ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:28

乳児の遺伝子検査、迅速全ゲノムvs.標的遺伝子/JAMA

 遺伝的疾患が疑われる乳幼児の遺伝子検査として、迅速全ゲノムシークエンスと標的乳幼児遺伝子パネルの分子診断率および結果が得られるまでの時間は同等なのか。米国・Women and Infants Hospital of Rhode IslandのJill L. Maron氏らは、400例を対象に多施設共同前向き比較試験「Genomic Medicine for Ill Neonates and Infants(GEMINI)試験」を行い、ゲノムシークエンスの分子診断率は高率だが、臨床に有用な結果が得られるまでの時間は標的乳幼児遺伝子シーケンス検査よりも遅かったことを示した。乳幼児への遺伝子検査は医療上の決定を導き健康アウトカムの改善を可能とするが、分子診断率や結果が得られるまでの時間が同等なのかについて明らかになっていなかった。JAMA誌2023年7月11日号掲載の報告。

植物由来cytisinicline、禁煙効果を第III相試験で検証/JAMA

 行動支援との併用によるcytisiniclineの6週間および12週間投与は、いずれも禁煙効果と優れた忍容性を示し、ニコチン依存症治療の新たな選択肢となる。米国・ハーバード大学医学大学院のNancy A. Rigotti氏らが米国内17施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「ORCA-2試験」の結果を報告した。cytisinicline(cytisine)は植物由来のアルカロイドで、バレニクリンと同様、ニコチン依存を媒介するα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体に選択的に結合する。米国では未承認だが、欧州の一部の国では禁煙補助薬として使用されている。しかし、従来の投与レジメンと治療期間は最適ではない可能性があった。JAMA誌2023年7月11日号掲載の報告。

乳頭型頭蓋咽頭腫、BRAF・MEK阻害薬併用で奏効率94%/NEJM

 乳頭状頭蓋咽頭腫患者を対象とした小規模な第II相単群試験において、ベムラフェニブ+cobimetinibのBRAF・MEK阻害薬併用療法により16例中15例で客観的奏効(部分奏効以上)が得られたことを、米国・ハーバード大学医学大学院のPriscilla K. Brastianos氏らが報告した。下垂体-視床下部軸の原発性脳腫瘍である頭蓋咽頭腫は、手術、放射線療法あるいはそれらの併用による治療によって、失明、神経内分泌機能障害、記憶喪失など臨床的に重大な後遺症が引き起こされることが多い。遺伝子型の解析では、乳頭状頭蓋咽頭腫の90%以上の患者が、BRAF V600E遺伝子変異を保有していることが示されているが、放射線療法歴のない乳頭状頭蓋咽頭腫の患者におけるBRAF・MEK阻害薬併用療法の安全性と有効性に関するデータは不足していた。NEJM誌2023年7月13日号掲載の報告。

保険加入状況によって、治療や退院計画は変わるか?/BMJ

 米国・イエール大学のDeepon Bhaumik氏らは、米国の65歳以上の高齢者において、治療や退院の決定が保険の適用範囲に基づいて画一化されているかどうかを調べる検討を行った。米国外科学会の全米外傷登録データバンク(NTDB)の約159万例の外傷患者を対象に調べた結果、そのようなエビデンスは認められなかったこと、類似の外傷患者であっても治療の差はみられ、その差は退院計画のプロセスの間に生じていたことが示唆されたという。BMJ誌2023年7月11日号掲載の報告。  研究グループは、2007~17年の米国外科学会NTDBを基に、全米900ヵ所以上のレベル1または2の外傷センターを訪れた50~79歳について調査を行った。65歳でのメディケアへの加入が、医療サービスの内容とアウトカムに与える影響について、回帰不連続アプローチ法を用いて検証した。

StageIII NSCLC、周術期ニボルマブ上乗せで生存改善(NADIM II)/NEJM

 切除可能なStageIIIA/IIIBの非小細胞肺がん(NSCLC)における術前補助療法について、ニボルマブ+化学療法は化学療法のみの場合と比べ、病理学的完全奏効(CR)の割合は有意に高率(相対リスク5.34)で、生存延長にも結び付くことが示された。スペイン・Puerta de Hierro-Majadahonda大学病院のMariano Provencio氏らが、非盲検第II相無作為化比較試験の結果を報告した。NSCLC患者の約20%がStageIIIを占める。これら患者の最も至適な治療についてコンセンサスが得られていなかった。NEJM誌オンライン版2023年6月28日号掲載の報告。

週1回の持効型insulin icodecの第IIIa相試験結果(ONWARDS 3)/JAMA

 インスリン製剤による治療歴のない2型糖尿病患者において、insulin icodecの週1回投与はインスリン デグルデクの1日1回投与と比較して、HbA1cの低下が有意に優れ、その一方で体重の変化には差がないことが、米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのIldiko Lingvay氏らが実施した「ONWARDS 3試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年6月24日号で報告された。  ONWARDS 3試験は、目標達成に向けた治療(treat-to-target)を行う無作為化ダブルマスク・ダブルダミー・実薬対照第IIIa相非劣性試験であり、2021年3月~2022年6月の期間に11ヵ国92の施設で実施された(Novo Nordisk A/Sの助成を受けた)。  対象は、インスリン製剤による治療歴がなく、インスリン製剤以外の血糖降下薬による治療を受けており、HbA1cが7~11%(53~97mmol/mol)の2型糖尿病の成人患者であった。

ブタからヒトへ、心臓異種移植アウトカムに影響した因子/Lancet

 2022年1月7日、米国・メリーランド大学のMuhammad M. Mohiuddin氏らは、世界初となる10個の遺伝子改変ブタ心臓のヒトへの異種移植手術を行った。既往症や複数の外科的および非外科的な合併症にもかかわらず、レシピエントは術後60日目に移植片不全で死亡するまで生命が維持された。今回、同氏らは異種移植手術のアウトカムに影響を及ぼす因子の重要性について報告を行った。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2023年6月29日号に掲載された。  異種移植手術の成功後、移植片は心エコー上で良好に機能し、拡張期心不全が発現する術後47日目まで、心血管系および他の臓器系の機能は維持されていた。  術後50日目に、心内膜心筋生検で、間質浮腫や赤血球の血管外漏出、血栓性微小血管症、補体沈着を伴う損傷した毛細血管が見つかった。  低ガンマグロブリン血症に対する静脈内免疫グロブリン(IVIG)療法後と、初回の血漿交換中に、IgGを主とする抗ブタ異種抗体の増加が検出された。

GIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬retatrutideの有効性・安全性/Lancet

 2型糖尿病患者の治療において、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、グルカゴンの3つの受容体の作動活性を有する新規単一ペプチドretatrutideは、プラセボと比較して、血糖コントロールについて有意かつ臨床的に意義のある改善を示すとともに、頑健な体重減少をもたらし、安全性プロファイルはGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬とほぼ同様であることが、米国・Velocity Clinical Research at Medical CityのJulio Rosenstock氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月26日号で報告された。

肝線維化やNASH消失にpegozaferminが有効か/NEJM

 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療において、線維芽細胞増殖因子(FGF21)アナログpegozaferminはプラセボと比較して、NASHの悪化を伴わない肝線維化の改善効果が優れ、肝線維化の悪化を伴わないNASH消失の達成割合も良好であることが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRohit Loomba氏らが実施した「ENLIVEN試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年6月24日号に掲載された。  ENLIVEN試験は、米国の61施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第IIb相試験であり、2021年9月~2022年8月の期間に患者の登録が行われた(米国・89bioの助成を受けた)。

2型DMでのorforglipron、HbA1c低下に最適な用量-第II相/Lancet

 新規の経口非ペプチドGLP-1受容体作動薬orforglipronは、12mg以上の用量でプラセボまたはデュラグルチドと比較しHbA1cおよび体重の有意な減少を示し、有害事象のプロファイルは同様の開発段階にある他のGLP-1受容体作動薬と類似していた。米国・Velocity Clinical ResearchのJuan P. Frias氏らが、米国、ハンガリー、ポーランド、スロバキアの45施設で実施された26週間の第II相多施設共同無作為化二重盲検用量反応試験の結果を報告した。orforglipronは2型糖尿病および肥満症の治療薬として開発中で、今回の結果を踏まえて著者は、「orforglipronは、2型糖尿病患者にとって少ない負担で治療目標を達成することが期待でき、GLP-1受容体作動薬の注射剤や経口セマグルチドに代わる治療薬となる可能性がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年6月24日号掲載の報告。

肥満2型DMでのチルゼパチド、体重減少にも有効/Lancet

 過体重または肥満の2型糖尿病患者において、チルゼパチド10mgおよび15mgの週1回72週間皮下投与は、体重管理を目的とした他のインクレチン関連薬と同様の安全性プロファイルを示し、臨床的に意義のある大幅な体重減少をもたらしたことが示された。米国・アラバマ大学バーミンガム校のW Timothy Garvey氏らが、7ヵ国の77施設で実施された第III相国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SURMOUNT-2試験」の結果を報告した。肥満2型糖尿病患者の健康状態を改善するためには、体重減少が不可欠である。チルゼパチドは持続性のGIP/GLP-1受容体作動薬で、非2型糖尿病の肥満患者を対象としたSURMOUNT-1試験では、72週間のチルゼパチドによる治療で体重が最大20.9%減少することが認められていた。Lancet誌オンライン版2023年6月24日号掲載の報告。

セマグルチド+cagrilintide配合皮下注、HbA1c低下に有効/Lancet

 2型糖尿病患者に対するセマグルチドとcagrilintideの皮下投与配合剤CagriSemaは、臨床的に意義のある血糖コントロール(持続血糖モニタリング[CGM]パラメータなど)の改善に結び付いたことが、米国・Velocity Clinical ResearchのJuan P. Frias氏らが行った、第II相多施設共同二重盲検無作為化試験で示された。CagriSemaによるHbA1c値の平均変化値は、cagrilintide単独よりも大きかったが、セマグルチド単独とは同等だった。体重は、CagriSema治療がcagrilintideやセマグルチドと比較して有意に大きく減少した。結果を踏まえて著者は、「今回のデータは、同様の集団を対象とした、より長期かつ大規模な第III相試験で、CagriSemaに関するさらなる試験を行うことを支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年6月23日号掲載の報告。

慢性D型肝炎へのbulevirtide、第III相試験でも有効/NEJM

 慢性D型肝炎患者に対するbulevirtideの投与は、48週時点でD型肝炎ウイルス(HDV) RNA量の減少およびALT値の低下に結びついたことが示された。ドイツ・Hannover Medical SchoolのHeiner Wedemeyer氏らが、第III相無作為化比較試験の結果を報告した。HDVは、肝細胞への侵入と増殖にB型肝炎ウイルス(HBV)の表面抗原(HBsAg)を要するサテライトRNAウイルスで、HDVとHBVの同時感染は慢性B型肝炎の関連肝疾患の進行を加速させることが知られている。bulevirtideは、HDVの肝細胞への侵入を阻害する効果が確認され、第II相試験でHDV RNA量とALT値を顕著に低下することが示されていた。NEJM誌2023年7月6日号掲載の報告。

bempedoic acid、高リスクのスタチン不耐患者の1次予防に有効/JAMA

 心血管イベントのリスクが高いスタチン不耐の患者の1次予防において、bempedoic acidはプラセボと比較して、4項目の主要有害心血管イベント(MACE:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、冠動脈血行再建)の発生率が有意に低く、有害事象の頻度は全般に同程度であることが、米国・クリーブランドクリニックのSteven E. Nissen氏らが実施した「CLEAR Outcomes試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年6月24日号に掲載された。  CLEAR Outcomes試験は、32ヵ国1,250施設が参加した無作為化臨床試験であり、2016年12月~2019年8月の期間に、患者の登録が行われた(Esperion Therapeuticsの助成を受けた)。

ホルモン補充療法は認知症の発症と関連するか/BMJ

 更年期のホルモン補充療法の使用経験は、それが55歳以下の時点であっても、あらゆる原因による認知症およびアルツハイマー病の発症と有意な関連があり、投与期間が長くなるほど関連性が増強することが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のNelsan Pourhadi氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年6月28日号で報告された。  研究グループは、デンマークにおける更年期ホルモン療法と認知症との関連を、ホルモン療法の種類、投与期間、年齢別に評価する目的で、全国規模のコホート内症例対照研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。

経口セマグルチド50mg、肥満非2型糖尿病の体重減を確認/Lancet

 2型糖尿病を伴わない過体重または肥満の成人において、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬セマグルチド50mgの68週間の1日1回経口投与は、平均15%の体重減少をもたらし、参加者の85%で臨床的に意義のある体重減少(5%以上)を達成し、安全性プロファイルは同薬2.4mgの皮下投与やGLP-1受容体作動薬クラス全体のデータとほぼ一致することが、デンマーク・コペンハーゲン大学のFilip K. Knop氏らが実施した「OASIS 1試験」で示された。

トランスジェンダーは自殺死が多いか/JAMA

 トランスジェンダーの人々は自殺企図や死亡のリスクが高い可能性が示唆されている。デンマーク・Mental Health Centre CopenhagenのAnnette Erlangsen氏らは、今回、トランスジェンダーは非トランスジェンダーと比較して、最近42年間における自殺企図、自殺による死亡、自殺と関連のない死亡、あらゆる原因による死亡のいずれもが、有意に高頻度であることを示した。研究の成果は、JAMA誌2023年6月27日号で報告された。  対象は、デンマークで生まれで、1980年1月1日~2021年12月31日に同国に居住していた15歳以上。トランスジェンダーを自認する人々の確認は、全国の病院記録と法的な性別変更の行政記録で行った。  全国入院・死因登録のデータを用いて、1980~2021年の自殺企図、自殺死(自殺既遂)、自殺以外による死亡、全死因死亡を同定した。暦年、出生時に割り当てられた性別、年齢で調整し、トランスジェンダーと非トランスジェンダーにおけるこれらのアウトカムの補正後発生率比(aIRR)と95%信頼区間(CI)を算出した。

肥満2型DMへの経口セマグルチド、最適な用量・期間は?/Lancet

 十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病成人患者において、経口セマグルチド25mgおよび50mgは糖化ヘモグロビン(HbA1c)値低下および体重減少に関して、同14mgに対する優越性が確認され、安全性に関して新たな懸念は認められなかった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のVanita R. Aroda氏らが、14ヵ国177施設で実施された第IIIb相多施設共同無作為化二重盲検比較試験「PIONEER PLUS試験」の結果を報告した。セマグルチド1日1回経口投与は2型糖尿病の有効な治療法であり、セマグルチドの経口投与および皮下投与試験の曝露-反応解析では、曝露量の増加に伴いHbA1c値の低下および体重減少が大きくなることが示されていた。Lancet誌オンライン版2023年6月26日号掲載の報告。

軽症脳梗塞、4.5時間以内DAPT vs.アルテプラーゼ/JAMA

 日常生活や仕事上の障害につながらない(非障害性)軽症脳梗塞患者において、発症後4.5時間以内の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は90日後の機能的アウトカムに関して、アルテプラーゼ静注に対して非劣性であることが示された。中国・General Hospital of Northern Theatre CommandのHui-Sheng Chen氏らが、多施設共同無作為化非盲検評価者盲検非劣性試験「Antiplatelet vs R-tPA for Acute Mild Ischemic Stroke study:ARAMIS試験」の結果を報告した。軽症脳梗塞患者において、静脈内血栓溶解療法の使用が増加しているが、軽症非障害性脳梗塞患者における有用性は不明であった。JAMA誌2023年6月27日号掲載の報告。

潰瘍性大腸炎へのミリキズマブ、導入・維持療法で有効性示す/NEJM

 中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎患者において、ミリキズマブはプラセボよりも、臨床的寛解の導入・維持に有効であることが、オランダ・アムステルダム大学医療センターのGeert D'Haens氏らが行った2つの第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験(導入療法試験と維持療法試験)で示された。一方で、ミリキズマブ群では少数の患者ではあるが、帯状疱疹などの日和見感染症およびがんの発生も報告されている。ミリキズマブはIL-23p19を標的とするヒト化モノクローナル抗体で、第II相試験で潰瘍性大腸炎の治療における有効性が示されていた。NEJM誌2023年6月29日号掲載の報告。