ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:263

自殺企図者、家族や友人による予防の難しさが明らかに

自殺をした人の家族や友人、同僚に対する詳しい聞きとり調査により、自殺企図の兆候に気づいたり、その予防策を行うにあたっての困難な点が明らかにされた。英国・Devon Partnership NHS TrustのChristabel Owens氏らが、自殺既遂者14人の家族や友人など合わせて31人に対し聞き取り調査をして明らかにしたもので、BMJ誌2011年10月22日号(オンライン版2011年10月18日号)で発表した。自殺を予防するための近親者の役割や、予防の障害などについての研究は、これまでほとんど行われていないという。一方で、WHOの予測によれば、世界中で自殺による死亡は年間約100万人に上ると報告されている。

無作為化試験の結果から個人の治療効果を予測し治療するほうが実質的ベネフィットが大きい

無作為化試験のデータを基にした個人の治療効果予測は可能であり、その効果予測に基づき個々人の治療を行うことは実質的なベネフィットをもたらすとの報告が、BMJ誌2011年10月22日号(オンライン版2011年10月3日号)で発表された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJohannes A N Dorresteijn氏らが、一例としてJUPITER試験[ロスバスタチン(商品名:クレストール)投与による心血管疾患予防に関する試験]のデータを基に、新たに開発した予測モデルなどを用いて治療効果を予測し、それに基づく治療を行った場合の実質的なベネフィットを評価した結果による。

民間減量プログラム参加者の減量効果は、プライマリ・ケア医による減量治療の2倍

過体重、肥満者の減量達成について、プライマリ・ケア医による標準的な減量治療と、プライマリ・ケア医が地域ベースの民間健康プログラム提供者へと対象者を紹介した場合とを比較した結果、後者のほうが2倍量の減量を達成したことが報告された。過体重、肥満者の増大により、プライマリ・ケアと地域ベースでの減量のための効果的なアプローチが必要とされているなか、英国・MRC Human Nutrition ResearchのSusan A Jebb氏ら研究グループが、オーストラリア、ドイツ、英国の3ヵ国で772例の過体重または肥満者を対象に、前述の比較について検討する平行群非盲検無作為化試験を行った。Lancet誌2011年10月22日号(オンライン版2011年9月8日号)掲載報告より。

開発途上国の若年層で乳がん、子宮頸がんの死亡が顕著に

1980~2010年の世界187ヵ国の乳がんおよび子宮頸がんの発症率や死亡率などの動向を調査した結果、開発途上国の若年層(15~49歳)の乳がん死亡および子宮頸がん死亡が顕著であることが明らかにされた。米国・ワシントン大学健康調査・評価研究所のMohammad H Forouzanfar氏らが、がん登録データ、人口動態調査、聞き取り調査のデータをシステマティックに集め解析した結果で、著者は「開発途上国での乳がん、子宮頸がんの対策強化が必要だ」と結論している。乳がん、子宮頸がんは15歳以上の女性の重大な死亡要因となっている。Lancet誌2011年10月22日号(オンライン版2011年9月15日号)掲載報告より。

結核/HIV二重感染患者へのART療法開始時期 その2

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者で結核感染が認められた二重感染患者について、抗レトロウイルス療法(ART)の開始時期に関する試験結果が報告された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のDiane V. Havlir氏らAIDS Clinical Trials Group Study A5221試験グループによる本報告は、ART開始時期について抗結核療法開始2週以内の早期開始群と同8~12週以内の待機的開始群とを比較したもので、AIDS疾患の新規発症率および死亡率に両群間で有意差は認められなかったという。被験者のCD4+T細胞数中央値は77個/mm(3)だった。なお試験では無作為化の際、CD4+T細胞数50個/mm(3)未満と50個/mm(3)以上とで階層化しての検討も行っており、その結果50個/mm(3)未満群においては早期開始群でのAIDS疾患の新規発症率および死亡率は有意な低下が認められたという。NEJM誌2011年10月20日号掲載報告より。

結核/HIV二重感染患者へのART療法開始時期 その1

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者で結核感染が認められた二重感染患者について、抗レトロウイルス療法(ART)の開始時期に関する試験結果が報告された。フランス・ビセートル病院(パリ)のFrancois-Xavier Blanc氏らCAMELIA試験グループによる本報告は、ART開始時期について抗結核療法開始2週後と8週後を比較したもので、2週後のほうが生存が有意に改善されたという。本報告の被験者のCD4+T細胞数中央値は25個/mm(3)だった。NEJM誌2011年10月20日号掲載報告より。

血液透析、電子線滅菌透析膜使用は重篤な血小板減少症リスクを増大する

血液透析患者において、電子線滅菌処理をした透析膜を用いた装置を使った場合、使わなかった場合と比べて、血小板減少症リスクがおよそ2.5~3.6倍に増大するとの報告が、JAMA誌2011年10月19日号で発表された。カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学腎臓病学部門のMercedeh Kiaii氏らが、約2,100人の人工透析患者を対象に行った後ろ向き調査で明らかにした。血小板減少症は透析膜関連の合併症とみなされることはなかったが、透析膜を電子線(eビーム)で滅菌した血液透析装置を導入した1つの透析部門において、患者20人に有意な血小板減少症がみられたことを受けて、大規模な調査が行われることとなった。

米国で高齢者の心不全入院率が過去10年間で3割低下

米国高齢者の心不全による入院の割合は1998年からの10年間で、およそ3割低下したことが報告された。米国・エール大学医学部循環器内科部門のJersey Chen氏らが、米国とプエルトリコに住む約5,500万人超の高齢者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年10月19日号で発表した。米国では心不全の原因の一つである虚血性心疾患の罹患率が近年低下傾向にあり、また高血圧に対する降圧薬でのコントロールなども改善してきているが、一方でそれらと関連が深い心不全による入院や死亡が減少しているのかどうかについては検討されていなかった。

2004年のCONSORT拡張版発表後も、臨床試験報告の方法論基準に改善認められず

臨床試験報告に関する統合基準「CONSORT」(consolidated standards of reporting trials)の拡張版が2004年に発表されて以降、クラスター無作為化試験の報告基準には多少の改善がみられたものの、方法論基準には改善が認められないことが報告された。カナダ・Women’s College Hospital(トロント)のN M Ivers氏らが、300のクラスター無作為化試験について調べ明らかにしたもので、BMJ誌2011年10月15日号(オンライン版2011年9月26日号)で発表した。

米国・カナダの臨床ガイドライン、作成委員の半数超が作成時に利害対立があったと報告

米国とカナダの脂質異常症(高脂血症)や糖尿病の臨床ガイドラインの作成委員のうち半数超が、いわゆる臨床家と産業界との利害対立が作成時にあったと報告したことが明らかにされた。その一方で、検証したガイドラインのおよそ3分の1は、利害対立に関する情報の開示をしていなかった。さらに、ガイドライン作成に関する出資元が政府の場合には、そうでない場合に比べ、利害対立があったことを報告した委員の割合が少ないことも示された。これは、米国・マウントサイナイ・メディカルスクール予防医学部門のJennifer Neuman氏らが、14の臨床ガイドラインとその作成に携わった委員に対して行った調査の結果で、BMJ誌2011年10月15日号(オンライン版2011年10月11日号)に掲載発表された。

終末期患者の多くが死亡前に外科治療を受けている

アメリカでは、高齢患者の3分の1近くが死亡の前年に外科治療を受けていることが、アメリカ・ハーバード公衆衛生大学院のAlvin C Kwok氏らの調査で示された。一般に、治療の量が多いほど優れた治療がもたらされると考えがちだが、終末期医療が活発な地域が必ずしも良好な予後を実現しているわけではない。アメリカでは、終末期の入院や集中治療の運用状況はよく知られているが、この時期の外科治療のパターンはほとんどわかっていなかったという。Lancet誌2011年10月15日号(オンライン版2011年10月6日号)掲載の報告。

術前の貧血は非心臓手術患者の予後を増悪させる

非心臓手術を受ける患者では、術前の貧血はたとえそれが軽度であっても術後30日以内の合併症や死亡のリスクを上昇させることが、レバノンAmerican University of Beirut医療センターのKhaled M Musallam氏らの検討で示された。心臓手術前に貧血がみられた患者は、術後の合併症の罹患率および死亡率が増大することが知られているが、非心臓手術における術前の貧血が予後に及ぼす影響は不明であった。術中の輸血は、少量であっても合併症率、死亡率を上昇させることが報告されており、術前貧血は術中輸血の機会を増大させるためリスク因子とみなされるという。Lancet誌2011年10月15日号(オンライン版10月6日号)掲載の報告。

MF59アジュバント不活化インフルエンザワクチン、乳幼児への有効性確認

新たなアジュバント製法によって開発された不活化インフルエンザワクチンについて、乳幼児に対する有効性が無作為化試験によって確認されたことが報告された。不活化インフルエンザワクチンは、乳幼児においては有効性が乏しいことが知られている。新たなアジュバントは水中油型乳剤のMF59で、成人用季節性インフルエンザに対する三価不活化インフルエンザワクチン(TIV)のアジュバントとして1997年以降27ヵ国で利用接種が承認されている。乳幼児に対する有効性を検討した無作為化試験は、2ヵ国2シーズンにわたって行われた。NEJM誌2011年10月13日号掲載報告より。

バレット食道患者の食道腺がんリスク、サーベイランスの推定リスクよりはかなり低い

バレット食道は、食道腺がんの強力なリスク因子であるが、年間絶対リスクは推定されているよりもずっと低いことが明らかにされた。デンマークのAarhus大学病院胃腸外科部門のFrederik Hvid-Jensen氏らが、デンマーク国内の病理およびがん登録データによるコホート研究から報告したもので、現行のサーベイランス・ガイドラインで根拠とする推定リスクは0.5%だが、本調査の結果、絶対年間リスクは0.12%であったという。バレット食道患者における食道腺がん、高度異形成については、正確な住民ベースの研究が求められていた。Hvid-Jensen氏は、「現行の異形成を伴わないバレット食道患者に行われているサーベイランスの正当性に、疑問を投じるデータが得られた」と結論している。NEJM誌2011年10月13日号掲載報告より。

妊娠初期の葉酸摂取で、子どもの重度言語発達遅延リスクがおよそ半減

妊娠初期に葉酸を摂取することで、生まれた子どもの3歳時点における、重度言語発達遅延リスクが、およそ半減することが明らかにされた。ノルウェー国立保健院(Norwegian Institute of Public Health)のChristine Roth氏らが行った前向きコホート試験の結果、報告したもので、JAMA誌2011年10月12日号で発表した。これまでの研究結果から、妊娠中の葉酸摂取は、神経管欠損リスクを減少することなどが知られているが、生後の神経発生に関連する症状発症のリスクとの関連についての研究はほとんど行われていなかったという。

ビタミンE摂取、前立腺がんの長期発症リスクを1.17倍に増大

ビタミンE摂取は、前立腺がんの発症リスクを有意に増大することが、無作為化プラセボ対照試験「Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial」(SELECT)の結果、示された。米国・クリーブランドクリニックのEric A. Klein氏らの報告で、JAMA誌2011年10月12日号で発表した。SELECT試験の結果は2009年に、追跡期間中央値5.5年時点の解析結果が発表され、セレン摂取もビタミンE摂取も前立腺がん発症リスクを減少しないことが認められた。同時に、統計的に有意な増大ではなかったが、ビタミンE摂取群で前立腺がんリスクの増加傾向が懸念される結果が示されていた。今回、より長期の追跡データを分析した結果、ビタミンE群の前立腺がん発症リスクの有意な増加が明らかになったという。

麻酔記録と投与エラーを減らす新システムの有用性

麻酔薬に関する記録と投与エラーを減らすために開発された、マルチモードシステム「SAFERSleep」は、臨床でのエラー改善に有用なことが前向き非盲検無作為化臨床試験による評価の結果、報告された。記録の改善が主であったという。ニュージーランドのオークランド大学麻酔学部門のAlan F Merry氏らが、BMJ誌2011年10月8日号(オンライン版2011年10月4日号)で発表した。SAFERSleepは、ニュージーランド、英国のいくつかの病院で使用中で、特にオークランドの市立病院では2005年以来ほとんどの麻酔薬を対象として使用しているという。

喫煙は世界的な結核症例を増大し、死亡を増大する

喫煙は、将来的な結核症例数および死亡例を相当に増大することが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のSanjay Basu氏らが行った数理モデル解析の結果、報告された。現在、喫煙者は世界で約20%だが、その割合は多くの貧困国で上昇すると予測されている。喫煙が喫煙者自身の結核感染および死亡のリスク増大と結びついているが、これらリスクが集団へ及ぼす影響については明らかにされていなかった。BMJ誌2011年10月8日号(オンライン版2011年10月4日号)掲載報告より。

急性躁病の薬物療法、抗精神病薬が気分安定薬よりも高い効果

成人の急性躁病の薬物療法では、全般的に、抗精神病薬は気分安定薬に比べ有意に良好な効果をもたらすことが、イタリアVerona大学のAndrea Cipriani氏らの検討で示された。躁病は気分が過度に高揚した病態で、通常はうつ病エピソードを伴い、双極性障害の診断の根拠となる。急性躁病の薬物療法では、主に抗精神病薬や気分安定薬が用いられてきたが、これまでの有効性に関するメタ解析では相反する結果が得られているという。Lancet誌2011年10月8日号(オンライン版2011年8月17日号)掲載の報告。

喫煙の冠動脈心疾患リスクへの影響、女性のほうが大きい

喫煙が冠動脈心疾患リスクの上昇に及ぼす影響は男性よりも女性で大きいことが、米国・ミネソタ大学のRachel R Huxley氏らの検討で示された。現在、世界の喫煙者数は11億人にのぼり、その5分の1が女性である。たばこを直接的原因とする死亡数は、毎年、500万人以上に達し、そのうち150万人が女性だという。この状況を放置すれば、2030年までにたばこで死亡する女性は250万にまで増加すると予想されている。喫煙は冠動脈心疾患のリスク因子だが、女性における喫煙の影響が男性と同じかは不明であった。Lancet誌2011年10月8日号(オンライン版2011年8月11日号)掲載の報告。