ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:266

新しく開発された静脈血栓塞栓症リスク予測モデルQThrombosis

英国・ノッティンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らは、高リスクの静脈血栓塞栓症患者が特定可能な新しいリスク予測モデルQThrombosisを開発したことを報告した。同モデルのアルゴリズム変数は患者もよく知る、また一般開業医がルーチンに記録している簡易な臨床指標から成る。Hippisley-Cox氏は「アルゴリズムは一般診療所の臨床コンピュータシステムに組み込むことができ、入院や薬物療法開始以前に、患者が静脈血栓塞栓症リスク増大の可能性があるかを判断できるだろう」と結論している。BMJ誌2011年8月20日号(オンライン版2011年8月16日号)掲載報告より。

プライマリPCI前のエノキサパリン、未分画ヘパリンよりネット臨床ベネフィット提供

ST上昇型心筋梗塞を呈しプライマリ経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けた患者の前処置として、未分画ヘパリンに比べエノキサパリンを投与されていた患者のほうが、ネット臨床ベネフィットが有意であることが報告された。フランス・パリ大学Gilles Montalescot氏らが行った国際無作為化オープンラベル試験「ATOLL」の結果による。直接的な両者の比較はこれまで行われていなかった。Lancet誌2011年8月20日号掲載報告より。

心血管イベントリスクの予測、冠動脈カルシウムスコアが高感度CRPよりも有用

心臓CTで検出される冠動脈カルシウム(CAC)スコアが、高感度C反応性蛋白(CRP)値と比べて、スタチン治療のベネフィットが最大あるいは最小と予想される人を特定するのに有用であることが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンスCiccarone心臓病予防センターのMichael J Blaha氏らが、多人種アテローム性動脈硬化症試験(MESA)から、JUPITER試験適格条件を満たした被験者950例を対象とした住民ベースコホート試験の結果による。Lancet誌2011年8月20日号掲載報告より。

米国でピーナッツバターが原因の集団食中毒を契機に、国内外に強制力を持つ食品安全システムが始動

米国CDC人畜共通感染症センターのElizabeth Cavallaro氏らは、2008年11月以降に全米各地で報告されたサルモネラ菌食中毒について、調査の結果、1ブランドのピーナッツバターとそれを原料としたピーナッツ製品の摂取が原因であり、3,918製品が回収されたことを報告した。報告によると、米国ではこの食中毒発生を契機に食品安全システムへの議論が再浮上、2009年3月に食品汚染事案を24時間以内に報告するFDA’s Reportable Food Registryが始動し、2011年1月4日のFood Safety Modernization Act制定により、FDAが国内外の食品供給元に対し、回収および安全計画提出を命じることができるようになったという。NEJM誌2011年8月18日号より。

術中覚醒予防モニタリングでのBIS使用、優越性立証されず

術中覚醒予防のモニタリングについて、前向き無作為化試験の結果、脳波から派生するバイスペクトラル・インデックス(BIS)を組み込んだプロトコルは、呼気終末麻酔薬濃度(ETAC)を組み込んだ標準的モニタリングプロトコルよりも優れていることは立証されなかったとの報告がNEJM誌2011年8月18日号に掲載された。米国・ワシントン大学医学部麻酔学科のMichael S. Avidan氏らによる。「予想に反して、BIS群よりもETAC群のほうが覚醒した患者は少なかった」と結論している。予期せず起こる術中覚醒は、全身麻酔が得られないか維持されない場合に起こり、そうした患者における覚醒発生率は1%近く、米国では毎年推定2~4万人が術中覚醒を経験している。また術中覚醒患者の約70%がPTSDになる可能性があるという。

若年時の無症候性顕微鏡的血尿、長期的な末期腎不全リスクを増大

若い時に持続性単独の無症候性顕微鏡的血尿が認められた人は、末期腎不全(ESRD)に至るリスクが有意に増大することが、イスラエルで行われたコホート研究から報告された。ただしその発生率および絶対リスクは非常に低いままではあった。報告は、同国シバメディカルセンターのAsaf Vivante氏らが約22年間の長期にわたるリスクを追跡したもので、JAMA誌2011年8月17日号で発表された。これまで、同リスクに関する長期アウトカムを検証したデータは有効なものがほとんどなかった。

甲状腺がん患者における放射性ヨウ素使用、病院特性が大きな理由

米国・ミシガン大学のMegan R. Haymart氏らは、臨床現場における甲状腺がん患者の全摘後の放射性ヨウ素使用の傾向について調査を行った。甲状腺全摘後の放射性ヨウ素使用については確定しておらず、使用の期間や重症度と使用との関連性などが明らかになっていない。術後使用の議論は熱いが無作為化試験は行われておらず、そのためガイドラインでは医師の裁量とされており、臨床現場は使用の支持派と反対派に二分されている。Haymart氏らは、最近の臨床での使用パターンを調べ、病院間で使用程度の格差があるか、あるとしたらどのような因子が関連しているのかを調査した。JAMA誌2011年8月17日号掲載より。

バルセロナ市の通勤・通学自転車シェアシステム「ビシング」、死亡低下しCO2減少

世界各国の主要都市で、主に交通渋滞緩和を目的に導入が進んでいる、公共の自転車共有システムについて、スペイン・環境疫学研究センターのDavid Rojas-Rueda氏らは、同国バルセロナ市で2007年3月に導入された「Bicing(ビシング)」(http://www.cycle-info.bpaj.or.jp/japanese/report/jpg/h20_8/h20_8_1top.html)と呼ばれる同システムの、健康に及ぼすベネフィットとリスクについて調査を行った。その結果、「交通事故や大気汚染などのリスクよりも、ベネフィット(死亡減、CO2減)が大きく、また二酸化炭素排出量を減らすなど公衆衛生上の改善効果も期待できる」と報告している。BMJ誌2011年8月13日号(オンライン版2011年8月4日号)掲載報告より。

国民への心血管疾患予防プログラム、適度の達成で年間医療費3,000万ポンド削減可能

英国・バーミンガム大学医療経済学教室のPelham Barton氏らは、「国民への心血管疾患予防を目的としたリスク因子低減の各種プログラムは、適度でも達成さえすれば国民の健康増進とともに、医療制度財源の正味のコスト削減にも結びつく」ことを、イングランドとウェールズ全住民を対象としたモデル研究の結果、報告した。英国での心血管疾患死亡は年間15万人以上、罹患者は500万人以上、医療コストは年間300億ポンド以上に上るという。BMJ誌2011年8月13日号(オンライン版2011年7月28日号)掲載報告より。

デュシェンヌ型筋ジストロフィー、PMOによるエクソン読み飛ばし誘導療法が有望

AVI-4658(phosphorodiamidate morpholino oligomer:PMO)は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対し安全に投与可能で、ジストロフィン蛋白の正常化をもたらすことが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのSebahattin Cirak氏らの検討で示された。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、約3,500人に1人の頻度で男児にのみ発生する進行性の重度な神経筋疾患で、X染色体短腕のジストロフィン遺伝子の読み取り枠(open reading frame)のずれに起因するジストロフィン産生の障害が原因とされる。AVI-4658はエクソン51のスキッピング(読み飛ばし)を誘導するPMOで、動物やヒトにおいてジストロフィン蛋白を回復させることが確認されている。Lancet誌2011年8月13日号(オンライン版2011年7月25日号)掲載の報告。

葉酸摂取量が、MTHFR遺伝子変異によるホモシステイン濃度増加に影響

脳卒中の予防におけるホモシステイン低下療法は、葉酸摂取量が多い地域ではベネフィットがないことが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMichael V Holmes氏らの検討で確認された。MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)遺伝子の677C→T変異は血清ホモシステイン濃度の増加や脳卒中リスクの上昇と関連を示す。その影響は低葉酸食を摂取する地域で高いことが報告されているが、葉酸の効果と小規模試験バイアスを区別するのは難しいとされる。無作為化試験のメタ解析では、ホモシステイン低下療法による冠動脈心疾患や脳卒中の抑制効果は確認されていないが、これらの試験は一般に葉酸摂取量の多い集団を対象にしているという。Lancet誌2011年8月13日号(オンライン版2011年8月1日号)掲載の報告。

linaclotideが慢性便秘症状を有意に改善:2つの無作為化試験の結果より

 米国で新規開発された便秘型過敏性腸症候群および慢性便秘の経口治療薬である、C型グアニリル酸シクラーゼ受容体作動薬のlinaclotideについて、有効性と安全性を検討した2つの無作為化試験の結果が報告された。米国・ベス・イスラエル医療センターのAnthony J. Lembo氏らが、約1,300人の慢性便秘患者について行ったもので、NEJM誌2011年8月11日号で発表した。  研究グループは、慢性便秘患者1,276人について、12週間にわたり、2つの多施設協同無作為化プラセボ対照二重盲検試験(試験303と試験01)を行った。研究グループは被験者を無作為に3群に分け、linaclotide 145μg/日、linaclotide 290μg/日、プラセボを、それぞれ1日1回、12週にわたり投与した。

胸膜感染患者、t-PA+DNase併用療法によりアウトカム改善

胸膜感染患者には、t-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)+DNase(デオキシリボヌクレアーゼ)併用療法が有効であることが明らかにされた。t-PA療法、DNase療法それぞれ単独では効果が認められなかった。英国・オックスフォード大学のNajib M. Rahman氏らが、210例を対象に多施設共同無作為化二重盲検ダブルダミー試験「MIST2」を行った結果で、併用療法群のみドレナージが改善し、手術処置の減少、入院期間の短縮が認められたという。胸膜感染は30%以上が死亡もしくは手術照会となる。感染体液のドレナージが治療の鍵となるが、初の多施設共同大規模無作為化試験であった胸腔内線維素溶解療法(ストレプトキナーゼ注入)を検討した試験「MIST1」ではドレナージの改善はみられなかった。NEJM誌2011年8月11日号掲載報告より。

ICU重症成人患者への静脈栄養法は8日目以降開始のほうがアウトカム良好

重症疾患でICUに入室となった成人患者への静脈栄養法の開始は、早期開始(48時間以内)するよりも後期開始(8日目以降)のほうが、回復が早く合併症が少ないことが明らかにされた。ベルギー・ルヴェン大学病院集中ケア内科学のMichael P. Casaer氏ら研究グループが行った4,640例を対象とする多施設共同無作為化試験の結果による。重症疾患は、摂食障害を来し重度の栄養障害、筋消耗、虚弱をもたらし回復を遅らせるため栄養療法が開始されるが、アウトカム改善については明らかになっていなかった。Casaer氏らは、投与ルート、タイミング、目標カロリー、栄養療法のタイプに着目し、特に議論となっている経腸栄養法単独では目標カロリーが達成できないICU重症成人患者への静脈栄養法開始のタイミングについて試験を行った。NEJM誌2011年8月11日号(オンライン版2011年6月29日号)掲載報告より。

睡眠呼吸障害がある高齢女性、認知障害・認知症の発症リスク1.85倍に

高齢女性の睡眠呼吸障害は、軽度認知障害や認知症の発症リスクを1.85倍に増大することが明らかにされた。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のKristine Yaffe氏らが、認知症の認められない高齢女性約300人を対象とする前向き観察試験を行った結果によるもので、JAMA誌2011年8月10日号で発表した。反復性覚醒や間欠性低酸素血症を特徴とした睡眠呼吸障害は高齢者によくみられ、これまでの断面調査で、低い認知能力との関連が示唆されているものの、認知障害発症につながるかどうかについては明らかにされていなかった。

カロリー表示義務付けは、ファストフード店での購入エネルギー量減に結びついたのか?

2008年1月から米国ニューヨーク市では、チェーン・レストランに対し全メニューへの詳細なカロリー情報を表示する規制が実施となった。これまでカロリー表示が購入エネルギー量を減らす効果があったかどうかについて、入手可能なデータが限られていたため結果は判然としていなかったが、米国NY在住コンサルタントのTamara Dumanovsky氏らが、マクドナルドやバーガーキングなど人気ファストフード11社での顧客調査を実施し、表示義務化によるインパクトを調べた結果を報告している。BMJ誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月26日号)掲載報告より。

非糖尿病性腎症患者、ガイドライン推奨値の減塩維持が蛋白尿減少と降圧の鍵

ACE阻害薬最大量で治療中の非糖尿病性腎症患者には、ガイドライン推奨レベルの減塩食を持続して摂らせることが、蛋白尿減少と降圧に、より効果的であることが52例を対象とする無作為化試験の結果、示された。試験は、オランダ・フローニンゲン大学医療センター腎臓病学部門のMaartje C J Slagman氏らが、同患者への追加療法として、減塩食の効果とARB追加の効果とを比較したもので、両者の直接的な比較は初めて。Slagman氏は、「この結果は、より有効な腎保護治療を行うために、医療者と患者が一致協力して、ガイドラインレベルの減塩維持に取り組むべきことを裏付けるものである」と結論している。BMJ誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月26日号)掲載報告より。

ピロリ菌の除菌治療、4剤併用/連続治療は3剤標準治療よりも不良

ラテンアメリカのピロリ菌(Helicobacter pylori)感染患者の除菌治療では、標準的な3剤の14日間投与が、4剤の5日間併用治療や10日間連続治療よりも良好なことが、アメリカFred Hutchinsonがんセンター(シアトル市)のE Robert Greenberg氏らの検討で示された。ヨーロッパ、アジア、北米では、ピロリ菌に対するプロトンポンプ阻害薬+アモキシシリン+クラリスロマイシンによる標準治療は、これにニトロイミダゾールを加えた4剤の5日間併用治療や10日間連続治療よりも除菌効果が有意に低いことが報告されている。4剤レジメンは、3剤レジメンよりも抗生物質の用量が少ないため、医療資源が乏しい環境での除菌計画に適すると考えられる。ラテンアメリカはピロリ菌関連の疾病負担が大きい地域だが、除菌戦略に関する試験は少ないという。Lancet誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月20日号)掲載の報告。

全身性強皮症に対するHSCTの有用性を無作為化試験で確認

全身性強皮症に対する骨髄非破壊的自家造血幹細胞移植(HSCT)は、標準治療に比べ2年間にわたって皮膚病変および肺障害を有意に改善することが、アメリカ・ノースウェスタン大学Feinberg医学校のRichard K Burt氏らの検討で示された。全身性強皮症は、病初期にはびまん性の血管障害を呈し、その後免疫系の活性化に伴って組織の線維化が進む慢性疾患である。HSCTは、非無作為化試験において、全身性強皮症の皮膚症状や肺機能を改善するものの治療関連死の発生率が高いことが示されている。Lancet誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月20日号)掲載の報告。

特発性乳児高カルシウム血症、トリガーとなる遺伝子変異を特定

特発性乳児高カルシウム血症発症の分子的基盤を調査していたドイツ・ミュンスター大学小児病院のKarl P. Schlingmann氏らは、遺伝的危険因子としてCYP24A1変異を見いだしたことを報告した。報告によればCYP24A1変異が起因となり、ビタミンDの感受性を亢進し、特発性乳児高カルシウム血症発症の特徴である重症高カルシウム血症を発症。このため同因子を有する乳児は一見健康でも、ビタミンDの予防的投与によって疾患を発症し得る可能性があるという。乳児へのビタミンD投与は最も古く最も有効な、くる病の予防法であり、北米では事実上くる病根絶に結びついた。しかし1950年代に、ビタミンD強化ミルク製品を飲んだ英国の乳児で特発性乳児高カルシウム血症の発症が増大し、以来、ビタミンDの毒性作用、推奨すべき至適投与量についての議論が続いている。NEJM誌2011年8月4日号(オンライン版2011年6月15日号)掲載報告より。