ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:250

新たな冠動脈疾患の予測モデル、有病率が低い集団でも優れた予測能

オランダ・エラスムス大学医療センターのTessa S S Genders氏らが新たに開発した冠動脈疾患の予測モデルは、有病率が低い集団においても優れた予測能を示すことが、同氏らが実施した検証試験で確認された。検査前確率は、患者にとって最も有益な検査法を決めるのに有用とされる。ACC/AHAやESCの現行ガイドラインでは、安定胸痛がみられる患者における冠動脈疾患の検査前確率の評価には、Diamond and ForresterモデルやDuke臨床スコアが推奨されているが、いずれの方法にもいくつか欠点があるという。BMJ誌2012年6月23日号(オンライン版2012年6月12日号)掲載の報告。

ピオグリタゾンと膀胱がんリスクとの関連

 カナダ・ユダヤ総合病院(モントリオール市)のLaurent Azoulay氏らの検討で、2型糖尿病患者では膀胱がんのリスクがピオグリタゾン(商品名:アクトスほか)の使用により増大することが示された。チアゾリジン系経口血糖降下薬であるピオグリタゾンと膀胱がんについてはその関連が指摘される一方で否定的な見解もみられる。この問題解決のために地域住民ベースの観察試験がいくつか実施されたが、相反する結果が得られており、さらなる検討が求められている。BMJ誌2012年6月23日号(オンライン版2012年5月31日号)掲載の報告。

脳卒中のrt-PA血栓溶解療法、早期開始で予後が改善:IST-3試験を含むメタ解析

脳卒中の治療では、早期の遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)による静脈内血栓溶解療法が、良好なアウトカムの達成率および自立した生存率の改善をもたらすことが、英国エジンバラ大学のJoanna M Wardlaw氏らの検討で示された。rt-PAは、急性虚血性脳卒中患者の身体機能アウトカムを改善することが欧米の無作為化試験で示されているが、適応は発症後3時間以内に限定され、欧州では80歳以上は適応外とされる。2000年に開始されたIST-3試験(http://www.dcn.ed.ac.uk/ist3/)は、80歳以上の患者が半数以上を占め、発症後6時間まで適応を拡大して実施された。Lancet誌2012年6月23日号(オンライン版2012年5月23日号)掲載の報告。

脳卒中のrt-PA血栓溶解療法、発症後6時間でも身体機能を改善: IST-3試験

脳卒中患者に対する遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)による静脈内血栓溶解療法は、発症から6時間まで適応を拡大しても、6ヵ月後の身体機能アウトカムを改善することが、英国オックスフォード大学のColin Baigent氏らIST-3 collaborative groupが進めるIST-3試験(http://www.dcn.ed.ac.uk/ist3/)で示された。rt-PAによる血栓溶解療法は、欧州では発症後3時間以内、80歳未満の急性虚血性脳卒中患者に対し承認されている。一方、11試験(3,977例)に関するコクランレビューでは、rt-PAは早期の致死的脳出血を3%増加させるものの身体機能障害のない生存を有意に改善することが示され、発症後6時間まで有効な可能性が示唆されている。Lancet誌2012年6月23日号(オンライン版2012年5月23日号)掲載の報告。

膣脱修復術後の失禁予防のための中部尿道スリング術

骨盤臓器脱の経膣的手術後に、尿失禁リスクに対して予防的に行う中部尿道スリング術のベネフィットとリスクについて検証した多施設共同無作為化試験の結果、3ヵ月と12ヵ月時点の尿失禁は低率となる一方、有害事象が高率でみられることが、米国・ミシガン大学のJohn T. Wei氏らにより明らかにされた。文献的には膣脱修復術を受ける女性は5人に1人に上り、欧州女性に関する報告では手術を受けた女性の4人に1人に尿失禁が出現することが示されている。これらに対して近年施術されるようになったのがスリング術だが、この予防的処置の相対的なベネフィットとリスクについては、これまで明らかにされていなかったという。NEJM誌2012年6月21日号より。

大腸がんに対する軟性S状結腸鏡スクリーニングのベネフィットは?

軟性S状結腸鏡を用いたスクリーニングの効果について、その実施は大腸がんの発生率(遠位・近位大腸がんとも)および死亡率(遠位大腸がんのみ)を有意に低下することが示された。米国・ピッツバーグ大学のRobert E. Schoen氏らが米国内多施設共同による無作為化試験で約15万5,000例のスクリーニング受診者を追跡し報告した。大腸がん検診のための内視鏡スクリーニングの利点は定まっていない。これまで軟性S状結腸鏡スクリーニングのベネフィットを検討する無作為化試験は欧州(英国、イタリア、ノルウェー)で3試験が行われているが、結果は相反する報告が寄せられている。NEJM誌2012年6月21日号(オンライン版2012年5月21日号)掲載報告より。

腎不全の未治療率、年齢が高いほど高率

腎不全の未治療率は、年齢が高齢になるほど、より若い人に比べて高いことが、カナダ・カルガリー大学のBrenda R. Hemmelgarn氏らによる当地の住民約182万人について行った一般住民対象コホート試験の結果、明らかにされた。eGFR値が15~29mL/min/1.73m2のグループでは、腎不全未治療率は85歳以上が18~44歳の5倍以上だったという。Hemmelgarn氏らは、高齢者の腎不全研究は透析開始に焦点が集まっており、未治療高齢者の疾患負荷について軽視されているのではないかとして、年齢と腎不全治療との関連について検討した。JAMA誌2012年6月20日号掲載より。

新たな脂質マーカーによる心血管疾患リスクの予測能改善はわずか

心血管疾患発症の予測因子として、総コレステロール、HDLコレステロール、年齢や性別、喫煙の有無など従来リスク因子に、アポリポ蛋白B/A-Iといった脂質マーカーの情報を加味しても、同発症リスクの予測能はごくわずかな改善であったことが示された。英国・ケンブリッジ大学のJohn Danesh氏らが、約17万人を対象にした試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年6月20日号で発表した。初回心血管疾患イベント発生予測に、様々な脂質マーカーの測定がどれほど役立つかという点については議論が分かれていた。

研究論文は多数の医学ジャーナルに分散、最新知識を得るための支援システムが必要

各専門分野の無作為化試験の論文は多数の医学ジャーナルに広範に分散して掲載され、個々の医師が個人購読で最新の知識を得るには限界があることが、オーストラリアBond大学のTammy Hoffmann氏らの調査で示された。研究論文やそれを掲載する医学ジャーナルの数は急激に増えており、医師が常に最新の研究論文を熟読することは困難で、多くは選定された論文や電子ジャーナルにざっと目を通すだけだという。このようなやり方が効果的とは考えられないが、各専門分野の研究論文がどの程度ジャーナル間に分散しているかは明らかでない。BMJ誌2012年6月16日号(オンライン版5月17日号)掲載の報告。

重症敗血症、症例数の多さと良好なアウトカムは関連しない

英国の成人重症敗血症患者の一般集中治療室への入院症例数と患者アウトカムの間に関連はないことが、カナダ・McGill大学のJason Shahin氏らの検討で示された。過去30年以上にわたり、種々の外科的、内科的疾患において、治療例数と患者アウトカムの関連の評価が行われている。腹部大動脈瘤の修復や特定のがん種、小児の心疾患の手術など複雑な手技では、症例数とアウトカムの間に強い関連を認め、AIDSや心筋梗塞などの内科的疾患でも症例数の多い施設での治療はアウトカムの改善が確認されている。症例数と人工呼吸器の使用や重症敗血症との関連や、重症敗血症における症例数-アウトカム関連を示唆する研究結果もあるという。BMJ誌2012年6月16日号(オンライン版2012年5月29日号)掲載の報告。

糖尿病管理への質改善戦略の導入、治療効果の向上に寄与

糖尿病管理への質改善(quality improvement:QI)戦略の導入によって治療効果が向上することが、カナダSt Michael病院Li Ka Shing Knowledge InstituteのAndrea C Tricco氏らの検討で示された。糖尿病の管理は複雑なため、プライマリ・ケア医と他の医療従事者の連携が必要であり、患者の行動変容や健康的な生活習慣の奨励なども重要な課題とされる。糖尿病治療におけるQI戦略の効果に関する以前の系統的レビューでは、HbA1c以外の要素は検討されていないという。Lancet誌2012年6月16日号(オンライン版6月9日号)掲載の報告。

前糖尿病、一過性でも血糖値が正常化すれば糖尿病リスクが低減

前糖尿病は糖尿病の高リスク状態であり、たとえ一過性にでも血糖値が正常値に回復すれば、前治療とは無関係に将来の糖尿病リスクが有意に低下することが、米国コロラド大学のLeigh Perreault氏らが進めるDPPOS試験で示された。疾病対策予防センター(CDC)の試算によれば、米国ではおよそ7,900万人が空腹時高血糖または耐糖能異常もしくはその両方の病態を呈する前糖尿病だという。糖尿病やその合併症の予防には、前糖尿病の解消および正常血糖値への回復が重要とされる。Lancet誌2012年6月16日号(オンライン版2012年6月9日号)掲載の報告。

ホルモン避妊法の血栓性脳卒中と心筋梗塞のリスク

デンマーク・コペンハーゲン大学のOjvind Lidegaard氏らは、経口避妊薬やパッチ、膣リングを含む新しい各種ホルモン剤による避妊法に伴う血栓性脳卒中と心筋梗塞の発生について調べた結果、絶対リスクは小さかったが、エチニルエストラジオール20μg含有薬で0.9~1.7倍、同30~40μg含有薬では1.3~2.3倍のリスク増大が明らかになったと報告した。プロゲスチン種類別リスクの差異は比較的小さいことも示された。新しいホルモン避妊法の血栓塞栓合併症のリスクは重大な問題だが、これまで静脈血栓塞栓症リスクについて評価した研究はあるものの、動脈性合併症について検討した研究は少なく、相反する結果が示されていた。NEJM誌2012年6月14日号より。

米国の大学医師の給与、男女間で格差

米国の大学で医学研究に従事する医師(physician researcher)の給与について、専門性、研究施設の特性、学問的生産性、大学ランク、労働時間、その他の格差の因子で補正後も、男女の格差が存在することが明らかにされた。米国・ミシガン大学のReshma Jagsi氏らが行った調査の結果による。一般に同じように働いている男性と女性の医師に同様の給与が支払われているかどうかは不明であった。JAMA誌2012年6月13日号で発表した。

CTなど画像診断による1人当たり被曝量、1996~2010年で倍増:米国

米国で1996~2010年の間にCTなどの先端的な画像診断検査を受けた人の割合が増大し、それに伴い1人当たりの放射線被曝量は約2倍に増大したことが報告された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のRebecca Smith-Bindman氏らが、6つの統合ヘルスケアシステム(HMO)加入者について調べた結果で、JAMA誌2012年6月13日号で発表した。米国では近年、診療報酬支払動向での有意な画像診断利用の増加がみられるようになっていたという。しかし患者がどのような画像診断を受けているのかについては不明で、研究グループは、画像診断検査の傾向および被曝との関連について調査を行った。

悪性胸水、呼吸困難症状の緩和には胸腔カテーテル留置も胸膜癒着術も効果は同等

 悪性胸水による呼吸困難症状の緩和に対し、胸腔カテーテル留置法と、タルクを用いた胸膜癒着術とを比較した結果、症状緩和の効果は同等であることが報告された。ただし胸腔カテーテル留置法はタルク胸膜癒着術に比べ、当初の入院期間は短く、再胸膜処置の実施率も少なかったが、有害事象発生率は約5倍と高かったことも示されている。英国・オックスフォード大学のHelen E. Davies氏らが、悪性胸水患者106人について行った非盲検無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2012年6月13日号で発表した。悪性胸水は呼吸困難を伴い患者は短命である。胸水ドレナージで症状を緩和できるが最も効果的な第一選択の治療は何かは定まっていない。

高齢者の深部静脈血栓症の診断、Dダイマーは年齢依存性カットオフ値で

 プライマリ・ケアでの深部静脈血栓症診断のためのDダイマー値について、カットオフ値を従来の500μg/Lではなく、50歳超では「年齢×μg/L」、60歳以上では「750μg/L」を用いるのが安全な除外に結びつくことが明らかにされた。オランダ・ユトレヒト大学メディカルセンターのHenrike J Schouten氏らが、後ろ向き断面診断解析の結果、報告した。BMJ誌6月9日号(オンライン版2012年6月6日号)掲載報告より。

慢性めまいに、小冊子ベースの前庭リハビリテーションが有効

慢性めまいに対する小冊子を配布し自宅で行うよう指導する前庭リハビリテーションは症状の改善効果に有効で、プライマリ・ケアにおいて簡易で費用効果に優れた方法であることが報告された。英国・サウサンプトン大学のLucy Yardley氏らが、慢性めまいに対し一般に行われているケアと、小冊子ベースの前庭リハビリテーション(電話サポートあり/なし)の臨床効果と費用対効果を評価することを目的とした単盲検無作為化試験を行った結果で、BMJ誌6月9日号(オンライン版2012年6月6日号)で発表した。前庭リハビリテーションは、前庭機能障害によるめまいの最も効果的な治療法で、簡単な自己エクササイズ法からなるが、自宅で実践可能な適格患者でも本療法を教授されるケースはほとんどないのが現状だという。

世界の5歳未満児死亡の最新動向:2000~2010年

 2000~2010年の最新の世界の5歳未満児死亡率の動向調査の結果、全体に減少はしていたものの、医学的に死因が特定され割合が約3%であったこと、減少には感染症による死亡減少が大きく寄与していたことなどが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学(米国)のLi Liu氏らによる調査の結果で、「小児生存戦略はもっと、感染症や新生児期の主因など死亡原因へ目を向けなくてはならない。2010~2015年以降の減少をより迅速なものとするには、最も頻度の高い共通した死因、特に肺炎と早産の合併症の減少を促進することが必要だ」と報告。「質の高いデータを集めて推定方法を強化する継続的努力が、将来の改善にとって必須である」と結論している。「Lancet誌2012年6月9日号(オンライン版2012年5月11日号)掲載報告より。

早産率は、貧困国でも豊かな国でも増えている

早産は、5歳未満児死亡の2番目に大きな原因だが、早産(妊娠37週未満)に関するデータは国連機関も収集しておらず、システマティックな国別推計も年次推移の解析も行われていないという。英国・ロンドン大学のHannah Blencowe氏らは、2010年の世界184の国と地域の早産率と年次推移について推計値を算出し、また推計値を取り巻く誤差の定量的評価も併せて行った。Lancet誌2012年6月9日号掲載報告より。