ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:257

両腕のSBP差15mmHg以上、血管疾患や死亡の指標に

両腕の収縮期血圧(SBP)の差が10mmHg以上の場合、末梢血管疾患などを想定した精査が必要で、差が15mmHg以上になると血管疾患や死亡の指標となる可能性があることが、英エクセター大学のChristopher E Clark氏らの検討で示された。末梢血管疾患は心血管イベントや死亡のリスク因子だが、早期に検出されれば禁煙、降圧治療、スタチン治療などの介入によって予後の改善が可能となる。両腕のSBP差が10~15mmHg以上の場合、末梢血管疾患や鎖骨下動脈狭窄との関連が指摘されており、これらの病態の早期発見の指標となる可能性があるという。Lancet誌2012年3月10日号(オンライン版2012年1月30日号)掲載の報告。

開発中のENB-0040酵素補充療法、重篤な低ホスファターゼ症を改善

重篤な低ホスファターゼ症の乳幼児に対し、開発中のENB-0040による酵素補充療法が、肺および身体機能を改善することが報告された。米国・シュライナーズ小児病院(ハワイ州)のMichael P. Whyte氏らによる多国間オープンラベル試験の結果で、治療24週でX線上の所見での骨格改善が認められた。くる病や骨軟化症に至る低ホスファターゼ症は、組織非特異型アルカリホスファターゼアイソザイム(TNSALP)の遺伝子変異により生じる。重篤な乳児では、進行性胸部変形を呈し呼吸機能不全を来し死亡に至ったり、また骨疾患が持続する場合が多いが、承認されている内科的治療法はいまだない。ENB-0040は、骨を標的とする遺伝子組換えヒトTNSALPで、マウス試験で低ホスファターゼ症の症状発現を抑えることが認められていた。NEJM誌2012年3月8日号掲載報告より。

中等度~重度アルツハイマー病に対するドネペジルvs.メマンチンvs.両者併用vs.治療中止

 軽度~中等度アルツハイマー病に対するコリンエステラーゼ阻害薬のベネフィットは臨床試験により示されているが、中等度~重度に進行後もベネフィットが持続するかは明らかとなっていない。英国・ロンドン大学のRobert Howard氏らは、3ヵ月以上ドネペジル(商品名:アリセプトほか)を服用していた中等度~重度の居宅アルツハイマー病患者を対象に、同薬を中止した場合、継続した場合、NMDA受容体拮抗薬メマンチン(商品名:メマリー)に切り替えた場合、両薬を併用した場合とを比較する多施設共同二重盲検2×2プラセボ対照試験を行った。NEJM誌2012年3月8日号より。

テストステロン補充にデュタステリド併用、除脂肪体重の増加量を減らさず

 テストステロン補充療法の際に、5α-レダクターゼ阻害薬のデュタステリド(国内では前立腺肥大症としてのみ適応、商品名:アボルブ)を併用しても、筋肉・臓器・骨などを計測対象とした除脂肪体重の増加への影響はほとんどないことが明らかにされた。デュタステリドには、テストステロンの5α-ジヒドロテストステロンへの変換を阻害する作用がある。米国・ボストン大学のShalender Bhasin氏らが、約140人の健康な男性について行った、無作為化プラセボ対照試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月7日号で発表した。

抗てんかん薬抵抗性の側頭葉てんかん、早期の側頭手術が発作を抑制

抗てんかん薬抵抗性の側頭葉てんかん患者に対し、早期に側頭切除を行うことで、治療薬継続群との比較でその後2年間の発作が抑制されることが示された。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJerome Engel Jr,氏らが、38人の内側側頭葉てんかん患者について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月7日号で発表した。これまでも成功例が報告されているにもかかわらず、手術療法は最後の手段とされ、発作後20年を経てからの手術依頼が一般的で、重大障害や早期死亡を回避するには遅すぎるのが現状だという。

単施設試験vs.多施設試験、連続アウトカムの治療結果への影響は?

多くの医師は多施設試験と比べて単施設試験の結果に疑念を抱いている。最近のバイナリアウトカム(binary outcomes)によるメタ疫学的な研究で、単施設試験のほうが多施設試験よりも大きな治療効果を示すことが認められたためである。バイナリアウトカム試験の結果は、連続アウトカム(continuous outcomes)の試験の結果と比べ、ほとんどが医学的状態やバイアスリスク、サンプルサイズが異なる。では、連続アウトカムによる無作為化試験の推定治療効果について、単施設試験と多施設試験とを比較した場合はどうなのか。フランス・INSERMのAida Bafeta氏らが、メタ疫学研究を行った。BMJ誌2012年3月3日号(オンライン版2012年2月14日号)掲載報告より。

更年期症状に悩む女性に適切なアドバイス可能な研究成果が報告

女性が経験する自然閉経前後の症状を特徴づけ、症状のプロファイルや変遷別に階層化すること、また各症状プロファイルと社会統計学的因子や健康への取り組みとを関連づけることを目的とする前向きコホート研究が英国で行われた。同国University College and Royal Free Medical SchoolのGita D Mishra氏らによるもので、「医療従事者が自然閉経を迎えさまざまな症状を経験する女性に対し、個々に見合った適切なアドバイスを提供するのに役立つ結果が得られた」と報告している。BMJ誌2012年3月3日号(オンライン版2012年2月8日号)掲載報告より。

新開発の分子アッセイ、早期NSCLCのリスク評価に有用

扁平上皮がんを除く早期非小細胞肺がん(NSCLC)患者のうち、切除術後の死亡リスクが高い例を高精度で判別する分子アッセイが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJohannes R Kratz氏らによって開発された。早期のNSCLCは、切除術時に検出されなかった転移病変が原因で再発することが多い。これらの患者の管理では予後の予測が重要で、潜在病変を有する可能性が高い患者を同定する必要がある。Lancet誌2012年3月3日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。

大幅な拡充進む、中国の保健医療サービスと健康保険

近年、中国では保健医療の利用増加やその内容の拡充が進み、保険の補償や入院患者の保険償還が著明に増大していることが、中国衛生部保健統計情報センターのQun Meng氏らの調査で示された。1978年の政府による経済自由化政策の導入をきっかけに、中国では経済成長と貧困削減が急速に進んだが、保健医療システムの改革は同じ歩調では進展しなかったという。2009年、中国政府は、2020年までに誰もが利用可能な医療制度の確立を目標に保健医療の改革政策を導入した。Lancet誌2011年3月3日号掲載の報告。

重度外傷性脳損傷へのアマンタジンのプラセボ対照試験

外傷後意識障害を有する患者に対し、アマンタジン塩酸塩(商品名:シンメトレルほか)は、機能回復を早めることが示された。米国・JFKジョンソン・リハビリテーション研究所のJoseph T. Giacino氏らが報告した。アマンタジンは、外傷性脳損傷後の遷延性意識障害患者に最も多く処方される薬剤の一つで、予備的研究で、アマンタジンが機能回復を促進する可能性があることが示唆されていた。NEJM誌2012年2月29日号より。

妊婦への禁煙支援としてニコチンパッチ療法は有効か?

妊婦への禁煙行動療法に加えてのニコチンパッチ使用(16時間につき15mg)の有効性と安全性について、英国・ノッティンガム大学のTim Coleman氏らによる二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果、出産までの禁煙率を有意に高めることはなかったことが報告された。有害な妊娠または分娩アウトカムのリスクを有意に高めることもなかったという。ただし、本試験は被験者の治療コンプライアンス率が介入群7.2%、プラセボ群2.8%と低く、安全性評価については「大幅に制限された」と結論している。ニコチン置換療法は妊婦以外の人の禁煙には効果的であることが示されており、妊婦への使用も広く推奨されているが、これまでの試験は規模が小さくエビデンスは不足していた。NEJM誌2012年3月1日号に掲載された。

心筋梗塞、女性は胸痛少なく、若年の院内死亡率は高率

女性の心筋梗塞は、男性に比べ胸痛のない割合が高く、若年での院内死亡率はより高いという特徴が明らかにされた。ただしこうした傾向は年齢によって変化し、65歳以上では、院内死亡率は男性のほうが高かった。米国・Watson Clinic and Lakeland Regional Medical CenterのJohn G. Canto氏らが、心筋梗塞の入院患者114万人超について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月22日合併号で発表した。

左室肥大を伴うCKD患者へのビタミンD投与、左室心筋重量係数に変化なし

左室肥大を伴う慢性腎臓病(CKD)に対し、48週間にわたる活性型ビタミンD化合物paricalcitolを投与した結果、左室心筋重量係数に変化は認められなかったことが示された。米国・マサチューセッツ総合病院のRavi Thadhani氏らが、約230人のCKD患者について行った無作為化試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月15日号で発表した。先行研究では、ビタミンDが心血管関連の罹患率や死亡率を減少することが示されていたが、それが心構造や心機能の修正に基づくものなのかについて、エビデンスは乏しかったという。

ICU入院中のせん妄発現リスクの予測モデルを開発

集中治療室(ICU)入院患者におけるせん妄の発現リスクを、入院後24時間以内に評価が可能なリスク因子を用いて予測するモデルが、オランダRadboud大学ナイメーヘン医療センターのM van den Boogaard氏らによって開発された。せん妄は、精神状態の変動や意識レベルの変化の急性な発現で特徴付けられ、罹病率や死亡率の高い重篤な病態である。ICU入院中の患者はせん妄のリスク因子を有するが、その発現の予測モデルは確立されていないという。BMJ誌2012年2月25日号(オンライン版2012年2月9日号)掲載の報告。

PPI常用により、閉経後女性の大腿骨頸部骨折リスクが増大

プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用により、閉経後女性の大腿骨頸部骨折のリスクが35%増大し、喫煙歴がある場合は50%以上高いことが、米マサチューセッツ総合病院のHamed Khalili氏らの検討で示された。米国では、PPIは2003年に処方箋なしの店頭販売が認可されて以降、胸焼け、胃食道逆流症、消化性潰瘍の治療薬としてその使用量が劇的に増加した。これまでのPPI使用と大腿骨頸部骨折の関連を検討した研究では相反する結果が報告されているが、これらの試験の多くはライフスタイルや食事という影響の大きい因子に関する情報が限られていたという。BMJ誌2012年2月25日号(オンライン版2012年1月31日号)掲載の報告。

小児重症肺炎、地域の女性医療ワーカーによる診断と抗菌薬投与が有効

パキスタン農村部地域の女性医療ワーカー(LHW)は、小児重症肺炎の自宅での診断および治療において、十分な役割を果たし得ることが、パキスタン・Aga Khan大学のSajid Soofi氏らの調査で示された。肺炎は世界的に5歳未満の小児の主要な罹病および死亡の原因である。パキスタンでは、肺炎による死亡率は都市部に比べ医療施設が少ない農村部で高く、自宅で死亡する患児が多いという。Lancet誌2012年2月25日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。

リチウムの有害事象プロフィール:385試験のメタ解析

リチウム治療は、尿濃縮能の低下、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、体重増加のリスクを増大させるが、腎機能には臨床的に重大な影響を及ぼさないことが、英国・オックスフォード大学のRebecca F McKnight氏らの検討で示された。リチウム(商品名:リーマスほか)は気分障害の有効な治療薬として広範に使用されている。リチウムの安全性への関心は高いが、有害事象のエビデンスに関する適正な統合解析は行われていないという。Lancet誌2012年2月25日号(オンライン版2012年1月20日号)掲載の報告。

大腸がんスクリーニングとしての内視鏡検査vs.FIT:中間報告

大腸がんは世界的にみると3番目に頻度の高いがんであり、2番目に主要ながん関連死の原因である。いくつかの研究で、大腸がんスクリーニングは、平均的リスク集団では効果的で費用対効果に優れていることが示され、スクリーニング戦略として推奨されるのは、検便検査と組織検査の2つのカテゴリーに集約されている。そうした中、スペイン・ウニベルシタリオ・デ・カナリア病院のEnrique Quintero氏らは、便免疫化学検査(FIT)が、他のスクリーニング戦略より有効でコストもかさまない可能性が示唆されたことを受け、内視鏡検査に非劣性であると仮定し無作為化試験を行った。NEJM誌2012年2月23日号掲載報告より。

大腸内視鏡的ポリープ切除、大腸がん死亡を長期に予防

大腸腺腫性ポリープの内視鏡的切除は、長期的に大腸がんによる死亡を予防し得ることが示された。米国・マウントサイナイ医療センターのAnn G. Zauber氏らが、全米ポリープ研究(National Polyp Study;NPS)の被験者を23年にわたり前向きに追跡し、内視鏡的ポリープ切除が大腸がん死亡に与える長期的な影響について解析した結果による。NEJM誌2012年2月23日号掲載報告より。

無細胞百日咳を含む混合ワクチンの熱性痙攣リスク、てんかんリスクは?

ジフテリア・破傷風・無細胞百日咳/ポリオ/ヘモフィルスインフルエンザb型菌(DTaP-IPV-Hib)混合ワクチンの接種後リスクについて、接種当日の熱性痙攣のリスクが、3ヵ月齢での接種第1回目、5ヵ月齢での接種第2回目当日のリスクは4~6倍に増大することが報告された。しかし、絶対リスクは小さく、てんかんのリスクについては増大は認められなかった。デンマーク・Aarhus大学のYuelian Sun氏らが、約38万人の乳幼児について行ったコホート試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月22・29日号で発表した。これまで、全細胞百日咳ワクチンは熱性痙攣リスクを増大することが知られていたが、無細胞百日咳ワクチンについての同リスクとの関連は明らかではなかった。