ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:155

高齢者の潜在性甲状腺機能低下症にホルモン療法は有効か?/NEJM

 潜在性甲状腺機能低下症の治療において、これまでレボチロキシンの使用は議論の的であったが、無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験(TRUST試験)の結果、高齢患者に対するレボチロキシンの有効性は認められなかった。英国・グラスゴー王立診療所のDavid J Stott氏らが報告した。潜在性甲状腺機能低下症に対するレボチロキシン補充療法については、小規模な無作為化比較試験しかなく、治療のリスクや有効性に関するエビデンスは限られていた。NEJM誌オンライン版2017年4月3日号掲載の報告。

心血管イベントの高リスク患者の目標血圧は?/Lancet

 心血管イベントのハイリスク患者では、治療により収縮期血圧120mmHg未満達成で心筋梗塞および脳卒中を除く心血管死のリスクが増加し、拡張期血圧70mmHg未満達成ではこれらに加え心筋梗塞および心不全による入院のリスクも増加する。ハイリスク患者を対象としたONTARGET試験およびTRANSCEND試験の2次解析で、治療により血圧を過度に低下させると心血管疾患イベントのリスクが高まることが確認された。ドイツ・ザールラント大学のMichael Bohm氏らが報告した。これまでも目標血圧の妥当性が検証されてきたが、著者は今回の結果について、「逆の因果関係(併存疾患による血圧低下、死亡率上昇)の影響を除外できないものの、可能な限り血圧を低くすることは、ハイリスク患者にとっては必ずしも最適(至適)ではないことを示唆している」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年4月5日号掲載の報告。

IQや社会的地位の低さは、幼少期の鉛曝露と関連/JAMA

 幼少時の鉛曝露が38歳時の認知機能や社会経済学的地位の低さと関連していることが示された。社会経済学的地位の低さの原因の約4割は、知能指数(IQ)の低さと関連していたという。米国・デューク大学のAaron Reuben氏らが、1970年代初頭生まれのニュージーランド出生コホートを前向きに追跡した試験を基に検証したもので、JAMA誌2017年3月28日号で発表した。ニュージーランドでは、1970~80年代の車の排ガス規制が低く、都市部の鉛曝露は国際基準よりも一貫して高かった。また、他のコホートと比べて鉛曝露の社会的格差による違いが観察されておらず、鉛曝露がIQや社会経済学的地位に与える影響について、より信頼性が高い結果が得られた試験だという。

生体吸収性スキャフォールド、血栓症リスクを増大/NEJM

 エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(BVS)による経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、エベロリムス溶出金属ステントを使用した場合と比べ、デバイス血栓症の発生リスクが約3.9倍であることが示された。一方で主要エンドポイントの標的血管不全(心臓死、標的血管心筋梗塞または血行再建術のいずれか)の発生リスクは同等だった。オランダ・アムステルダム大学のJoanna J Wykrzykowska氏らが、1,845例を対象に行った無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2017年3月29日号で発表した。BVSは従来ステントの弱点を克服するために開発された新たなデバイスで、これまでの検討で、コバルトクロムステントPCIに対する非劣性が示されている。しかしその後の試験で、金属ステントよりもデバイス血栓症のリスクが高いことが示唆されていた。

AFの抗凝固療法での骨折リスク、ダビガトランは低減/JAMA

 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の抗凝固療法では、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)がワルファリンに比べ骨粗鬆症による骨折のリスクが低いことが、中国・香港大学のWallis C Y Lau氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年3月21日号に掲載された。ワルファリンは、骨折リスクの増大が確認されているが、代替薬がないとの理由で数十年もの間、当然のように使用されている。一方、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)ダビガトランは、最近の動物実験で骨体積の増加、骨梁間隔の狭小化、骨代謝回転速度の低下をもたらすことが示され、骨粗鬆症性骨折のリスクを低減する可能性が示唆されている。

PCSK9阻害薬bococizumab、抗薬物抗体発現で効果減/NEJM

 抗PCSK9(前駆蛋白変換酵素サブチリシン/ケキシン9型)モノクローナル抗体製剤bococizumabは、多くの患者で抗薬物抗体(ADA)の発現がみられ、そのためLDLコレステロール(LDL-C)の低下効果が経時的に減弱することが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M Ridker氏らが行ったSPIREプログラムと呼ばれる6件の国際的な臨床試験の統合解析で明らかとなった。ADA陰性例にも、相対的なLDL-C低下効果に大きなばらつきを認めたという。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年3月17日号に掲載された。完全ヒト型抗体であるアリロクマブやエボロクマブとは異なり、bococizumabはヒト型抗体であり、抗原と結合する相補性決定領域に約3%のネズミ由来のアミノ酸配列が残存するため、ADAの発現を誘導する可能性が指摘されている。

前立腺がんの3つの治療戦略、QOLに差はあるか/JAMA

 局所前立腺がんの3つの治療戦略(根治的前立腺全摘除術、外部照射療法、小線源療法)は、有害事象の発現パターンがさまざまであり、積極的監視療法と比較して2年後のQOLにほとんど差はないことが、米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のRonald C Chen氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年3月21日号に掲載された。前立腺がん患者の余命は延長しており、個々の治療選択肢のQOLへの影響は、患者の意思決定プロセスにおける中心的な関心事項となっている。

PCSK9合成阻害薬、2回投与で半年後にLDL-C半減/NEJM

 前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)遺伝子のメッセンジャーRNAを標的とする低分子干渉RNA(small interfering RNA:siRNA)であり、肝細胞でのPCSK9の合成を阻害するInclisiranの第II相試験(ORION-1)の中間解析の結果が、NEJM誌オンライン版2017年3月17日号に掲載された。LDLコレステロール(LDL-C)高値の心血管リスクが高い患者において、6種の投与法をプラセボと比較したところ、すべての投与法でPCSK9値とLDL-C値(180日時、240日時)がベースラインに比べ有意に低下したという。報告を行った英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのKausik K Ray氏らは、「肝でのPCSK9 mRNA合成の阻害は、PCSK9を標的とするモノクローナル抗体に代わる治療薬となる可能性があり、注射負担はほぼ確実に軽減されるだろう」と指摘している。

中等度リスクASへのTAVR、自己拡張型デバイスも有用/NEJM

 中等度リスクの重度大動脈弁狭窄症(AS)患者を対象に、外科的大動脈弁置換術(SAVR)と経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の有効性と安全性を比較したSURTAVI試験の結果、TAVRはSAVRに対し非劣性であることが認められた。また、有害事象は両手技で異なるものの、TAVRは中等度リスクの重度AS患者においてもSAVRの代替治療となり得ることが示唆された。米国・メソジスト・ドゥベーキー心臓血管センターのMichael J Reardon氏らが報告した。これまで、外科手術による死亡リスクが高い重度AS患者においては、TAVRがSAVRの代替治療となっていたが、中等度リスク患者での転帰はよく知られていなかった。NEJM誌オンライン版2017年3月17日号掲載の報告。

レボシメンダン、心臓手術後の循環動態補助の上乗せ効果なし/NEJM

 心臓外科手術で循環動態の補助を必要とする患者において、標準治療に低用量のlevosimendanを追加しても、30日死亡率はプラセボと同等であることを、イタリア・ビタ・サルート・サンラファエル大学のGiovanni Landoni氏らが、周術期左室機能不全患者を対象に、標準治療へのlevosimendan追加により死亡率が低下するかどうかを検証したCHEETAH試験の結果、報告した。急性左室機能不全は心臓外科手術の重大な合併症であり、死亡率上昇と関連している。これまで、小規模試験のメタ解析では、levosimendanは他の強心薬と比較して心臓外科手術を実施した患者の生存率を上昇させる可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2017年3月21日号掲載の報告。

TAVR・SAVR後の無症候性弁尖血栓症、TIAリスクを増大/Lancet

 経カテーテル大動脈生体弁置換術(TAVR)や外科的大動脈生体弁置換術(SAVR)施行後の無症候性弁尖血栓症の発生率は約12%で、SAVRでは約4%に対し、TAVRでは約13%と高率であることが明らかになった。無症候性弁尖血栓症の予防や治療には、抗凝固薬が有効であること、さらに同血栓症は一過性脳虚血発作(TIA)の発症リスクを増大することも確認された。米国・シダーズ・サイナイ心臓研究所のTarun Chakravarty氏らが、TAVRとSAVRを受けた患者登録をした2つのレジストリから890例について行った観察研究で明らかにしたもので、Lancet誌オンライン版2017年3月19日号で発表した。

心肺バイパス術前のレボシメンダン投与、術後アウトカム変わらず/NEJM

 左室駆出分画率(LVEF)が35%以下で、心肺バイパス術を実施予定の患者に対し、術前から変力作用薬levosimendanを予防的に投与しても、術後30日以内の死亡や腎代替療法の実施、周術期(5日以内)の心筋梗塞といった複合イベントリスクの低下にはつながらず、非投与の場合と術後アウトカムは同等であることが示された。米国・デューク臨床研究所のRajendra H Mehta氏らLEVO-CTS研究グループが、882例を対象に行った第III相の多施設共同無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2017年3月19日号で発表された。これまでにlevosimendanは小規模試験だが、心臓手術後の低心拍出量症候群に対する予防的もしくは治療的効果が示されていた。

アブレーション周術期の抗凝固、ダビガトランが有用/NEJM

 心房細動(AF)へのカテーテルアブレーション周術期の抗凝固療法において、ダビガトランの継続投与はワルファリンに比べ大出血イベントの発生が少ないことが、米国・ジョンズ・ホプキンス医学研究所のHugh Calkins氏らが行ったRE-CIRCUIT試験で示された。脳卒中や全身性塞栓症は発現しなかったという。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年3月19日号に掲載された。ダビガトランなどの非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)は、ワルファリンよりも安全性が優れる可能性が示唆されているが、これを検証したデータはこれまでなかった。

iFRガイド vs.FFRガイドPCI、日本人含む2千例超で評価/NEJM

 冠動脈血行再建術時の冠動脈の心筋酸素供給能の指標として、瞬時血流予備量比(instantaneous wave-free ratio:iFR)は冠血流予備量比(fractional flow reserve:FFR)に比べ、主要有害心イベントの発現が非劣性で、処置関連の有害な徴候や症状が少なく、所要時間は短いことが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのJustin E Davies氏らが行ったDEFINE-FLAIR試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年3月18日号に掲載された。iFRは、冠動脈狭窄の重症度を血管拡張薬(アデノシンなど)の投与なしに評価できるため、FFRに代わる指標となる可能性が示唆されている。

多枝病変STEMI、非責任病変へのPCI追加は有用か?/NEJM

 多枝病変を有する急性期ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の治療において、梗塞責任動脈へのプライマリPCI施行時に、非責任動脈へ冠血流予備量比(FFR)ガイド下に完全血行再建術を行うと、責任病変のみの治療に比べ心血管リスクが低減することが、オランダ・マーススタト病院のPieter C Smits氏らが行ったCompare-Acute試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年3月30日号(オンライン版2017年3月18日号)に掲載された。STEMI患者の責任病変へのPCIは血流を回復して転帰を改善するが、非責任病変へのPCIの追加の意義については議論が続いている。

エボロクマブ追加で心血管イベントリスクを有意に低減/NEJM

 前駆タンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害薬エボロクマブ(商品名:レパーサ)は、スタチン治療でLDLコレステロール(LDL-C)値のコントロールが不良なアテローム動脈硬化性心血管疾患患者のLDL-C値を30mg/dLまで低下させ、心血管イベントのリスクを有意に低減することが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMarc S Sabatine氏らが行ったFOURIER試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年3月17日号に掲載された。本薬は単剤でLDL-C値を約60%低下させることが報告されているが、心血管イベントを予防するかは不明であった。

リバーロキサバン、VTE再発リスクを有意に低下/NEJM

 6~12ヵ月間の抗凝固薬投与を完了した静脈血栓塞栓症(VTE)患者において、リバーロキサバンの治療用量(20mg)または予防用量(10mg)はいずれも、アスピリンと比較し、出血リスクを増加させることなく再発リスクを有意に低下させることが認められた。31ヵ国244施設で実施された無作為化二重盲検第III相試験「EINSTEIN CHOICE」の結果を、カナダ・マックマスター大学のJeffrey I Weitz氏らが報告した。抗凝固療法の長期継続はVTEの再発予防に有効であるが、出血リスクの増加が懸念されることから、6~12ヵ月以上の抗凝固療法には抵抗感も強い。長期治療時の出血リスクを減少するため、低用量の抗凝固薬あるいはアスピリンの使用が試みられているが、どれが効果的かはこれまで不明であった。NEJM誌オンライン版2017年3月18日号掲載の報告。

ACS後のP2Y12阻害薬+低用量リバーロキサバンの安全性/Lancet

 急性冠症候群(ACS)患者に対する低用量経口抗凝固薬リバーロキサバンとP2Y12阻害薬との併用、すなわちデュアル・パスウェイ抗血栓療法は、従来のアスピリンとP2Y12阻害薬との併用(抗血小板薬2剤併用療法:DAPT)と比較し、臨床的に重大な出血リスクに差はないことが示された。米国・デューク大学医学部のE Magnus Ohman氏らが、P2Y12阻害薬との併用薬はアスピリンより低用量リバーロキサバンが安全かを検証したGEMINI-ACS-1試験の結果を報告した。ACS後のDAPTに第Xa因子阻害薬であるリバーロキサバンを追加すると、死亡と虚血イベントは減少するが、出血が増加する恐れがあることが示唆されている。しかし、アスピリンの代わりに低用量リバーロキサバンをP2Y12阻害薬と併用する抗血栓療法の安全性は、ACS患者でこれまで評価されていなかった。Lancet誌オンライン版2017年3月18日号掲載の報告。

iFRガイドPCI、FFRガイドに比べ非劣性/NEJM

 安定狭心症または急性冠症候群(ACS)の患者に対し、iFR(instantaneous wave-free ratio:瞬時血流予備量比)ガイド下の血行再建術は、FFR(fractional flow reserve:冠血流予備量比)ガイド下に比べ、術後12ヵ月以内の主要有害心イベント(MACE)発生リスクは非劣性であることが示された。スウェーデン・ルンド大学のMatthias Gotberg氏らが、2,037例の患者を対象に行った無作為化比較試験の結果、明らかにした。これまでに、小規模試験でiFRとFFRの診断精度が同等であることは明らかになっているものの、iFRとFFRガイド下での血行再建術に関する臨床アウトカムについては不明であった。NEJM誌オンライン版2017年3月18日号掲載の報告。

乳製品摂取増と高血圧リスク低下は関連せず/BMJ

 乳製品の1日摂取量と収縮期血圧・高血圧症リスクについて、逆相関の関連は認められないことが、遺伝子レベルで検討した無作為化試験の結果、示された。これまでの観察研究で、乳製品の摂取量と収縮期血圧や高血圧症リスクの低下との関連が示されていたが、その因果関係については不明だった。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のMing Ding氏らによる検討で、BMJ誌2017年3月16日号で発表された。