルカリ水よりもむしろオレンジジュースの方が良い選択肢である可能性があるとのことだ。

自然の中の散策は注意力を回復させる?

 都会でアスファルトの上を歩くよりも森の中を散歩した方が、頭がさえるようだ。米ユタ大学の樹木園を散歩した人では、アスファルトだらけの医学部キャンパスを散歩した人に比べて、散歩後に、注意を構成する機能の一つである実行制御が改善することが、脳波(EEG)の測定から明らかにされた。ユタ大学心理学分野のAmy McDonnell氏とDavid Strayer氏によるこの研究結果は、「Scientific Reports」に1月22日掲載された。  Strayer氏らは、人間には自然に対する原始的な欲求があると話す。同氏は、「これは、人間は何十万年にもわたる進化の中で自然や生物とのつながりに愛着を持つようになったとする、バイオフィリアと呼ばれる考え方だ」と説明し、「現代の都市環境は、携帯電話や自動車、コンピューター、交通が密集する都会のジャングルと化している。これは、回復力を備え持つ自然環境とは正反対だ」と付け加えている。

内臓脂肪減少薬オルリスタット、OTCで発売/大正

 大正製薬は日本初の内臓脂肪減少薬オルリスタット(商品名:アライ)を、ダイレクトOTC薬として2024年4月8日に発売する。発売に先立ち世界肥満デーである3月4日に新発売記者会見を開催した。  米国の若年成人の肥満(BMI30以上)は、1970年代後半には5.5%だったが、2017年には33%と6倍に増加している。米国だけでなく1975年当時BMI25前後だった欧州、中東、オーストラリアなども2014年には30前後になっている。いまや肥満は世界的パンデミックと言っても過言ではない。  BMI30の白人の2型糖尿病発症率は10%強、日本人を含む東アジア人はBMI24〜25で同じ発症率に達してしまう。つまり、「日本人は小太りでも病気になりやすい」と日本肥満学会理事長である千葉大学の横手 幸太郎氏は述べる。

医学生に腫瘍内科の魅力を!学会が教育プログラムを作成/日本臨床腫瘍学会

 国内における医師の診療科の偏在は長らく問題となっている。平均勤務時間が長い、訴訟リスクが高いなどの理由から、外科・産婦人科などが医学生・若手医師から敬遠されて減少傾向となり、その反面、形成外科・放射線科などが増加傾向にある。  腫瘍内科をはじめとするがん関連の診療科も、学生時代に接点が少ない、専門性やキャリアの描き方が見えづらいなどの理由から、入局者数、専門医数、学会会員数などの伸びに課題を抱えている。こうした状況を背景として、日本臨床腫瘍学会(JSMO)の教育企画部会は、全国の大学向けに腫瘍学の教育プログラムを提供するプロジェクトをスタートした。

新型コロナ公費支援、3月末で終了を発表/厚労省

 厚生労働省は3月5日付の事務連絡にて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の医療提供体制および公費支援について、予定どおり2024年3月末をもって終了し、4月以降は通常の医療体制とすることを発表した。新型コロナの医療提供体制については、2023年5月8日に5類感染症変更に当たり特例措置が見直され、同年10月に公費支援を縮小し、2024年3月末までが「移行期間」であった。4月以降、医療機関への病床確保料や、患者のコロナ治療薬の薬剤費および入院医療費の自己負担に係る支援、高齢者施設への補助などが打ち切りとなる。無料で行われてきた新型コロナワクチンの特例臨時接種も予定どおり3月末で終了する。新型コロナの特例的な財政支援の終了について記載された資料も公開された。

日本人NASH患者の臨床的特徴~5年間のRWDを用いた症例対照研究

 得津 慶氏(産業医科大学公衆衛生学 助教)らが非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)およびそれに関連する患者の臨床的特徴を調べるため、国民健康保険ならびに後期高齢者レセプトデータベースといったReal World Data(RWD)を用いて症例対照研究を行った。その結果、NASHの診断定義を満たした患者では非NASH患者に比べてBMIが有意に高いことが示唆された。また、女性、脂質異常症、高血圧症、胃食道逆流症(GERD)、2型糖尿病の罹患割合はNASH群で高く、NASHは肝硬変や肝がんのリスク上昇と関連していたことも示唆された。BMJ Open誌2023年8月22日号掲載の報告。

日本人片頭痛患者における日常生活への影響~OVERCOME研究

 日本人の片頭痛患者を対象に、日常生活活動や基本的な健康指標(睡眠、メンタルヘルス)など、日常生活に及ぼす影響を詳細に調査した研究は、これまであまりなかった。鳥取県済生会境港総合病院の粟木 悦子氏らは、日本人片頭痛患者における日常生活への影響を明らかにするため、横断的観察研調査を実施した。Neurology and Therapy誌2024年2月号の報告。  日本における片頭痛に関する横断的疫学調査(OVERCOME研究)は、2020年7~9月に実施した。片頭痛による家事、家族/社交/レジャー活動、運転、睡眠への影響は、片頭痛評価尺度(MIDAS)、Migraine-Specific Quality of Life(MSQ)、Impact of Migraine on Partners and Adolescent Children(IMPAC)scales、OVERCOME研究のために作成したアンケートを用いて評価を行った。片頭痛のない日の負担を評価するため、Migraine Interictal Burden Scale(MIBS-4)を用いた。抑うつ症状および不安症状の評価には、8項目の患者健康質問票うつ病尺度(PHQ-8)、7項目の一般化不安障害質問票(GAD-7)をそれぞれ用いた。日常生活への影響は、MIDAS/MIBS-4カテゴリで評価した。

初発統合失調症のミエリン形成不全と認知機能低下との関係

 統合失調症患者の皮質領域におけるミエリン形成不全は、これまでの死後脳研究により明らかとなっており、異常な脳の成熟過程を反映している可能性がある。しかし、この異常なミエリン形成が統合失調症の初期段階からすでに存在しているのか、疾患の経過中に進行するのか、両方であるのかは現時点でよくわかっていない。富山大学の小林 春子氏らは、初発統合失調症患者の皮質内ミエリン形成の潜在的マーカーとして灰白質/白質コントラスト(GWC)を調査し、GWCの所見と臨床および認知機能との関連について検討を行った。Cerebral Cortex誌2024年1月31日号の報告。  初発統合失調症患者63例および健康対照者77例を対象に、GWCの調査を目的としたMRI研究を実施した。初発統合失調症患者におけるGWCの所見と臨床/認知的変数との関連も調査した。

RET融合遺伝子陽性の固形がん、セルペルカチニブの有効性(LIBRETTO-001)/日本臨床腫瘍学会

 RET融合遺伝子は主に非小細胞肺がん(NSCLC)や甲状腺がんにみられるが、それ以外のがん種でもまれではあるものの認められることがある。RET受容体型チロシンキナーゼ阻害薬セルペルカチニブは、本邦ではNSCLC、甲状腺がん、甲状腺髄様がんにおける治療薬として用いられている。セルペルカチニブは脳転移を有するNSCLC患者において良好な頭蓋内奏効を示し、肺がん・甲状腺がん以外のRET融合遺伝子陽性の進行固形がんでも、有望な抗腫瘍活性を示すことが報告されている。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)において、大江 裕一郎氏(国立がん研究センター中央病院 副院長/呼吸器内科長)が、国際共同第I/II相バスケット試験(LIBRETTO-001)の肺がん・甲状腺がん以外の患者を対象とした最新の解析結果を報告した。

市中誤嚥性肺炎、嫌気性菌カバーは必要?

 誤嚥性肺炎の治療において、本邦では嫌気性菌カバーのためスルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)などが用いられることがある。しかし、海外では誤嚥性肺炎の0.5%にしか嫌気性菌が認められなかったという報告もあり、米国胸部学会/米国感染症学会(ATS/IDSA)の市中肺炎ガイドライン2019では、嫌気性菌カバーは必須ではないことが記載された。また、2023年に実施されたシステマティックレビューにおいて、嫌気性菌カバーの有無により、誤嚥性肺炎患者に転帰の差はみられなかったことも報告されている。しかし、本レビューに含まれた論文は3本のみであり、サンプルサイズも小さく、結論を導くためには大規模研究が必要である。そこで、カナダ・クイーンズ大学のAnthony D. Bai氏らは、約4千例の市中誤嚥性肺炎患者を対象とした多施設後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、嫌気性菌カバーは院内死亡リスクを低下させず、C. difficile大腸炎リスクを上昇させた。本研究結果は、Chest誌オンライン版2月20日号で報告された。

医師が過小評価した心房細動、予後にどう影響?/慶應義塾大学

 医師による心房細動患者の健康状態の評価と、その後の治療および転帰との関連を調査した結果、医師は心房細動患者の健康状態を過小評価していることが少なくなく、過小評価している場合はその後の治療の積極性が低く、1年後の健康状態の改善が乏しいことを、慶應義塾大学の池村 修寛氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年2月5日号掲載の報告。  心房細動患者の症状・機能や生活の質を最適化することが、外来における主な治療目標であるが、これは医師が心房細動患者の健康状態を正確に評価することで可能になる。そこで研究グループは、医師による健康状態の評価と、その後の治療および転帰との関連性を調査するため、多施設共同前向きコホート研究を実施した。

薬不足をリアルに感じている患者は2割/アイスタット

 近年では、都市部で24時間営業の薬局が出現したり、インターネットで市販薬が購入できたりと市販薬購入のハードルはさらに下がってきた。また、不急ではない病気やけがでは、医療機関に頼らず市販薬で様子をみるという人も多いのではないだろうか。  こうした「薬をもらうなら病医院へ」の常識が変わりつつある今、薬不足、オーバードーズなど薬に関する深刻な問題も顕在する。また、一般人のジェネリック医薬品(後発品)の服用状況や飲み切らなかった処方箋薬の扱いなどの実態を知るためにアイスタットは、薬に関するアンケート調査を2016年5月の第1回に続き、今回実施した。

ADHDと6つの精神疾患リスクとの関連

 注意欠如・多動症(ADHD)とさまざまな精神疾患との合併率の高さは、観察研究や診断基準などから示唆されている。中国・重慶医科大学のYanwei Guo氏らは、ADHDと6つの精神疾患との潜在的な遺伝的関連性を調査するため、メンデルランダム化(MR)研究を実施した。BMC Psychiatry誌2024年2月5日号の報告。  2サンプルのMRデザインを用いて、ADHDと6つの精神疾患のゲノムワイド関連研究(GWAS)に基づき、遺伝的操作変数(IV)をシステマティックにスクリーニングした。主なアプローチとして、逆分散重み付け(IVW)法を用いた。

非ウイルス性肝疾患による死亡リスクは女性の方が高い

 飲酒やメタボリックシンドローム(MetS)が関与して生じる肝臓の病気は、男性に比べて女性は少ないものの、それによる死亡率は男性よりも女性の方が高いことが報告された。青島大学医学院付属医院(中国)のHongwei Ji氏、米シダーズ・サイナイ医療センター、シュミット心臓研究所のSusan Cheng氏が、米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを解析した結果であり、「Journal of Hepatology」2月号にレターとして掲載された。  肝臓の病気の原因のうち、C型肝炎などのウイルスによるものは治療が進歩して患者数が減少している一方で、MetSなどの代謝性疾患に伴う脂肪性肝疾患「MASLD」やアルコール関連の肝疾患「ALD」、および代謝性疾患とアルコール双方の影響による肝疾患「MetALD」と呼ばれる肝疾患が増加している。Cheng氏は、それらの肝疾患の有病率と死亡率の実態を性別に検討した。

B7-H3標的ADCのI-DXd、固形がんへの有効性・安全性は?/日本臨床腫瘍学会

 既治療の進行・転移固形がん患者を対象として、抗B7-H3(CD276)抗体薬物複合体ifinatamab deruxtecan(I-DXd;DS-7300)の有用性が検討されている。第I/II相試験(DS7300-A-J101)の小細胞肺がん(SCLC)、食道扁平上皮がん(ESCC)、去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)、扁平上皮非小細胞肺がん(sqNSCLC)における最新結果が、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)において、土井 俊彦氏(国立がん研究センター 先端医療開発センター長)により報告された。  B7-H3は免疫関連分子であり、多くの固形がんで発現が認められるが、正常組織では発現しないか非常に低発現であると報告されている。また、B7-H3が高発現であると、予後が不良であることも報告されている1,2)。I-DXdは、国内で製造販売承認を取得しているトラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)と同じリンカーとペイロードを用いた製剤である。