ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:245

心原性ショック合併の急性心筋梗塞、IABPでも死亡率減少できず

 心原性ショックを合併する急性心筋梗塞の患者に対し、大動脈内カウンターパルセイション(IABP)を行っても、30日死亡率はおよそ4割と、行わない場合と比べ有意な低下はみられなかったことが報告された。ドイツ・ライプチヒ大学心臓センターのHolger Thiele氏らが、約600例を対象とした多施設共同オープンラベル無作為化対照試験の結果、明らかにしたもので、NEJM誌2012年10月4日号で発表した。現行の国際臨床ガイドラインでは、心原性ショック合併の急性心筋梗塞に対し、IABPがクラスIの治療法に位置づけられている。だが、裏付けとなるエビデンスは患者登録データによるものが多く、無作為化試験に基づくものは少なかったという。

血行再建術を行わない急性冠症候群に対するプラスグレルvs.クロピドグレル

 血行再建術を行わない急性冠症候群に対する経口抗血小板薬プラスグレル(国内未承認)投与について、クロピドグレル(商品名:プラビックス)投与を比較した結果、主要エンドポイントの心血管死または心筋梗塞、脳卒中の発生の有意な低下は認められず、一方で重度出血や頭蓋内出血リスクも同程度であったことが報告された。米国・デューク大学医療センターのMatthew T. Roe氏らによる二重盲検無作為化試験「Targeted Platelet Inhibition to Clarify the Optimal Strategy to Medically Manage Acute Coronary Syndromes」(TRILOGY ACS)試験の結果、明らかにされた。NEJM誌2012年10月4日号(オンライン版2012年8月25日号)掲載報告より。

ビタミンD服用、上気道感染症の発症・重症度を抑制しない

 健常者が半年間、月1回10万IUのビタミンDを服用し続けても、上気道感染症の発症および重症度を抑制しなかったことが、ニュージーランド・オタゴ大学病理学部門のDavid R. Murdoch氏らによる無作為化比較試験の結果、示された。これまで観察研究で、血中25-ヒドロキシビタミンD(25-OHD)値と上気道感染症発生率との逆相関の関連が報告されていたが、ビタミンDサプリメントによる臨床試験の結果は確定的なものはなかった。JAMA誌2012年10月3日号掲載報告より。

βブロッカー投与と心血管イベントとの関連

 冠動脈疾患(CAD)のリスク因子のみ有する患者、心筋梗塞(MI)既往の患者、あるいはMI非既往・CAD既往の患者いずれにおいても、βブロッカーの投与は、心血管複合イベント(心血管死亡・非致死性MI・非致死性脳卒中)の有意な抑制を認めなかった。米国・ニューヨーク医科大学のSripal Bangalore氏らによる観察研究の結果で、これまで上記のような患者に対するベネフィットは明らかではなかった。JAMA誌2012年10月3日号の掲載報告より。

肥満が子どもの心血管疾患リスクを増強

 学齢児童では、体格指数(BMI)が標準値より高いと心血管疾患リスクのパラメータが有意に増悪することが、英国・オックスフォード大学プライマリ・ケア保健科学科のClaire Friedemann氏らの検討で示された。体重増加は血圧や脂質プロフィールの異常のリスクを増大させ、子どもの心血管疾患リスクのパラメータの変動に影響を及ぼす可能性がある。子どもの体重とこれらのリスク・パラメータがどの程度関連するかを、BMIのカテゴリー別に系統的に評価した研究はこれまでなかったという。BMJ誌2012年9月29日号(オンライン版2012年9月25日号)掲載の報告。

プライマリ・ケア医の直感、子どもの重症リスクと関連

 両親の心配や子どもの様子を考慮したプライマリ・ケア医の直感的な対応が、子どもの病態の重症度の的確な判定に寄与していることが、英国・オックスフォード大学プライマリ・ケア保健科学科のAnn Van den Bruel氏らの検討で示された。プライマリ・ケアを受診する子どもの200人に1人の割合で、「見過ごされやすい重篤な疾患」に遭遇する可能性があるとされる。プライマリ・ケアにおける子どもの診療では、「何かおかしい」という臨床医の直感力が診断価値をもつと考えられているが、直感の根拠や病歴、臨床検査への付加価値は明らかではないという。BMJ誌2012年9月29日号(2012年9月25日号)掲載の報告。

ニジェールの子どもの死亡率、MDG4達成を上回る勢いで低下

 西アフリカのニジェールでは、1998~2009年の5歳未満の子どもの死亡の年間低下率が5.1%に達し、ミレニアム開発目標4(MDG4)の達成に必要とされる4.3%を上回ったことが、米国・ジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院のAgbessi Amouzou氏らが行った調査で明らかとなった。MDG4は、2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減することを目標とする。近年、ニジェールでは、近隣の他の西アフリカ諸国に比べ子どもの死亡率の大幅な低減が達成され、生存のための介入が積極的に進められているが、その実情はよくわかっていなかった。Lancet誌2012年9月29日号(オンライン版2012年9月20日号)掲載の報告。

妊婦、子どもの死亡率が高い国へのODA拠出が減少傾向に

 近年、妊婦、新生児、子どもの健康に対する政府開発援助(ODA)の拠出額は増加を続けてきたが、2010年に初めて減少に転じ、増加率も2008年以降は低下している実態が、英国・ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のJustine Hsu氏らの調査で示された。2010年のG8ムスコカ・サミットでは、ミレニアム開発目標の乳幼児死亡率の削減(MDG4)および妊産婦死亡率の削減(MDG5A)の達成に向け、2010~2015年までに参加国が共同で50億ドルを出資することが約束された。また、最も必要性の高い国へのODAの集中的な拠出が求められているが、実情は不明であった。Lancet誌2012年9月29日号(オンライン版2012年9月20日号)掲載の報告。

コントロール不良の喘息患者にチオトロピウム投与で、肺機能、症状増悪リスクが改善/NEJM

 吸入グルココルチコイドと長時間作用性β刺激薬(LABA)で治療を行いながらもコントロール不良の喘息患者に対し、チオトロピウム(商品名:スピリーバ)を投与することで、肺機能が改善し、症状増悪リスクが約2割減少することが、オランダ・Groningen大学医療センターのHuib A.M. Kerstjens氏らによる検討で示された。喘息患者900人超について行った無作為化試験の結果で、NEJM誌2012年9月27日号(オンライン版2012年9月2日号)で発表した。

小児心臓手術後の血糖コントロール、厳格群vs.標準群のアウトカム

 小児心臓手術後の血糖コントロールについて厳格群と標準群とを比較した結果、厳格群のほうが低血糖の発生率は低くコントロール達成可能だった。しかし感染率、死亡率、心臓ICU入室期間、臓器不全については、有意な変化はみられないことが報告された。米国・ボストン小児病院のMichael S.D. Agus氏らが行った前向き無作為化試験の結果で、NEJM誌2012年9月27日号(オンライン版2012年9月7日号)で発表した。これまでいくつかの成人を対象とした試験では、心臓手術後の厳格血糖コントロールがアウトカムを改善することが示されていたが、小児に関しては非常に重篤な高インスリン性の低血糖症のリスクがあり、ベネフィットは明らかではなかった。

FFRCT+CT、CT単独よりも冠動脈疾患の診断精度を改善/JAMA

 心臓CT検査による血流予備量比(FFR)の測定+CT所見の診断能は、CT単独よりも、血行動態的に有意な冠動脈疾患(CAD)の診断精度および識別能を改善することが、米国・カリフォルニア大学デイヴィッド・ゲフィン医科大学院のJames K. Min氏らの検討の結果、報告された。心臓CTは非侵襲的な冠動脈狭窄検査だが、狭窄が虚血を生じるは判定しない。一方、FFRは冠動脈狭窄の生理学的指標だが侵襲的手技を要する。FFRCTは生理学的有意性を判定する斬新な方法であるが、これまでその診断能については十分に調べられていなかった。JAMA誌2012年9月26日号の掲載報告。

小児扁桃腺摘出術中のデキサメタゾン投与、術後の有意な出血イベントとは関連しない

 小児扁桃腺摘出術における術中のデキサメタゾン(商品名:デカドロンほか)投与は、過度の臨床的に有意な出血イベント(レベルII、III)とは関連しないことが明らかにされた。米国・ポーツマス海軍医療センターのThomas Q. Gallagher氏らによる、プラセボと比較した非劣性試験の結果で、事前に設定した5%閾値を超えなかった。ただし、自覚的な出血(レベルI)については5%閾値を超え、デキサメタゾンによる増大が除外できなかったと結論している。試験は、コルチコステロイドを投与された扁桃腺摘出術を受けた小児では、術後の悪心嘔吐が減少する頻度は高いが、術中または術後の出血リスクを増大する可能性が示唆されていたことを受けて行われた。JAMA誌2012年9月26日号掲載の報告。

糖尿病患者の冠動脈病変、どのステントが最も有効か?

 冠動脈病変を有する糖尿病患者に対する冠動脈ステント留置術では、現時点で使用可能なすべての薬剤溶出ステントがベアメタルステントよりも有効で、安全性も良好なことが、米国・ニューヨーク大学医学部のSripal Bangalore氏らの検討で示された。糖尿病は経皮的冠動脈インターベンション施行後の転帰を増悪させることが知られている。長期的な有効性や安全性につき、現時点で使用可能な4つの薬剤溶出ステント同士あるいはベアメタルステントとの比較試験が数多く行われているが、どのステントが最も優れるかは明らかでないという。BMJ誌2012年9月22日号(オンライン版2012年8月10日号)掲載の報告。

2型糖尿病患者に対する厳格な降圧、全死因死亡のリスクを低下させない

 新規診断2型糖尿病患者に対する厳格な降圧(<130/80mmHg)は、心血管疾患合併の有無にかかわらず全死因死亡のリスクを低下させず、低血圧は不良な予後のリスクを増大させることが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのEszter Panna Vamos氏らの検討で確認された。欧米のガイドラインでは、心血管疾患のリスクが高い患者の血圧は<130/85mmHgに維持することが推奨されている。一方、糖尿病患者における正常血圧の維持が、心血管リスクにベネフィットをもたらすことを示す信頼性の高いエビデンスはなく、積極的な降圧の有害性を示唆する知見もあるという。BMJ誌2012年9月22日号(オンライン版8月30日号)掲載の報告。

非心臓手術後の院内死亡率は予想以上に高い:EuSOS試験

 欧州で非心臓手術を受けた患者の院内死亡率は4%と予想以上に高く、各国間に大きなばらつきがみられることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリーのRupert M Pearse氏らが行ったEuSOS試験(http://eusos.esicm.org/)で示された。毎年、世界で2億3,000万件以上の大手術が行われ、術後の最大の死因は合併症であり、これまでに国レベルで実施された数少ない調査では術後の死亡率は1.3~2.0%と報告されている。術後の転帰には施設間や医療システム間に異質性が存在するとのエビデンスが示されており、これは患者ケアに改善の余地があることを示唆するという(たとえば、合併症リスクが高い患者の集中治療室への入院の普及)。Lancet誌2012年9月22日号掲載の報告。

末梢静脈カテーテルの交換は臨床的な必要時に

 末梢静脈カテーテルの交換は、臨床的な必要性に応じてその都度行っても、従来のルーチンな交換に比べ静脈炎や感染症などの合併症の発生に差はないことが、オーストラリア・Griffith大学のClaire M Rickard氏らの検討で示された。末梢血管カテーテルは、毎年の世界的な使用量が数百万に及び、成人では一般に72~96時間ごとの交換が推奨されている。このようなルーチンの交換が医療費を増大させ、医療スタッフの作業量を増やし、患者には侵襲的な処置を繰り返し受けるよう求めることになるが、その有効性は十分には確立されていないという。Lancet誌2012年9月22日号掲載の報告。

多発性硬化症に対する新規経口薬BG-12、年間再発リスクを低下

 再発寛解型多発性硬化症に対し、新規開発中の経口薬BG-12(フマル酸ジメチル)は、プラセボと比較して長期の年間再発リスクを低下し、神経放射線学的転帰が有意に改善したことが示された。BG-12に関する第3相無作為化プラセボ対照試験「Comparator and an Oral Fumarate in Relapsing-Remitting Multiple Sclerosis:CONFIRM」の結果、報告されたもので、米国・クリーブランドクリニックのRobert J. Fox氏らが、NEJM誌2012年9月20日号で発表した。再発寛解型多発性硬化症は、一般に非経口薬(インターフェロンやグラチラマー酢酸塩)で治療されている。

重症患者における低血糖、死亡リスクを1.4~2.1倍に増大

 重症患者において、低血糖は死亡リスクを1.4~2.1倍増大することが明らかにされた。死亡リスクは中等症低血糖よりも重症低血糖のほうがさらに増大し、血液分布異常性ショックによる死亡との関連が最も強かった。オーストラリア・シドニー大学のSimon Finfer氏らにより行われたNormoglycemia in Intensive Care Evaluation-Survival Using Glucose Algorithm Regulation(NICE-SUGAR)試験の結果で、これまで重症患者における低血糖が死亡に結びつくのかどうかは明らかではなかった。なお、同関連の因果関係については、この試験では明らかにはならなかった。NEJM誌2012年9月20日号掲載より。

肥満外科手術患者の術後20年間の医療サービス利用コスト

 肥満外科手術を受けた患者の20年間の医療サービス利用について、従来療法を受けた対照群と比較した結果、手術群のほうが入院医療を多く利用しており、最初の6年間は外来利用も多かったが、それ以降の外来利用は両群で有意差はなかった。また、7~20年目の薬剤コストは手術群のほうが有意に低かったことが報告された。スウェーデン・ヨーテボリ大学のMartin Neovius氏らによるSwedish Obese Subjects試験の結果で、肥満外科手術は体重減を維持し、糖尿病、心血管イベント、がんの発生率を低下し生存を改善することが示されていたが、長期にわたる医療サービス利用への影響については不明であった。JAMA誌2012年9月19日号の掲載報告。

睡眠時無呼吸症候群に対して肥満外科手術は有効か?

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)に対する肥満外科手術は従来療法と比較して、大幅に体重は減少するものの、達成無呼吸低呼吸指数(AHI)については有意差を伴う減少は認められなかったことが、オーストラリア・モナッシュ大学のJohn B. Dixon氏らによる無作為化試験の結果、報告された。OSAは肥満と強く関連しており、肥満を有するOSA患者では体重減が治療計画において推奨されている。しかし、これまでその有効性を検討した無作為化対照試験は行われていなかった。JAMA誌2012年9月19日号の掲載報告。