ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:285

医師の力量評価スコア、無保険者や英語が話せない患者が多いと低スコア傾向に

医師のクリニカルパフォーマンス・スコアは、患者の中に無保険者や英語が話せない人の割合が多いと、低スコアになる傾向があることが明らかにされた。米国マサチューセッツ総合病院総合診療部門のClemens S. Hong氏らが、同一の医師グループに帰属するプライマリ・ケア医162人と、その患者約12万5,000人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月8日号で発表した。

新型インフル発症者、香港型と比べ低年齢だったが入院リスクなどは同等だった

2009年パンデミックA(H1N1)型インフルエンザ(新型インフル)を発症した人は、H3N2型インフルエンザ(香港型)を発症した人に比べ、年齢は低いが、入院リスクなどは同等だったことが報告された。米国疾病予防管理センター(CDC)のEdward A. Belongia氏らが、A型インフルエンザを発症した約7,000人について、タイプ別に(新型インフル、季節性H1N1、H3N2型)調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月8日号で発表した。新型インフルについて、他のA型インフルエンザの症状と直接比較した報告はこれが初めてという。

中高年の前兆を伴う片頭痛は、男女とも心血管疾患死・全死因死亡の独立リスク因子

アイスランド大学薬理学部のLarus S Gudmundsson氏ら研究グループは、中高年の前兆を伴う片頭痛と心血管死および全死因死亡との関連を検討する住民ベースの前向きコホート研究を行った。レイキャビクとその周辺住民で1907~1935年に生まれた1万8,725例の男女を対象に行われた。BMJ誌2010年9月4日号(オンライン版2010年8月24日号)より。

中高年女性の前兆を伴う片頭痛は、出血性脳卒中のリスク因子?

米国ブリガム&ウィメンズ病院予防医学部門のTobias Kurth氏らのグループは、中高年女性の片頭痛と出血性脳卒中リスクとの関連を検討する前向きコホート研究を行った。米国女性の保健・医療従事者が参加する大規模研究「Women's Health Study」の中から、基線で脳卒中または他の重大疾患がない45歳以上の中高年女性2万7,860例の、自己報告による前兆を含む片頭痛の有無、脂質値などの情報を用いて行われた。BMJ誌2010年9月4日号(オンライン版2010年8月24日号)より。

末期患者の呼吸困難、緩和的酸素吸入は有効か?

末期的病態の患者の難治性呼吸困難の症状緩和では、鼻カニューレによる緩和的酸素吸入療法の効果は室内空気吸入療法と変わらないことが、アメリカ・デューク大学医療センター腫瘍内科のAmy P Abernethy氏らが行った無作為化試験で明らかとなった。末期的病態では、心不全の65%、肺がんの70%、COPDの90%で重篤な呼吸困難がみられ、死亡に至る過程で慢性的に増強してQOLや精神的健康、社会的機能が徐々に損なわれる。長期的な酸素吸入が不適な末期的病態の患者の呼吸困難の治療法として、緩和的酸素吸入が広く行われているが、そのベネフィットは明確ではないという。Lancet誌2010年9月4日号掲載の報告。

麻酔による合併症リスクが高い患児をいかに同定するか?

手術時の麻酔施行前に、International Study Group for Asthma and Allergies in Childhood(ISAAC)の改訂質問票で評価を行えば、周術期の呼吸器合併症のリスクが高い患児を同定可能なことが、オーストラリア、プリンセス・マーガレット小児病院(パース)麻酔科のBritta S von Ungern-Sternberg氏らが行ったコホート研究で示された。小児における麻酔に起因する疾患や死亡の主要な原因として、周術期の呼吸器系の合併症が挙げられる。これまでに合併症のリスク因子の報告はあるが、臨床における高リスク患児の同定法は確立されていないという。Lancet誌2010年9月4日号掲載の報告。

降圧療法を強化してもCKD進行に影響は認められず:AASK試験

黒人CKD合併高血圧患者を対象に行われた、降圧療法の強化のCKD進展に対する影響を検討した試験の結果、130/80mmHg未満目標の強化血圧コントロールを行っても、腎疾患進行に与える影響は認められなかったことが報告された。ただし、基線での蛋白尿があるかないかで、効果に差がある可能性が示されたとも結論している。報告は、「AASK(African American Study of Kidney Disease and Hypertension)」共同研究グループによるもので、NEJM誌2010年9月2日号で掲載された。

sibutramine長期投与の心血管転帰:SCOUT試験

肥満治療薬として過去に日本でも上市が目指されたことのあるsibutramineの長期投与リスクに関する報告が、英国ロンドン大学のW. Philip T. James氏らSCOUT研究グループによって報告された。本報告は同薬の、心血管疾患を有する患者への長期投与を検討したもので、「非致死性心筋梗塞と非致死性脳卒中のリスクは増加したが、心血管死亡または全死因死亡は増加しなかった」と結論している。NEJM誌2010年9月2日号掲載より。

認知症患者家族への介入で、患者の4ヵ月後アウトカムが良好に:COPE試験

居宅認知症患者の家族介護者に対し、OT(作業療法士)などによる訪問指導を頻繁に行い、患者の機能状態等に合わせた家庭環境に改善する介入を行うことで、介入を行わなかった群に比べ、4ヵ月後のアウトカムは、良好になることが明らかにされた。米国トーマス・ジェファーソン大学ジェファーソン加齢・健康研究センターのLaura N. Gitlin氏らが、200例超の認知症患者・家族について行った、前向き無作為化比較試験COPE(Care of Persons with Dementia in their Environments)の結果で明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月1日号で発表した。COPE試験は、認知症患者の機能低下を引き延ばす手段が確立していないことを受け、患者の能力に見合った再調整という非薬物的介入の効果を検討することが目的の試験。

遺伝子変異キャリアへの乳房切除術や卵管卵巣摘出術、がん発症・死亡率を大幅に減少

BRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子(以下、BRCA1/2遺伝子)変異キャリアに対する、がん発症リスク減少を目的とする乳房切除術の実施は乳がん発症を低下すること、同目的の卵管卵巣摘出術の実施は、卵巣がん、初発乳がん、全死亡、乳がん死亡、卵巣がん死亡のリスクを低下することが明らかにされた。米国ペンシルバニア大学医学部アブラムソンがんセンターのSusan M. Domchek氏らが、約2,500人のBRCA1/2遺伝子変異キャリアを対象に行った前向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月1日号で発表した。

高齢者の転倒への恐れと生理学的転倒リスクはいずれも転倒予測因子

 高齢者によくみられる転倒への恐れは、転倒に関する重大な心理的要因であることが認められている。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のKim Delbaere氏らの研究グループは、転倒出現率を精査し高齢者の転倒への恐れの認識実態を把握すること、また転倒リスクを認識する要因および生理学的転倒リスクの要因を調査すること、さらに転倒リスクに対する認識と生理学的転倒リスクの、転倒発生への影響を調査することを目的として前向きコホート研究を行った。BMJ誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)より。

新規糖尿病患者への集団教育プログラム実施の費用対効果:英国DESMONDプログラム

糖尿病新規診断患者に対する糖尿病教育・自己管理指導(DESMOND)プログラムの、長期的な臨床効果と費用対効果に関する調査結果が、英国シェフィールド大学Health and Related Research校のM Gillett氏らによって報告された。服薬治療だけの通常ケアと比較して、DESMONDプログラム導入の費用対効果は高く、体重減少、禁煙実現といった利点があることが明らかになったという。BMJ誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)掲載より。

boceprevir追加により、C型慢性肝炎の持続的ウイルス陰性化率が約2倍に

未治療のC型肝炎ウイルス(HCV)ジェノタイプI型感染患者では、標準治療であるペグインターフェロンα-2b(商品名:ペグイントロン)+リバビリン(同:レベトール、コペガス)による導入療法後にboceprevirを追加する治療法が、標準治療単独に比べ持続的ウイルス陰性化率(SVR)を約2倍にまで改善することが、アメリカ・インディアナ大学医学校のPaul Y Kwo氏らが実施した無作為化第II相試験(SPRINT-1試験)で示された。標準治療は免疫系を刺激することで非特異的にウイルスの複製を抑制するもので、SVRは50%以下にすぎない。NS3プロテアーゼ阻害薬であるboceprevirはウイルス複製に重要な蛋白を阻害する「直接作用的抗ウイルス薬」と呼ばれる薬剤の一つであり、標準治療による導入療法の薬剤血中濃度が最適化された時点でこれを追加併用投与するアプローチの有用性に期待が集まっているという。Lancet誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月9日号)掲載の報告。

トラスツズマブ+化学療法が、新たな進行胃がんの標準治療に:ToGA試験

ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2、あるいはERBB2とも呼ばれる)陽性の進行胃および胃・食道接合部がんの一次治療として、分子標的治療薬トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)をフッ化ピリミジン系薬剤+シスプラチン(同:ブリプラチン、ランダなど)による化学療法と併用する治療法が有用なことが、国立ソウル大学医学部のYung-Jue Bang氏らが行った無作為化第III相試験で示された。トラスツズマブはHER2を標的とするモノクローナル抗体で、すでに早期および転移性乳がんの有効な治療薬として確立されており、胃がんの前臨床試験ではカペシタビン(商品名:ゼローダ)やシスプラチンとの併用により少なくとも相加的な抗腫瘍効果が確認されている。乳がんでは良好な耐用性が示され、また胃がん患者のHER2陽性率は乳がん患者とほぼ同等だという。Lancet誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)掲載の報告。

分子標的薬としてのエベロリムスの多発性嚢胞腎への効果は?

本邦では免疫抑制薬(商品名:サーティカン)、分子標的薬としては腎細胞がんへの抗がん薬(商品名:アフィニトール)として製剤が承認されているエベロリムスの、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)に対する有効性を検討した試験の結果が報告された。ドイツ・フライブルグ大学病院のGerd Walz氏らによる。ADPKDは緩徐に進行する遺伝性疾患で、ほとんどが末期腎不全に至る。数年前に、遺伝子突然変異が基因にあることが同定されたが、嚢胞肥大を抑え腎不全を予防するための有効な治療法は開発されていない。そうした中、嚢胞肥大に哺乳類ラパマイシン標的蛋白(mTOR)が重要な役割を演じていることが示唆されたことから、mTORを選択的に阻害する分子標的薬としてのエベロリムスに期待が寄せられた。NEJM誌2010年8月26日号(オンライン版2010年6月26日号)より。

大人のADHD患者には、服薬治療とともに認知行動療法を

注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、成人においてもみられるようになっている。成人期ADHDは薬物療法だけでの治療は難しく、一方で心理社会的治療のエビデンスは十分ではない。そこで米国マサチューセッツ総合病院のSteven A. Safren氏らは、認知行動療法の有効性を検討する無作為化試験を行った。JAMA誌2010年8月25日号より。

左室機能不全や重度冠動脈疾患へのPCI前IABP挿入、術後アウトカムを改善せず

左室機能不全や重度冠動脈疾患に対する、経皮的冠動脈血管形成術(PCI)前の大動脈内バルーンパンピング(IABP)は、術後アウトカムの改善にはつながらないことが報告された。英国King's College London循環器部門のDivaka Perera氏らが、前向きオープン多施設共同無作為化試験を行って明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月25日号で発表した。これまでの観察研究では、PCIに先立つIABPは、術後アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。

妊娠初期の単純ヘルペスや帯状疱疹の治療薬服用、先天性欠損症リスクを増大せず

母親が妊娠初期に、単純ヘルペスや帯状疱疹の治療薬である、アシクロビル(商品名:ゾビラックスなど)、バラシクロビル(同:バルトレックス)、ファムシクロビル(同:ファムビル)の抗ウイルス薬のいずれかを服用しても、出産児の先天性欠損症リスクは増大しないことが報告された。デンマークStatens Serum Institut疫学研究部門のBjorn Pasternak氏らが、約84万児を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月25日号で発表した。

複合アウトカムを信用してはいけない?

臨床試験で使用される複合アウトカム(composite outcome)は、多くの場合、個々のアウトカムを組み合わせる根拠が不十分で、定義に一貫性がなく、報告も正確性を欠いていることが、デンマーク・コペンハーゲン大学のGloria Cordoba氏らによる系統的なレビューによって明らかとなった。複合アウトカムによる評価では、個々のアウトカムのうち最も重要な項目の有効性が最低だったり、重要性が低い項目の有効性が最も高くなる場合が多いが、複合アウトカムの結果が統計学的に有意な場合、このデータを見た臨床医は有効性が低いにもかかわらず重要アウトカムを予測しがちだという。複合アウトカムを用いる主な利点は、統計学的に十分なイベント数を確保してサンプル数を少なくし、コストと時間を節減することだが、統計学的な有意性を確実なものにするには、複合アウトカムに含める個々のアウトカムの選択基準を確立すべきとの見方もある。BMJ誌2010年8月21日号(オンライン版2010年8月18日号)掲載の報告。

隠された代替アウトカムが、誤った結論を誘導する?

無作為化臨床試験のうち主要アウトカムとして代替アウトカム(surrogate outcome)を用いたものは17%に及ぶが、その使用を明記し、妥当性につき考察を加えた試験は約3分の1にすぎないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のJeppe Lerche la Cour氏が行ったコホート研究で示された。代替アウトカムは、無作為化試験において主要アウトカムの代わりに使用可能な場合があるが、不用意に用いると誤解を招いたり、有害な介入が実施されてしまう可能性があるという。欧米では、代替アウトカムに基づいて新薬の市販承認が行われる場合があり、その危険性を指摘する声もある。BMJ誌2010年8月21日号(オンライン版2010年8月18日号)掲載の報告。