ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:330

心筋トロポニン陽性は独立した院内死亡の予測変数

心筋トロポニンは急性冠動脈症候群の診断と予後に関する情報を提供するが、急性非代償性心不全での役割はわかっていない。クリーブランド・クリニックのW. Frank Peacock IV氏らの研究グループは、急性非代償性心不全で入院した患者の中で、心筋トロポニン濃度が高い症例を分析し、有害事象との関連を説明するためレトロスペクティブ解析を行った。NEJM誌2008年5月15日号より。

複数バイオマーカーの使用が心血管系の死亡リスク予測に有用

心血管系に起因する高齢者の死亡リスクを予測するために、スウェーデン・ウプサラ大学のBjorn Zethelius氏らは、確立したリスク因子の他に、異なる疾患経路に複数のバイオマーカーを加えることの有用性を検討。心血管だけでなく腎の異常についてのバイオマーカーも加えると、心血管系の死亡リスクの層別化が改善されると報告している。NEJM誌2008年5月15日号より。

セーフティネット病院と非セーフティネット病院の医療の質に差はあるか

貧しく医療サービスを十分受けられない患者を主に診療する「セーフティネット病院」はそれ以外の病院と比べて医療の質が低いといわれている。報道やペイ・フォー・パフォーマンス(治療成績に応じた医療費支払い)制度は医療の質が低い病院を改善させる影響力を持つはずだが、セーフティネット病院にはそのための投資ができない可能性をはらんでいる。そのため、これらの刺激がかえって病院間にある差異を増幅させる可能性があると懸念を表明する向きもある。米国フィラデルフィアにある退役軍人医療センターのRachel M. Werner氏らは、メディケイド(低所得者向け医療保険)患者の割合の高低で、病院間に医療の質の差があるかどうかを調べた。JAMA誌2008年5月14日号より。

マンモグラフィと超音波検査の併用で乳癌診断率は上昇

リンパ節転移のない乳癌はマンモグラフィでは発見できないが、超音波検査では小さく映る可能性がある。乳癌スクリーニング検査におけるマンモグラフィ単独とマンモグラフィ・超音波併用の成績を比較して、両者が女性の乳癌リスクにどう関わるのかを調べていたAmerican College of Radiology Imaging Network (ACRIN)6666の研究グループは、「超音波検査を併用すると乳癌診断率は上昇するが、同時に偽陽性の数も増加する」と報告した。JAMA誌2008年5月14日号より。

適切な冠動脈造影を受けていない狭心症疑い例は冠動脈イベントリスクが高い

英国では狭心症が疑われる早期例のうち高齢者、女性、南アジア系、貧困地区住民には冠動脈造影が十分に実施されておらず、適切な冠動脈造影を受けていない症例は冠動脈イベントのリスクが高いことが、Barts and the London NHS Trust心臓病部門のNeha Sekhri氏らによる調査で明らかとなった。心血管疾患の管理における不平等が予後に影響を及ぼす可能性がある。これまでの心臓病検査へのアクセスの不平等に関する研究の多くは検査の適切性を考慮していないという。BMJ誌2008年5月10日号(オンライン版2008年4月24日号)掲載の報告。

英国移民女性、在住期間が長くなるに従い妊娠中の喫煙が増加し母乳哺育が低下

英国移民女性の母親としての健康行動は、在住期間が長くなるに従って悪化していることが、UCL小児保健研究所小児疫学・生物統計学センターのSummer Sherburne Hawkins氏らの調査により判明した。英国/アイルランド系の白人女性に比べ、少数民族出身の女性は子どもを母乳で育てる傾向があるが、妊娠中の喫煙やアルコール飲用、文化変容に伴う健康行動の変化に関する情報はこれまでなかったという。BMJ誌2008年5月10日号(オンライン版2008年4月10日号)掲載の報告。

同級生に影響力をもつ生徒の教室外での働きかけが、青少年の喫煙を抑制する

同級生に影響力をもつ生徒が教室外で友人に喫煙しないよう働きかける喫煙予防プログラムの有効性が確認された。青少年期の喫煙が中高年期における喫煙関連疾患への罹患、死亡をもたらすが、ニコチン依存症は青少年期に急速に確立されることを示すエビデンスがある。多くの国では学校が喫煙予防プログラムを行っているが、友人の働きかけによるアプローチの多くが教室内に限定されており、厳密な評価は少ないという。英国Bristol大学社会医学科のR Campbell氏がLancet誌2008年5月10日号で報告した。

頸動脈雑音が心筋梗塞、心血管死の予後予測因子に

頸動脈雑音(carotid bruit)の聴診により、心血管リスクに対する積極的な治療戦略が大きなベネフィットをもたらす症例を選択しうることが、Walter Reed米陸軍医療センターのChristopher A Pickett氏らが行ったメタ解析によって示された。頸動脈雑音は全身のアテローム性動脈硬化のマーカーとされるが、その脳血管イベントの予測因子としての意義は低いことがわかっている。そこで、同氏らは心血管イベントにおける頸動脈雑音の意義を検証し、Lancet誌2008年5月10日号で報告した。

早期再分極と突然の心停止

 早期再分極は心電図の所見としてはよくみられるものであり、通常は良性と考えられている。早期再分極が不整脈を引き起こす可能性については実験的研究から仮定されたが、突然の心停止と臨床上の関連があるかどうかはまだわかっていない。本論は、フランス・ボルドーのMichel Haissaguerre氏らが、心電図の早期再分極の有病率を評価した報告。NEJM誌2008年5月8日号より。

妊娠糖尿病の治療にはインスリンよりメトホルミンが有利

妊娠糖尿病の女性に対するメトホルミン投与はロジカルな治療だが、その有効性と安全性を評価する無作為試験はない。ニュージーランド・オークランド市National Women's Health, Auckland City HospitalのJanet A. Rowan氏らは、妊娠糖尿病の女性を対象にメトホルミンとインスリンの比較試験を実施。周産期合併症の発生率では両者に差はないが、インスリン注射より経口のメトホルミンによる治療のほうが、患者には好まれると報告している。NEJM誌2008年5月8日号より。

小児細菌性髄膜炎へのコルチコステロイド補助療法は死亡率を低下させない

成人の場合は、コルチコステロイドの補助療法が細菌性髄膜炎による死亡率を有意に低下させることは知られている。小児患者にも同様の期待がされているが、臨床試験ではこれと相反する結果が導かれている。米国ペンシルバニア大学医学部感染症部門のJillian Mongelluzzo氏らは、小児細菌性髄膜炎に対するコルチコステロイド補助療法と臨床転帰との相関について、データベースを用いた多施設共同観察研究を行った。JAMA誌2008年5月7日号より。

喫煙女性の肺疾患リスク、禁煙後20年で非喫煙者レベルに低下

喫煙は全体として死亡率上昇に関係しているが、喫煙継続あるいは禁煙後の、死亡率低下との関連については不確かで、とりわけ女性の喫煙と卵巣癌および結腸直腸癌との因果関係を推論する十分な証拠はなかった。米国ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院のStacey A. Kenfield氏らは、全米の看護師約10万5千人を対象に前向き観察研究を行った。その結果、癌死亡率のリスク増大に喫煙が関係していること、ただし禁煙によって改善する可能性があることを報告している。JAMA誌2008年5月7日号より。

PCI施術医の技能評価とデータ公開に有用な方法が開発された

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施術医の技能評価やアウトカムの予測にはnorth west quality improvement programme(NWQIP)モデルが有用で、データの提示、公開には累積ファンネルプロットおよびファンネルプロットが使用可能なことが、英国James Cook大学病院循環器科のBabu Kunadian氏らの検討で明らかとなった。英国では心臓外科医の相対的な技能が公開されているが、施術医特異的なPCIデータはまだないという。NWQIPはPCI施行後の心臓の主要有害事象の予測モデルを提供しており、内的および外的妥当性が確立されている。BMJ誌2008年4月26日号(オンライン版2008年3月26日号)掲載の報告。

入院時のPCR法によるMRSA迅速検査は感染率を低減しない

入院時にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の全数スクリーニングとしてpolymerase chain reaction(PCR)法による迅速検査を実施しても一般病棟のMRSA感染率は低減しないことが、英国Guy's and St Thomas' NHS Foundation Trust感染症科のDakshika Jeyaratnam氏らの検討で明らかとなった。MRSA感染症は罹患率および死亡率が高く、入院期間を延長し、医療コストの増加をもたらす。英国では、MRSAを含む感染症関連保健医療の低減が政府の優先課題とされる。BMJ誌2008年4月26日号(オンライン版2008年4月16日号)掲載の報告。

モニタリング戦略による生存の差はわずか、抗レトロウイルス療法中のHIV感染例

抗レトロウイルス薬によるfirst-line治療を受けているHIV感染例においては、個々のモニタリング戦略(臨床観察、ウイルス量、CD4細胞数)のベネフィットはほぼ同等であることが、英国Royal Free and University College Medical SchoolのAndrew N Phillips氏らの検討で明らかとなった。WHOは、低所得国におけるHIV感染例の治療アプローチとして、標準化されたレジメンによる抗レトロウイルス治療とともに、ウイルス量よりもむしろ臨床観察あるいは可能な場合はCD4細胞数のカウントによるモニタリングを推奨している。同氏らはこれを検証し、Lancet誌2008年4月26日号で報告した。

インドの急性冠症候群はSTEMIが多く、貧困層の30日死亡率が高い

インドの急性冠症候群(ACS)患者は先進国に比べST上昇心筋梗塞(STEMI)の割合が高く、貧困層はエビデンスに基づく治療を受けにくいために30日死亡率が高いことが、インドSt John's医科大学のDenis Xavier氏が実施したCREATE registryにより明らかとなった。2001年には世界で710万人が虚血性心疾患で死亡したが、そのうち570万人(80%)が低所得国の症例であった。インドは世界でACSによる負担がもっとも大きい国であるが、その治療およびアウトカムの実態はほとんど知られていない。Lancet誌2008年4月26日号掲載の報告。

公共施設等同様に自宅にもAEDを装備すると有益なのか?

米国では毎年約166,200例の突然の心停止が病院外で起きている。そのうち約4分の3は自宅で、それゆえ各家庭で適時治療を行えるかどうかは救急医療の課題になっている。Gust H. Bardy氏らHAT(Home Automated External Defibrillator Trial)研究グループは、公共施設等でのAED設置が突然の心停止の生存率改善に寄与していることから、リスクの高い患者の生存率改善のため在宅AED使用の有用性を検討した。NEJMオンライン版2008年4月1日号、本誌2008年4月24日号より。

ステント留置術 vs 冠動脈バイパス術 長期転帰に有意差なし

冠動脈ステント留置術と冠動脈バイパス術(CABG)の治療効果に関する比較研究はこれまでにも行われてきたが、非保護左冠動脈主幹部の病変にはCABGが標準治療とされるため、両者の長期転帰には限られたデータしかなかった。今回、欧米よりもこの部位へのステント留置術が広く行われている韓国・カソリック大のKi Bae Seung氏らが、比較研究の結果を報告。両手技の患者死亡率に有意差は認められないものの、ステント留置術のほうが標的血管の血行再建術施行率が高まる傾向があるとしている。NEJMオンライン版2008年3月31日号、本誌2008年4月24日号より。

肛門管癌におけるフルオロウラシル/シスプラチン/放射線併用療法は不成功

 肛門管癌患者にとって化学・放射線併用療法は根治療法の第一選択だが、フルオロウラシル/マイトマイシンとの併用療法では5年無病生存率は約65%にとどまる。そのためテキサス大学消化器腫瘍部門のJaffer A. Ajani氏らは、標準治療とされるマイトマイシン併用療法と比較するため、シスプラチン併用療法を試験的に実施、有効性について検証した。JAMA誌2008年4月23日号より。

エベロリムス溶出ステントはパクリタキセル溶出ステントより有利

免疫抑制剤エベロリムスを溶出するコバルトクロム製ステントは予備的研究で、冠動脈疾患患者の血管再狭窄リスクを軽減するとの見込みが示されていたが、エベロリムス・ステントの安全性と有効性を評価する「SPIRIT III」試験に携わっていたコロンビア大学メディカルセンター(米国ニューヨーク市)のGregg W. Stone氏らは、普及しているパクリタキセル溶出ステントより、血管内径の狭窄も、治療失敗による有害イベントも有意に少ないと報告した。JAMA誌2008年4月23日号より。