ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:288

究めたい専門があっても卒後1年目からキャリアを積める医師は約半数

志向する専門キャリアを卒後すぐに積み上げることは難しい状況にあることが、英国オックスフォード大学公衆衛生学部UKメディカルキャリア研究グループのMichael J Goldacre氏らの調査で明らかになった。1974~1996年の間に医師となった1万5千人超の、卒後10年間に選択してきた専門キャリアと最終的に目指す専門キャリアについてアンケート調査を行った結果、約4分の1の医師の10年時点の就業している専門が、卒後1~3年の選択キャリアとは異なっていた。調査対象期間に英国では、より高い専門性を短期で身につけることを目的とした卒後研修プログラムの改革が行われてきたが、改革プログラムの効果はみられなかったという。BMJ誌2010年7月17日号(オンライン版2010年7月6日号)掲載より。

特発性頭蓋内圧亢進症への低エネルギー食介入、3ヵ月で有意に改善

特発性頭蓋内圧亢進症を有する女性への、食事療法(低エネルギー食)介入は、有意に頭蓋内圧を低下し、耳鳴りなどの症状、乳頭浮腫も改善することが、英国バーミンガム大学免疫・感染症スクール眼科教育部門のAlexandra J Sinclair氏らによる前向きコホート研究の結果、報告された。食事療法終了後も3ヵ月間、効果は持続していたことも確認された。BMJ誌2010年7月17日号(オンライン版2010年7月7日号)掲載より。

服薬量の自己調節+遠隔モニタリングで、良好な血圧コントロールを達成

高血圧患者自身による服薬量の自己調節と血圧の遠隔モニタリングにより、プライマリ・ケアにおいて良好な血圧コントロールが達成可能なことが、イギリスBirmingham大学プライマリ・ケア臨床科学部のRichard J McManus氏らが行った無作為化試験で示された。血圧のコントロールは心血管疾患の予防の要であるが、ライフスタイルへの介入や薬物療法の進歩にもかかわらず、現在の推奨治療で良好な血圧コントロールが得られる高血圧患者は約半数にすぎない。それゆえ、特に降圧治療の主たる現場であるプラマリ・ケアにおける新たな介入法の開発が必要とされており、患者自身による自己管理はその有望なアプローチだという。Lancet誌2010年7月17日号(オンライン版2010年7月8日号)掲載の報告。

肥満症治療薬lorcaserin、プラセボに比べ体重減少・維持改善が有意

選択的セロトニン2C受容体アゴニストである肥満症治療薬lorcaserin(国内未承認)の体重減少および維持改善効果は、プラセボに比べ有意であることが報告された。米国フロリダ病院&サンフォード-バーナム研究所のSteven R. Smith氏らが行った、2年にわたる98施設参加の多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験「BLOOM」の結果で、NEJM誌2010年7月15日号で発表された。

糖尿病性網膜症の進行を抑制する薬物療法

2型糖尿病患者の網膜症進行に対する薬物療法の効果を検討した結果、強化血糖コントロールと、抗高脂血症薬併用療法で進行率の低下が認められたことが報告された。一方、強化血圧コントロールによる効果は認められなかった。報告は、「ACCORD」試験被験者のサブグループ「ACCORD Eye」被験者データを解析した結果による。これまでのデータで、血糖、コレステロール、血圧という全身性因子が、糖尿病性網膜症の発症および進行に重要な影響を及ぼしている可能性が示唆されていたことを受けて行われた。NEJM誌2010年7月15日号(オンライン版2010年6月29日号)より。

小児がん5年生存児、診断後25年以降も早期死亡のリスクが高い

小児がん5年生存児は、一般集団と比べ早期死亡のリスクが高いが、長期において、特に一般集団での死亡が実質的に増え始める診断後25年以降についてはどうなのか。これまでの研究で、20年時点で、死亡リスクが高い疾患要因として、再発がんよりも二次原発がんや循環器系イベントによるものだったことが報告されている。英国バーミンガム大学のRaoul C. Reulen氏らは、それより長期の特異的死亡要因について大規模住民ベースによる調査を行った。JAMA誌2010年7月14日号掲載より。

テレケア介入で、がん患者の疼痛症状、うつ病を改善

症状監視自動モニタリングと連結した遠隔医療(テレケア)管理システムは、都市部の点在するがんケア施設の患者や、地方のがんケア施設で暮らす患者の、疼痛症状やうつ病を改善する効果があるという。米国インディアナポリス・Richard Roudebush退役軍人メディカルセンターのKurt Kroenke氏らが、無作為比較対照試験を行い明らかにした。疼痛症状とうつ病は、がん関連の最も一般的かつ治療可能な症状だが、認知されていなかったり、治療がされていなかったりする頻度も高い。Kroenke氏らは、テレケア管理システムに、そうした状況を改善する効果があるのか検討を行った。JAMA誌2010年7月14日号掲載より。

PEG施行時の創傷感染に対する新たな予防戦略

経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PEG)施行患者の創傷感染の予防では、PEGカテーテル挿入時のコ・トリモキサゾール液[トリメトプリム・スルファメトキサゾール(ST)合剤、商品名:バクタ、バクトラミンなど]の投与は、従来のPEG施行前のセフロキシム(商品名:オラセフ)の予防投与と同等の予防効果を有することが、スウェーデン・カロリンスカ研究所分子外科学のJohn Blomberg氏らによる無作為化試験で示された。PEGの合併症である創傷感染の予防法として、通常、PEG開始直前に第2世代セファロスポリンの静脈内投与が行われるが、高価で時間がかかり、PEGが完遂できない患者に無駄に投与している場合もあるという。BMJ誌2010年7月10日号(オンライン版2010年7月2日号)掲載の報告。

若い肥満女性は予定外の妊娠をしやすい:男女1万人の無作為抽出調査

BMIと性行動、有害な性的健康アウトカムとの間には関連があり、肥満女性は避妊医療サービスの利用度が低く、予定外妊娠の傾向が高いことが、フランス国立衛生医学研究所(INSERM)のNathalie Bajos氏らCSF(Contexte de la Sexualité en France)研究グループの調査で明らかとなった。男性の肥満が勃起不全と関連することは複数の試験で示されているが、性的満足度、望まない妊娠、中絶などの性的な健康アウトカムと肥満との関連ははっきりしていない。これまでに実施された調査のほとんどが高齢男性や病的肥満男性を臨床的サンプルとしたものであり、女性を対象とした試験はほとんどないという。BMJ誌2010年7月10日号(オンライン版2010年6月15日号)掲載の報告。

脳卒中の90%は、10のリスク因子に起因:INTERSTROKE試験

脳卒中リスクの約90%が10のリスク因子に起因し、降圧や喫煙制限の実施、身体活動や健康的な食事の推奨といった介入により、脳卒中の世界的負担は実質的に低減しうることが、カナダMcMaster大学地域健康調査研究所のMartin J O’Donnell氏らが実施した症例対照研究で示された。脳卒中は世界第2位の死亡原因であり、ほとんどの地域では成人の後天性身体障害の主要原因である。一方、脳卒中の世界的負担に対して種々のリスク因子がどの程度寄与しているかは不明であり、特に低~中収入国における調査が遅れているという。Lancet誌2010年7月10日号(オンライン版2010年6月18日号)掲載の報告。

早期乳がんの放射線治療、温存術中のターゲット単回照射が有用:TARGIT-A試験

早期乳がんの中には、術後数週にわたる外部照射よりも、術中に腫瘍床を標的とする単回照射法が有効な患者が存在することが、イギリスUniversity College London外科研究部門のJayant S Vaidya氏らが実施した無作為化試験(TARGIT-A試験)で明らかとなった。乳がんは乳房のどこにでも発現しうる多中心的ながんであるが、乳房温存術施行後の局所再発の90%は指標とされる四分区内に起こる。それゆえ、術中の腫瘍床に限定した放射線照射が妥当な患者が存在する可能性があるという。Lancet誌2010年7月10日号(オンライン版2010年6月5日号)掲載の報告。

角膜再生医療における細胞治療の長期臨床成績

角膜再生医療に関して、患者本人の角膜輪部幹細胞の培養組織を移植する細胞治療の長期臨床成績(最高10年)が報告された。約8割近くで角膜上皮再生の永久修復が確認されたという。角膜の表面を覆う「上皮」は再生と修復を繰り返し透明度を保つが、それに寄与するのが角膜と眼球結膜の間にあるごく狭い角膜輪部の幹細胞である。眼熱傷などを受けるとこの角膜輪部が損傷を受け、角膜上皮幹細胞疲弊症(LSCD)が生じる可能性が高く、たとえばドナー提供の角膜移植を行っても角膜輪部が損傷されたままだと再移植が必要になる。本治験報告は、イタリア・San Raffaele Scientific InstituteのPaolo Rama氏らの報告によるもので、NEJM誌2010年7月8日号(オンライン版2010年6月23日号)に掲載された。

健康高齢男性で筋力アップするテストステロン、運動制限を有する人では?

健康な高齢男性では、テストステロン・サプリメントによって筋量・筋力がアップすることが明らかになっている。米国ボストン大学医療センター内分泌・糖尿病・栄養学部門のShehzad Basaria氏らは、これまで検討されていなかった、運動制限を有する高齢男性を対象にテストステロン補充療法の安全性と有効性について試験を行った。結果、心血管有害事象の増大が認められたと報告した。ただし試験規模が小さかったこと、対象者の特性(慢性疾患有病者が多かった)に留意すべきとコメントもしている。NEJM誌2010年7月8日号(オンライン版2010年6月30日号)掲載より。

糖尿病とCAD有する患者への厳格血圧コントロール、心血管アウトカム改善認められず

高血圧治療ガイドラインでは、糖尿病患者の降圧目標は収縮期血圧130mmHg未満とする治療を行うことを提唱しているが、推奨値に関するデータは限られており、特に増大する冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者に関するデータは十分ではない。米国フロリダ大学のRhonda M. Cooper-DeHoff氏らは、糖尿病とCADを有する患者コホートにおいて、収縮期血圧コントロール達成と有害心血管アウトカムとの関連を評価することを目的に、「INVEST」試験参加者の観察サブグループ解析を行った。JAMA誌2010年7月7日号掲載より。

変形性腰椎症を伴う慢性腰痛へのグルコサミン投与、痛みの日常生活への影響を改善せず

変形性腰椎症を伴う慢性腰痛に対しグルコサミンを6ヵ月投与したが、日常生活の痛みの改善に効果は認められなかったことが、ノルウェーのオスロ大学病院のPhilip Wilkens氏らが行った、無作為化プラセボ対照二重盲検試験で明らかにされた。グルコサミンを服用する腰痛患者は少なくないが、変形性腰椎症を伴う慢性腰痛に対する効果についての研究は、これまでほとんど行われていなかった。JAMA誌2010年7月7日号掲載より。

妊娠中の携帯電話基地局からの電磁波曝露、0~4歳小児がんとの関連は認められず

小児早期のがん発病と、母親が妊娠中に携帯電話基地局からの高周波電磁波に曝露されていたこととは関連が認められないことが報告された。イギリスのロンドン大学公衆衛生校のPaul Elliott氏らが行ったケースコントロール試験の結果によるもので、BMJ誌2010年7月1日号(オンライン版2010年6月22日号)に掲載された。

制酸薬服用は術後肺炎リスクを増大しない

術後高齢患者への制酸薬服用と肺炎リスク増大には、関連が認められないことが報告された。カナダ・トロント大学のDonald A Redelmeier氏らが行った住民ベースの後ろ向きコホート解析による。BMJ誌2010年7月1日号(オンライン版2010年6月21日号)に掲載された。これまでICU患者を対象とした二つの大規模試験で、制酸薬服用患者の肺炎発症率は2~3倍増大すると報告される一方、市中肺炎発症に関する調査では相反する結果が得られていた。制酸薬は世界中で最もポピュラーに処方されており、また処方なしで買い求められることもあり、刊行されているガイドラインでは、リスクについての大規模な調査が必要であると提言していた。

HIV患者の併用抗レトロウイルス治療を看護師に任せてよいか?

併用抗レトロウイルス療法(ART)を受けているHIV患者の管理を、訓練を受けた看護師が行っても、医師よる治療と同等の効果が得られることが、南アフリカWitwatersrand大学のIan Sanne氏らが行った無作為化試験(CIPRA-SA試験)で示された。併用ARTはAIDS関連疾患や関連死を著明に低減することが示されている。先進国では、耐性検査を含む頻回の検査のサポートのもとで、専門医があらゆる薬剤を駆使してHIV治療を行っている。しかし、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国など医療資源が乏しい環境において併用ARTの使用を拡大するには、医師から他のケア提供者へ職務を移行する必要があるという。Lancet誌2010年7月3日号(オンライン版6月16日号)掲載の報告。

トラネキサム酸が、出血性外傷患者の死亡リスクを低減:2万例の無作為化試験

出血性外傷患者に対して、トラネキサム酸(商品名:トランサミンなど)短期治療を早期に開始すると、安全性を保持しつつ死亡リスクが有意に改善されることが、イギリスLondon School of Hygiene & Tropical MedicineのHaleema Shakur氏らが実施した「CRASH-2試験」(http://www.crash2.lshtm.ac.uk/)の結果から明らかとなった。外傷による院内死亡の約3分の1は出血が原因であり、多臓器不全による死亡にも出血が関与している。トラネキサム酸は、待機的手術を施行された患者の出血を低減させる可能性が示唆されているという。Lancet誌2010年7月3日号(オンライン版2010年6月15日号)掲載の報告。

中咽頭がん患者の死亡リスク、HPV腫瘍陽性群は陰性群より58%低い

ヒトパピローマウイルス(HPV)腫瘍陽性は、中咽頭がん患者生存の強い独立した予後因子であることが明らかにされた。HPVに起因する中咽頭扁平上皮がんの生存率は良好だが、HPV腫瘍が有意な独立予後因子であるかどうかはわかっていなかった。テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのK. Kian Ang氏らが、ステージIII、IVの中咽頭がん患者を対象にHPV腫瘍と生存率との関連を後ろ向きに分析した結果による。NEJM誌2010年7月1日号(オンライン版2010年6月7日号)掲載より。