ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:316

HDLコレステロールは動脈硬化を予防するのか?

HDLコレステロール(HDL-C)を増やすことが虚血性心疾患を予防する、とのエビデンスについてはなお論争が続いている。システマティックレビューの一部解析(2001年までに公表されたスタチン治療に焦点を当てた無作為化試験の解析)では、HDL-Cと患者アウトカムの相対リスク減とに有意な関連を見いだすことはできなかったが、McMaster大学(カナダ)臨床疫学・生物統計学部門のMatthias Briel氏らは、スタチンに限らずすべての脂質異常症の治療薬に関連した無作為化試験を対象に、HDL-C値と、全死亡、虚血性心疾患死および同イベント(虚血性心疾患死と非致死的心筋梗塞)との関連について、最新の系統的なシステマティックレビューとメタ回帰解析を行った。BMJ誌2009年2月28日号(オンライン版2009年2月16日号)より。

新世代抗うつ薬を比較

 新世代抗うつ薬12種類の有効性と受容性について、ベローナ大学(イタリア)Andrea Cipriani氏らが、複数の無作為化試験結果のメタ解析を行った(別名:混合治療比較メタ解析、ネットワークメタ解析)。ここ20年で登場したうつ病の新薬は構造やメカニズムが似通っており、またいわゆるジェネリック薬も多く、どれほど違いがあるのかが不明とされていた。解析結果は、Lancet誌2009年2月28日号(オンライン版2009年1月29日号)に掲載された。

個人をターゲットとした心房細動を予測するリスクスコアの開発:Framingham Heart Study

フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)が開発した、個人レベルの心房細動の絶対危険度を予測するためのリスクスコア、およびフレームワークづくりに関する試験報告が、Lancet誌2009年2月28日号に掲載された。これまで、加齢、糖尿病、高血圧、肥満、心血管疾患といった心房細動リスクの共通因子は明らかにされていたが、個々人の絶対危険度を予測するための多発リスク因子の評価ツールはなかった。

減量効果に最も優れている食事療法とは?

肥満治療として減量効果に最も優れているダイエット食とは? 米国ハーバード公衆衛生大学院栄養学のFrank M. Sacks氏らは、これまでタンパク質、脂質、あるいは炭水化物それぞれの栄養素に着目したダイエット食の研究報告がなされているが、その減量効果は確立しておらず、また研究期間が1年を超えて行われているものがないとして、どの栄養素を重視した食事が効果的か、介入期間2年にわたる無作為化試験を行った。その結果、栄養素は関係なく、低カロリー食であることが肝心との報告を寄せている。NEJM誌2009年2月26日号掲載より。

中高年のうつ

55歳以上の中高年でのうつ病の重大性が認識されているにもかかわらず、また予後に関する試験結果も示されているが、プライマリ・ケアにおける予後を想定した診断モデルがないことを受け、オランダVU University Medical Centreの一般診療・ヘルスケアリサーチ部門のE Licht-Strunk氏らは、3年間追跡調査を行い、そのモデル化(うつ病相期間、回復の可能性、予後予測因子)に取り組んだ。BMJ誌2009年2月21日号(オンライン版2009年2月2日号)より。

慢性特発性血小板減少性紫斑病に対する新しい経口治療薬eltrombopag:第Ⅲ相試験

米国FDAにおいて昨年末に承認された、慢性特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic Thrombocytopenic Purpura:ITP)に対する新しい経口治療薬eltrombopag(商品名:Promacta)の第Ⅲ相試験の結果が、Lancet誌2009年2月21日号で公表された。eltrombopagは、血小板新生を促す非ペプチド性トロンボポエチン受容体刺激薬で、第Ⅲ相試験では、安全性、有効性、1日1回50mg投与の忍容性、および服用量を75mgまで増加した場合の有効性について検討された。

乾癬性関節炎に対するustekinumabの有効性と安全性を確認

乾癬性関節炎に対する抗インターロイキン(IL)-12/23ヒトモノクローナル抗体ustekinumabの有効性と安全性が、無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験の第Ⅱ相試験の結果、確認された。この米国Tufts Medical CenterのAlice Gottlieb氏らによる試験結果は、Lancet誌2009年2月21日号(オンライン版2009年2月12日号)で掲載されている。乾癬性関節炎は乾癬患者の約11%が有し、抗リウマチ薬(DMARDs)や生物学的製剤(抗TNF薬)が有効とされるが、治療に反応しない患者も存在し治療選択肢の拡充が求められていた。

冠動脈開存仮説の治療戦略は薬物療法単独群に軍配:OAT試験

心筋梗塞患者の臨床転帰を改善するとされる冠動脈開存仮説の治療戦略に関するQOLおよび費用対効果について、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)+ステント留置での実施と、薬物療法単独実施との比較を行ったOAT(Occluded Artery Trial)の試験結果が、NEJM誌2009年2月19日号に掲載された。報告者の米国デューク大学メディカルセンターのDaniel B Mark氏らによると、薬物療法に軍配が上がったという。

関節リウマチ患者、アダリムマブ、インフリキシマブ服用は帯状疱疹リスクが増大

関節リウマチ患者で、ヒト型抗TNF-αモノクロナール抗体のアダリムマブ(商品名:ヒュミラ)やインフリキシマブ(同:レミケード)を服用する人は、そうでない人に比べ、帯状疱疹の発症リスクが増大するようだ。一方、抗TNF-αクラスの薬全体、また完全ヒト型可溶性TNFα/LTαレセプターのエタネルセプト(同:エンブレル)のみでは、同リスクの増大は認められなかった。ドイツGerman Rheumatism Research CenterのAnja Strangfeld氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年2月18日号で発表されている。

米国ICU、中心静脈カテーテル関連MRSA血流感染率が大幅減少

米国の主な集中治療室(ICU)では、過去7年間で、中心静脈カテーテル関連のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の血流感染率が大幅な減少傾向にあることがわかった。ICUの種類により減少率は異なるものの、50%を超える減少幅だという。米国疾病対策センター(CDC)のDeron C. Burton氏らが、全米の医療機関がCDCに報告したデータを分析して明らかにしたもので、JAMA誌2009年2月18日号で発表した。

研修医が指導医に臨床サポートを求める際の決定因子

研修医・医学生が指導医に臨床サポートを請う際、どのような因子が影響しているのか。ウィルソン教育研究センター(カナダ、トロント)のTara J T Kennedy氏らが行った、決定プロセスを理論化するグラウンデッドセオリー研究の結果が、BMJ誌2009年2月14日号(オンライン版2009年2月9日号)で報告されている。研修医らが戦略的な思考プロセスを経てアドバイスを求める姿勢が浮き彫りになった。

がん患者のカテーテル関連静脈血栓症にワルファリンは有効か?:WARP試験

中心静脈カテーテルによる化学療法を受けているがん患者に予防的ワルファリン(商品名:ワーファリンなど)投与を行っても、症候性カテーテル関連血栓症は抑制できないことが、イギリスBirmingham大学のAnnie M Young氏らが実施したWARP試験で判明した。静脈血栓塞栓症はがん患者によく見られる合併症として知られる。原因としては、がんそのものや特定の化学療法、ホルモン療法、さらに中心静脈カテーテルの使用によって広範な凝固促進因子が産生されるためと考えられている。Lancet誌2009年2月14日号掲載の報告。

重症の足首捻挫には膝下キャストを

重症の足首捻挫に対する機械的な支持法では、膝下キャストの効果が最も優れることが、イギリスWarwick大学のS E Lamb氏らが実施した無作為化試験で明らかとなった。イギリスでは救急診療部の受診件数の3~5%を重症足首捻挫が占め、年間約100~150万例にのぼる。最も多いのは外側靱帯の捻挫だという。Lancet誌2009年2月14日号掲載の報告。

幹細胞移植によるHIV-1長期コントロールの可能性

これまでの知見として、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染には、CD4レセプターとケモカイン・レセプター(CCR、主にCCR5)の存在が不可欠であり、CCR5アレル(対立遺伝子)のうち、32塩基対が突然変異で欠損した遺伝子(CCR5 delta32)をホモ接合で持つ人はHIV-1感染に対して抵抗性を示すことが知られている。シャリテ医科大学(ドイツ)Gero Hutter氏らの研究グループは、このCCR5 delta32ホモ接合のドナーから取り出した幹細胞を、急性骨髄性白血病に罹患したHIV-1感染症患者1例に移植し、HIVの長期間にわたるコントロールが可能かどうかを調べた。NEJM誌2009年2月12日号に短報が掲載された。